迫真適合者(コネクター)部   作:おんすていじ

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四話 背後からJKの生足が!

 

 

おっすお願いしまーす

 

 

──────

 

 

 

 地獄みたいな特訓をなんとか越えて、俺達は無事休憩タイムに突入することが出来た。

 広い──といってはそこまでではない地下室は、薄ぼんやりと白んだ、偶にチカチカとちらつく蛍光灯一つで部屋の大体が照らされている。分かりやすく言えば、まあ、これなら運動に不自由はしないだろうという明るさは最低限保っている状態である。

 白コンクリートの床にパイナップルガールプリンちゃんのレジャーシートを引かれ、俺達は床に座った。

 

 

「あ、これ、パイナップルガールプリンちゃんですか?よく持ってましたね、神父様。」

「これは備品でして。有名なんです?」

「ええ、品薄になるくらい有名なアニメのキャラクターなんですよ!」

 

 

 パイナップルガールプリンちゃんは女性層に人気らしい。きゅるきゅるな絵柄に明るくて可愛い主人公のプリンちゃんがパイナップルじゃない──つまり悪事を働く悪人を成敗する勧善懲悪系アニメである。最近は確かプリンちゃんのお父さんが実は───

 

 

「益田さん、益田さんはプリンちゃん知ってますか?」

「えっ、ああ。知ってます。」

「ふふ、お揃いですね」

 

 

 思考の海から上がって咄嗟に答えると、ふふと笑われた。嘲笑だろうか?

 いや、今の流れ的にお揃いですねうふふなんだろうが、なんで笑うのかが分からない。お揃いってJK的にはふふって笑うアレなのか。知らなかった。

 

 

「そういえば、コネクターってなんなんですか? 大体の説明はしてもらいましたけど、まだ詳しいことは分からなくて」

 

 

 そう聞くと、神父さんはそうですよね、と微笑んで話を始めた。

 

 

「まず、適合者(コネクター)とは神秘を取り込んだ者のみを呼称する訳では無く、己の中にある───私達ふうに言えば奇跡を使って神秘と戦う者を指します。」

「奇跡?」

「まあ人によっては魔力とも法力とも呼ぶでしょうが、資格あるものは大小それぞれ奇跡の真似事をする力を持っています。」

 

 

 真似事って、それはどう言うものか、と首を傾げると、少し逡巡して神父様は話を続けた。

 

 

「それの資格があるものは、奇跡を呼べるのです。例えば、君にも、私にもその資格はある。そして流れる血潮のように、それは常に体を巡って満たしている。」

「えっ」

「まあ、信じられないのも無理はありませんが──」

「それって、ビームとか撃てるって事ですか!」

 

 

 そう言うと、神父さんは腹を抱えて大爆笑し始めた。大事だろう、ビームとかフォースとか。ロマンだし。

 そのまま笑い続けてやっと笑いが収まると、神父さんは涙を拭っていた。

 

 

「そ、それで、ふふ、いえ失礼。我々は身体の傷を癒したり、まあ色々やっているんですよ。ビームは、君と私には無理でしょうね」

「てことは!?」

「望や未来なら──やろうと思えば──可能でしょう。けれど、それを上手く扱えるかは──」

「えっ」

「まあ、一生を棒に振る覚悟で鍛錬すれば扱いは上達するとは思いますよ」

 

 

 事実は時に小説より残酷である。

 どうやら、その奇跡とやらはあるのも扱うのもほぼ才能のようで。じゃあどうやって強くなるんですかね…と困惑していると、神父さんが応えた

 

「瞬間的なパワーアップ…ですかねぇ」

 

 どうやら口に出ていたらしい。そんな不便なのかよはーつっかえ

 

「まあまあ、武器として明らかな弱点──ああいえ、とにかく、ないよりマシですよ。ああ──もう十分経ちましたね」

「ポッチャマ…」

 

 再開です──と地獄の釜がまた開かれてしまった。

 

 

「はぁっ!」

「弱い!もっと死ぬ気で!」

 

 

 ◇これ以上死ぬ気で…!?

 そう思っていると、神父さんに指鉄砲のポーズで"魔弾"を放った田中さんが腕でガードされ、そのまま接近されてひっくり返された。

 

「くっ、」

「田中さっ」

「───遅い!」

 

 

 胸倉を掴まれ────そのまま、地面に叩きつけられそうになって、放り投げられた。──あのまま地面にぶつけられていたら、多分死んでいた。めちゃくちゃ加減されて、田中さんの遠距離攻撃とかのハンデもあるのに負けている。

 

 

「…力を込めなさい。」

「どういう?」

「強化したい部分に全力で力を込めて、そのままぶっぱなす勢いで殴るなり蹴るなりしないと──本当、死にますよ」

 

 

 そこまで煽るか。───なら、やってやろうじゃねえかこの野郎!

 全力で、右拳にだけ力を込める。ちょっと痛い──握り過ぎて、血が出ていたが、それより、今はただ、殴る事だけ考えろ──!!

 

 

「う、おおぉ!!!」

「っ───!」

 

 

 勢いのまま殴り掛かる。神父さんが半歩、後ろに下がる。これは──回避……いや

 

 グリン、と足に"力を込めて"瞬間的に無理やり急ブレーキをかけると、神父さんが目を開くのが見えた。

 カウンターを空振った隙のある神父さんは、腕で咄嗟に拳を耐えようとした、が──俺に気を取られて隙だらけ過ぎる。

 

 それはもう、後ろから迫るJKの生足に、気付けないくらい──!

 

「らァ!!!!」

 

 

 無防備な───と言うべきだろう神父さんの背を、田中さんは思いっきり蹴り飛ばした。

 方膝を着き、神父さんは驚いたように目をパチ、と瞬いた。俺らですら、まさかあのクソ強神父さんに膝をつかせられるなんて信じられていない。

 

 

「………おお、おお」

 

 

 パチパチと、小さく、しかし確かに拍手が聞こえた。

 

 

「…ええ、やはり、若さはパワーですね」

 

 

 そう神父さんは笑って───優しく微笑んだ。

 

 

──

 

 

 

 

 次の日、俺達は授業やらを終えて真っ先に教会へ向かうと、神父さんから試験内容を伝えられた。

 

 

『試験は鷺崎(さぎざき)山の神秘退治です。低級の神秘の報告があるので、それを見つけて討伐してください。───山の入口で私は待機していますから、ギブアップの際は携帯で連絡を。』

 

 

 ──ということで、俺達は登山をしている。整備された道があるのと、この山がまあまあ低い事は救いだった。

 途中までは大きな道があり、そこを通って中の登山道から山の中に入ると、そこは森というよりは林に見えた。

 ここまで来て、俺達は一言も発していない。神父さんは居らず、一応戦力と数えられるのはデュラハン? と適合(コネクト)した田中さん一人。勿論のことだが、一夜漬けしただけの俺は完全にお荷物である。結局俺には、三分の身体強化が限界だったし、やりすぎると後で"ガタがくる"。

 

 

「益田さん」

「な、何かあったんスか?」

「何が───来ます」

 

 

 勢いよく自身の喉元を掴んで、田中さんは大鎌を喉元から引き摺り出すと東の方へ構えた。───俺にも、ようやく"解った"。言葉じゃない、感覚として。何か、来る──!

 

 すぐさま、"銃の撃鉄を起こす"

 『益田くんにはこれが向いているでしょう』───そんな神父さんの言葉が脳内で再生された。

 

 引き金を引くと激しい音が鳴って、ジーンと震える腕を構えた方向に真っ直ぐ飛び出した銃弾が確かに"何か"の前脚を掠めた。

 大猪。

 山の神とか、そういうアレだろうその獣は、正しく猪突猛進を表すように突き進むが、痛みによって冷静さはゼロ───だろう! 多分。

 

 人間には不可能だろう跳躍のまま、田中さんは木の辺りまで飛んで────

 

 

「やあぁ!!」

 

 

 木を蹴り、その勢いのまま大猪を切り付けた。

 ───浅い

 俺が追撃──はダメだ。俺の腕前じゃあ田中さんに当たる可能性がある───ならどうする?

 俺が走って、全力で撹乱すればいい。

 

 

「俺が引き付けます!」

「っ、分かりました!」

 

 

 普段の何倍も速い速度で走りながら、大猪を引き付ける。──大変心臓に悪いが、ホモビの方が何倍も悪影響だってはっきりわかんだね。

 それに、これは"低級"だ。これくらいやれないと、絶対あの神父さんは認めてくれないだろう。

 

 今だ──!

 

 

「田中さん!!」

「────はい!」

 

 

 俺ばっかりに構ってる大猪♂は鋭い鎌に左脚を切り付けられて、俺をすぐさま視界から消して、離れ離れになった脚を見た。───が、その油断が命取りになる。

 拳銃から発射された弾丸が、いとも容易く、大猪の目をぶち抜いた。

 

 

「────!!」

 

 

 声にならない鳴き声を上げてジタバタ蠢き出した大猪は、すぐさま田中さんの追撃により、頭を落とされた(命を落とした)

 

 ────妙な、気分だ。

 悲しむのも違う。ふざけるのも違う。これは、多分────

 

 

「…………」

 

 

 田中さんが、祈っていた。

 青い瞳を隠すように瞼を閉じて、先程まで闘っていた相手の前で、無防備にロザリオを握り締めて。

 ────それに、影響されたのだろう。

 俺も祈った。

 けれどそれは神に救いを求めるのではなく、ただ、大猪の成仏を祈るだけの、祈りだった。

 

 

「行きましょう。」

 

 

 気付けば、大猪は消えていた。上を見ると、美しい金の粉が空を踊るように舞っていた。

 ───随分少ないそれは、シャボン玉が弾けるみたいに煌めく傍から消えていって───すぐに、全部消えてしまった。

 

 

「───はい」

 

 

 

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