“ ”は異世界を見る 作:侑音
今世はオタ活するって決めてるんです!
クラス一の天才と噂された過去のある少女、
しかしそんな彼女は天才と称えられることよりも気の許せる友人を、遠巻きに崇められることよりもごく一般的な
20XX年、某日。彼女はとある場所で目を覚ました
「女の子でございます」
『…!?』
空耳かと思い、手をきゅっと握るも、それは今まで感じてきた感覚のどれにも当てはまらなかった。びっくりしすぎて固まるほどに
「…政近や有希の時よりえらく大人しいね…」
「普通はもう少し産声をあげるものかと思われますが…この子は…」
そんな声が聞こえてきて、あぁ、転生したんだなって思う。しかし彼女の思考はそんなことよりも大事なことがある
(ロシデレって、政近と有希に妹いたっけ)
そう、何を隠そう彼女、オタクであった
姉や弟が気まぐれに渡してきた小説や漫画を読み漁るほどの本好き、更にはアイドルが大好きな生粋のオタクだった。しかしその頭脳が飛び抜けているが故に
「蒼空様がオタクなわけ…笑」
と、相手にされなかった、という悲しい過去がある。しかしそんなことは今どうでもいい。あの神童、天才と言われていた政近と有希の妹になったのである。つまり彼女の望みは1つ
(あの2人と仲良くなって、いっぱいオタ活したい…!そしてあわよくばあの2人と頭脳戦したい…!)
最後の一文が少し通常とズレてるって?気にしたら負けである
そんなこんなで転生した少女ーー
時は流れ、柚葉が3歳の頃。政近と有希は7歳であった。歳が離れているため、政近と有希にとことん甘やかされ、また両親にも可愛がられていた。前世から持ち合わせている頭脳面なども含め、政近や有希と同じく天才ともてはやされるまで時間はかからなかった
しかし、世の中とは残酷で。ある日、有希に喘息の症状が出た。柚葉はこれをよく知っていた。有希が小児喘息を患った日だ
(あねさまが、ぜんそくに。こうなるのはしってたのに……それに、あにさまも…きっと、あねさまのためだ)
政近がいっそう勉学にのめり込む姿も、笑うことも許されなくなった有希が柚葉を笑顔にさせようとしている姿も、見ていられなくなりそうなくらいに苦しい日々が続いた
そして、3年の月日が経った頃
その頃にはもう、柚葉は大学までの予習を独自で完璧に終わらせていた。しかし、兄を超えていると知られたら、兄が蔑ろにされることは分かりきっていたため、程よく調整していた。両親が不仲になっていくのを見て、彼女は家を出た。誰にも言わず、誰にも気づかれぬように。そして本当に誰にも気づかれなかった。たった3人を除いて。
柚葉が家を出た数時間後。2人は綾乃以外の使用人に部屋から出ていってもらい、聞こえないように話した
「兄様、ゆずが。ゆずがいなくなって…けほ、けほっ」
「有希…大丈夫だよ、知ってるから。でもみんな気づいてない…よね。…きっと大丈夫だよ有希。柚葉はきっと…帰ってくる。だって、僕達の妹だから。だから…僕と一緒に待っていよう?」
「うん…きっと…帰ってくるよね…?綾乃も…ゆずから何も聞いてない?」
「いえ、聞いてないです。でも、柚葉様は6歳ですし…危険があるかも…」
「…ゆず…どうして、誰にも言わなかったの…?」
3人が心配している中、彼女はとある場所に着いていた。緩やかなチャイムの音がなり、声が聞こえた
「柚葉?何してんの…?とりあえずあがりなよ」
家主の許可がおり、家の中に入ると3人の少年少女がいた
「ユズじゃん。どした?なんかあったの?」
「え、柚葉…?どしたの、お姉さん喘息でやばいって話してなかった?」
『姉様には…兄様もいるし、綾乃姉もいる。だから…僕がいなくたって平気だよ』
「柚葉、あんたもしかして…」
『緋那、悠稀、羚音。お願いがあるんだ』
柚葉はゆっくりと深呼吸した。そして、告げた。その一言を
『…誰でもいいから、家に居候させてほしいん』
「そんなことよりシェアハしようぜ」
「アリー」
「んじゃあ父さんに良さげな場所あるか聞いてみるわ」
『ちょちょちょ、待ってよ』
勝手に話を進めている3人を止め、頭にハテナが浮かんでいる状態で確認する
『しぇあは?』
「シェアハ分からないとか?シェアハはねー」
『違うそうじゃない。流石にわかるよ』
「えじゃあ何?」
『勝手に進めるな話を。いや話飛びすぎ』
「わーユズが怒ったー」
『羚音お黙り。んで緋那はほんとに確認しに行ったな??』
「行ったねぇ」
『行ったねぇじゃないんだよ悠稀?どんだけのんびりしてんの?ねぇ?』
いろいろとぶっ飛んでいる友人たちをなだめようとしても止まらない3人。もう制止する理由もないので諦めて任せることにした
数分後、緋那が部屋に戻った
「ヒナさーん、どーだった?」
羚音の言葉に無言でぐっと親指を立てる緋那。おー、とこれまたのんびりした声を出す悠稀。もうめちゃくちゃである
ため息をつく柚葉に満面の笑みでぐいっと近づく羚音。その背後から人影がひとつ
「あれ。周防さんとこの末娘さんじゃないですか。うちの子がお世話になってます」
『いえ…こちらこそわざわざ家を貸してくれるそうで…』
「ん?緋那から聞いてない?貸すんじゃなくてあげるんだよ。ちょうど緋那の誕生日も近いし、せっかくならって。この子滅多におねだりしないから年甲斐もなく張り切っちゃって」
凄く嬉しそうな顔で笑う緋那の父に開いた口が塞がらない柚葉にさらに追い打ちをかける一言を告げる
「あ、今から行けるよ」
「え、いいの?」
「ん。うちの別荘みたいなとこだしねぇ」
『いや、そんなとこいいんですか…?』
「いいんだよ。せっかくなんだから」
『もうそれでいいか…』
その決断を後悔するのはまだ数年後のお話である
「ゆーずはちゃーん。お姉様がお兄ちゃんとお迎えに行くからねー!!」
「あぁ、待ってろよ、柚葉。じっくり聞いてやるからな」
柚葉の物語はこれからであるーーー