ToLOVEるIF・FINAL 銀河最強の女帝   作:ヒアデス

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第1話 代替わり

「はっ!」

「ちっ――」

 

 目に留まらぬ速さで伸ばしてきた黒い尾を、黒髪の男は首を捻って躱し、地を蹴って相手の方へ跳ぶ。

 それに対し、長い桃色髪の少女は剥き出しの腕を突き出し、躊躇なく()()()()を殴りつけてきた。

 難なく拳を避けつつ、一発バチンと入れてやろうかと思いながらもそれを抑え、()の腰元から伸びている尻尾に手を伸ばす。すると……

 

「あっ、んっ……んんっ」

 

 尻尾を掴まれた瞬間、少女の口から艶のある声が漏れ、身悶えし始める。それを見て男は口の端を吊り上げた。

 

「はっ。尻尾握られたぐれーで身悶えする小娘がお父様に逆らうなんて一万年は早え。どいつに吹き込まれたか知らねえが、しばらく部屋で頭冷やしとけ。後でメシでも持ってくついでに色々話聞かせてもらうからよ」

 

 そう言って男は尻尾にかけた手を緩めかける。

 だが――

 

「――なんちゃって♪」

「――!?」

 

 そう言って娘がニヤリとした瞬間、尻尾がうねり、男の手に巻きついた。

 そして、ズダンと音を立てながら男を床に叩きつけた。それを見て――

 

「ギド! ララももうやめて!」

 

 謁見の間の隅から見守っていた妙齢の女はたまらず飛び出す。だが――

 

「来るな! 下がってろセフィ!!」

 

 ギドと呼ばれた男はつんざくほどの叫び声を上げる。それとともに、ララに向かってギドの尻尾の先端が向けられた。

 

「――!」

「はああっ!」

 

 荒げた声とともに尻尾の先端から巨大な光線が放たれて実の娘を呑み込み、天井を砕いて真っ暗な空を染め上げた。

 

――デビルーク人、俺の娘ならこれぐらいじゃ死なねえはずだが……。

 

 そう思いながらギドは目を凝らし、娘の無事を確かめようとする。

 が――。

 

「――!?」

 

 眼前に張られた手のひらと傷一つ付いてない娘を見て、ギドは大きく目を見開く。その向こうで……。

 

「これで形勢逆転だね。さっきの技、()()()()に撃ったらどうなるかな?」

 

 そう言って、少女――ララは父親に向けて尻尾の先端を向ける。

 彼女は自らの身体にエネルギーを纏わせ、ギドの攻撃を防いだのだ。宇宙最強と言われるデビルーク王が放った攻撃を。

 そして逆に今の攻撃にエネルギーを注いだ反動で、ギドの身体は地球で言う小学生なみに縮んでいた。小さくなった父親に向けて、ララは淡く輝く尻尾を顔面まで近づける。

 それを見て、ギドはふうと溜息をつき。

 

「わーったよ。要求通り、王の座から降りてやる。そしてお前が次のデビルーク王だ。それで文句ねえだろう?」

 

 敗北と“退位”を認める宣言に、ララは満足そうに頷き――

 

「うん! ……と言いたいところだけど、もう一つあるよね」

 

 そう言ってララは、自身と同じ長い桃色髪を垂らしながら見守る母に顔を向ける。それを受けて、セフィはビクリと肩を震わせた。

 ララは笑みを浮かべたまま父親に顔を戻し……。

 

「パパとママは今すぐこの星を出ていってもらいます。パパたちに邪魔されたら困るから――それと、もう一つ訂正しておくね」

 

 ララはそこで腕を下げて父親を見下ろし、これ以上ないほど吊り上げた口で言い放った。

 

「私はデビルーク王なんかになる気はない――この星を中心に作る新しい帝国の『女帝』になるの♪」

 

 

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 一方、“政変”が起こったデビルーク星から遥か離れた地球では……。

 

「やべっ! かなり遅れちまった!」

 

 ツンツン跳ねたオレンジ髪の少年――結城 梨斗(ゆうき リト)は独り言を吐きながら自分を鼓舞しつつ、階段を駆け上がる。そこへ――

 

「こらっ! そこの男子、廊下を走らない!!」

 

 ふいに甲高い声が響くと同時に長い黒髪の少女が眼前に現れ、リトは驚きのあまりバランスを崩し、足をもつれさせて前につんのめった。

 それを見て少女も大きく目を見開き、避けようとして後ろに倒れかける。

 しかし、リトは足先に力を込め体の軸を保ってその場に踏みとどまり、少女の手を引っ張り彼女を支え起こした。

 

「ふう……悪い悪い。大丈夫か古手川?」

 

「ええ……ありがとう、結城君」

 

 古手川と呼ばれた少女は顔を赤くしながらか細い声で礼を告げる。そんな彼女の気も知らず、リトは片手を上げて――

 

「じゃあ俺は屋上に行くから、古手川も見回りはいいけどちゃんとメシ食っとけよ!」

 

 そんな言葉をかけながら屋上に向かうリトに、古手川 唯(こてがわ ゆい)は『大きなお世話よ』と心の中で返しながら、複雑な表情で彼を見上げる。

 安心したような、かえって調子が乱れるような……。そんな相反する思いを抱えてる彼女の後ろから、ツーサイドに分けた青髪の女子生徒がスマホを掲げながら現れ――

 

「ああ〜、またスクープ逃しちゃった〜! 今度こそ『ミスター・トラブル』こと結城先パイの不埒な悪行を全宇宙と全次元に配信できると思ったのに〜〜!!」

 

(おまけにまた変な新入生が湧いてくるし……ようやく天条院先輩が卒業してくれたと思ったら……)

 

 愛用のスマホをブンブン振り回しながら喚く一年生を前に、頭を抱えながら溜息を零す風紀委員長だった。

 

 

 

 

 

 

「ごめん西連寺。四時間目が長引いちまって」

 

 屋上に来るなり、リトはすぐ“()()”に頭を下げて謝る。彼の前に立つ短く切り揃えた黒髪の少女……西連寺 春菜(さいれんじ はるな)は気を悪くするどころか、気を遣うように笑みを浮かべながら首を横に振った。

 

「ううん。ちょっとしか経ってないし、今年は受験があるから仕方ないよ……それより結城君も座ったら……隣空いてるから……」

 

 

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 顔を赤くしながら隣のベンチを勧める春菜に、リトは「ああ」と頷きながら彼女の隣に腰を下ろす。そしてどちらからともなく風呂敷に包まれた弁当箱を取り出し、昼食を口にし始めた。

 それからしばらく食事と雑談を挟んでから……。

 

「……ねえ結城君、今日はちょっと違う味付けにしてみたおかずがあるんだけど……よかったら味見してくれないかな?」

 

「えっ……」

 

 ふいに告げられた一言にリトは戸惑い口をつぐむ。春菜は慌てて――

 

「ご、ごめんなさい! 自分のお弁当があるのに迷惑だったよね! やっぱり私が――」

「い、いや、これっぽっちじゃ足りないぐらいだから! 味見くらい喜んでやるよ!!」

 

 勢いよくそうまくし立てる彼に、春菜はほっと息をつき、そして()()()()で挟んだロールキャベツを差し出した。

 

(こ、これってまさか……)

 

「ぁ……あー……」

 

 リトの口に春菜はロールキャベツを挟んだ箸を近づける。リトは羞恥心を押し殺して口を開き、目の前のおかずに顔を近づけた…………。

 

 

 

 

 

ムズ痒い!!

 

「しぃ! ネメシスさん、気づかれちゃいますよ!」

 

 じれったいやり取りを繰り広げる二人を見て、思わず声を荒げる褐色肌の少女に対し、短い桃色髪の少女は口に人差し指を立てて(たしな)める。

 二人ともリトたちより一学年下の生徒で、褐色肌の少女はネメシス。桃色髪の少女はモモ・ベリア・デビルークという。

 

「そうは言うがなモモ姫。もどかしすぎて見ているこっちが恥ずかしいぞ。いっそ下僕(リト)に憑依してあの娘を押し倒して一気に関係を深めてやった方が――」

「ダメですって! それで春菜さんに嫌われちゃったら、リトさん立ち直れなくなっちゃいます!」

 

 ネメシスを掴み必死に止めようとするモモに根負けしたのか、最初からそこまでする気はないのか、ネメシスは降参するように両手を上げる。そしてモモが手を離すと同時にぼそりとこぼした。

 

「つまらんな。あの下僕め、“ハレンチ体質”とやらを克服してからは他のおなごたちといざこざを起こすこともなくなって、最近はずっとあの娘といちゃついてばかりだ……せめてララ姫がいれば少しは面白くなるだろうに」

 

「……そうですね」

 

 ネメシスのぼやきにモモは同意の言葉を返す。

 

 

 

 半年前、ある騒動に紛れてリトと春菜は互いの想いを打ち明け、“恋人一歩手前”の関係になった。しかし、リトの中には未だララへの好意があるのも否定できず、春菜とララ二人と“恋人一歩手前”の状態になった――うまく説明する自信がないので、詳しい経緯が気になる方はダークネス最終巻で確かめていただきたい――。

 

 

 その後、リトはまず異性関係の乱れの一因となった自らの体質の克服を決意。姿勢の維持や体の動かし方の矯正などの基礎鍛錬を重ねて転倒癖をなくしていき、徐々にだが女子を巻き込む回数も減らしていった。

 

 そして三年に進級してすぐ、ララを呼び出し、春菜への想いとともにララの気持ちに応えられないことを告げ、深く頭を下げた。

 引っ叩かれるのも覚悟していたリトだったが、ララは笑みを浮かべて承諾し、リトと春菜の仲を応援してくれた……目からわずかな涙を零しながら。

 

 それからしばらくの間ララは何事もなかったかのように過ごし、他の女子たちも二人の関係を認めていった。

 しかしそれからほどなくして、ある日突然ララはリトたちにも妹たちにも黙って姿を消し、結城家にも学校にも、この町のどこにも現れなくなった。

 ララの気持ちを知るリトも春菜も罪悪感を覚えたが、傍目には誠実な決断をしたリトや春菜を責める者などおらず、それからさらにしばらくしてザスティンから『ララ様がデビルーク星にお帰りになられた』という報が届き、皆は驚いたり納得したりしつつも無理にララを呼び戻そうとはせず、彼女の心が癒えるのを待つことにした。

 

 そして今、リトと春菜も徐々に、ネメシスたちがじれったく思うのも無理ないほどゆっくりと距離を縮めている。

 

 

 

「しかし、モモ姫はこれでよいのか? たしか『楽園(ハーレム)計画』とか言っておっただろう。春菜という娘をそそのかして計画を進める手もあるだろうに、なぜそうせん?」

 

「あははっ……それはまあ、少し計算違いがありまして……」

 

 ネメシスの問いにモモは頬を搔きながらぎこちない苦笑と返事を返す。

 

 リトがデビルーク王となり、モモ自身を含め好意を持つ女子全員を側室として娶らせる『楽園(ハーレム)計画』。その計画には一つ大きな落とし穴があった。

 それはララが恋人候補(ヒロイン)から脱落した場合、同時にリトも次期デビルーク王ではなくなり、側室を持てる身ではなくなるということだった。

 第一王女ララの婚約者=次期デビルーク王という身分がなくなれば、結城リトも日本の一庶民。側室など持てるわけがない。

 

 『楽園(ハーレム)計画』を達成するためには、まずリトとララをしっかりくっつけておく必要があったのだ。

 

「ふっ。そんなもの、この星のソーリやダイトーリョーを調教して一夫多妻を認めさせればいい。私に任せれば、明日にでもソーリだかダイトーリョーをパンツ一丁で記者どもの前に立たせて一夫多妻制の導入を宣言させてやろう」

「――そういうわけにはいきません!!」

 

 と言いつつも、最終手段としてデビルーク王家の財力で総理や大統領を買収するのもありかもしれない、とモモはわずかだけ思った。

 そんな彼女らの下で……。

 

 

 

「……やっぱりまだちょっと自信ないから、味見はまた今度でいいかな?」

 

「あ……ああ、楽しみにしてるよ……」

 

 春菜はぱくりとロールキャベツを自らの口に入れ、リトも残念そうに自身の弁当に箸を伸ばす。

 静かな屋上であれだけ騒げば、鈍感な二人もさすがに気づくというものだ。

 

 

 

 

 

「まったく、ネメシスさんはすぐそういう方向に持っていくんだから――」

 

 呆れた風に溜息を零したところで軽やかな着信音が響き、モモは「失礼します」と告げながらポケットからスマホの形をした新型デダイヤルを取り出した。

 

「もしもし」

 

『あっ、モモ。あたしあたし』

 

「『あたしあたし』さんという知り合いはおりません。いたずらや詐欺なら切らせていただきますが」

 

『イタズラでも詐欺でもねえよ! ナナだ! てか、あたしの名前表示されてるだろ!!』

 

 声を荒げて指摘するナナに対し、モモは「ああ、確かに」と今気づいたように装いながら舌を出す。ネメシスにからかわれた憂さ晴らしとして、これぐらいは可愛いものだろう。

 

『んなことより――お前、今からあたしと一緒に早退してくれねえか』

 

「えっ? 何よいきなり? 風紀委員のくせにサボる気? (わたし)まで巻き込んで」

 

 不愉快そうにモモが訊ねると、ナナもバツが悪そうに……

 

『いや、メアとコテ川に悪いし、あたしもサボりなんかしたくねえけど、ちょっと大変なことになっててさぁ。とにかくモモも一緒に家まで来てくんない? 教師にはちゃんと報告しとくから』

 

 要領を得ない返事に、モモもしれっと耳を近づけていたネメシスも首をかしげる。ナナはそこで――

 

『あたしも信じられねえんだけど……姉上が父上をぶっ倒して、デビルークの『女帝』になっちまったんだとさ……』

「――はあっ!?」

 

 あり得ない一言にモモはいつもからは考えられないほど素っ頓狂な声をあげる。

 その下でリトと春菜も、『何があったんだ?』と言いたげな顔でモモたちの方を見上げていた。

 

 

 

 

※この後、あるキャラが後書き欄を乗っ取って配信コーナーを始めます。こういう演出が苦手な方は目次の上部にある『閲覧設定』で前書きと後書きを閉じてください。




UZURIPO CHANNEL

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『トラにちわ~~!! 【UZURIPO CHANNEL】の時間で~す!
 あたしは『ウズリポ』! あらゆる星と次元のネタを集めて配信するストリーマー(配信者)! これからいろいろなネタを集めては全宇宙と全次元に配信していくんでよろしくお願いしますね~!

 ついにきました。様々な星からやって来た異星人たちが住まう魔境『彩南町(さいなんちょう)』!
 その中でもひときわ噂とトラブルが絶えないっていう彩南高校に進学したんですが、いや~驚きましたよ。入学試験の面接で部屋に入った瞬間、校長先生から「カワイイので合格!」って言われちゃったんですから。まあ、筆記試験は普通にクリアしたと思うんですけどねー。
 さらに入学して翌日に『配信部』の設立届を出したんですけど、そっちも『カワイイので許可!』ってその場で設立許可もらって部費までくれちゃったんですもん。宇宙人抜きにしてもカオスですわ~。
 ただその学校に結城って女たらしでデビルークって星の王女と婚約してた先輩がいるんですけど、噂と違って全然まじめだし、女たらしって聞いてたのに西連寺先パイとばかりいちゃついてるし――こんなんじゃ聖祥の内部進学蹴って彩南に引っ越した甲斐ないじゃないですか~~!!
 えっ? デビルーク星で緊急放送? ――何やら事件の予感♪♪

 じゃあ私はデビルークの放送を見てきますので、放送が終わったらまた配信します! 
 こんな調子で結城先パイのスクープや彩南町で起きそうな騒動などなどを追っていきますので、よかったら高評価とチャンネル登録よろしくお願いしますね~!!
 それではトラなら〜〜!!』
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