風魔術だけでも異世界は楽しいです ~美少女転生からのちょうどいいスローライフ~   作:暁刀魚

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モクゾーの村

 モクゾーの村は、かなり山奥にありながら規模は大きい。

 結構な数の住人がおり、村というよりは街といった感じの規模と外観をしていた。

 それもこれも、神聖樹によって村が潤っている証拠だろう。

 特徴的なのは神聖樹を守るための騎士団と、その騎士団が常駐している教会の存在か。

 カザルマの街は宗教色がかなり薄い街だが、行くところに行けば宗教ってのはかなり権威のある存在だ。

 神聖樹は名前の通り、儀礼的な用途も多分に含んでいる。

 

 そんな村だが、山奥にあってなかなか街との交流がない分、内部の関係性は密である。

 当然のようにルークに異性の友人ができたという話は瞬く間に広がり。

 キャラバンが酒類を販売したことで、あれよあれよという間に宴会の様相を呈していた。

 

「いやね、私はルークを玩具にしたいだけであって、男女の関係というのに興味はなくてですね」

「その方が最悪じゃないか!」

 

 なんて話をしながら、村の人達と盛り上がる。

 まぁ、ぶっちゃけ酒を飲む理由さえあれば酒を飲みたいのが、異世界人の常。

 娯楽が少ないからね、酒のんでバカやるのが一番楽しいのだ。

 私はそこまで飲まないけど。

 

「しかし、君が白迅のフーシャさんかぁ。前に、噂は聞いたことがあったけど。こんなにかわいい子だったんだね」

「え、噂になってるんですか? あんまり目立つようなことはしてないつもりなんですけど」

「キャラバンの御婦人から聞いたんだよ。浮遊魔術が大得意で、いつも助かってるって」

 

 ああ、と納得する。

 私は基本的に目立ちたくはないが、二つ名を持っている時点でどうしても名前が売れてしまう時がある。

 特に、護衛依頼や輸送の依頼に関しては、カザルマの街では一番のスペシャリストと言ってもいい。

 商人や取引のある人たちは、私の名前を知っていることが多かった。

 ここらへんはちょうどいい知名度を維持していきたいのだけど、長く続けると自然と名前が広がっていくだろうなぁ。

 

「まぁ、なんだ。ルークは根は悪いやつじゃないんだけどね。言動は敵を作りやすいし、上手くやっていけるかは不安だったんだよ」

「カザルマの街だと、まだまだ馴染んではいませんけど、ちょっとずつ知り合いを増やしてる感じではありましたね」

「なんでそこまで、君が僕のことを見てるんだよ……」

 

 別に見ているわけじゃないぞ。

 私は男性とも女性とも気負わずに話ができるから、色んな人の噂が耳に入って来やすいのだ。

 加えて、暇な時は冒険者ギルドで人間観察をしているから、余計に耳も早い。

 案外、カザルマの街だと私が一番の情報通だったりするかもしれないな。

 新人冒険者とも仲が良いし。

 

「みなさんも、ルークのことを理解しているようですし、一度性根を知ってしまえば、むしろ可愛がってもらえる性格をしてると思うんですよね」

「僕は可愛がってもらいたくなんてないぞ!?」

「こんな風に、いじりがいもありますし」

「お前なぁ!」

 

 打てば響く、とは言うけれど。

 ここまで反応が返ってくる相手は、プリンセスくらいなものだ。

 そのプリンセスも、あんまり冗談を言うと真に受けてしまう。

 純粋にからかえるのは、私の知り合いだとルークくらいである。

 

「そういうフーシャさんは、いかにもできる女性って感じですよね」

「いやぁ、そういうつもりはないんだけどなぁ」

 

 一人の女性が、私に対してそんなことを言ってくる。

 正直、私は結構怠惰だし、適当だぞ。

 

「飄々としてるっていうか。何事もおおらかに受け止めそうっていうか」

「……まあ、然う然うのことじゃ動じないよな、君は」

「動じないっていうか、実力があるから余裕があるだけだよ。二つ名持ちだしね」

「それが素敵なんですよぉ」

 

 なんだか、随分とこの女性は私に対する評価が高い。

 どこかで評価されるようなことしたかなぁ。

 

「何より、ちょっと背丈が小柄なところがいいんです。膝の上にすっぽり収まりそうっていうか、抱えたらちょうどいいっていうか」

「……なんか雲行きが怪しくなってきたぞ」

「彼女、酔っ払うとこんな変なこと言い出すのか……」

 

 ルークと二人で、言動と視線が厭らしくなってきた女性からちょっと距離を取る。

 私はともかく、ルークまでこの女性が酒乱なことを知らないのは、若い頃のルークが真面目くさってお酒の席を避けてたからだそうな。

 なんか、凄く想像できてしまうなぁ。

 子供だから酒は飲めないって言って、逃げるルーク。

 

「私もう、ひと目見たときからずっとフーシャさんのことが気になってたんです。特に脇と肩! スカートの丈以外は露出抑えめなのに、ここだけ全開なのえっちすぎません!?」

「それは服がそういうデザインだからだよ!」

「人前でなんてことを言い出すんだ、この人は」

 

 いやまぁ、エッチすぎるとまでは行かないけど。

 セクシーだな、とは思うけどさ。

 たまに着ていて、謎の背徳感を感じるときがあるけどさ。

 キャラクリゲーに、ちょっとエッチなMOD入れた時みたいな。

 何を言っとるんだ私は。

 

「もう我慢なりません、フーシャさん! 私と一緒にお昼寝しませんか!?」

「お昼寝!?」

 

 えっちなにゃんにゃんをするんじゃないの!?

 めちゃくちゃ健全そうなワードが飛び出たんだけど!?

 

 結局宴会はルークをからかったり、私が構われたりしているうちに終わりを迎えるのだった。

 

 

 ◯

 

 

 次の日、お酒の後遺症……というか二日酔いはルークの治癒魔術でふっとばされ。

 神聖樹の積み込み作業を行うこととなった。

 このまま一日、神聖樹を積み込んでもう一泊。

 滞在三日目に、モクゾーの街を後にする予定である。

 

 私はといえば、その神聖樹の積み込みを浮遊魔術で手伝った。

 この作業を見込んで、キャラバンの御婦人からは依頼料をたんまりもらっており。

 私のメインの仕事はここかもしれないというくらいだ。

 といっても、私がいたことで普段よりも作業効率は格段に向上。

 結果として、一日予定の仕事が半日で終わってしまった。

 というか、半日で終わらせて残り半日をゆっくりするために私が頑張った。

 だらけるための努力ができる女(TS)なのだよ、私は。

 

 なお、この日も昨夜ほどではないけど全員で集まって騒いだ。

 そして三日目、私達はモクゾーの村を後にする。

 

「久々の里帰りはどうだった?」

「……別に、数年くらいじゃあんまり彼らも変化はないさ」

 

 行きよりは緊張感の伴った帰りの道中。

 私は、隣を歩くルークに話しかけていた。

 

「その割には、随分と足取りが軽そうだけど」

「……僕は、知っての通り敵を作りやすい性格だ」

 

 ぽつり、とルークが零す。

 なんとなく、彼の言いたいことは察しが付く。

 けれど、だからこそ話を聞くべきだろうと私は思った。

 

「正直、村の人間にも疎まれていると思っていた。面倒なやつだ……と」

「少なからずルークをしょうがない奴、と思ってるかも知れないけどさ。それ以上に彼らはルークのいいところも知ってたね」

「……そうだな。思った以上に、僕は彼らから心配されていたみたいだ」

 

 ルークは、少しだけ嬉しそうに苦笑した。

 

「故郷の人たちは、大事にしないといけないよ」

「……そうだな」

 

 そんなルークの様子に、私も満足しながら頷くと――

 

 

 ふと、私の感覚に()()()()が引っかかった。

 

 

「…………」

 

 少しだけ、感情が冷えるのを感じる。

 努めて冷静に、私は感覚に引っかかったそいつら――()()に対して。

 

「――風弾よ」

 

 密やかな声とともに、不意打ちを仕掛ける。

 音もなく、発動した痕跡を隣りにいるルークにすら感じさせない風の弾丸は。

 木々の間をすり抜けて、野盗の眉間を撃ち抜いた。

 

「……どうかしたのか?」

「ん、ううん。なんでもないよ」

 

 動かなくなった野盗の周囲に、別の野盗がいないことを確認してから集中を解く。

 相手は一人、こっちを観察していたが襲撃する気配はない。

 十中八九偵察だろう。

 そして、偵察が帰らなければ野盗も慎重になるはず。

 私個人の経験から言うと、この大規模キャラバンが襲われる心配は恐らくもうない。

 そのうえで、野盗の規模はおそらくかなりでかい。

 ならば――

 

 

 ――順風の守り手が、動かなくてはいけないかも知れないな。

 

 

 そんなことを考えながら、私は周囲の警戒を続けるのだった。

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