タイトルはキングオのグローディ戦のやつ意識です。
プリンス、ギラに力を貸したげて…
クワガタオージャーが離れた後でも、ジェイドは1人小型ゴーレムの群れとクレイゴーレムによる猛攻を1人で対処していた。
最強パーティの大黒柱として戦い抜いてきた己の技量と咄嗟の判断でなんとか耐え忍んでいるが、それもいよいよ限界に差し掛かっていた。
「(ここまでか…)」
「よく頑張ったがここまでだなクソ
スレイの号令と共に、無数のゴーレムが疲労困憊のジェイドに一斉に飛び掛かる。
万事休す。連撃に次ぐ連撃、
『オージャシューティング!』
刹那、一筋の光が青天を貫き、その後無数の矢の雨となって小型ゴーレム達に降り注ぐ。
一瞬にして小型ゴーレム達の肉体は穿ち抜かれ、ジェイドはまさかと思って光の放たれた方角を振り向く。そこには弓モードのキングズウェポンを右手に携えたクワガタオージャーの姿が。
「ギラさん!」
「すみませんジェイドさん、勝手に離れちゃって…でも!強力な助っ人連れてきました!」
「助っ人…?」
嬉々とした様子で話すクワガタオージャーにジェイドは首を傾げる。今この場に彼の知る腕利きの冒険者、それこそ自身のパーティメンバーであるロウ・ロズブレンダやルルリ・アシュフォードと同等の実力者は1人としていない。それなのにギラが頼りにする者とは…。
頭を捻る中、ジェイドは脳内に稲妻が走るような衝撃を感じた。
いるではないか。表向きは受付嬢を装い、裏では圧倒的攻撃力を武器にボスを単身撃破して行く一匹狼。
自身が今、白銀の剣に最も加えたいとする戦力が。
「ギラさんその助っ人って…!」
ジェイドが詳細を尋ねようとした瞬間、その者は来た。
家屋の屋根を八双飛びで駆け抜け、白と紫の外套をはためかせ、華奢な体躯を陽光に照らされながら華麗に地面へと着地する。
そして右手に持っていた大鎚を肩に担ぎ、深々と被ったフードから垣間見える鋭い眼光がスレイとクレイゴーレムを貫いた。
「な、なんだアイツは…」
得体の知れぬ者からの威圧的、否、それだけでは表せない程の冷たいその翡翠色の目に、一流冒険者のスレイであっても身震いせざるを得なかった。
その一方で、
「おい、あれって処刑人か?」
「確か攻略に難航しているダンジョンに現れるっていう…」
「でも、どうして…」
突然の乱入者に、クワガタオージャーとジェイド以外の冒険者達がどよめき始める。それもそのはず。処刑人としてのアリナは半ば都市伝説のような形で冒険者間で広まっている噂。その噂とされる存在が現実にいるとなれば驚愕しない方が難しいのは至極当然である。
「は…ハハハ、そうかそうか、お前が噂に聞く処刑人か…面白い!テメェを潰せば、ギルドはさぞ悔しがるだろうなぁ…」
相変わらず下衆染みた笑い声を上げるスレイ。そんな彼に恐れなど微塵も抱くこともなく、処刑人もといアリナは自身の肩に担いだ大鎚をものともせず、歩みを進める。その後ろにはクワガタオージャーが構え、援護姿勢に入っていた。
「ま、待てアリ…処刑人!相手はレイドボスだ…1人では無理だ!」
必死でアリナを呼び止めるジェイド。しかしアリナは聞く耳を持たず、ただ目標を見据えるのみ。そんなジェイドの肩を叩いて、クワガタオージャーが代わりに説明をしてくれた。
「大丈夫ですジェイドさん…アリナ、作戦通りいける?」
「…ホントは私1人で何とかなるけど…万が一の備えってだけよ。ギラ…」
淡々とした無機質のような声色。されど言葉の端々から僅かに滲み出ている信頼の意。仮面の下でギラは穏やかに笑い、それと同時に処刑人アリナは地を蹴った。
一瞬にして空中へ身を預け、振り上げられる大鎚。狙いを定めるはクレイゴーレムの胴体。
「馬鹿め、やれクレイゴーレム!」
スレイは隙とばかりにアリナを仕留めるようクレイゴーレムに指南する。主人の命令に従い、ゴーレムは両腕を硬化してアリナ目掛けて勢いよく拳を振るった。
「俺様の狙い通りだ!処刑人だけが貴様の敵ではないぞ!」
クワガタオージャーが声高らかに告げる。そう、全てはクワガタオージャーの予測通り。ギルドの中でも噂の知れ渡る処刑人が前線に出れば、自ずと注意はそちらへと向けられる。
それこそがクワガタオージャーの狙い。スレイの一瞬の気のそれを利用し、一気に叩こうと計略したのだ。
「いくぞプリンス、力を貸してくれ!」
真紅の強き竜の剣、『キングガブリカリバー』に備え付けられたポンプを3回操作し、剣の柄を力の限り握り締める。
その瞬間、強大なエネルギーが刀身へと集中していき、凄まじき斬撃が繰り出された。
『キング!バモラムーチョ!』
軽快なリズムに合わせて放たれる紅き2つの閃光。その光刃はクレイゴーレムの両腕を切り裂き、あまりの威力の高さに爆発まで起こした。
「な、何だと⁉︎」
スレイは先程の威勢が嘘のように思わせるほどの間抜けな声を溢す。スレイだけではない。その場にいた数多の冒険者も開いた口が塞がらずにいた。
「お、俺たちの攻撃が通じないゴーレムの腕を…」
「斬って…ていうか爆発したのか⁉︎」
クワガタオージャーの斬撃は一瞬のうちにゴーレムへと肉薄し、豆腐のようにその腕を容赦なく斬り落とした。レイドボスの腕を斬り落とすという時点で異質なのだが、驚くべきはその斬撃が通過した軌跡だ。
その威力の高さたるや、通過した場所は大気がプラズマ化しており、斬撃を飛ばしたクワガタオージャー自身も反動で後退りしている。
並外れている、冒険者達はそう思わずにはいられなかった。
「なかなか、というか凄いとかそういう次元じゃないわね…ギラだけで良かったんじゃないの?まぁ、それはともかく…」
一冒険者として、クワガタオージャーの剣撃もとい異世界の武器に興味関心を寄せるアリナだったが、すぐにスレイへと視線を移し、
「私の楽園、オアシスを、天国を破壊しようとした…その罪は未来永劫許されることはない…
土塊と一緒に…
散れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
荒れ狂うままに大鎚を振り下ろし、風を切って炸裂したその強撃は、一発だけでクレイゴーレムの肉体を木っ端微塵、無慈悲に粉砕してしまった。
「な、なんなんだコイツら…あり得ねぇ、こんなの…」
スレイは腰抜かし、その場から動くことは出来ない。彼の心情を支配しているのは恐怖一色。自身の支配するレイドボスのクレイゴーレムをたった2人に圧倒された、手も足も出ずに。
そしてその1人の処刑人は尚も自身の元へと近づいてくる。ユラユラとゆっくりと歩み寄ってくるその姿に、より一層恐怖心は刺激される。
「くっ、来るな!」
「他人の…
ものは…
壊してはいけませんと…
教わらなかったのか…」
スレイの目の前まで来ると、アリナは足を止める。そして…
「この
クソクレーマー野郎がァァァァ!!!!」
「ギャァァァァァァァァァァァァ!!!!」
怒れる般若、鬼のような形相でスレイ目掛けて大鎚を振り下ろした。
が、流石にアリナはその辺の分別は弁えていた。大鎚はスレイの顔面スレスレの真横の石崖を粉砕した。
しかしながらそれでもクレーターを作る程の破壊力。
今日一日で一生涯消えないであろう恐怖を擦り込まれたスレイは、失禁したまま意識を手放したのだった。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
その後、クレイゴーレムの一件による復旧作業はその日の夕方に差し掛かる頃には各地で始まっていた。今回は自宅を崩壊させられなかったことにアリナは安堵したが、それでもスレイのことで始末書を上から押しつけられたため、結局また残業地獄だと愚痴を溢していた。
「それにしてもアリナよく我慢したね、あそこで叩きつけていたらあのクレーマーと同じになっちゃってたよ…」
「本当はしてやりたかったわよ。ホ・ン・ト・は・ね!」
未だ怒りはおさまっていないようで、アリナは腕組みしながらリスのように頬を膨らませる。そんな様子にギラとジェイドは苦笑いをするしかなかった。
「それじゃ、僕は復旧工事を手伝ってくるよ」
「あら、そう?戦ったばっかなのによくバテないわねアンタ」
「だって僕不死身だもん」
「それ本当便利ね…」
ギラの底なしの体力に今度はアリナが呆れたように言う。その後、アリナはジェイドへ視線を向け、アンタも行けと眼力で伝えた。
「復旧作業も頑張るぞ!三十路手前だけどまだまだやってやるぞ!」
「ん?今ちょっと変なこと言わなかった?三十路手前って…ギラって見た感じ20行くか行かないかじゃないの?」
「え?僕は2
ギラの発言にジェイドとアリナは氷のように固まった。ギラは童顔なので同年代、下手すれば歳下と思っていた両者には衝撃的な事実だったのだ。
((ギラ(さん)って私(俺)達より歳上だったんだ…))
ギラくんの年齢ですが、恐らくアリナさんやジェイドさんより上だと思います。リタが27なので恐らくそれに近しいのかと個人的に思います
キングオ組、皆年齢あやふやすぎなんですよね…