処刑人アリナさんと邪悪の王ギラくん   作:山田プロキオン

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今回から本格的に原作と乖離していきます。

課題ひと段落してなんとか再開できました。


処刑人と覚醒と宇宙の力と厄災の兆し

「出し惜しみは無しだ!俺様も、全力でいかせて貰うぞ!!」

 

 完全に体力の回復したギラは、オージャクラウンを取り出して、王冠の赤い宝珠に触れる。

 

『KING!KING!KING!KING!』

 

 起動と同時にオージャクラウンに秘められた宇宙の力が解き放たれる。 

 続け様にギラは、王冠を自身の頭の上に載せた。

 

「王鎧武装!始祖、光来!」

 

 王冠を被ったと同時に、ギラを橙色の結晶のようなエネルギーが包み込み、その中で、黄金の鎧が装着されていく。

 

『You are!I am!We are the!We are the!

KING!KING!OHGER!』

 

 ギラは金色の戦士、キングクワガタオージャーへ変身を遂げ、アリナもといジェイドの隣に並び立った。

 

「ほう、まだ力を持っていたというのか…しかし、それでも魔神である私には叶うことはない。小娘も私を生み出した『奴ら』に匹敵する力はあるが…」

 

「奴ら?遺物(レリック)を生み出し、アンタらを生み出した先人達のこと?」

 

 アリナの問いに、シルハはニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべながら口を開いた。

 

「左様。今日は機嫌がいい…どうせ私によって死ぬ運命の貴様らに教えておいてやろう…

 

 

 

 

 

 

奴らは、あの愚かな人間どもは…我ら魔神達の手によって一人残らず食い殺されたのだからな」

 

 白亜の塔の四層は、一瞬にして空気が凍り、張り詰めた。シルハの口から語られた衝撃の真実。かつて神域(ディア)スキルを発現させた先人達でさえも、魔神に手も足も出なかったということに驚きを隠さなかった。

 

「私は最初期に生み出された魔神でな。その時は運良くこの地に滞在していた赤き戦士とその従者達によって封印出来たが、馬鹿な人間どもは封印出来ることに慢心し、第二第三の魔神を生み出した」

 

「そうか…そして先人達は自らを破滅へ追いやってしまったのか…」

 

「だな、リーダー…」

 

「ていうか第二第三って⁉︎ソイツら馬鹿なの⁉︎なんで封印するしか手段のない奴を量産する訳⁉︎」

 

「あ、アリナ…」

 

「落ち着いてくださいなのです…」

 

 冷静に思考するジェイドとロウ、対照的に猛獣のように喚き散らすアリナを宥めるキングクワガタオージャーとルルリ。先程までの張り詰めた空気が嘘のようにほぐれてしまった。しかし、シルハが槍の切先を一同へと向けると同時に、再び緊迫した間が到来する。

 

「貴様らでは、到底私には及ばぬ。あの赤い戦士達のように特殊な技量があれば話は別であるが、生憎一度受けた技は通用しないのでな…」

 

 シルハの言葉に嘘偽りはない。此奴の言う通り、現段階のアリナ達ではシルハに引導を渡す程の攻撃力はない。対して魔神の攻撃は一撃でも喰らえばほぼ即死。ジェイドの盾という防御手段もあるにはあるが、その場凌ぎにしかならないことは明らか。回復手段も、ルルリが魔杖(ロッド)を失い、ギラが持参した携帯回復薬も尽きた以上当てがない。

 対する魔神はアリナでも一つしか持っていない神域(ディア)スキルを複数扱い、疲労することなく永遠に戦い続ける。

 勝ち目はない、そう白銀の面々は思い込んだ。白銀の面々だけ(・・)は。

 

「なら、俺様が貴様を超越するだけの力を出すまで!!」

 

「ギラさん、そんなこと…」

 

「出来るのですか⁉︎」

 

「ああ。宇宙の力、解放する!!」

 

 キングクワガタオージャーは、右手に携えるオージャクラウンランスの王冠を四回転し、秘宝の中に眠る全てのシュゴッドの力を解放する。

 

『レジェンドシュゴッド!』

 

『ガーディアンウェポンズ!』

 

『キングコーカサスカブト!』

 

 刹那、紅蓮の王槍に金色のシュゴッド達のエネルギーが一つ、また一つと集まっていく。

 ゴッドカブト、ゴッドスコーピオン、ゴッドホッパー、ゴッドタランチュラ、ガーディアンローリング、ガーディアンスネイル、ガーディアンピード、ガーディアンシケイダー、ガーディアンヘラクレス、そしてキングコーカサスカブトの力が充填され、残るはキングオージャーを組織するシュゴッド達のみとなった。

 

「ほう、これは…そうかそうか、だがそれ程の技を発動させるには時間を要すると見た。唱え、『 巨神の裁剣(ディア・ジャッジ)』!!」

 

 シルハが左手を掲げると同時に、諸方から千にも及ぶ魔法陣が展開され、キングクワガタオージャーを鳥籠のように囲う。さらに魔法陣からもう呆れる程目にした銀の剣が、黄金の王へ狙いを定めて顔を出していた。

 

「ま、まずい…」

 

 こんなところでキングクワガタオージャーが再び倒れては、千載一遇の好機が水泡へ帰してしまう。白銀の盾役(タンク)として、この激戦の切札となるキングクワガタオージャーを守らねばと、咄嗟に皆の前へと乗り出た。しかし、ジェイドよりも一足早く歩み出した人物が一人。

 

「あ、アリナさん…」

 

「手負の状態かつ盾もボロボロなんだからそんなんで耐えられる訳ないでしょ、バカ。邪魔だからロウやルルリと一緒に後ろにいて。ギラは私が守るから」

 

「俺は盾役(タンク)だ!最後まで、自分の使命を全うさせて「それで死んだらどうすんのよ!!そんなこと、ギラも私も望んでないんだから!!」…ッ」

 

 ジェイドは続く言葉をアリナに遮られ、怒鳴り散らされる。いつもジェイド相手には基本淡々と返すアリナが、ここまで感情を剥き出しにしてくるとは。ジェイド本人も予想しておらず、只押し黙るしかなかった。

 

「…ジェイド、アンタが盾役(タンク)としての信念があるんならね、私にだって、譲れないものがあるの。だから…」

 

 その会話を最後に、アリナは単身シルハへ向かい、駆け出した。去り際にジェイドに話すアリナの口調は酷く優しく、そして微かに笑っていた。

 

▽ ▽ ▽ ▽ ▽

 

「よもや、自分から飛び込んでくるとはな。その度胸だけは褒めてやろう。だが、私の千の剣はどこまでも獲物を追い続ける!!貴様に逃げ場などない!!」

 

 尊大な様子を崩すことのないシルハ。筋骨の逞しい右腕を振り上げることを合図に、無数の短剣はアリナへと迫った。

 

「「「アリナ(さん)!!!!」」」

 

 ジェイド、ロウ、ルルリは、降り注ぐ剣の雨に一人突撃するアリナの名を叫ぶ。受付嬢服のアリナでは、一撃で即死なのは確実。シルハと同じ神域(ディア)の力を持ってしても対処は厳しい。

 一方で、アリナは。

 

「(シュラウドが死んだあの日、痛みを知って(冒険者)を諦め、堅実に生きると決めた。後悔は無いし覆したいとも思わない。それが正しいか間違いかなんてわからない。けれど、確かなことは…

 

 

 

 

 

シュラウドの時に知った痛みは、二度と味わいたく無い)」

 

 アリナは大鎚の柄を両手で握り締め、迫り来る剣達をなんとか躱していく。

 

「それが私の求める平穏…絶対に譲れない。安全の受付嬢でぬくぬく仕事して、定時で帰って、ロウも、ルルリも、ジェイドも!!ギラも!!皆帰って来る!!」

 

「死ねぇ!小娘!!」

 

「私の平穏を邪魔する奴は、誰であろうと!力の限りぶっ潰す!!」

 

 地面に両足を付け、勢いのままにアリナは大鎚を振るい瞬時に発動した凄まじい風圧が、発生した。

 

「な、なん…だと…」

 

 シルハは、風圧を巻き起こした当人を見て初めて動揺した様子を見せていた。足下には砕け散った銀剣の数々。アリナは風圧だけでシルハの技を弾き返したのだ。

 

「あの光は…」

 

 アリナの大鎚を見つめるジェイドが口を開く。その指摘通り、アリナの大鎚は、かつてない程に眩い光を放っていた。

 

 

▽ ▽ ▽ ▽ ▽

「ふ、ハハハ。大層な力ではないか小娘!その力、この魔神が奪うに相応しい!唱え、『巨神の妬鏡(ディア・ドレイン)』!!」

 

 動転した気を、虚勢を張って誤魔化し、シルハはルルリに対して用いたスキルを発動させる。

 『巨神の妬鏡(ディア・ドレイン)』。出現させた鏡に映した対象のスキルを根こそぎ奪う凶悪なもの。今まさに姿見はアリナを映しており、大鎚はシルハの手の中に

 

 

 

 

 

とはいかなかった。いつまで経っても、アリナの大鎚が消える様子は見えない。

 

 ピシッ…

 

 突如どこからか聞こえる亀裂が入るような音。その音の発信源はシルハの鏡だった。一度入った亀裂は徐々に鏡面全体に広がっていき、そして…

 

パリィィィィン!!

 

「何⁉︎私のスキルが…」

 

 逆にシルハの鏡が砕け散った。それは、かつてアリナがギルドマスター・グレンの超域(シグルス)スキルを破った時と同じ。上位格の力が、下位の力を蹂躙するもの。

 

「くっ、『巨神の(ディア)…」

 

 直様態勢を立て直し、別のスキルの発動を試みるシルハ。しかし、

 

「遅い…」

 

 なんとアリナは既にシルハの背後へと回っていた。シルハが振り向いたその瞬間、シルハの右腕が、アリナの豪快な大鎚の一撃によって斬り落とされた。

 

「グッ…ァァァァ!!そんな、私の身体が…」

 

「…そろそろ、向こうもいけそうね」

 

 シルハを横目に、アリナは後ろを振り向く。白銀の面々に後ろから支えられているキングクワガタオージャーの掲げるオージャクラウンランスには、既に全シュゴッドの力が集結していた。

 

「すみませんジェイドさん、ロウさん、ルルリさん。支えてもらう形になってしまって…」

 

「いや、なんのこれしき!!」

 

「一緒に魔神を倒そうなのです!!」

 

「アリナさん、決めるよ!!」

 

 

 

 

「ええ!!」

 

 声をかけるジェイドに、アリナは力強く応答する。前方と後方、覚醒した処刑人の大鎚と、全てのシュゴッドの力を集結させたオージャクラウンランスが、魔神を屠らんと鋏のように迫り来る。

 

「悲鳴を上げろォォォォォォ!!!!」

 

『キングオージャー!フィニッシュ!!』

 

▽ ▽ ▽ ▽ ▽

 

「あり得ない、魔神の私が…」

 

 自身も知らない強大な力に板挟みにされ、シルハの肉体は朽ち果てて行く。右腕を失い、身体を斬り裂かれ、再生することすら間に合わない。魔神と高らかに名乗り、威厳の満ちた風格など、今や影も形もない。

 消えゆく意識の中、シルハの脳内に『何か』が語りかけた。

 

 

 

 

"魔神よ、立て…立つのだ…例え敗れようとも、その身を完膚なきまでに粉砕されようとも…死して尚、黒い怨念となって蘇るのだ…"

 

 

 

「な、なんだ…?」

 

 ふと背後から感じる違和感にキングクワガタオージャーは振り返る。自身らの攻撃を受け、満身創痍の魔神の身体の中に、黒い霧のようなものが集まっていた。

 

「これは、エーテル…じゃない」

 

「嘘でしょ…まさか…」

 

 嫌な予兆を感じたらジェイドとアリナ。その予感は正解であり、シルハの肉体が徐々に復元され、漆黒に染まっていく。

 そして…

 

「ウゴァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 唸り声を上げながら、理性の無い様子で魔神が雄叫びを上げる。魔神に代わる『厄災』が、アリナ達へ牙を向け始めるのだった。

 





『どうしたというのだ?熊手真白(くまでましろ)

「なぁにテガソード、俺様の世界に茶々を入れて来た厄災のことだ。ゴジュウウルフとして覚醒した俺様に恐れをなし、逃げた先の世界でまた暴れているようだからな…その世界を世直しするか、考えてただけさ…」
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