処刑人アリナさんと邪悪の王ギラくん   作:山田プロキオン

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ジェイドさん漸くレギュラー登場します
お待たせしました


史上最大の勧誘・前編

「どこにいるんだ…処刑人とクワガタ戦士は…」

 

 冒険者ギルドの精鋭達の集う『白銀の剣』の盾役(タンク)兼リーダーであるジェイド・スクレイドは、溜息を溢しながらイフールの街道をフラフラと彷徨う。

 数日前のベルフラ遺跡にて姿を表した都市伝説と謳われる冒険者『処刑人』。1人でダンジョンのボスのソロ討伐を果たしているという噂に違うことなく、遺物(レリック)を取り込んだヘルフレイムドラゴンを一方的に叩きのめしていた。

 もう1人のクワガタ戦士も処刑人と同格、もしかしたらそれ以上の強さを秘めており、ダンジョンのボスと遜色ない攻撃力、そしてボスでさえ行動不能に陥れる毒など搦手(からめて)も強力なのは見て明らかだった。

 

「なんとしても白銀の剣に迎えたい…」

 

 これがジェイドの率直な感想である。というのも、処刑人とクワガタ戦士、もといアリナとクワガタオージャーの強さを前に、それまで白銀の剣の攻撃役(アタッカー)として怖い者知らずであったガンズの心が折れてしまい、白銀の剣は攻撃役の穴埋めに頭を悩ませていた。そしてその穴を埋めるのは処刑人やクワガタオージャーこそ適任だとジェイドは考えていた。

 そのためギルド最強のパーティの権限で数多の冒険者を集めて模擬戦を行ったのだが…。

 

「結局スキルや遺物(レリック)で該当する者はいなかった…となると後は外見だが…処刑人の特徴なんて女の子で翡翠色の瞳をしているくらいだ…クワガタ戦士に関してはあれは鎧なのか元からあの姿なのか…」

 

 そんな時だった。ふと、近くのレストランから出てきた一組の男女がジェイドの前を横切った。

 

「アリナの紹介してくれたパスタ美味しかったよ!また一緒に食べに行こう!」

 

「…まぁ、気が向いたらね」

 

 昼食を終え、それぞれ別の道に進んだ2人のうち、ジェイドは少女の方に釘付けになった。忘れもしない整った顔立ちに翡翠色の瞳と流麗な黒髪。すれ違った際に僅かに確認できた処刑人の容姿の特徴と瓜二つだった。

 他人の空似の可能性も捨て切れないがそれでも、とジェイドは少女の後を追った。

 そして…

 

「えっ…」

 

 思わずジェイドは声を漏らした。少女の向かった先は大都市イフールの中でも大手のギルドである「イフール・カウンター」。服装からして冒険者ではない少女がそのような場所に向かう理由など1つしか考えられない。

 

「まさか…処刑人は受付嬢⁉︎」

 

 

 

▽ ▽ ▽ ▽ ▽

 

数日後、イフール・カウンターにて

 

「ダンジョンのクエストは…今の所特になしか…」

 

 ギルドの掲示板を見て、少しばかりギラは残念そうに肩をすくめる。ヘルフレイムドラゴン以来、特にこれといった難関ダンジョンの報告は無く、日雇い仕事を掛け持つ日々だ。

 今日は久しぶりにクエストを受けようと意気込んだのだが、遺憾千万である。

 

「ハァ〜、ん?アリナと…前にダンジョンで会った人。何処に行くんだろう?」

 

 落胆しながらふと視線を移すと、アリナが鎧を見に纏った銀髪の冒険者を連れて何処かへと歩いていく姿が見えた。彼女達の歩く方角からして近くの路地裏であろう。

 

「何するんだろう…大丈夫かな、アリナ…」

 

 そろり、そろりとなるべく気配を殺しながら2人の跡をつけるギラ。アリナと嫌そうな顔と、冒険者のソワソワとした様子からよからぬことが起きるのでは…と少し警戒しながら路地裏まで進むと、何やら話し声が聞こえてきた。

 

「それで、アリナさんには俺たち白銀の剣の新しい攻撃役(アタッカー)として…」

 

 成程、パーティへの勧誘かとギラはほっと胸を撫で下ろす。恐らくアリナは受付嬢という理由で断り穏便にことは済むだろう。そう思ってその場を後にしようとしたのだが…。

 

「スキル発動、『巨神の破鎚(ディア・ブレイク)』…」

 

 唐突にアリナがスキルを発動させ、巨大な魔法陣から大鎚を取り出してジェイドに向かって振り被った。

 

「危ない!」

 

 ギラは目にも留まらぬ速さで駆け出して、ジェイドとアリナの間に割って入り、攻撃に当たらないようジェイドを突き飛ばす。

 そして…

 

「ぐへらぁ⁈」

 

ギラ自身はアリナの大鎚による強打を見事に打ち込まれ、地面と共に沈められてしまった。

 

「あ、ああアリナさん⁉︎ど、どうするんですかこれ?」

 

「う、嘘でしょ⁉︎なんでギラが割り込んでくるのよ…どうしようどうしよう…」

 

 ジェイドを狙った筈が、乱入してきたギラを叩き潰してしまったアリナ。予想外の事態に彼女らしく無く冷や汗を滝のように流し、動揺した。

 しかし次の瞬間、ギラはアリナの大鎚を押し退け、むくりと身体を起こした。

 

「あ"っあ"〜、痛かった…」

 

「「へっ⁉︎」」

 

 衝撃的すぎる光景にアリナとジェイドは間抜けな声を溢す。当のギラは意外となんともない様子で身体を鳴らし、軽く深呼吸をして2人を見つめた。

 

「あ、アンタなんでそんなにピンピンしてるの…?」

 

「アリナさんの攻撃は遺物(レリック)を取り込んだ凶暴な魔物も一方的に行動不能に追い込む筈なのに…」

 

「あれ?アリナには言ってなかったっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

         僕、不死身だから大丈夫だよ」

 

 

 

「初耳よそんな情報!!!!っていうか不死身ってアンタ本当に何者なのよ!!!!」

 

「俺様は!邪悪の王だ!」

 

「そういうことじゃなぁぁぁぁぁぁい!!!!」

 

 

 微笑みながら意気揚々と答えるギラに対して、怒号のようなアリナの叫び声が路地裏から響き渡ったのだった。

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