風魔術だけでも異世界は楽しいです ~美少女転生からのちょうどいいスローライフ~   作:暁刀魚

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衝撃の真実……?

 便秘が始まってしばらく、中期段階に移行して私はだいぶ暇になった。

 こういう時、何をスルかと言えば市場巡りである。

 大陸各地から商人が集まり、珍しいものが勢揃いしている今の市場は掘り出しものを探すのにうってつけだ。

 だから、色々と買い物をしてしまうのは致し方のないこと。

 どう考えても無駄なものだって、私はついつい買ってしまうのだ……!

 

「よってらっしゃいみてらっしゃい、うちには珍しい魔道具があるよー」

「何があるんですかー?」

「お、美人な姉ちゃんに興味を持ってもらえて光栄だね。みてくれよこの包丁、なんと魔力を通すと刃が三つに増えるんだ」

「お、おお?」

「これで肉や魚を、一度に三等分できるってわけよ」

「おおー! 買った!」

「毎度あり!」

 

 なんて具合に。

 便利かどうかは二の次で、面白そうなら何でも良し。

 包丁の銘は「三枚おろし」というらしい。

 ああ三つに下ろすから……いや三枚に下ろすってそういう意味だったっけ?

 他にも、そもそも私はあんまり料理はしないぞ? とか。

 色々突っ込みどころはあるけれど、こういうのを無駄に買い込むのが楽しいのだ。

 おかげで、かなりの荷物を背負う羽目になっているけれど、そこは浮遊があるから問題なし。

 なんか……だいぶ目立ってますけどね。

 

「――だから、やはりここの表現が」

「わぁ、繊細ですねぇ☆」

 

 とかやっていると、何やら知り合いの声が。

 しかもなんか、だいぶ珍しい組み合わせな気がするな?

 せっかくなので声をかけてみよう。

 

「おーい、クロネ、シェナイトさーん」

「あ、フーシャさ……わぁ」

「どうも……なにそれ」

 

 そして声をかけたら、なんか引かれた。

 クロネが笑顔のまま少し困った様子でシェナイトさんを見ている。

 原因は……まぁ、私の荷物だろう。

 うそ……私の荷物、多すぎ?

 

「いやー、掘り出し物がおおすぎてさぁ」

「すごいですよアレ、フーシャさんがまるっと三人くらいはいる風呂敷です」

「まぁ、こういう状況であれば、フーシャはアレくらい買い込むわよ」

「ですねぇ」

「ひそひそ話がきこえてるぞー! っていうかひそひそ話すほどでもなくない?」

 

 こほんこほん。

 私の掘り出し物はいいんだよ、どうせふたりとも興味ないだろうし。

 いや、解説しろって言われたら早口で解説しますよ、というかむしろ解説したい。

 でも、今回は私も珍しい組み合わせの二人が一緒にいることが気になるので、特別に解説しないでおいて上げるのだ。

 うーん、傲慢。

 

「それで二人はどうしてここに? 珍しい組み合わせだね」

「えー、そうでもないですよ? シェナイトさんとはお知り合いですし」

「彼女が、王都で貴族の指南をしていることは知っているでしょう」

「私が引き合わせたんだったね」

 

 シェナイトさんは、位は低いけど一応貴族だ。

 騎士であることも相まって、護身術の指南にやってくるクロネとは顔を合わす機会も多いのだろう。

 

「んで、そんな上品なお二人がこんなところで何を?」

「ここは古本市よ」

「二人で、色々と本を漁ってるんです」

「へー古本。どんなのがあるのかな」

 

 読書は私も結構好きだ。

 というか、ここにいる三人は結構本が好きなんだな。

 クロネは自分で書いてるし、なんかシェナイトさんも造詣が深い。

 

「見てくださいよこれ、百年前の二つ名冒険者グレンタンの冒険譚なんです! もう随分前に絶版になって、今はなかなか出回らないんですよ!」

「おお、クロネが何時になく前のめりだ。冒険譚、好きなんだね」

「自分で書いてると、愛着が湧いちゃうんです」

「グレンタンの冒険譚は名著よ。昔読んだことがあるけれど、その繊細な筆致は一介の冒険者とは思えないくらいで、脳裏に当時の情景が浮かぶようだわ」

 

 おお、さすがは貴族のシェナイトさん、貴重な古本にもお詳しい。

 

「というか、前々から思ってたけど、シェナイトさんって結構本に詳しいよね」

「ええ、まぁ。以前から読んでいるから」

「いや、それだけじゃなくてさ」

 

 私はクロネからグレンタンの冒険譚を受け取って、ぱらぱらと読んでみる。

 どうやら彼が関わった暴走タイラントについて書かれているみたいで、ひと目みた感想としては……

 

「なんか読みやすいね」

「そうなんですよ、そうなんですよ。グレンタンは本当に文章力が高いんです」

「特筆すべきは、軽妙さと重厚さがバランスよく入り混じっていることね。わかりやすい文章をかける人間はいる、重苦しい文章をかける人間もいる。そのどちらもかける人間もいる。けれど、それらを全く同じ本に同居させて、違和感なく読ませる作家がどれだけいるかしら」

「お、おお……なるほど」

 

 確かにそう言われると、すごい気がしてくる。

 いやあ私が書くと、なんかこう、ゆるくて間延びした文章になっちゃうから、ちょっとうらやましい。

 

「そういえば、フーシャさんの好きな作家って、誰なんですか? あ、クロネ以外でいいですよー?」

「え、私? うーんまぁ、ぬらぬらガードナー先生かなぁ」

「っ!」

 

 クロネはそんな私の言葉に「やっぱりー」と返し、逆にシェナイトさんは驚いている。

 なんだろう、何か気になることでもあったのかな?

 

「そりゃまぁ、よく読んでるしね。特に最新作はそれはもう……すごかった」

「そ、そう。どこがすごかったの?」

「どこがって……こう、真に迫る描写……っていうの? なんというかこう、想像させる感じ」

「ふぅん……他には?」

「シェナイトさん、ぐいぐい行きますねー☆」

 

 お、おおう。

 クロネに完全に同意だ。

 なんかシェナイトさんがずいずいと、歩み寄ってくる。

 そ、そんなにシェナイトさんもぬらガー先生が好きだったのか……!?

 とはいえなぁ、ぬらガー先生の一番好きな部分を口にするのは……流石にちょっと躊躇われる。

 いやほら、クロネもいるし、そもそももともとぬらガー先生ってほら、アレじゃん?

 

「いやぁー、っていうか、アレだよね。ぬらガー先生って……アレじゃん?」

「アレね」

「アレってなんですかー?」

「お気になさらず」

「そうそう。で、さぁ。すっごく描写が具体的なわけですよ。……どこでそんな情報仕入れてるんだろうね?」

「!?!?!?」

 

 いや、だって。

 あまりにもリアリティのある描写で、すごいんだもの。

 本人がエロモン趣味なのかと思えば、あとがきだとエロモンに対するスタンスはかなり現実的というか、「こういうのは創作の中だけにしておくべき」ってスタンスだし。

 一見真面目そうだけど、実はむっつりって感じなのかな。

 

「そ、それは……作者秘伝の何かがあるのではないかしら」

「いやまぁそうなんだけどさぁ。まるで自分はアレしないのに、アレの情報を仕入れる立場にある……よう、な?」

 

 ……ふと、考える。

 なんか、エロモンにエロエロされずに、エロモンの情報を得られる立場の人間。

 いる気がする。

 エロモンが出たらギルドから真っ先に情報を得る立場の人間。

 自分はエロエロされないけど、エロエロに対する見識がありそうな人間。

 一見真面目そうだけど、実はむっつりしてそうな人間。

 

 っていうか――――ぬらぬら()()()()()

 

「……………………いや」

「どうしたんですか、フーシャさん?」

「………………………………………………うーん」

「……」

 

 私は、一人でうーんうーんと考える。

 そしてちらっと、シェナイトさんの方を見た。

 

 なんか、視線を反らした。

 

 ………………………………………………………………いやでも、ねぇ。

 まさか、ねぇ。

 そんな憶測だけで決めつけるのは、如何なものかという話でもある。

 とりあえず――

 

「クロネ、そのグレンタンの冒険譚は買うの?」

「あ、もちろん買いますよー、ずっと欲しかったんです、えへへ」

「じゃあ、買ったら早速読まなきゃだ」

「そうですねー☆ きょうはゆっくり宿でこれを読ませて貰います☆」

「あ、ちょ」

 

 何やらシェナイトさんは言いたげだが、クロネはパタパタと会計に向かっていった。

 「またねー」とそれを見送って、私はシェナイトさんの方をみると――

 

「…………私も、用事があるから失礼するわ」

 

 そう言いながら、すごい勢いで去っていくのだった。

 あ、逃げたー!?




ついにバレました。
いやまだ疑惑だけで確信には至ってないし……

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