宇蟲王が造ったっていう設定がメッチャ便利なんですよ
地下深くのダンジョンにて、ギラは王鎧武装を果たしクワガタオージャーとしての姿に変身し、処刑人としてのアリナと共に並び立つ。相対するはダンジョンのボスにしてその守り人、オーガサイクロプス。
「グルルルルルル……」
一つ目の鬼は、唸り声を上げて敵を威嚇する。一瞬、即座にして得物である棍棒を振り上げる。狙いを定めるは、紅き戦士と大鎚を携えし冒険者。
しかし、2人は幾多もの戦線を駆け抜けた者達。身軽にひらりと棍棒の攻撃を躱した。
「ふん、
「何よアイツ…荒々しい口調になって…。まぁいっか。今は、アイツが先よ!」
意気揚々と罵倒を飛ばすクワガタオージャーに多少困惑しながらも、アリナは平常を装い、大鎚の柄を握り締める。そして頭上まで持ち上げた大鎚を勢いよく振り下ろす。
「くたばれ一つ目野郎!!!」
「グオオオオオオオ⁉︎⁉︎⁉︎」
「うっわ…凄いなぁ…」
骨の砕けた痛みに悲鳴を上げるオーガサイクロプスに、アリナの圧倒的攻撃力に呆気に取られ、素に戻るクワガタオージャー。
「何ぽーっとしているのよ、突っ立ってるだけなら帰って!!」
「はっ⁉︎な、何を言うか!俺様は邪悪の王!この程度の雑魚、俺様1人で捻り潰してくれるわ!」
アリナの声にはっ、と気を取り直すと、クワガタオージャーは邪悪の王モードに戻り威勢良く返す。そして王様戦隊の紋章が施された盾兼可変型武装である『キングズウェポン』を取り出し、銃モードにしてオーガサイクロプス目掛けて射撃する。
精密かつ正確な銃弾はほとんどオーガサイクロプスに命中した。しかし。
「くっ…何発は防がれたか…」
流石はダンジョンのボスといったところ。右手だけで棍棒を器用に振り回し、アリナを相手取りながらクワガタオージャーの銃撃も、一瞬のうちに再生させた左腕で数発防いだのだ。
「やはりあの棍棒が目障りだ!なら、奪ってやるまで!」
クワガタオージャーが肩部に備わる赤い外套をはためかせると、鮮やかに色めき、オーガサイクロプス目掛けて伸長する。狙うは、巨大な棍棒ただ一つ。
「『ソリッド』!!!」
クワガタオージャーの掛け声と共に、棍棒へ纏わりつく外套。そして器用にたなびかされた外套は、オーガサイクロプスの腕から棍棒を引き離した。
「やるじゃないアイツ。さぁ、こっちも!」
丸裸で隙だらけの状態を好機と見るや、アリナはすかさず大鎚で怪物の腹部を穿つ。その痛覚に耐えきれず、オーガサイクロプスはその場に膝をついてしまう。
「これで終わりだ!邪悪の王を相手にしたこと…後悔するがいい!!」
クワガタオージャーはオージャカリバーの持ち手とキングズウェポンを合体させ、薙刀の状態へさせると、オージャカリバーの赤い角のトリガーを連続で起動させた。刹那、薙刀の両刃に高エネルギーが集約していき、クワガタオージャーは必殺態勢へ入る。そして。
「悲鳴を上げろ!」
『オージャフィニッシュ!!!』
無数の鋭利な光刃がオーガサイクロプスに降りかかり、容赦なく斬りつける。その火力にボスといえども耐え切ることなど出来ず、怪物は呻き声を上げながら爆散した。
「終わった…」
怪物が倒された様を見届けたクワガタオージャーは変身解除してギラの姿に戻った。そしてギラにアリナが歩み寄り話しかける。
「やるじゃない、無名の冒険者にしては…」
「ふん、何を言う!俺様は…「はいはい邪悪の王様ね」…へ?」
「あと、変な高笑いはやめて!五月蝿い上に全然怖くないから!」
「え⁉︎ご、ごめんなさい…あ、あれ?貴方は確か、昼にお会いした受付嬢さん?」
ギラの指摘にアリナの心臓はドキリと跳ねる。ギルドの受付嬢には副業禁止が課せられており、冒険者業などもってのほか。ダラダラと無数の冷や汗がアリナの額から頬を流れる様に伝う。なんとか誤魔化さなければ。アリナの中の警鐘が危険度MAXで鳴り響いている。
「い、いや〜。人違いで…」
アリナはしどろもどろになりながらなんとか言葉を綴る。しかし、それが最後まで語られることはなかった。話している最中にバタリという音が響き、地面から土埃が舞った。
「え、ええ⁉︎ちょっとアンタ!何で倒れるのよ!!」
そう、アリナが驚いている様にギラが倒れたのだ。先程まで疲労のひの字も感じさせない暴れっぷりを見せていたのに急に倒れるのは困惑しない方が難しい。
先程とはまた違う理由であたふたするアリナ。そんな中、く〜きゅるるると間抜けで何処か可愛らしい音が鳴り響く。その発信地は紛れもないギラの腹部からだった。
「お腹…空いた…」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
「…ん、ここは…」
見慣れない天井。重い瞼が上がると同時に窓から差し込む青白い光がギラの網膜を刺激する。むくりと上半身を起こして辺りを見回す。どうやら布団の上で横になっていたようだ。ご丁寧に毛布や枕もある。
窓から見える景色から察するに時間帯は深夜。
そして視線を上へ向けると、ベッドがあり、そこにはぬいぐるみを抱きしめてぐっすりと夢の中へ誘われたアリナが。その表情は受付嬢をしている時の貼り付いた笑顔ではなく、純粋に幸せそうな表情であった。
「(疲れているのに、わざわざ僕を運んでくれたのかな…小さい体で、とても重かっただろうに…)」
ギラはアリナに感謝すると共に、罪悪感に苛まれ、視線を下へ移す。ふと枕の方を向くと一枚の紙切れがあり、そこにはアリナの文字で以下のことが記されていた。
『こんな時間帯に受け入れてくれる宿なんてないから私の家に連れてきておいたから。机の上に適当に用意したご飯があるから食べなさい。お腹、空いているんでしょ?』
メモの通り、アリナ用の作業机と思われる場所に向かう。そこにはハムとレタス、チーズを挟んだ簡易的なサンドイッチが2つと、スープが1つ。時間が経って大分冷えていると思われるが、眠い体に鞭打ってアリナが用意してくれたものだ。ギラにとってはとてもありがたかった。
「…いただきます」
椅子に腰掛け、手を合わせてからサンドイッチを頬張る。シャキシャキとしたレタスの食感に、ハムの程よい塩の感じ、とろっと口内に広がるチーズの味わいにギラの口角が上がる。ここ2年程王城で食べてきた食事とは違う、児童養護園で過ごした日々の食事のようで、懐かしい気分に浸る。
「美味しい…」
心の底からの言葉だった。自分よりも年下の彼女がここまで頑張っているのだ。自分も王としてまだまだだなぁ、と自身の未熟さを感じながらも前を向いて進んでいこうとギラは決意するのだった。
「ご馳走様でした…」
皿のものを全て平らげ、シンクへと向かうギラ。その後皿を洗い、水を切って片付けた。
再び布団に戻ったギラだが、どうにも寝付けなかった。オージャカリバーを手に、一旦外に出てシュゴッド召集の機能を使ってみたが。
「やっぱりクワゴン達は来ないか…」
分かってはいたが、異世界故にシュゴッド達がやって来ることはなく、ギラはガックリと肩を落として家の中へ入り、布団へ潜り込む。
「(明日にはチキューに帰る方法見つかるかな…早く皆に会いたいし、ドゥーガさんにシュゴッダムのこと任せっきりにする訳にもいかないし…まさか戻れないなんてことないよね…?)」
最悪の事態が頭の中に過ぎり、ギラは思わず毛布を握り、力を込める。僅かながらに体も震えている。寒さを感じるからでもあるが、それ以外にも内なる恐怖から来るものも一因であった。
その後、数刻程不安で眠ることの出来ない時間が続いたが、人であるが故の性には抗うことは出来ず、いつしかプツンと糸が切れたようにギラは熟睡したのだった。
ギラくん、アリナさんの家に居候。多分次回が次々回には出ていくかもですが。
アニメとか漫画でのジェイドへの対応見るにアリナさんって当たり強いように見えて意外と世話焼きな部分があると思うんですよね。弟がいるからですかね?