処刑人アリナさんと邪悪の王ギラくん   作:山田プロキオン

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タイトル通りです。
あの船長の参戦です。



帰ってきたゴーカイな男

「ウゴァァァァァァァァ!!!!」

 

 厄災の力で強制的に復活させられたシルハ、否、シルハだった怪物の雄叫びが、白亜の塔全体に轟く。重厚かつ威厳の感じられた生前の面影は影も形もない。まるで獣のような猿叫に、ギラ達は耳を塞ぎつつ、なんとか警戒態勢に入った。

 

「どういうこと⁉︎お約束の第二形態とかそんな感じのやつ⁉︎」

 

「残念ながらそうだと思う…僕もいけるかどう…」

 

 戸惑うアリナへ憶測を伝えていたギラだが、突如言葉が途切れた。話をしているうちに、シルハはギラとの間合いを詰め、既に目と鼻の先にまで迫っていた。

 咄嗟に防御に移ろうとしたギラだったが、度重なる被弾と、先程繰り出した全力の一撃の影響により反応が遅れ、懐に強烈な拳を受け、そのまま壁の方へと吹き飛ばされてしまった。

 

「ァァァァァァァァ!!!!」

 

「ギラ⁉︎この…」

 

 アリナはギラのいた方へ向き直り、魔神目掛けて大鎚を振るう。

 

「今度こそ死ねぇぇぇぇ!!!!」

 

 しかし強烈な一打は魔神の身軽な身のこなしによって易々と躱され、続け様に魔神は己のスキルを発動した。

 

巨神の妬鏡(ディア・ドレイン)

 

 本来必要な筈の発動詠唱もなしに、突然姿見が出現し、アリナの姿を唱え、眩い光を放った。

 

「くっ…」

 

 網膜を焦がすかのような光を前に、アリナは瞼を閉じて顔を逸らす。そして再びアリナが目を開けると、もう自身の両手の中に相棒である得物は無くなっていた。

 

「嘘でしょ…まさか…」

 

 恐る恐る前方へと視線を向けるアリナ。彼女の最悪の予想は見事に的中していた。自身の神域(ディア)スキルにて顕現する大鎚は、魔神に奪われてしまっていたのだ。

 

「そんな…アリナさんのスキルまで…」

 

「もう…打つ手がないのです…」

 

 シルハのスキルがアリナをも上回ってしまったという事実に、ロウやルルリも顔を青くして絶望に浸る。そしてその絶望の連鎖は止まらず、シルハを大鎚を担いでアリナの方へと迫って来る。

 

「(動け私…動け、動いて!!)」

 

 頭の中でアリナはシルハから逃げるように思念を飛ばす。しかし自分の体が言うことを聞いてくれない。脳よりも体は正直なもの。今の今まで少々手を煩わすことはあれど、追い詰められるということは、クエストをこなして来て一度としてなかった。初めて感じる追い詰められるという恐怖に足がすくみ、逃げたくても逃げられない。

 そんなアリナのことなどお構いなしに、シルハは今までのお返しとばかりに力強く大鎚を振るう。

 

「アリナさん!!!!」

 

 じっとしていられなくなったジェイドは、傷だらけの体に鞭打って駆け出し、アリナと魔神の間に割って入る。そしてアリナを守るように盾を構えて、魔神の攻撃を受け止めた。

 

「……グッ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

 しかし流石は神域(ディア)スキル。白銀のリーダーにして最強の盾役(タンク)であるジェイドの技量をもってしても衝撃を全て殺すことは敵わず、盾を粉砕され、アリナ諸共吹き飛ばされてしまった。

 

「か…は…っ…」

 

「ジェイド⁉︎ジェイド!!」

 

 アリナは自身を庇って、攻撃を真正面から受けたジェイドの元へと寄る。所々擦りむき、受付嬢服も破けてしまっているが、今のアリナはそれどころではない。体中から大量の血を流し、肩で息をするジェイドのことが心配で仕方なかった。

 

「ア…リナ…さん、よ、よか…」

 

「よかったじゃないわよ!!こんなに血塗れになって……」

 

 アリナは血の池に倒れるジェイドの手を握る。ジェイドの大きな両手を力強く握るアリナの小さな手は震えていた。ジェイドが死んでしまうかもしれない恐怖と、自分がスキルを奪われさえしなければという自責の念が入り混じっていた。

 

「ダメ…死んじゃだめ…ジェイドぉ…」

 

 やがて胸の中の気持ちは大きくなり、アリナはまたしても瞳から大粒の涙を絶えず溢した。

 

 

「リーダーしっかり!」

 

「は、早く魔神から離れないとです!!」

 

 ルルリとギラを背負ったロウも駆けつけ、なんとかしてアリナとジェイドを魔神から引き離そうとするが、ロウの手が塞がっている状態で、かつスキルを奪われ、一般人と大差ない成人女性2人でジェイドを介護して逃げることなど不可能だ。

 

「ウゴァァァァァァァァ!!!!」

 

 魔神は雄叫びを上げ、得物である大鎚を肩に担ぐ。ジリジリと一向との距離を詰めていき、踏み出される魔神の一歩一歩が、一同の心に絶望の影を落とす。今度こそ、本当に終わりかもしれない。

 

 アリナ達が死を覚悟し、瞳を強く瞑った

 

 

 

 

その時、どこからともなく銃声が響き、魔神の体へと命中した。

 

 

「邪魔するぜ?」

 

 

 四層に轟いた低く威圧感のある声に、その場の全員の注目が集まる。声の主は右手に大剣を、左手には銃を持っていた。赤い海賊服を身に纏い、

自信に満ちた様子で笑うその男を、アリナは知っていた。

 

「アンタあの時の…。塔のモンスター達を相手してたんじゃないの?」

 

「あぁ?奴らのことか。案外、なんとかなったぜ?伊達に十数年海賊やってないんでな。それより…」

 

 アリナから視線を魔神へと移し、男は懐かしそうに、そして静かな闘争心を燃えたぎらせていた。

 

「アカレッドやバスコと一緒に封印してやった魔神野郎か…どこかBBGで感じた気配と似ているが…まぁいい。テメェを倒して、あの時は取り逃したその胸にあるお宝を貰おうか…」

 

「なっ⁉︎アンタ正気か⁉︎」

 

「そうです!1人で戦うなんて無謀なのです!」

 

 男の無茶苦茶な目的に、熟練の冒険者であるロウとルルリは異を唱える。白銀の剣、処刑人、キングクワガタオージャーが束になってやっと撃沈させた魔神相手に1人では部が悪すぎるのは明らか。

 しかし男の決心は揺るがなかった。

 

「気にいらねぇ奴はぶっ潰す、欲しいもんはこの手で掴み取る、たとえ1人でもな。それが…

 

 

 

 

 

海賊ってもんだ」

 

 男、否、キャプテン・マーベラスは、懐から戦士を模した鍵『レンジャーキー』と、携帯型デバイス『モバイレーツ』を取り出す。

 瞬時にレンジャーキーを人形の状態から鍵の形状へと変化させ、洗練された動きでレンジャーキーをモバイレーツの鍵穴へと誘う。

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

 マーベラスの掛け声と共にレンジャーキーの秘めた力が解き放たれ、モバイレーツの先端の形が、海賊を想わせるアンカーのようなものへと変わった。

 

『ゴーーカイジャー!!!!』

 

 モバイレーツから力強い電子音が鳴り響き、0.1秒の内に、マーベラスの肉体を強化装甲が包み込む。海賊の船長をそのまま戦士としたようなその容姿に、ロウとルルリ、アリナは驚愕した。

 

「姿が変わった…?」

 

「ギラさんと同じ…」

 

「さっきの時とはまた違う見た目…」

 

 変身を終えたマーベラス、ゴーカイレッドは、大剣『ゴーカイサーベル』を構え、その切先を魔神へと向けた。

 

「久しぶりだからな、ド派手に行くぜ!!」




マベちゃんの登場シーンで「海賊旗を上げろ!」、変身シーンにて「ゴーカイチェンジ」のbgmを頭の中で再生して頂けますと幸いです。
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