処刑人アリナさんと邪悪の王ギラくん   作:山田プロキオン

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筆が乗りましたので2話目
この前のゴジュウジャー凄かったですよね!
個人的にはブンレッドがクワガタオージャーに変身したのが一番のサプライズでした!
あの硬化するマントの戦闘シーン取り入れましょうかね?


王鎧武装!

「あ…あの、大丈夫ですか?」

 

 体をワナワナと震わせる受付嬢アリナにギラは恐る恐る尋ねる。ギラの言葉で我に返ったのか、アリナはツカツカと靴音を響かせて、ギルド内の本棚から幾つか資料を物色して手に取ると、再び自分のカウンターへと戻る。そしてギラの目の前にダンッと音を立てて、叩きつけるように資料を置いた。

 

「申し訳ございませんがこちらで確認なさってください。受付嬢はあくまで冒険者に関するサポートが基本ですので地理に関してはご自分で当たってください。いいですか?」

 

 流暢に言葉を紡いで丁寧に説明するアリナ。しかしギラにはそんなアリナが恐ろしく映った。笑顔の後ろに溢れ出す怒りのオーラ、ひくつく口元に額に浮かぶ青筋、どこからどう見てもご立腹なのは明らかである。

 

「わ・か・り・ま・し・た・か?」

 

「は、はい…」

 

 沈黙してしまったギラに圧をかけながら再度確認するアリナ。ギラは、ドスの効いたアリナの声に怯えながら首を縦に振るしかなかった。

 

「じゃ、じゃあ僕はこれで!!」

 

 そそくさとアリナの元を去り、ギルドの隅っこの席でギラは黙々と資料を読み漁り始める。そんなギラを無関心に見送ると、アリナは営業スマイルを整え、再度声を張り上げた。

 

「次の方!どうぞ!」

 

 

 

 

▽ ▽ ▽ ▽ ▽

 

「ああ〜、残業辛い〜」

 

 日も沈み、人気のなくなったギルドの事務室にて。1人居残ったアリナは机の上にある大量の始末書を前に、脱力した様子で机でうつ伏せの姿勢を取っている。やってもやっても終わることのない始末書の山に、アリナの精神は限界寸前であった。

 

「全く〜、ダンジョンのボスくらいちゃちゃっと片づけなさいよ…」

 

 誰もいないことをいいことに、溜め込んだ愚痴を大声で吐き出すアリナ。ギルド中の壁がその悲痛な叫びを反射して、室内一帯に虚しく木霊させた。

 その後もアリナの不満は収まらず、ブツブツと文句をこぼし続ける。

 

「そもそもあの程度なら一級冒険者が率先して倒しにいくのが順当でしょ…白銀の剣は何やってるのよムカつく…、ああ〜ムカつくムカつくムカつく!」

 

 アリナは髪を掻きむしりながら再度叫び散らかすと、机をバンバンと叩いて、瞳から一筋の涙をほろりと流す。その涙には苦痛、絶望、怒り等およそ17歳の少女が抱えるには些か大きすぎるくらいの負の感情が集っていた。

 

「全部あのボスのせいだ…最近攻略が滞っている諸悪の根源!私の楽しい受付嬢ライフを崩壊させた邪神!もう我慢ならない!」

 

 アリナは机にあった目覚まし用兼体力回復用のポーションの入った小瓶を手にとって一気に飲み干し、そして。

 

「無能な冒険者共め!もう私がやる!絶対定時で帰ってやる!」

 

 椅子から立ち上がって外套を羽織り、イフール・カウンターを後にする。その瞳は決意が漲っており、残業を絶対避けるという強い意志が宿っていた。

 

 

 

▽ ▽ ▽ ▽ ▽

 

「お腹…空いた…どこまで歩いたんだろう…」

 

 夜も更けてくる時間帯、それでも未だ今日の寝床を確保することができず、ギラは当てもなくフラフラと彷徨うばかり。後先考えずにギルドが閉まるまで資料を夢中で読んでいたため、夜のことを全く考えていなかった。然も泣きっ面に蜂か、この世界の通貨を持っていないため、食料を購入することが出来ず、空腹にも襲われる。宇蟲王ダグデドによって生み出された己の肉体が不死身なこともあって死ぬことはないが、それでも何も食べないことが苦しいことに変わりはない。

 

「何か…何か食べる物…はっ!!」

 

 自身の網膜に映し出された光景にギラは息を飲んだ。自身の眼前には派手な色をしたキノコと果実。見た目からしてザ・毒と言わんばかりのもので、普通なら誰も食べることはない、否、視界に入れることすら躊躇うほどだ。しかし、極限まで空腹を拗らせた者の場合、話が変わってくる。

 

「食べ物…食べ物…」

 

 ごくりと唾を飲み込む。飢餓状態に近いギラにとって目の前の糧食は極上の一品に見える程。我慢できず次第に手を伸ばしていく。そろり、そろりと、もうすぐで手が触れる、その時だった。

 

「はっ⁉︎僕は何を!見知らぬ食材には手を出しちゃダメだってカグラギが言ってたのに…」

 

 ギリギリで理性を取り戻し、食す寸前で我に返った。危なかった、そうとばかりにギラは胸を撫で下ろす。 

 しかし食糧問題はこれで振り出しだ。どうしたものか。

 

「草でも食べようかな…でもここら辺小石ばっかりだ…」

 

『グオオオオオ!!!』

 

「…⁉︎なんだ、今のは」

 

 突如として大きな咆哮が轟き、イフールの街を揺らすような感覚がギラに迫る。場所からして遠くはない。咆哮というくらいだからその正体は獣か怪物か。

 

「兎に角行ってみよう!」

 

 咆哮の主が気になったギラは、空腹で限界寸前の己の体に鞭打って駆け出したのだった。

 

 

 

▽ ▽ ▽ ▽ ▽

 

 薄暗いとあるダンジョンの最下層にて。1つの冒険者パーティがそのボスに苦戦していた。そのダンジョンの主の名は『オーガサイクロプス』。

その名の通り鬼のような角を携え、一つ目の巨躯を持つ怪物である。

 鬼らしく棍棒を片手に、8尺に迫る体長は奴を初めて見る者でさえ圧倒され、その肉体から繰り出される想像もつかない程の連撃は、数々の冒険者達を再起不能とまではいかないながらも、大きな傷を残してきた。

 今現在、攻撃役(アタッカー)の冒険者が重症を負っており、回復役(ヒーラー)はその冒険者につきっきり。

盾役(タンク)が攻撃を引き受けて、後衛役(バックアタッカー)が自身の魔法で逆転の好機を窺うという苦しい状況が続いていた。

 

「このダンジョン、思った以上にエーテルが溢れてたんだ…」

 

「え…じゃああの魔物はそれを大量に取り込んで…」

 

 パーティメンバー達が一気に青ざめる。

ダンジョンに満ちる物質、『エーテル』は、魔物達の力を向上させる作用を持ち、より多く取り込んだ魔物程強くなる。通常のダンジョンと比べてエーテルが濃いこのダンジョンは、オーガサイクロプスの力を高めるには打ってつけ。それ故攻略に難航していたというのが事の真相であった。

 

「仕方ない、一旦体制を立て直そう!」

 

 一時退却の準備に移るパーティ。それと同じくして、紫と白に彩られた外套に身を包んだ短身の冒険者がふらりと現れ、オーガサイクロプスへ向かっていく。

 

「あ、あれ⁉︎あの人…」

 

「ボスの方へ向かっていくよ、まさかソロ討伐するつもりなの⁉︎」

 

「無茶だ!死ににいくようなものだ!引き返せ!」

 

 パーティの面々が一匹狼を呼び止める。されど彼女は、その冒険者は聞く耳持たず、寧ろ。

 

「…五月蝿い」

 

 外部からの声を煩わしく感じながらポツリと愚痴を溢すほど。

 

「スキル発動、『巨神の破鎚(ディア・ブレイク)』」

 

刹那、彼女の足下に巨大な魔法陣が顕現したかと思えば、そこから力が集まっていき、大鎚がその手の中に収まる。

 

「お前のせいで…残業が!終わらないんだよぉぉぉ!!」

 

 地を蹴って瞬く間に肉薄。その小さな身体からは想像も出来ない力で大鎚を振り下ろし、オーガサイクロプスの左手を穿つ。

 その速さ、その威力。その場にいたパーティ全員息を飲んだ。

 

『グオオオオオ!!!』

 

 悲鳴を上げながら、オーガサイクロプスは右手の棍棒を振るう。対して大鎚の冒険者は、外套をはためかせながら難なくひらりと躱した。しかし、それがいけなかった。彼女が回避した先には、深手を負って動けないメンバーに寄り添うパーティが。

 

「⁉︎しまっ…」

 

 時既に遅し。数多の棘に包まれた棍棒は、パーティの眼前へと迫っている。

 

「とりゃああああああ!!」

 

 寸前。1人の若者が棍棒とパーティの間に割って入り、腰に携えた奇抜な剣を取り出して棍棒を受け止め、弾いた。若者はパーティの方を振り向くと、必死さを滲ませた声で退却を促す。

 

「早く!今のうちに逃げてください!」

 

「あ、ありがとうございます。ですが貴方は…」

 

「僕なら大丈夫!早く安全な場所に!」

 

 若者の指示の下、パーティは撤退する。若者は何故か戦場慣れしているようで、その的確な指南にはパーティも舌を巻いたとか。

 そしてダンジョンに残るは若者、オーガサイクロプス、そして大鎚の少女だけとなった。

 

「…あんた何で残ってるの?冒険者じゃないんでしょ?」

 

「王として、民を守るのが僕の務めだから。逃げる訳にはいかないんだ。君も危なかったらすぐに逃げなよ」

 

「誰が…というかあんた何者なの?」

 

 少女が若者に対して訝しげな視線を送りながら問う。この若者、色々と気掛かりなのだ。戦闘慣れしたような立ち振る舞いに、己を王を自称する。かといってこのような冒険者の話は聞かないので、一般人と見るのが妥当であろう。

 若者は少女の質問に口角を上げたかと思えば、大きく高笑いを始めた。

 

「ナ〜ッハッハッハッハ〜!よくぞ聞いてくれた!」

 

「えっ、何何⁉︎怖っ…」

 

 突如として笑い始めた若者に少女は戦慄する。対する若者は待っていましたとばかりに目を見開き少女とオーガサイクロプスを交互に見ながら名乗りをあげる。

 

「我が名は!邪悪の王、ギラ!

恐怖しろ、そしておののけ!一切の情け容赦なく、一木一草(ことごと)く、悪を打ち砕くさらなる邪悪の権化!

 

俺様が!世界を支配する!」

 

 名乗り終え、左手に持つ自身の愛剣『オージャカリバー』を構えるギラ。そしてオージャカリバーに備わる5色の引き金の中から、赤き角を選択し、起動した。

 

Qua God(クワガタ)!』

 

 その後、流れるように青い蜻蛉の尾、黄色の鎌、紫の蝶の羽根、黒い蜂の尻の引き金を起動していき、オージャカリバーから流れるファンファーレが豪華に響き渡る。それはさながら王の凱旋と戦闘を祝福するかのよう。

 

 最後に再び紅き角に手をかけるギラ。そして。

 

「『王鎧武装』!!」

 

 赤の引き金を起動したと同時にギラの肉体を橙の結晶が包み込み、何処からともなく現れた鍬形虫のエネルギー体が結晶目掛けて突進を仕掛け、砕く。

 結晶を破り現れたのは、深紅の鎧に身を包んだ戦闘態勢の王の姿。

 

『YOU ARE THE KING!YOU ARE THE!

 

YOU!ARE!THE KING!』

 

『クワガタオージャー!』

 

 シュゴッダム国王、ギラ・ハスティー。異界の地イフールにて、初めて王鎧武装を遂げた瞬間だった。

 

「(何何、何なのよその遺物(レリック)!姿を変えるとか聞いてないわよ〜!)」

 

 一方、冒険者の少女ーー正体アリナは情報量の洪水に頭を抱えるのだった。

 

 

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