風魔術だけでも異世界は楽しいです ~美少女転生からのちょうどいいスローライフ~   作:暁刀魚

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あいつに勝ちたい(前)

「――フーシャ、”僕がどんな手段を使ってもいいから決闘でエドモンドさんに勝つ”ことはできるか?」

「急にどうしたのさ」

「……すこし思うところがあってな」

 

 ある日、ギルドでルークに呼び止められた私は、開口一番そんなことを聞かれた。

 エドモンドに決闘で勝ちたい、か。

 なかなか無茶を言ってくれるなぁ。

 

「まず、普通に戦ったら絶対に無理。エドモンドが魔術師を苦手にしていても、まず大前提としてエドモンドの攻撃を避けれないでしょ」

「まぁ、そうだな。そしてこちらの偽弾は一撃で吹き飛ばされてしまう……」

 

 本気のエドモンドを正面からさばける魔術師なんて、風鳴りの二つ名持ちである私くらいなものだ。

 遠距離攻撃を持たないエドモンドは遠距離から攻撃し続ければ勝てるけど、そのためにはエドモンドの攻撃を回避して距離を取る必要がある。

 基本、近接が苦手な魔術師にそんな芸当は無茶。

 

「だからまず、()()()()()使()()()()()ルークがエドモンドに勝つなら――」

「あ、いや、卑怯な手を使ってでも勝ちたいわけではないぞ。僕は――」

「――ハンデを付けてもらう必要があるね」

「……ああ」

 

 ルークは毒を持ったり、闇討ちをしたり、そういう手段を想像していたのだろうけど。

 そんな回りくどい方法を取るより、正面からハンデを付けてもらうよう頼む方がエドモンドは乗ってくれる。

 とにかく馬鹿正直に真っ直ぐなやつだからね。

 

「ハンデの内容はそうだねぇ、とりあえずなんでもいいから一発当てたら勝ちってことにしてもらうのは当然として……」

「……使う武器に制限をかける?」

「エドモンドは狼牙流も最低限修めてるし、剣以外の武器も使えるけど、まぁ剣を使わせるよりはマシかもね」

「近接戦闘に関しては、本当に隙がないんだな……」

 

 まぁでも、敢えて選ぶならほかとは得物のリーチが変わってくる素手だろうなぁ。

 最低限修めてるっていうのも、本当に最低限って感じだし。

 確か、素手の武芸者と戦う時の心構えを学ぶために、クロネから教わったんだったかな。

 私も巻き込まれた覚えがあるけど、身につきませんでした。

 魔術師に近接の心得を学べ、は無茶だよ。

 ともあれ。

 

「……なら、そうだな。エドモンドに対する対策は僕が考える」

「その採点を私に頼みたい、ってところかなぁ」

「そういうことだ」

 

 単刀直入に「勝てるか」と聞いてきた時はどうしようかと思ったけど。

 色々と考えをまとめてきては居たようだ。

 そのうえで「ハンデを付けてもらう」という案が出てこないところがルークらしさ、といえばらしさなんだろうな。

 どうやら本気で、ルークはエドモンドに勝ちたいらしい。

 対策の内容を聞いているだけでも、結構しっかり策を練っていることがうかがえる。

 これなら、私も本気でそれに答えなきゃいけないよなぁ。

 ……楽しそうだしねっ!

 

 

 +

 

 

「ハンデを設けたうえで、私と戦いたいということだね、ルーク」

「ええ、お願いできないでしょうか」

「無論、構わないとも。ルークには久方ぶりのカザルマで、勝手のわからないところを色々とフォローしてもらってるからな」

「そんなの、全然ですよ。むしろ僕の方が、エドモンドさんからは学ぶことが多くて……」

 

 いやいや私の方こそ、いやいや僕の方こそ。

 そんな譲り合いがしばし続いた後、エドモンドとルークの再戦が決定した。

 何だなんだと集まる冒険者たち、譲り合いで少しテンションが下がる冒険者たち。

 仕方ないので私がちょうどいいところで。

 

「というわけで、エドモンド対ルークの再戦だぁ!」

 

 と叫ぶと、ギルド内で歓声が上がった。

 こういうところはノリが良くて助かるね。

 まぁ、あんまりにもノリが良くなりすぎると賭けが発生するので注意が必要だ。

 別に悪いことじゃないんだけど、今は便秘で人が多いから、余計なトラブルに発展しかねない。

 そこは私が警戒しておくことにしよう。

 ともあれ、エドモンドとルークはハンデの内容を話し合いながら修練場に向かう。

 ぞろぞろと、観客たちを引き連れて。

 そういえばケイマとキョウは来てるのかな? 話を聞いてないってことはないと思うんだけど。

 

「まず、武器はなし、素手で戦っていただけますか?」

「かまわない」

「どんな形でもいいので、一発でも僕の偽弾があたったら勝ち、ということにしていただけないでしょうか」

「それくらいは当然だね」

「そして――」

 

 ルークが決めた「ハンデ」は三つ。

 二つは私が例に出したモノ。

 そしてもう一つは――

 

「エドモンドさんが行動を開始するのは、()()()()()()()()()()()()()()でいいですか?」

「――ふむ」

 

 少しだけエドモンドは考える。

 

「これが、君が勝利するために最も重要なポイント、というわけか」

「……はい」

 

 他2つと違って、最後のハンデにはルークの戦術的な「狙い」が若干透ける。

 何をするのか、まではエドモンドも想像がつかないだろうけど。

 何かをしてくる、というのははっきりと伝わるはずだ。

 まぁでも。

 

「――無論、構わないよ。それじゃあ、始めようか」

「……はい」

 

 気がつけば二人は修練場にたどり着いており、多くの観客が見守る中――

 

 

「我が名はルーク、光騎のエドモンドに決闘を申し込む!」

「光騎のエドモンド、我が友ルークの決闘を受けよう! どこからでもかかってきたまえ!」

 

 

 両者は決闘の宣言と共に、戦闘を開始した!

 

 

 +

 

 

 ――それから、十分。

 

「おいおいルークのやつ、まだ動かねぇのかよ」

「腰でも抜かしちまったのか?」

 

 外野がなんとなく飽きてきた頃。

 未だにルークは動いていなかった。

 ただ杖を構えたままエドモンドを睨んでいる。

 対するエドモンドも、笑みは浮かべているものの瞳は真剣そのものだ。

 外野のガヤを気にもとめず、本気でルークと向き合っている。

 お互いに、すごい集中力だ。

 そして――

 

「――な、なんとか間に合った!」

「セーフ!」

 

 そんな緊張した空気の修練場に、二人の男女がやってきた。

 修練場の出入り口から少しだけ体を浮かして戦闘を見守っていた私は、そんな二人の来訪にすぐ気がつく。

 やってきたのは、ケイマとキョウだ。

 

「やぁ、ふたりとも」

「あ、フーシャさん! ルークの奴がエドモンドさんともう一回決闘するって、本当ですか!?」

「本当だよぉ。二人も知ってたんでしょ?」

 

 軽く手を降って、ケイマの言葉に返答する。

 しかし帰ってきたキョウの答えは、少し以外なものだった。

 

「それが……今朝いきなり決闘するって言い出して。ケイマの奴その時寝てた上に全然起きなかったから、やっとここまで来れたんです」

「う……悪かったな」

「あはは、ケイマくんにも弱点があるんだね」

 

 何でも、休日の朝は起こしても起きないらしい。

 気持ちはわかる、気持ちいよね、休日の睡眠。

 ともあれ――

 

「戦闘はまだ始まってないよ。ルークが今は準備をしてるところ」

「準備って……何も始まってませんよね?」

「いや、始まってるよ。――ルークの脳内で、詠唱っていう準備がね」

 

 キョウちゃんの疑問は最もだ。

 だけどルークは、すでにあらゆる準備を終えようとしている。

 エドモンドもそれを感じ取ってか、少しだけ楽しげに目を細めていた。

 

「……ルークは何をしてるんだ」

 

 ポツリとケイマくんがこぼす。

 それは一見なんの行動も起こさないルークへの失望にも聞こえるが、実態は真逆。

 

「ルークは何の手札を……準備しているんだ」

「全て」

「……全て?」

「そう、ルークは……」

 

 やがて、ルークは目を見開き、そして最後の深呼吸を終えて、叫ぶ。

 

「偽弾!」

 

 とたん,ルークの周囲に100は軽く超える偽弾の群れ。

 それは、そう。

 

 

「戦闘開始から戦闘終了までの流れを()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 即ち、エドモンドは戦闘開始時点から詰んでいる。

 ルーク自身が、そう宣言してみせたのだ。

 だからルーク、準備の成果を見せてやるんだ。




以前からお伝えしておりますとおり、本作が本になります。
タイトルを「風魔術だけでも異世界は楽しいです ~美少女転生からのちょうどいいスローライフ~ 」
として、ドリコム様より出版です。
よろしくお願いいたします!

そしてこちらがその表紙です。

【挿絵表示】

うお……ふっと……
イラストはハル犬先生となります。
フーシャのビジュアルに関してはかなり個人的にも気合い入れて色々頼んだのですが、かなり理想のフーシャにしていただけたと思います。
そして太ももは特に指定していなかったのですが……なんか大きくなってました……
でも……太いしいいですよね! というわけでこんな感じです。
予約受付中です! よろしくお願いいたします!

【Amazon】様
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