風魔術だけでも異世界は楽しいです ~美少女転生からのちょうどいいスローライフ~   作:暁刀魚

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フーシャ先生は手が早い

 その日、私が普段より少し治安の悪い地域を歩いていた時のこと。

 おっと、残念ながら変なことは起きないぞ。

 治安が悪いと言っても、暮らしている人たちに孤児が多かったり、近くに娼館やカジノなどがあったりするだけだから。

 それに私はこの街だとあまりにも顔が知られすぎている。

 わざわざ、私に喧嘩を売ろうとする人間はいなかった。

 人が多くなっているこの時期であっても、だ。

 ただ、人が多くなっているからだろうか、この少し治安が悪い地域にも以前より人が増えている気がしたのだ。

 

「何か起きてるかなー?」

 

 そう思って、風に気配を問いかける。

 別に治安維持がしたいわけではないけど、私で止められるタイプの諍いは止めておきたい。

 面白そうなことが起きているなら、今日は暇だし立ち寄ってみるのもいいだろう。

 野盗の類が暗躍していたら即殺だ、あんなものこの街にはいらないよ。

 

「――ああ、なるほど」

 

 ただ、幸いにも今回人が増えている理由は、悪い理由ではなかった。

 というか、ちょっと歩けばすぐにわかることだ。

 具体的に言うと――

 

 

「ん、フーシャ先生じゃないかい」

 

 

 シスター服姿のイルナが、孤児院の前で看板を持って立っていた。

 結構ぴっちり体に張り付くタイプのシスター服で、イルナの筋肉が服の下からでも浮いている。

 ナイスバルク。

 

「やぁイルナ。今日は孤児院で炊き出しをやってるんだね」

「ああ、せっかくあたいが帰ってきたんだから、ってことでね」

「凱旋だものねぇ」

 

 ここはカザルマの街が運営する孤児院だ。

 カザルマの街はけっこー福祉も行き届いており、孤児たちはこの孤児院に集められて暮らすことと成る。

 イルナとバルクブラザーズの三人はここの出身。

 そんなイルナ達が二つ名持ちの冒険者パーティになったということで、イルナは孤児院の英雄なのである。

 ちなみに、私も一時期この孤児院にお世話になっていたことがあるぞ。

 まぁ、私も孤児ですからね。

 ただ一人で自活できるだけの能力はお世話になる前からあったので、すぐに出ていったけど。

 その縁で、たまに孤児院で冒険者のことを子どもたちに教えることはあるかな。

 だからイルナも、孤児院にいるときは私をフーシャ先生と呼ぶ。

 

「そうだ、フーシャ先生も顔を出してってくれよ。炊き出し食べてっていいからさ」

「いいの? 行く行く。せっかくだしちょっとした出し物でもやろうかな」

「そりゃ助かる」

 

 現在、孤児院では炊き出しの他に、詩人や道化師などの芸人を呼んでパフォーマンスをやっている。

 これは普段、あまり娯楽などに触れる余裕のないこのあたりの人たち向けのもので、観覧はタダ。

 見れば、そんな芸人に混じってバルクブラザーズが組体操みたいなものを披露していた。

 三人で扇みたいになるアレだ。

 この世界にもあるんだなぁ、アレ。

 

「じゃあ早速だけど――はいこれ」

「……シスター服」

「せっかく来たんだからさぁ、フーシャ先生も着てっておくれよ。似合うんだからさぁ」

「クロネみたいなこと言い出すね」

 

 こういうのを私に着せたがるのは、普段はクロネなのだが。

 筋肉を至上としていても、イルナも女子だ。

 人並みには身だしなみに気を使う。

 そもそも、例の一件で物理的なすれ違いが発生するようになる前は、クロネとも仲良しだったしね、イルナ。

 喧嘩は多かったけどさ。

 

「もー、しょうがないなぁ。今日だけだよ?」

「といいつつ、授業のたびに着てくれるフーシャ先生には頭が上がらないね」

「なんか釈然としないなぁ」

 

 いやいいんですけどね?

 自分でも似合うと思うんですけどね?

 それはそれとして、私も思うところがあるのだ。

 具体的には……見てもらったほうが早いだろう。

 

 

 +

 

 

 さて、そこから私はシスター服に着替え、子どもたちに挨拶をした。

 前に来たのは一ヶ月ほど前だけど、たまに来てくれる面白い先生として覚えられているらしく。

 子どもたちは私を歓迎してくれた。

 で、そこからは炊き出しに参加してスープを来てくれた人に配ったり、声をかけてくれた人に挨拶を返したりする。

 こういう場だから、変な輩が混ざり込む可能性もあるんだけど。

 そこは入口で堂々と仁王立ちしているイルナのおかげで、完全シャットアウト。

 和やかな雰囲気で炊き出しは進む。

 

 ここには芸を見せる人たちが結構きているわけだから、私も何か芸の一つでも見せたほうがいいだろう。

 ということで、炊き出しに加わった後は芸の披露だ。

 せっかくなので、前から練習していた色を付ける魔術を見せることにした。

 相変わらず、はっきりとした色をつけることには成功していないけれど、偽弾がなんとなーく複数の色に発光していて見ている分にはなかなか楽しい。

 それを大道芸だかドローンショーだか、そんな感じに空中で走らせたのだ。

 

 途中からはイルナが加わって、私の偽弾をイルナが拳で叩き落とす芸に変わった。

 二つ名冒険者同士の、実質的な模擬戦めいた芸。

 結構な人があつまった。

 ただ、マジでやると普通の人には偽弾を視線で追えなくなるので、偽弾が弾けるときのエフェクトに私がこだわる。

 私の放った偽弾が、ぱぁんぱぁんと花火みたいにイルナの拳で弾かれるものだから、そのたびに歓声が上がった。

 

 とまぁ、割と私自身結構楽しく色々やらせてもらったんだけど、イベントの終わり際のことだ。

 すでに人もまばらになり、メインの炊き出しも終了した頃。

 一人の見慣れない子供が、会場で迷子になっていた。

 

「ん、どうしたの?」

「え、っと……」

 

 それに気づいた私が、子供に声を掛ける。 

 視線を合わせるためにかがみ込み、子供の前に座り込んだ。

 

「パパが……いないの……」

「迷子になっちゃったのかな」

「うん……」

 

 孤児であれば、孤児院の誰かが彼を知っているだろう。

 しかし迷子となると、探すのは大変だ。

 

「ここって……パパとママのいない子たちの家なんだよね」

「まぁ……そうだね」

「ボク……捨てられちゃったのかな……」

 

 どうやら、結構な時間迷子になっていたらしく、子供はすっかり不安になっているようだ。

 流石にそんなことはないと思うけど、まったくないと言い切れない程度にはこの世界は治安の悪いファンタジー世界。

 私は慎重に言葉を選んで、少年に呼びかける。

 

「ちょっとまってね、今から探してあげるから。……何か、パパからもらったものとか、ある?」

「えと……この服は、パパに買ってもらったの」

「じゃあ、ちょっと失礼するね」

「――わっ!?」

 

 ――私は、少年をゆっくりと抱きしめた。

 慰めるためという意味合いもあるが、少年の服から感じる”気配”を強く認識するためでもある。

 頭を撫でながら、服に手を当てて気配を風として感じ取る。

 気配の中からこの子以外の気配を探して、それを探知で探す。

 

「え、あ、あう、えと」

「ちょっとまってねぇ」

 

 その間、慌てふためく子どもをあやしながら、私は風に耳を傾けて――

 

「……見つけた」

 

 治安が悪い地域の入口辺りを探す、一人の男性を見つけた。

 様子からして、かなり焦っているようだ。

 ――よかった、間違いなく子供のことを探している。

 きっと、お互いにあちこちを動き回って入れ違いになってしまっていたのだろう。

 

「ほんと!? どうやって見つけたの!?」

「私は風の魔法使いさんなんだ。すっごく人を探す風魔術が得意なんだよ」

「風の……もしかして冒険者の!?」

「あ、知ってるんだ。そうそう、白迅っていうんだけど……とにかく行こっか、もうすぐパパに会えるよ」

 

 それから、子どもと話をしながらお父さんの下へと向かう。

 冒険者に憧れていることとか、パパも昔は冒険者だったとか、そんな話を聞きながら。

 最終的にお父さんと合流し、私が白迅であることに驚かれながらもお父さんは嬉しそうに子どもを大事そうに抱きしめた。

 それから私は何度もお礼を言われて、二人と別れたわけなんだけど――

 

「いやぁ、さっすがフーシャ先生。慣れてるね」

「……どこから見てたの? イルナ」

「フーシャ先生が、子どもをたぶらかしたところ?」

「人聞き悪いな!」

 

 なんというか、これなのだ。

 私はきっと、あの少年の性癖を台無しにしてしまっただろう。

 普段の格好でもそれは結構起きうる事態なのだけど、シスター服を着ている間はさらに憧れバキュームが起きやすい気がするのだ。

 子どもたちと触れ合う機会が増えるんだから、当然と言えば当然だけど。

 それはそれとして、私だってやりたくてやってるわけじゃないんだからな!?




フーシャ先生の次回憧れバキューム活動にご期待ください!
フーシャ先生に憧れをバキュームされたい方は評価や感想くださるとバキュームしてくれるかもしれません。
色々とすごいので。
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