処刑人アリナさんと邪悪の王ギラくん   作:山田プロキオン

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VSスレイ戦
因みに軽い原作改変ありです



怒れる邪悪の王に恐れ慄け!

 ギルドでの一件も終わり、久しぶりに児童養護園にでも行こうとギラは歩みを進めていた。

 

「ギラさ〜ん!」

 

 刹那、後方から己を呼ぶ誰かの声が耳に入ったので、ギラは振り向く。そこには鎧の鈍い音を鳴らして駆け寄ってくるジェイドの姿があった。

 

「ジェイドさん⁉︎どうしたんですか?」

 

「聞いたよ、迷惑客相手にアリナさん達を守ってくれたって…」

 

「いえいえ、僕は当たり前のことをしたまでで…そういうジェイドさんは?」

 

「いやぁ…ギルドにやってきたらアリナさんに速攻で追い払われてしまって…」

 

 額に手を当ててハァと溜息を吐くジェイドに、ギラはハハハと苦笑する。どうやら白銀の剣への勧誘は一筋縄ではいかないみたいだ。

 

「権力で引き入れることは簡単だ…でも無理強いのパーティ程脆いものは無いし、難しいところだな…」

 

「最初から入ってほしいってやるんじゃなくて、徐々に徐々に距離を詰めていくとかどうですか?アリナもまだジェイドさんのことを半分も知らないでしょうし…今のままなら迷惑なストーカーという印象にしかならない気が…」

 

「そうだけど…あ!ならギラさんでもいい!異世界の技術ならどんなボスにでも対抗出来る筈だ!」

 

 ジェイドは拳を握りしめて名案とばかりに声高らかに言う。しかしギラは対照的に神妙な顔つきになり、淡々とした様子で話し始めた。

 

「確かに、僕が入るという方法もあるけど…それは急場凌ぎにしかなりませんよ?僕が元の世界に帰ったら、また同じことの繰り返しです」

 

「そっ…そうか…」

 

 ギラの意見にジェイドはがっくりと肩を落とす。となると実力から鑑みて、やはりアリナ以外に白銀の剣の攻撃役は務まらないのかもしれない。

 パーティの今後をどうするべきか、改めて一から考えていたその時だった。

 

『キャアアアアアアアア!!!!』

 

 突如としてイフールの人々の悲鳴が轟き、さらに大地が強く震動し、逃げ惑う人々が波のようにギラとジェイドの方へと雪崩れ込んできた。

 

「大変だ!魔物が…巨大な魔物が大広場で暴れ出した⁉︎」

 

 一目散に逃げる者の1人が去り際に残した言葉。それを聞いて、至急ギラとジェイドは現場へと急行する。

 そして現場での惨状に2人は絶句した。崩壊する家やベンチ、さらに傷ついてボロボロの冒険者達、そしてその中心には超巨大なゴーレムが佇んでいた。

 そしてゴーレムは今にも冒険者達を殺さんと、その右腕を振り上げた。

 

「危ない⁉︎」

 

 瞬時にジェイドがゴーレムと冒険者の間に割って入り、背中に携えていた盾を取り出してすんでのところで防御した。

 

「ジェイドさん…」

 

「今のうちに逃げろ!ここは俺が引き付ける!」

 

「僕も加勢しますよ、ジェイドさん!」

 

 負傷した冒険者達に退却を促し、代わるようにしてギラとジェイドが戦線に立つ。しかし…。

 

「無理だジェイドさん…。ソイツは、レイドボスなんだ…」

 

 冒険者の1人が声を震わせながら告げる。そう、ギラとジェイドの目の前にいるゴーレムはレイドボスと呼ばれる魔物なのだ。

 レイドボスは巨体故の体力と攻撃力の高さが持ち味で、討伐には最低でも3パーティは必須とされる。

 今回のクレイゴーレムは素材採取のために眠らせて持ち帰ったようだが、突然暴れ始めたという。

 

「となると、誰かが人為的に呼び起こしたということか…」

 

「ご名答!」

 

 ジェイドの見解に、クレイゴーレムの肩の方から声が聞こえた。そこにいたのはいつぞやのクレーマー、スレイ・ゴーストだった。

 

「スレイ⁉︎」

 

「あの時の…」

 

「おおっ⁉︎白銀の剣のリーダーさんに、俺に恥をかかせた王様気取りの冒険者じゃねぇか…

丁度いい、憂さ晴らしだ!俺の超域(シグルス)スキルの『夢見の妨害者(シグルス・ジャミ)』で操ったゴーレムの力、見せてやるよ!やれ!」

 

 スレイの掛け声に応じて、クレイゴーレムは右足を硬化させて振り上げる。迸る拳はジェイドとギラの命を奪わんとする勢いだ。

 

「デスクラッシュだ!いくらジェイドさんでも…逃げて!」

 

 冒険者の声に、ジェイドは退避姿勢に入るが、彼の後ろには逃げ遅れた他の冒険者達。ギルド最強の一角としてここで逃げるなど、ジェイド自身が許さなかった。

 

「スキル発動!『鉄壁の守護者(シグルス・ウォール)』」

 

 構えた盾とスキル発動によって、ジェイドは見事にゴーレムの拳を受け止めた。一流の盾役(タンク)でも即死する攻撃を防いで見せたのだ。

 しかし、長くは持ちそうにはない。持久戦に持ち込まれれば、形勢はゴーレム側に傾く。ならば、討伐以外に道はない。

 

「レイドボスの攻撃を防ぐとは…流石は白銀の統率者。だが代替も回復役(ヒーラー)もなしにいつまで耐えられるかな?

この街の奴らも守りながらはさぞきついだろうな、ヒャハハ!!」

 

 クレイゴーレムの肩からジェイドを見下ろし、スレイは嘲る。しかしスレイには盲点があった。この場において、ジェイド以外にも強き冒険者がいるということを。

 

『オージャフィニッシュ!!!!』

 

 電光石火の如く放たれた赤い光刃。それは一瞬のうちにクレイゴーレムの右足を容赦なく切断した。

 

「な、なんだ?何が起こった⁉︎」

 

 慄くスレイが斬撃の放たれた場所へ視線を移すと、そこにはオージャカリバーの柄を力の限り握りしめるギラの姿があった。

 

「ギラさん…」

 

 ギラの体躯は僅かながらに震えており、静かに怒りを見せているのはジェイドも見て明らかだ。

 

「己の気分一つで命を蹂躙するか…なら!貴様の暴虐!この邪悪の王が打ち砕く!」

 

 ギラは得物であるオージャカリバーの赤い角の引き金に手をかけ、勢いよく起動する。

 

Qua God(クワガタ)!』

 

「王鎧武装!」

 

 剣から電子音とファンファーレが鳴り響き、戦闘へ赴く王を鼓舞する。その後ギラは再度赤の引き金を起動し、頭上にオージャカリバーを掲げた。

 刹那、ギラの体を橙色の結晶が包み込み、出現した鍬形虫のエネルギー体がその結晶を打ち砕き、王様戦隊の紅き勇者が現れる。

 

『YOU ARE THE KING!YOU ARE THE!

 

YOU!ARE!THE KING!』

 

『クワガタオージャー!』

 

 イフールの民を守るべく、クワガタオージャーはその姿を三度(みたび)顕現した。

 

「ちっ、こうなったら…クレイゴーレム、やれ!」

 

 スレイの指示により、クレイゴーレムは体から無数の礫を弾のようにして弾き飛ばす。広範囲の攻撃であったが、クワガタオージャーが斬撃で打ち消し、ジェイドが盾で防御したため、被害は最小限に留まった。

 しかし、ここからがゴーレムの本領発揮だった。なんと弾いた無数の礫が液状のように変化してやがて小さなゴーレムへとなったのだ。

 

「なんだと…」

 

「どの道この街が地獄になるのは確定なんだよ!抗うだけ無駄だ!ヒャハハ!!」

 

 余裕綽々と笑うスレイに呼応するように、クレイゴーレムは再度礫を飛ばす。クワガタオージャーとジェイドの連携でまた街の方への進行は食い止めたが、一つだけ取りこぼしてしまった。

 

「まずい、あの方角は!」

 

 クワガタオージャーは全速力で走り、礫の後を追った。

 

 

 

▽ ▽ ▽ ▽ ▽

 

「(お願いお願いやめてやめてまだローンが30年残ってるんだから!)」

 

 受付嬢、アリナ・クローバーはいつになく焦っていた。上司からスレイの件による報告書を押し付けられ、さらに戦闘による騒がしさで不機嫌全開なところ外に出た様子を伺った際、偶々見てしまった。ゴーレムが自分の家の方角に礫を飛ばしているところを。

 自分のスキルを応用し、アリナは屋根から屋根へと飛び移り自宅へと急いだ。そして目の前の光景に焦燥する。

 案の定、自分の家に空から礫が迫っていた。今からスキルを完全発動するようでは間に合わない。

 

「ダメ〜〜〜!!」

 

 悲観し思わず声を上げるアリナ。しかし礫が家に直撃することはなかった。

 

『キングバモラムーチョ!』

 

 ギリギリのところでクワガタオージャーの持つキングガブリカリバーから放たれた恐竜型エネルギーの斬光が、ものの見事に礫だけを粉砕し、ことなきを得たのだ。

 

「アリナ!良かった、家は無事だったか…」

 

「ギラ…どうして…」

 

「アリナの帰る場所でしょ?壊れちゃったら、きっと辛くて苦しいと思ったから…」

 

「ありがと…」

 

 顔を下げて、アリナはぼそっとクワガタオージャーにお礼を述べた。その表情は確認出来なかったが、きっと嬉しく思っていたのだろう。

 

「さぁて…仕事増やした挙句私の家を壊そうとまでした悪いクレーマーさんにはお仕置きが必要みたいねぇ…」

 

 スキル発動と同時に魔法陣が出現し、アリナの手の中に大鎚が収まる。怒りでメラメラと燃えたぎるその瞳に捉えるは、スレイとクレイゴーレムだ。

 

「ぶっ潰してやる…」

 

「(アリナ…怒るとやっぱり怖い…)」

 

 自分とは非にならないくらい強い怒りを見せるアリナに、クワガタオージャーは少したじろぐのだった。

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