風魔術だけでも異世界は楽しいです ~美少女転生からのちょうどいいスローライフ~   作:暁刀魚

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後衛少なすぎ大問題

「フーシャ先生っていつも楽しそうですけど、何か秘訣ってあるんですか?」

「面倒なことはやらない、ストレスは遠ざける、楽しそうなことには躊躇わない。かなぁ」

「なるほど……」

 

 その日、私はリフィルと二人で酒を飲んでいた。

 場所はギルドではなく、街の小さな酒場だ。

 女性利用者が多く、マスターが剛腕でバカは即叩き出されるため、女同士で呑むときはここを利用する客が多い。

 私達も、まぁそんな感じ。

 今日はリフィルの方から、色々聞きたいことがあるということで誘ってきた。

 何が聞きたいかと言えば、本当にいろいろ。

 魔術の戦闘での実践的な使い方とか、最近の冒険者事情とか。

 便秘に関しても、当然ながら話題に登った。

 クロネの前では便秘って言っちゃいけないよ、といい含めておく。

 んで、今の話題は――

 

「リフィルちゃんは、まだまだいろいろストレスが多い?」

「そうですね……できないことも多くて、もどかしいです」

「私が余裕を持って毎日楽しそうに過ごせるのは、強さがあって稼ぎも安定してるからだ。何事も、コツコツ積み上げて楽しみを見出すしかないね」

 

 リフィルちゃんの最終目的は宮廷魔道士だ。

 私みたいな人間だと、そういう責任ある立場は窮屈に感じられてしまう。

 けど、リフィルちゃんにとってはそういう責任を任せられる場の方が、輝けると思う。

 ここらへんは人それぞれだな。

 

「じゃあえっと、フーシャ先生がストレスを感じる時とか、愚痴りたくなるときもあるんですか?」

「んー、ないとは言わないけど、すぐに忘れちゃうなぁ」

 

 結局、私が感じる不満はたいてい些細なものというか、日常のアレヤコレヤに付随するものだ。

 気楽な立場だから、大きな悩みにぶつかることがない。

 野盗とかあの辺りは……まぁ、解決できるものではないから。

 一応、こないだプリンセス達と話をして一区切りついたつもりではあるけどね。

 ともあれ。

 

「ああでも、一つ懸念はあるかなぁ」

「懸念……ですか?」

「そう。今回の便秘に関して何だけど――」

 

 そう言って、一杯だけ酒を煽ってから――

 

 

「今この街にいるトップ層、後衛……少なすぎ!」

 

 

 カン、と軽く音を立ててそれを机に置いた。

 リフィルちゃんは少しだけ考えて、ああ……と納得する。

 

「そういえば、今回街の外から来た二つ名持ちの冒険者って、全員前衛でしたよね」

「そう。イルナもエドモンドも言うに及ばず、クロネだって狼牙流免許皆伝。全員ゴリゴリの前衛さぁ」

 

 しかも、それだけじゃない。

 

「他にも二つ名級の戦力持ちはプリンセスとシェナイトさんがいるでしょう?」

「い、いますねぇ」

「ふたりとも……前衛!」

 

 そうなのだ。

 いないのだ。

 考えてみると、見事に前衛ばっかりなのだ。

 後衛は――なんと恐るべきことに私しかいない。

 もう一つランクを落とすとルークとかいるけど。

 二つ名級の冒険者だと、本当に私しかいないのだ。

 

「これがさぁ、もし仮に便秘タイラントで、とんでもない怪物級の魔物が出現したとするじゃん?」

「ええと……エルダーデーモンとかですか」

「そうそう、あの辺りの魔物が出てきたら、二つ名持ち級全員で当たらないといけないわけですよ」

 

 流石にそこまでやばい魔物が出てくることは、ないと思うけどね。

 エルダーデーモンってのは、文字通りくっそ昔からいるめちゃつよデーモンのこと。

 まず名付けられたのが千年前なのに、その時点でエルダーなのだ。

 それはもう古い昔に一度討伐され、その後時折暴走タイラントなんかでダンジョンに出現することがある。

 実力は……順風の守り手時の私が……勝てるのか? わからん。

 まぁ二つ名持ち六人いたらなんとかなるっしょ……とは思う。

 

「全員で当たれば勝てる……とは思うけど、後衛は完全に私一人。負担が滅茶苦茶大きい」

「ですよねぇ」

「しかも全員、我の強い戦い方をするからね。連携取れるのは普段から一緒に戦ってるプリンセスパーティだけだろうし」

 

 昔だったら、まだ連携も取れたと思うのだ、クロネ達とも。

 でも今はもう一緒に冒険しなくなって数年が経過していて、クロネたちも更に強くなっている。

 そんな今の二つ名持ち達と一緒に戦うのは、かなり難しいだろう。

 ただ――

 

「ただそれでも――私ならできちゃうんだな、これが」

「……えっと」

「風鳴りだから、ほら。皆の考えがなーんとなく読めるんだよ」

「あっ! 要するに連携をするんじゃなくて、考えを読んでそれにフーシャ先生が合わせるってことですね!」

「そうそう。そしてこれがとーっても面倒なんだ、これが」

 

 できなくはない。

 けど、できなくはないってことは、とても難しいってことだ。

 いやだよ、可能な限りやりたくない。

 全く持ってちょうどよくないぞ。

 

「でも、それができるフーシャ先生はやっぱりすごいですよ」

「二つ名持ちなら、皆何かしら特別な能力は持ってるものさ。クロネだったら武術と美少女、イルナだったら筋肉、エドモンドだったら純粋な強さ」

「いつか私も……そんなふうになれるでしょうか」

「なる前に宮廷魔道士になってそうだけどね、リフィルの真面目さなら」

 

 どっちがすごいってことはない。

 どっちもすごいし、リフィルは間違いなく宮廷魔道士が向いてるってだけの話だ。

 なんだかんだ言って二つ名持ちは我が強い。

 クロネとエドモンドなんてその典型で、私とイルナはどちらかというとまとも側……だと思いたい。

 

「ただまー、これにはもう一つ問題もあるかなぁ」

「問題、ですか?」

「クロネとイルナのすれ違い問題。ギルドが同じ町に呼びつけるくらいならできるけど、未だに顔を合わせられてないんだよ、あの二人」

「それは……もはや呪いじゃないですか?」

「まぁ、多分ね。といっても、解呪できる人間がいない」

 

 クロネはかなりいろいろな場所を巡っていて、そのたびにこの呪いについて聞いているそうだから。 

 それでもなんとかならないってことは、本当に解決が難しい代物なんだろう。

 どうしてこうなってしまったのやら。

 原因ははっきりしているが、理由は未だにわかっていない。

 

「すれ違いを解決しないことには、六人で集まることも難しい」

「それは……大変ですね」

「まぁ、便秘が解消される前にはなんとかするつもりだよ。二人が同じ街にいるって、それだけでもかなり普段より条件がいいんだから」

 

 いやほんと、どーしたもんだかなぁ、という話ではありますけどね。

 プライベートの話だから、どうしてそうなったのかをリフィルちゃんへ話すわけにもいかないし。

 まぁ、こればっかりはなるようにしかならん。

 

「で、それはそれとして……やっぱりむずいよ! 六人連携!」

「まぁ……パーティって四人が基本で、そこから増やすとなるとかなりハードル高いですもんね」

「何が一番厳しいってさ、このメンツ回復魔術を誰も使えないんだよ。長期戦は絶対にできないの」

 

 私が風鳴りですからね。

 他のメンバーも魔術を使えるのはシェナイトさんとイルナだけ。

 どっちも杖がもらえるほど習熟はしてない。

 

「とはいえ、このメンバーで探索とかしても絶対敵は楽勝だから、回復自体はそんなに必要ないんだよね」

「あくまでボスクラスの敵との戦いで、短期戦が必須になることが問題、ってことですか」

「そう。短期戦前提だと、また私の負担が増える。これほんと大変なんだから」

 

 いっそ私が全力出して単騎で戦ったほうがいいんじゃないか? という考えまでよぎる。

 しかしこれにも問題があって、私は全力を出したことがないのだ。

 出す必要のある相手と戦ったことがない。

 だから、自分がどこまで強いのか、未知数な部分が多いのである。

 まぁそれもこれも、本当にエルダーデーモンが出たら、の話なんですけどね。

 過去の便秘でも、エルダーデーモンが出た例は数例だけ。

 そんなもんが、カザルマみたいな普通のダンジョンの便秘で出るわけないんですよ!(ピコーン)

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