ToLOVEるIF・FINAL 銀河最強の女帝   作:ヒアデス

2 / 10
第2話 女帝ララ

 一方その頃、デビルーク星の都の中心に(そび)える王宮。

 その奥にある衣装部屋(ドレスルーム)で、ララは一糸まとわぬ姿のまま様々な衣装を眺めていた。

 そうして十分ほど経ったところで彼女は傍に立たせている二頭身ほどのロボットに目をやり……。

 

「ペケ――新しい衣装(フォーム)にチェンジ」

 

「カシコマリマシタ、女帝サマ」

 

 無機質な声色を返しながらペケは彼女に近づく。そしてペケは“新たな衣装”に姿を変えながら、ララの体に纏わりついた。

 ちょうどそこで衣装部屋の扉が開き――

 

「ララさ、女帝様、そろそろお時間ですが――そ、その格好は!?」

 

 驚きのあまり言葉を乱す侍女に、ララは気を悪くするどころか得意げな笑みを向けながら言った。

 

「私の女帝としての衣装♪ これならみんなの目にも留まるでしょう!」

 

「た、確かに注目されるとは思いますが、さすがにそのお召し物は……それにララ様――」

 

「文句ある?」

 

 冷たい声色で遮られ、侍女はたまらず言葉を飲み込む。それを見てララは上機嫌そうな笑みを取り戻しながら出入り口に体を向けた。

 

「じゃあ行こうか。みんな待ってるだろうからね。お城のみんなも、モニターの向こうで見てる人たちも♪」

 

 そう言ってララは躊躇なく扉を開け、その姿を見て瞠目する臣下たちも気に留めず、すたすたと玉座の間へ足を進めて行った。

 

 

 

 

 

 

 放課後、参考書でも買いに本屋に寄ろうかと思いながらバッグを背負ったところでメールの着信音が響いた。

 モモからか、と思いながらメールを開くと……。

 

『お話ししたいことがあるので、今日は寄り道せずに早く帰ってきてください。参考書ならもう買ってありますから』

 

 ――なんで俺が買おうと思ってたもの知ってるんだよ?

 とツッコミながらも、彼女とナナが早退したことと関係あるのかなと思いながらスマホをしまい、モモの言うとおり、まっすぐ家に帰ることにした。

 そこで待っていたのは――。

 

 

 

「おう、やっと帰ってきやがったか」

「お邪魔してます」

 

 ソファにふんぞり返ったままぞんざいに口を開く黒髪の少年と、立ち上がって声をかけてくるヴェールで顔を隠した女性を見て、リトは返事も忘れ大きく目を見開く。リトの妹、美柑(みかん)も中学の制服姿のまま戸惑いながら立ち尽くし、ナナとモモも気まずそうに両親の傍に立っていた。

 

「おい、俺たちの挨拶を無視とはいい度胸だな」

「す、すみません! お久しぶりです、ギドさん、セフィさん!」

 

 少年の剣幕に押され、リトは慌てて頭を下げながら挨拶を返す。それに対し少年は「おう」と返し、女性は労るような笑みを浮かべながら改めて挨拶を返した。

 

 少年はギド・ルシオン・デビルーク。こう見えてララたちの父親にしてデビルーク星の国王で、銀河大戦で力を使いすぎたため小さくなってしまったらしい……とはいえ、半年前は元の姿に戻っていたはずだが。

 女性はセフィ・ミカエラ・デビルーク。デビルーク星の王妃にしてチャーム人という民族の生き残りで、異性への影響を抑えるためヴェールで顔を隠しているが、垂れ下がった桃色の髪がララたちとの血縁を示している――リトやギドなら顔を見ても大丈夫らしいが、隣の部屋に控えているザスティンたちが影響を受けてしまいかねないためヴェールを付け続けている――。

 

 そんな二人がなんでまたうちなんかに? とリトは内心首を捻るが……。

 

「色々あってな。それはともかく結城リト、お前に訊きたいことがある……ララを振ったってのは本当か?」

 

「――!!」

 

 その一言と鋭く尖ったギドの視線を受けてリトはびくりと肩を震わせる。そんなリトに冷たい目を向けたままギドは再び冷たい声を発した。

 

「ララのどこが不満だ? セフィに似て美人だし、あいつと結婚したらデビルークの王になれるんだぞ。おまけに側室とっていいとまで言われたらしいし、断る理由なんかねえじゃねえか」

 

 ギドの言葉に頷きかけながらも、リトは言葉を探すように沈黙を挟み……。

 

「……ギドさんももう知ってると思いますが、俺にはララよりも好きな子がいて、やっぱりその子と付き合いたいと思って……それに庶民として暮らしてきた俺にとって王様や側室というのは荷が重すぎます……」

 

「けっ、意気地のねえ野郎だな。それでもタマついてんのか――」

 

「あなた」

 

 セフィが声を発した瞬間、ギドは顔を青くしながら口をつぐむ。そんな夫をよそにセフィは硬い顔のまま言った。

 

「リトさんの決断はその方に対してもララに対しても誠実なものだと思います。ララと正式に婚約していたわけでもありませんし、私たちが責めるのはお門違いでしょう……あの子の気持ちを考えると素直に喜ぶことはできませんが」

 

「……すみません」

 

 思わずという風に付け足された一言に申し訳なさを覚え、リトは深く頭を下げる。セフィはいいと首を横に振って顔を上げさせた。

 

 それはさながら『鞭と飴』、あるいは『北風と太陽』と言うべきか。ギドに威圧されて沈み込んだ相手をセフィが温かく慰める。

 数十年前まで新興勢力にすぎなかったデビルークが銀河を治められたのは、デビルークの力だけでなく、この二人の組み合わせによるところも大きい。

 しかし、もしこの二人が引退などして、二人のどちらか、例えばギドのように鞭で叩きつけてばかりの王や、セフィのように優しいだけの王がデビルークと銀河を治めることになったらどうなってしまうのだろうか?

 

 

「あれ? リトを叱りに来たんじゃないなら、なんでセフィさんとギド、様がうちに来たんです?」

 

 ギドの呼称に迷いつつ、美柑は疑問を口にする。そこでギドとセフィ、ナナとモモも顔を暗くした。そんな一家を前にリトと美柑は首を傾げかける。

 

「実は先日、ララお姉様がデビルークの王宮に戻ってこられたそうなんですが……」

 

 まだ整理できていないのか、モモはそこで言葉を止める。見かねたようにギドが口を開こうとした瞬間、『ピピーッ』という音が部屋中に響いた。

 

「この音って緊急放送の時に鳴る――」

 

 ナナが体を硬くしながらつぶやき、モモも両親に顔を向ける。一方、ギドとセフィは察しがついているのか、驚いた様子もなく娘たちやリトたちを見るのみだった。

 

「ちょうどいい。説明の手間が省ける。結城リトと妹の嬢ちゃんも適当なとこに座って見とけ。これから“女帝様”の演説が始まるみたいだからよ」

 

 ――“女帝様”って何?

 頭上に疑問符を浮かべながら、リトも美柑もギドに言われた通り空いたソファに座り、さりげなくモモがリトの隣に、ナナが美柑の隣に腰を下ろした。

 そこで一同を挟むテーブルの上に置かれた装置から四角いディスプレイが浮かび上がり、きらびやかな玉座の映像が映る。それに感嘆しかけたのも束の間、その前に現れた人物を見てリトたちとナナたちは驚きの声を上げる。

 ()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

『銀河中の星々の皆さん、初めまして。デビルーク星の()第一王女、ララ・サタリン・デビルークです』

 

 ナナとモモはその姿を見て、リトと美柑は玉座に座った人物と恰好を見てあんぐり口を開ける。

 

 ディスプレイの向こうにいるのは、ナナたちの姉にしてリトの恋人候補だったララだった。しかも下手な水着より露出の高い恰好をした。

 『何やってんだララの奴!?』と心中で突っ込みながらリトはモニターに見入る。それを見て『こんな時に姉上の格好に欲情してるんじゃねえだろうな?』と悪態をつきかけるナナだったが、それより早くララが声を発した。

 

『もう知っている人もいるかも知れませんが、デビルーク王ギドは先日退位して王妃と一緒にこの星を去りました。よって第一子である私がその後を引き継ぎます。

 ――でも、私はデビルークの王位と制度をそのまま継ぐ気はありません!』

 

 それを聞いてリトたちが目を見張ると同時に、モニターの向こうからはざわめきが漏れる。ララの前にいる者たちにとっても思わぬ言葉だったらしい。 

 

『私は常々考えていました。いまだ『ソルゲ厶』や『エデン』などの反抗勢力が跋扈している中、各星々との緩やかな同盟と銀河警察への支援だけで銀河を守り続ける事ができるのか。広大な銀河を取りまとめるのに今の制度は不十分ではないか、と。

 ――そこで私はデビルークを継ぐにあたり、今までの制度と体制を根本から刷新することを考え、決意しました』

 

 そこでララは玉座から立ち上がり、居並ぶ臣下たちとカメラの前に立ち、声高に宣言した。

 

『――ララ・サタリン・デビルークの名において、ここに『デビルーク大銀河連合帝国』の建国と初代女帝への即位を宣言します!!』

 

 

 

「……デビルーク」

「大銀河連合帝国……?」

 

 リトと美柑は呆然とした口調で呟く。そんな兄妹の前でギドは溜息とともに重い声を吐き出した。

 

「まっ、そういうことだ。三日前、何の前触れもなくあの娘が王宮に帰って来てな。王位をかけて決闘しろって挑んできやがったんだよ」

 

「なんとか話し合いで収めようとしたのですが、私の言うこともまともに聞いてくれず、ララと主人は戦いを始めて……その結果ララは主人に勝って王位を奪い取り、主人と私はデビルーク星から追放されてしまいました」

 

「ギドさん負けちまったんですか!?」

 

 ギドの力を知るリトは信じられないように訊ねる。ネメシスを圧倒し、その気になれば地球さえ簡単に破壊できる彼が負けるなんてとても信じられない。

 

「娘相手に本気なんか出せるかっての! 元々さっさと王なんか辞めて羽を伸ばしたいと思ってたしな。ちょっと発明ができるだけの娘じゃどうせうまくいかないだろうから、しばらく好きにやらせてみようって判断したんだ……あんな真似するとは思ってなかったが。くそっ、後始末する方の身にもなれってんだ!」

 

 ギドは不愉快そうに吐き捨てながらソファを殴りかけ、すんでで思いとどまる。彼の力じゃ家の床まで突き抜けてしまう。

 

「それでナナとモモにもララのことを伝えておこうと思って、地球まで……。しばらくはデビルークに帰れなさそうですし、このままこの星に滞在しようかと」

 

「俺はどこの星でもいいんだがな。ガキの頃にあちこちの星を放浪してたし、ある程度の環境があれば困らねえ……だが、セフィはそうもいかなくてよ」

 

「「セフィさん(母上)は……?」」

 

 ギドが付け足した一言に、リトとナナは首を傾げる。一方、モモと美柑は「あっ」と思い出した。

 

「“チャーム能力”……確かにその問題がありますね……」

 

 セフィたちチャーム人が持つ、『魅了(チャーム)能力』。

 それは銀河大戦のきっかけになったとまで言われる魔性の能力(ちから)で、チャーム人の声を聞いた()()()()()異性は心を掴まれ、その声に耳を傾けるようになる……が、チャーム人の姿(特に顔)を見た異性はその姿に心を奪われ、(ケダモノ)と化してしまう。

 外見から発生した能力ゆえに自身ではコントロールできないため、“体質”と呼ぶこともある。

 

 ともあれ、そんな能力あるいは体質を持つセフィが見知らぬ地で生活するのはリスクが大きく、ギドとて常に彼女に張り付いてるわけにもいかず、不運にも女の護衛はいない。

 

「だが、俺と同様、結城リトにもセフィの能力が通じないらしい。そのうえお前以外の住人は女ばかりだ――そこでお前と嬢ちゃんに頼みたいことがある」

 

 その一言を聞いてリトと美柑、モモとナナの脳裏にまさかという言葉がよぎる。

 セフィはそこでヴェールが落ちてしまいかねない勢いで頭を下げ――

 

「お願いします! 私にできるお手伝いは何でもしますから、しばらくの間私をこのおうちに置いていただけないでしょうか!!」

 

「「えええ〜〜!!?」」

 

 

 その頼みを聞いた瞬間、リトと美柑の絶叫が響く。

 そんな中、モモはララの姿()をもう一度思い返し、心中で『もしや』と呟いた。




UZURIPO CHANNEL

【挿絵表示】


『トラばんわ〜! あらゆる星と次元のネタを集めて配信する【UZURIPO CHANNEL】のストリーマー(配信者)――ウズリポです!

 ――ついにやっちゃいました! ララ先パイ、パパさんぶっ飛ばして王位簒奪そしてデビルークの女帝に即位! これ、これですよ、あたしが求めてた事件とスクープは♪ 全然事件もアクシデントも起きなくて、あたし彩南まで来て普通に学生生活送るだけかと思ってましたよ!!
 でも、ララ先パイの女帝衣装過激すぎて制限かかってるサイトじゃ流せないんだよな~。メッセージだけなら流せるけどインパクト弱いしな〜。

 えっ? 『お前どこの星から来たの?』『デビルークの放送見れるんなら地球人じゃないだろう?』。
 失礼な! あたしは地球人。生まれも育ちも地球ですよ~! とある知り合いから盗んだ“裏技”で異星や異世界の情報を掴んでます。

 こんな調子で彩南高校のアクシデントとあわせてララ先パイの女帝騒動も追っていきますので、高評価・チャンネル登録よろしくお願いしますね~!!
 それではトラなら〜!!
 
 ああでもララ先パイ、版図拡大とかいって地球侵略なんて始めたらどうしよう? 聖祥時代の先パイたちがいるミッドチルダに逃げるか、それとも先パイたちに戻ってきてもらって何とかしてもらうか……。御神パイセンならララ先パイもなんとかするっていうか落としちゃいそうな気がするし』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。