風魔術だけでも異世界は楽しいです ~美少女転生からのちょうどいいスローライフ~   作:暁刀魚

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最後の戦い

 長かった便秘もついに大詰め。

 初期段階が終わり、中期段階も終わりが近づいてきていた。

 明らかに、ダンジョンに潜る冒険者よりも魔物の数のほうが少ないのである。

 普段よりは流石に多いが、初期段階を問題なく回せる数の冒険者が集まっている現状に対しては、少ない。

 おかげで冒険者の大半は稼いだお金を屋台等につぎ込むようになり、経済は大いに回っている。

 なんとなーく、全体的に便秘も終わりという雰囲気が漂う中。

 そんなことも言っていられない者たちがいた。

 二つ名持ちである。

 なぜなら彼らは、終盤に登場する大ボスを討伐しなくてはならないのだから。

 といっても、その中のひとりである私は、随分と気楽に考えているわけだけど。

 

「いやー、ついに最後のボスがお目見えかぁ」

「気楽そうにしているけれど、貴方が一番気合を入れる必要があるのではなくて?」

「ははは、別にこれだけの人数の二つ名持ちがいて、苦戦する相手なんて出てくるわけ無いじゃん」

 

 現在私達は、ダンジョンに入るための転移陣の前で集まっていた。

 私の他に声をかけてきたシェナイトさんと、プリンセスにクロエ、それからイルナとエドモンド。

 計六人の大所帯だ。

 イルナのパーティメンバーであるバルクブラザーズは、残念ながら二つ名持ちではないのでお留守番。

 といっても、六人も二つ名持ち級冒険者がいれば、勝てない相手は早々いない。

 シェナイトさんの言う通り、このパーティで一番気合をいれる必要があるのは私だ。

 なにせ、ただ一人の後衛なのだから。

 それでも、いやだからこそ、私は比較的現状を楽観視していた。

 

「だって今回はただの二つ名持ちが集められたわけじゃないんだよ? エドモンドは現行の二つ名持ちにおいては最強格だし、クロネは狼牙流免許皆伝。イルナはカザルマ一のナイスバルクなんだから」

「……私達は?」

「シェナイトさんとプリンセスは、こう……高貴!」

「あ、わ、……ありがとうございます、魔法使いさん!」

「それ、本当に褒めてる?」

 

 ほ、褒めてるよぉ。

 まぁ実際、エドモンド達の冒険者としての実力はかなり高い。

 これは二つ名持ち全体の実力を平均した時、全員が平均以上に立っているということ。

 とんでもない上澄みなのだ。

 私はまあ、その実力を隠しているけれど。

 プリンセスとシェナイトさんに関しても、間違いなく平均レベルの実力はある。

 加えて言うと、この六人の中でプリンセスとシェナイトさんは私との連携がしっかりしているほうだ。

 ほかは、数年一緒に冒険していないから、連携が甘いところがあるけれど。

 プリンセス達にはそれがないわけだから、私としては実力以上に安心感がある。

 

「はっはっは、実際これだけの猛者が集められたのだ、勝てません、不安ですというのは私としても口には出せないな!」

「そうですねー、あたしとイルナがタッグを組むっていうのも久しぶりですけど、その分すっごく高まってますし!」

「あはは、まぁ何だ、出せる力は全部出し尽くすよ」

 

 言いながら、エドモンド達は自分の装備を確認している。

 クロネの武器は素手だけど、手には鉄甲が装備されていて、言うまでもなくそれは魔道具だ。

 私以外の誰もが、真剣に準備をしていた。

 逆に私は武器に関しては全くの用意がないからね、今は単純にやることがない。

 ここは魔術師とそれ以外の違いってところか。

 

「ま、何にしてもこれが終わったあとの打ち上げの方が、私としては関心事かなぁ」

「あんまりお酒は飲んじゃだめですよ? フーシャさん」

「いやいや、私だって大人なんだから節度ある飲み方をしますよ。そもそもこの中だとシェナイトさんと並んで最年長なんだから」

「……プリンセスはともかく、この錚々たるメンバーが年下って、何か違和感があるわね」

 

 私とシェナイトさんだけが、この中で二十歳を超えているのだ。

 なんて話をしながら、私達はぞろぞろと転移陣へと向かう。

 一番だらけているのは私だけど、なんだかんだ他のみんなも思っているのだ。

 このメンツが揃って、負けることはありえない、と。

 だから油断はしていなくとも、必要以上の警戒をせず転移陣にのってボス部屋に向かい――

 

 

 ――そこに鎮座するエルダーデーモンを視て、みんな一斉にエスケープクリスタルを起動した。

 

 

 転移陣に、六名が戻って来る。 

 全員で顔を見合わせて、逃げ遅れた人がいないのを確認。

 一つ息を零すも、なんとなく気まずい空気は継続中。

 そりゃそうでしょう、よりにもよってエルダーデーモンなんだから。

 

「……今の、エルダーデーモンだったっぺか?」

「で、ですです」

「……マジかぁ」

 

 思わず素が出たエドモンドが問いかけて、プリンセスが返答、イルナさんが天を仰いだ。

 ――エルダーデーモン。

 以前話をしたけど、昔に暴れ倒したやばい魔物だ。

 前にリフィルと話をした時は、「全員で当たればまぁ勝てるだろう」って話をしたけど。

 

「…………勝てると思います?」

「やってみなければ、わからないわ」

 

 シェナイトさんとクロネが顔を見合わせている。

 そう、正直に言えば――わからない。

 何せ情報が少なすぎるのだ。

 やばい、やばいとは言われているけれど、具体的にどれだけやばいかっていうのはあまり資料が残っていない。

 前回確認されたエルダーデーモンの出現が、そもそも百年前くらい昔じゃないかって話だ。

 ここはファンタジー異世界だから、いくら活版印刷の技術が発展していても資料が残っているかというと怪しいものがある。

 とはいえ、なんだ。

 私はしばらく眉間をモミモミしてから、大きくため息をツイてから口を開く。

 

「はい、注目!」

 

 その言葉に、全員の意識がこちらへ向く。

 同時に、全員がそれまでの”どうすんだこれ”って雰囲気を一瞬で霧散させた。

 驚くなかれ、ここにいるのは全員が二つ名級のプロなんだから、切り替えも速い。

 

「エルダーデーモンについては、とにかく実際に情報を集めて戦ってみるしか無いとおもいます!」

「は、はい!」

「元気いい返事ありがとね、プリンセス。……そこで、手分けして情報を集めるよ。三時間後にここで集合ね」

 

 誰がいうでもなく私が音頭を取っているけれど、まぁそうならざるを得ないだろう。

 何せこの場で私が一番年上なんだから。

 シェナイトさんの方が年上だったかもしれないけど、あの人は一応プリンセスの従者だからな。

 立場的に、私のほうがまとめ役として向いているのだ。

 あと、やっぱエドモンド達は教え子だからね、こうするのが速い。

 

「まずエドモンドとイルナ」

「はっ!」

「二人はギルドで資料を集める。ギルド職員にも声をかけて、全力で捜索してもらって」

「わかったよ。バルクブラザーズにも声をかけておくからね」

 

 私がやるべきことを指示した時点で、エドモンドとイルナは頷いて走り出す。

 

「プリンセスとシェナイトさんは、王宮に連絡とって何か情報集めてきて」

「あまり期待しないでちょうだいね」

「が、がんばりますっ!」

 

 同じくプリンセス達も、その場を離れて行く。

 どうでもいいけど、先にエドモンド達に指示を出したのはプリンセスに「王宮に連絡を取って」と言えるようにするためだ。

 クロネは知ってるけど、他の二人はプリンセスがガチプリンセスだとは知らないからね。

 

「で、最後にクロネ」

「は、はい」

「――私と一緒に偵察」

「や、やっぱりですかぁ!?」

 

 やっぱりだよ。

 クロネはマジかぁ、みたいな顔でこっちをみているが、こればっかりは誰かがやらないといけないのだ。

 

「私とクロネなら、それぞれ隠密行動が取れるから、エルダーデーモンに気付かれることはないはず」

「そこは断言してくださいよぉ」

「仮に気付かれても、即エスケープクリスタル使えば大丈夫だから、やるだけやってみよう」

「うう、はぁーい」

 

 エルダーデーモンが既に出現しているということは、それがいつダンジョンの外に出てくるかわからないということだ。

 偵察によって、外に出ないようにしつつエルダーデーモンの情報を集めないと。

 一番危険だけど、やるしかないんだよクロネ。

 …………うわぁーん、これ全然ちょうどよくないよぉ!




というわけで終盤です。
果たして便は出るのか!

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