風魔術だけでも異世界は楽しいです ~美少女転生からのちょうどいいスローライフ~   作:暁刀魚

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女性陣は仲が良い

 ふと、珍しい組み合わせをギルドで見かけた。

 いや最近はそこまで珍しくないんだけどさ。

 具体的に言うと――

 

「おはよう、リフィル、シェナイトさん」

「あ、おはようございますフーシャ先生!」

「おはよう」

 

 リフィルとシェナイトさんだ。

 どちらも、根本的な接点のある相手ではない。

 強いて言うなら、私と知り合い同士ってことくらい。

 でも、それが結果的に理由となって、二人は交流を重ねていた。

 私の知らない所で。

 私の知らない所で。

 

「今日は二人でどうしたジェラ?」

「ジェラ?」

「フーシャが変なことを言い出すのは、そこまで珍しいことじゃないでしょう」

「ひどいなぁ、シェナイトさん」

 

 私はこんなにもじぇらしぃなのに。

 まぁ、冗談はさておいて。

 

「いつも通りよ、最近のこの街のトレンドについて教えてもらってるの」

「ははぁ、情報収集ですか」

「あ、はい。シェナイトさんも、なんだかんだ言って高貴系の人ですから」

 

 高貴系って。

 話としては単純で、シェナイトさんはプリンセスのお目付け役だ。

 世間知らずなプリンセスが、危ない目に合わないよう普段から気をつけている。

 しかし、そんなシェナイトさんもどちらかと言えば高貴系。

 元は貴族の出身である。

 世俗には正直疎い。

 無論、本人は落ち着いているし勉強もしてるんだけど。

 街のトレンドとなると、どうしても一足遅れがちだ。

 

「昔は私にも聞いてくれてたのに、最近はすっかりリフィルから聞いてて悲しいなぁ」

「え、えっと……」

「リフィルを困らせないで。貴方の知識は偏ってるのよ。自分の興味あること以外は仕入れないタイプじゃない」

 

 まぁ、それはそうだ。

 私は私が楽しく生きれればそれでいいのだから。

 だから街のトレンドも、最近流行ってる料理屋とかなら詳しいけど。

 ファッションのトレンドとかはさっぱりである。

 後、話を聞くなら他の女性冒険者でもいいんだろうけど、女性冒険者は集まると話が長い上に脱線するからね。

 新人でつながりの薄いリフィルに、白羽の矢が立ったわけだ。

 後、真面目だからあんまり話から脱線しない。

 

「にしても、シェナイトさんも勉強熱心だねぇ」

「プリンセスのためよ、あの子は興味を持ったことに何でも全力だから、止めるべきことは私が止めないと」

 

 なんとも、頼もしい話だ。

 さて、私が頼んだ飲み物がやってきた辺りで、話が再開する。

 私のせいで話の腰を折っていたわけだから、ちょっと申し訳ないね。

 

「じゃあえっと、話を戻すんですけど。最近の流行は、やっぱりクロネコーデですね」

「クロネって……あのクロネ?」

「そのクロネさんだと思います、猫耳の」

 

 話題はどうやら、ファッションのトレンドのようだ。

 クロネコーデ、白狼のクロネがおすすめするファッションである。

 「世界よ、美少女であれ」とホンキで思っているクロネは、ファッションの普及にも熱心だ。

 特にカザルマはクロネの出身というだけあって、クロネコーデの影響力は高い。

 ここ最近は、本人が帰ってきたから特に。

 

「私は……あの子のコーデは余り似合わないのよね。プリンセス向けだと思うわ」

「そこはプリンセスさんにおすすめするためと思って……それと、シェナイトさん向けのコーデもありますよ? あ、ところで”あの子”……って」

「ん、そーだよ。シェナイトさんとクロネは知り合いなんだ。私が引き合わせたんだけど」

「おおー、こんなところで繋がりが」

 

 貴族に指導を行うことが多いクロネは、シェナイトさんとも知り合いだ。

 というか、私のコネでまずシェナイトさんと知り合って、そこから紹介状をもらって貴族と仕事をするようになった感じ。

 

「彼女はいい戦士よ。そう褒めると、あまりいい顔をされないけど」

「気持ちはわかります。私も武闘派魔術師って言われると、なんだかむず痒くって」

 

 うーむ女子特有の悩み。

 ずずず(飲み物を飲む音)。

 

「――その点、フーシャ先生はずるいですよねぇ。ずっと可愛い系で」

「そうね、お気楽すぎて武闘派扱いなんてされないわよね、フーシャの場合」

「おおっと、こっちに流れ弾が飛んできたぞぉ」

 

 なんだい急に、二人して私にそんなジトっとした目線を向けて。

 

「いや、私の仕事は基本護衛と講師なんだから、武闘派扱いされる理由ないでしょ」

「それだけじゃないわ。常に同じ服を着ていても誰も咎めないのはずるいわ」

「お肌だって、全然手入れしてないって聞きましたよ。ずるすぎます」

「……それは私もそうね」

「えっ?」

 

 おおっと。

 二人して私をイジっているはずが、思わぬ所で抗争発生だぁ。

 天然美少女って、たまにいますよね……いや私もそうなんだけど。

 ちなみにプリンセスは天然側だけど、シェナイトさんが毎日きっちり手入れしているらしい。

 美少女力では、プリンセスが一番かもな。

 クロネは除く。

 あれはこう、美少女っていう生き物だよ。

 

「まぁまぁ、美少女具合でいったらここにいる人みんな総合的にはどっこいだよ。私達は争うべきじゃない」

「争うべきは、ろくでもないことをしてくる男たち、というわけね」

「そこまでは言ってない」

 

 シェナイトさんは本気で男嫌いなので、近くに男を近づけようとしないからなぁ。

 仕事で話をしたり、知り合いの知り合いとして話をする分にはいいらしいけどね。

 ダリルとかルークとか。

 

「そうだ、フーシャ先生もクロネさんに会ったんですよね。話題になってましたけど」

「まぁ、往来で二つ名冒険者が顔を合わせてたら、話題にもなるよね」

「クロネさんって、実際どんな方なんですか?」

 

 と、そこでリフィルちゃん。

 やっぱり最近のトレンドといえば、クロネ本人の話は欠かせないだろう。

 リフィルも、色々気になっているみたいだ。

 

「んー、そうだねぇ。一見腹黒そうに見えるけど、裏表のない子かなぁ」

「そうなんですか?」

「そうかしら?」

「シェナイトさんは面識あるじゃん……いやほんと、世界を美少女にすることしか考えてないの」

 

 ある意味で、性善説の究極にいる子かもしれないな。

 世界中のあらゆる人間が、美少女になれると本気で信じている。

 純粋さで言ったら、プリンセスとどっこいかもしれない。

 

「後はまぁ……強いかなぁ。私の無意識下の風探知をくぐり抜けられるのって、クロネくらいなものだから」

「やっぱ強いですか」

「強いわね。冒険者としても……戦士としても」

「本人の前で、あんまり強い強い言っちゃダメだよ? 本気で悲しむから」

 

 えーんえーんと本気で泣き出すぞ。

 まぁ、その後こっちが動揺すると即座にからかってくるんだけど。

 大事なのは、彼女は常に本気ということだ。

 どれだけ悲しんでるフリに見えても、クロネは確かに悲しんでいる。

 ちょっとだけ。

 

「なるほどぉ」

「根本的に図太い子だから、大抵のことはすぐに流しちゃうけど」

 

 なんて、シェナイトさんがまとめた。

 その後も色々と話しをして、一頻り情報を集め終わったシェナイトさんが立ち上がる。

 

「じゃあ、また」

「はい、またお願いします」

「お願いするのはこっちの方よ」

「じゃあねー」

 

 なんて挨拶をして、去っていった。

 後には私とリフィルの二人。

 こっちも、自然な流れで解散することになるだろう。

 

「……ところでなんですけど、フーシャ先生」

「なにかな、リフィルちゃん」

 

 と、そこで何やらヒソヒソとリフィルちゃんが問いかけてくる。

 なにか、こそこそ話をしたいことでもあったのだろうか。

 なんて、耳を傾けると――

 

 

「……どうしてシェナイトさんって、男性が苦手なのに私とダリルの関係について聞きたがるんでしょう」

 

 

 ――なんと。

 そこに意識を向けるのかシェナイトさんは。

 もしかしてシェナイトさんって、他人の恋バナとか好きなんだろうか。

 いやでも、なにか別の意図があるきがする。

 そもそもトレンドの勉強って、果たしてプリンセスのためだけなのか?

 謎だー!




むふふなシェナイトさん。
書籍発売まで基本は週一更新です、よろしくお願いします。
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