処刑人アリナさんと邪悪の王ギラくん   作:山田プロキオン

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Vシネでキングオージャーが戻ってくることと、ギルます面白いのがトリガーとなり、勢いのまま書き始めました。後悔はない。
ギルます時系列は本編より少し前です。




1章:処刑人と邪悪の王
邪悪の王、イフールに立つ


 宇宙の片隅の惑星、チキュー。

 

宇蟲王ダグデドの侵攻を、チキューの王と民が一丸となって食い止めたあの日から月日は流れていた。

 

 そして今日、チキューにある6つの大陸を治める王様達は、とある人物の招集を聞きつけ、叡智と技術の国『ンコソパ』のペタ城にある研究室に集まっていた。

 

「よく来たなスカポンタヌキ共!今日はとっておきの発明をしてな、お前らに被験してもらうため集めた、光栄に思いな!」

 

王様達を集めた張本人であるンコソパの総長『ヤンマ・ガスト』は、自分の研究椅子にふんぞり返って自慢気に鼻を鳴らす。そして相変わらずの彼の傍若無人っぷりとその高度な発明に他の王達は…。

 

「まさかとは思うけど、そのことだけで私達を集めたというの?」

 

「いやはやヤンマ殿の新発明、(わたくし)としても大変楽しみでございますよ、貴方はどうですかリタ殿?」

 

「黙秘する…」

 

「おおっと…お前さん、これまた随分壮大な発明をしたねぇ〜」

 

 美しさと医療の国『イシャバーナ』の女王『ヒメノ・ラン』は、呆れながら小言を溢し、豊穣の国の王殿様である『カグラギ・ディボウスキ』は彼らしく、わざとらしいというかなんとも仰々しい反応だ。カグラギに話題を振られた氷雪と法を司る国の『ゴッカン』の国王兼最高裁判長を務める『リタ・カニスカ』は、自身の掲げる不動を表すかの如く、表向きは無関心を装っているが、内心では僅かに好奇心を抱いていた。

 

 そして人ならざる者達を束ねる狭間の国『バグナラク』の王にして2000年を生きる伝説、『ジェラミー・ブラシエリ』は年の功故か、落ち着いた様子でヤンマを称えつつ、今回ヤンマが開発した巨大な円筒型の装置を見上げている。

 

「今回のはすげぇぞ!前に俺たちの世界にやって来た頓珍漢で狂人共の集まり…確か『ドンブラザーズ』だっけか?

アイツらのシステムを戦闘データから諸々解析したんだが…

世界を移動するシステムが備わっていた。

 

で、だ。俺は閃いた。ンコソパの技術を使って、異世界を行き来する装置を作ることをなぁ!」

 

 ヤンマが指を鳴らすと、円筒の装置の扉が開き、小さな個室が露わになる。ヤンマを除く5人の王様達はまじまじとそのこじんまりとした房室(ぼうしつ)を観察し始めた。

 

「この椅子に座ってその辺に備え付けてあるボタンを弄れば移動は簡単。今は1人用だが、いずれは人数を増やす予定だ。

っつうわけで!こん中で喜んでやってやるっていうスカポンタヌキ!手ェ挙げろ!」

 

 荒々しくも威厳ある声を上げるヤンマ。途端、その場の一同の視線がとある人物に一点集中していく。その人物もまさか自分へ矛先が向くとは思ってもいなかったのか、己を指差して間抜けな声を溢した。

 

「へ?ぼ、僕?」

 

 仲間の王達からの注目が集まった青年の名は『ギラ・ハスティー』。彼はチキューの工業を司り、守護神『シュゴッド』達の集う最強の国『シュゴッダム』を治める国王である。また、『邪悪の王』を自称し、宇蟲王との戦いでは、不屈の精神で常に前線に立って戦ってきた、最強の国の王に恥じぬ実力と実績を持つ。

 そんな彼がどうしてこんな面倒なことを押し付けられるのか…

それは至極単純で、他の王達にとってギラは扱いやすく、お人好しだからだ。

 今は王であるが、ギラは玉座に着くまでは児童養護園育ちの身であり、子供達との交流が多く、その経歴故に誰に対しても優しく接し、任されたことは引き受けてしまうことが殆どなのだ。加えて王としての歳月も、特殊な例であるジェラミーを除けば一番浅く、厄介事を押し付けられるのは致し方ないのかもしれない。

 

「よぉ〜し、タコメンチ!お前に決定だ!早く装置の中に入れ!」

 

「…フッ、ナ〜ハッハッハッハッ!いいだろう、邪悪の王たるこの俺様が!異界の転移を成し遂げてやろう!」

 

「そういうのいいから、さっさと行って頂戴!」

 

「え、ああちょっと押さないでヒメノ!」

 

 いつもの邪悪の王ムーブもスルーされ、ギラはしょんぼりとしながら装置の中へトボトボ進む。

 

「よぉ〜し、実験スタートだ!」

 

 ギラの入室を確認すると、ヤンマは手元のコンピュータをカタカタと操作し始める。刹那、装置の扉が閉まり、ゴオオオオと機械音が鳴り始めた。

 

「よし、システムオールグリーン!タコメンチ、お前の方も言った通りにスイッチを押せ!」

 

「わかった!」

 

「まずは赤、青、黄と来て次は紫、最後は黒だ!」

 

「赤、青…黄色で次が…ってああっ!間違えて黒押しちゃった!」

 

 ボタンの誤操作にギラが悲鳴を上げる。そしてその誤ちは装置全体に影響を及ぼし、ヤンマのコンピュータからも警告音が鳴り響く。

 

「おいおい、制御が効かねぇぞ!クソ!」

 

「何やってるのよ、それでもンコソパの王なの?」

 

「うっせえ、今必死にやってんだよ!」

 

 ヒメノの声を煩わしいと跳ね除け、無我夢中でコンピュータを捌くヤンマ。しかしその尽力虚しく装置はどこかもわからない世界へ向けて転移しようとし始めている。

 

「や、ヤンマ!皆!」

 

 ギラは最後に王達を呼ぶ声を残して装置共に何処かへと消えてしまった。

 

「き、消えた…」

 

「ギラ殿は、一体何処へ…?」

 

「わからないねぇ…俺もこればっかりは行間を読むことができない…安全を祈ることしか出来ないという訳か」

 

 残された王達は、先程よりも静かになった研究室で各々思いを馳せる。そんな中、ヤンマはギラに危険を晒した為か、将又(はたまた)自分の発明に不備があったことを悔いているのか、何も言葉を発さず、ただ下唇を噛み締めるだけだった。

 

 

▽ ▽ ▽ ▽ ▽

 

「おい、お〜い兄ちゃん!そんな道端で寝っ転がるな!危ねぇだろ!」

 

「はっ⁉︎こ、ここはどこだ⁉︎」

 

 男性の注意を促す声に、眠っていたギラの意識が浮上する。どうやら乗っていた装置は無くなっていて、自分は道端で横になっていたようだ。辺りを見回すに、多くの人で賑わっている様子なので道端で倒れていた自分が交通の妨げになってしまったのではとギラは心の中で反省した。

 一方で男性はギラに対して訝しげな視線を向け。

 

「ここはどこ?兄ちゃん変なこと言うね。ここはイフール。ヘルカシア大陸の大都市さ、このくらいは常識だろ?」

 

「ヘルカシア…イフール…?」

 

 聞き覚えのない単語の数々に、ギラは疑問符を浮かべる。男性の言うヘルカシアという大陸はそもそもチキューには存在しない。イフールという都市もまた(しか)り。となると、これはヤンマの言っていた「異世界転移」なのだろう。

 

「はは〜ん、兄ちゃんさては…」

 

 何か感くぐった男性にギラは固唾を飲んで冷や汗をかく。まさか、自分がこの世界の人間ではないと気付かれたのか。

 

「そのナリからして、冒険者になりたい貴種の出のボンボンだな?世間知らずの坊ちゃんだから大陸や都市の名前に聞き覚えがないんだろ?まぁ、大陸名知らないのは教育どうなってんのかと思うが…。それに道端で倒れてたのも、十分な食糧を準備せず無計画に家を飛び出したからと見た!そして腰に備えたやけに派手な剣は見たところ遺物武器(レリックアルマ)!そんなものを手に入れられるのは一流冒険者か金持ちの貴族のみ!どうだ?」

 

 まるで名探偵のように自分の見解を告げる男性。貴種の出というのは、シュゴッダムの王を代々担っている『ハスティー家』の身分であるギラとしては間違ってはいないのだが。

 しかし、この勘違いはギラにとっては好都合だった。男性の話に合わせれば何か策を見つけ出せるかもしれない。ギラはその一縷(いちる)の望みに賭けることにした。

 

「は、はい!そうなんですよ!いや〜、参ったなぁ。この先どうすれば…」

 

「ふん、ここで会ったのも何かの縁だ!先ずは真っ直ぐ行った先にあるこの街のギルドの『イフール・カウンター』を目指しな!そこで冒険者ライセンスを発行して貰えば手続き完了だ!」

 

「そうなんですか…ありがとうございます!」

 

 男性の説明にギラは感謝を示しお辞儀をする。男性もいいってことよと返し、手を振って去っていった。

 

「冒険者になりたい訳じゃないんだけど…後れりっくあるまってなんなんだろう…?取り敢えずギルドって場所に行って情報を集めよう!」

 

 ギラは両拳を握りしめ、堂々とした様で教えられたイフール・カウンターへ向かうのだった。

 

 

▽ ▽ ▽ ▽ ▽

 

「ここかぁ…大きいなぁ…」

 

 男性に言われた通りに歩いていくと、少しばかり年季の入った、立派な建物が視線に入る。

 

「(イフール・カウンター…ここか…)」

 

 正面に異世界の文字で何か記されているが、ギラにはその文字を読むことができた。自身が宇蟲王由来の存在故に、異界の文字も容易く読めたし、先程異界の男性とコミュニケーションも取れたのだろうと察したギラは、過去を思い返し、ほんの少し苦虫を噛み潰したような顔をした後、首を左右にぶんぶんと振ってからギルドのドアを開けた。

 

「お邪魔します…わぁ…」

 

 ギルドに入室するや否や、その溢れんばかりの冒険者の多さにギラは絶句した。昼頃であるこの時間帯ではクエスト受注をする冒険者がかなり多く、非常に混雑するようだ。

 ギラは押し寄せる冒険者達の波を掻き分けると、ギルドの辺りを見回す。数多の冒険者から情報を集めるのも一つの手だが、今は効率重視だ。なるべく少ない人数から聞き出して一刻も早くチキューへ帰還するための方法を模索しなければならない。

 

「(そうだ、ギルドの受付さんにしよう、その方が早いかも)」

 

 閃いたギラは空いている受付カウンターを探す。すると右の方に運良く空いている1つのカウンターを発見した。

 

「あ、あそこにしてみよう!」

 

 

▽ ▽ ▽ ▽ ▽

 

「ハァ〜、やっとひと段落したわ…」

 

 イフール・カウンターの受付嬢『アリナ・クローバー』はため息を零しながら天を仰ぐ。受付嬢歴3年のアリナは、それなりに仕事を手馴れた様子でこなすのだが、ここ最近、彼女には悩みの種が絶えず苦しんでいた。

 それは残業。冒険者達が攻略に難航しているクエストがあり、その影響もあって受付嬢であるアリナの仕事量も増える一方で、ここ数週間は食事をして寝るだけの日々が続いていた。彼女の自慢の長い黒髪の手入れもする間など勿論なく、現に乱れに乱れまくっていて、翡翠色の瞳から生気は全く感じられない。

 

「(安心安全、公務だから失職はなし。平穏を約束された空間で事務作業をして定時に帰宅する。これこそ私の望んだ受付嬢ライフだったのに…ああ…もう限界…どうしてこうも無能な冒険者しかいないのよ!ここは残業に終止符を打つ為にまたやるしかないか…ん?誰か来る)」

 

「いらっしゃいませ〜、クエストの受付でしょうか?それともライセンスカードの発行でしょうか?」

 

 すかさず営業スマイルを作って接待するアリナ。受付嬢を3年も続けているのもあってか切り替え上手だ。

 

「すみません、ヘルカシア大陸について色々聞いてもいいでしょうか?」

 

 高貴な服に身を包んだ赤メッシュの髪の青年に思いもしないことを尋ねられてアリナは硬直する。そして。

 

「(なんでそんなこと私に聞いてくるのよぉぉぉぉ!!!)」

 

 日々の残業によるストレスと、自分の仕事の専門外のことを尋ねられたことによりボルテージが高まり、笑顔のまま青筋を浮かべるのだった。




どうも最近いろんなアニメや特撮にインスパイアを受けてあれこれ手を出してる山田です。
ちゃんとこのすばの方も進めておりますのでご安心を。

さて、ギラくんは元の世界に戻れるのか、そしてギルますメンバー達とどんな物語を紡ぐのか、ぜひお楽しみに
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