処刑人アリナさんと邪悪の王ギラくん   作:山田プロキオン

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筆が乗ったので早めの投稿です

巡教授の戦隊考古学を受講したいなぁ…なんて最近思ったり…

今回はギラくんに対して独自解釈がありますのでご注意ください


自分で出すべき答え

「ふぁ〜…朝か…」

 

 東から昇る陽光が窓から差し込み、ギラに朝の到来を伝える。まだ完全覚醒していないためか、しょぼしょぼとする目を擦りながら、ギラは欠伸をした。

 

「それにしても普段利用してる宿より豪華だなぁ…シュゴッダムの、までは言い過ぎか…」

 

 ギラは現在、白銀の剣専用の宿泊所に滞在している。今回の白亜の塔の攻略において白銀の剣にアリナと共に協力するためだ。この宿泊所はイフールの一等地に建てられていて、内装も豪華。さらに設備も充実しており、流石はギルド最強の冒険者達の宿泊施設なだけはある。

 

「時間的にはまだ余裕あるけど、なるべく早く済まそう」

 

 未だ重い身体を何とか起こすと、ギラは身支度を始める。洗面所へ足を運んで顔を洗ってタオルで水を拭ったその後、櫛で髪を解かして寝癖を直し、いつものシュゴッダムの王服に着替え、外套を携えた。

 

「準備完了。そうだ、アリナ起こしに行こうかな」

 

 装備一式を纏めると、ギラはアリナの部屋へと向かった。

 

 

 

▽ ▽ ▽ ▽ ▽

 

「アリナ、起きてる?そろそろ準備した方がいいよ?」

 

 アリナの部屋へ到着したギラは、ドアを3回ノックしてから尋ねる。返事は返ってこない。まだ寝ているのかと思い、ギラはもう一度ノックをしようとしたが、何やら大きな溜息が扉越しに聞こえてきた。

 

「わかったわギラ…もう少ししたら準備しとくから」

 

 気怠そうにアリナが返答した。声色からして、憂いや疲れといった感情が読み取れるが、いつもの残業に対するものや、最近の正体バレの時のものとはまた違ったものかのようにギラは感じた。

 

「ねぇアリナ、どうかした?」

 

「別に…いつも通りよ」

 

「本当?何か嫌なこととか、辛いこととかない?」

 

 鋭いギラの追及に、アリナはまたしても溜息を溢す。しかしここで引くわけにもいかないと、ギラも固唾を飲んで扉の前で返答を待った。

 根負けしたのか、しばらくの沈黙の後にアリナは口火を切った。

 

「ちょっと昔の夢を思い出しただけよ…」

 

「夢?」

 

「ええ…私がスキルに目覚めた時の。あれは2年前の百年祭…。世の人間達は早々に仕事を終えて祭りを楽しんでるというのにその日も私は残業で…。疲れ果てて仕事を切り上げて外を出たら祭りは終わっていてあたりには酔い潰れて寝る冒険者ばかり…」

 

「あ…うん…」

 

「コイツらのせいで残業地獄だってのにのうのうと祭りを楽しんで…何で私だけって怒りが湧いて、そんな奴らをぶっ潰してやりたいって思ったのよ。そしたら今のスキルに目覚めて…ハァ…」

 

 アリナはもう何度目かの溜息をついて、その先の言葉を飲み込んだ。そこから後は察しろということなのだろう。ギラも自分のいた世界のリタのこともあってか、ほんの少しだけアリナの愚痴が分かる気がした。

 

「ホント、何で神様は私にこんなスキルを与えたのかしら…出来れば受付嬢の仕事に役立つスキルが良かった…このスキルさえなければ、白銀と関わる必要もなかったのに…」

 

「…辛かったね」

 

「同情なんていいから、余計に辛くなるだけだし」

 

「同情なんかじゃないよ。アリナみたいに苦しんでいる知り合いがいたのは間近で見て来たし、現に僕もそうだし…」

 

「へ…?」

 

 

 ギラからの返答に、アリナは思わず間抜けな声を溢した。アリナの反応が意外だったのか、ギラはクスッと笑うと、自分のことをアリナに重ねながら話し始めた。

 

「僕は宇蟲王によって不死身の存在として生み出された。これは前に話したよね?」

 

「うん知ってる」

 

「その真実を知った後に、僕は何度も何度も悩んだ。不死身の力なんて欲しくなかったのにって。そしてチキューに牙を向いたダグデドの分身でもある僕が皆の王を名乗っていいのか、第二の宇蟲王になり得る僕が皆を守る資格があるのか、誰かにその答えを教えて欲しくて仕方なかった時があったんだ」

 

 ギラの告白に、アリナは絶句する。ギラでも悩むことがあるのか、非の打ち所がなく、絶大な強さを持つこの男でさえも思い悩み苦しむのかと思わずにはいられなかった。そして、自分と同じく望まぬ力を得たギラはどのような結論に至ったのかを知りたいという衝動に駆られ、アリナは続きを話すよう尋ねた。

 

「それで、ギラはどういう答えを見つけたの?」

 

「…まだ模索中、かな?」

 

「は⁉︎模索中⁉︎」

 

 予想外の回答に、思わず呆れてしまうアリナ。しかしその回答の真意を伝えるべく、ギラは話を続ける。

 

「僕のことって、まだ自分自身でもわからないことばかりだから。ゆっくり時間をかけて理解していこうかなって思ってるんだ。だからまだ正確な答えは出せてない。でも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後は自分なりの答えを見つけ出す、見つけ出してみせる。自分の中の力で出来ること、それは他の誰でもない、自分でしか決められないから…」

 

 ギラの想いをアリナは静かに聞いていた。そして何を感じたのか、自身の右手に視線を移すと、物思いに耽るかのようにポソっと呟いた。

 

「自分だけの答え、か…」

 

「アリナ?」

 

「ううん、何か少しだけスッキリしたわ。ありがとね」

 

 アリナはギラに御礼を述べた。ドア越しであるためアリナの顔をギラは見れていなかったのだが、その顔は先程よりも幾分か晴れやかなものとなっていた。

 丁度その時…。

 

「アリナさ〜ん、迎えに来たよ〜」

 

 外からジェイドが声を上げていた。どうやらアリナのモーニングコールに来たようだが、その行動が返ってアリナの気分を再びどん底へと突き落としてしまった。

 

「くそ白銀野郎…死ね」

 

「声かけただけだよ⁉︎酷くない⁉︎」

 

「ギラ、私今日体調悪いから休むって伝えて」

 

「ええっ⁉︎ちょっとアリナ⁉︎」

 

 その後、ジェイドとギラの説得により何とかアリナを引き摺り出すことに成功したそうな。

 

 




ギラのアリナに対する返答シーンは、ウルトラマントリガーのop歌詞とアスカ・シンとマドカ・ダイゴの掛け合いを参考にしております。

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