ToLOVEるIF・FINAL 銀河最強の女帝   作:ヒアデス

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第3話 新たな家族・疑惑の会合

 ララの女帝騒動の翌日の朝。

 リトは欠伸(あくび)をあげながら目を覚ます。

 半年近く前は毎日のようにベッドに潜り込んでいたモモも、リトと春菜が正式に付き合ってからはそういうこともしなくなっていた。もっとも、以前のモモでも“現在の状況”ではリトの寝床に潜り込む事などできないと思うが……。

 

 

「おはよう〜〜」

 

 リトはシャツにパンツのみの格好のまま階段を降り、鍋が煮える音と香ばしい匂いのする台所に顔を出して間の抜けた挨拶をかける。

 そこへ……。

 

 

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「あら、リト君おはよう。もうすぐ朝食ができるから、ナナとセリーヌちゃんと一緒にリビングで待っててちょうだい」

 

 キッチンで料理をしながら朗らかな笑みと声で挨拶してくる桃色髪の美女にリトは目を丸くする。同時に彼の脳裏に昨日までの記憶が蘇り――。

 

「せ、セフィさん、おはようございます! 俺今から着替えてきますから!」

 

 そう言い残して逃げるように洗面所に駆け込むリトを、セフィは微笑ましげに見送る。その横で、早速だらしないところを見せる兄に美柑は呆れた眼を向けながら、モモは憐みを含んだ笑みを漏らしながら料理の手伝いをしていた。

 

 そう。ララたちの母親にしてデビルーク星の()王妃、セフィが昨日から結城家に居候することになったのである。

 もしやギドも住み着く気ではと身構えていたリトだったが、彼は色々やる事があると言ってザスティンたちとともに結城家を後にし、彼らのアパートに滞在しているらしい。

 

 

 

 

「しかし本当に母上も住まわせてもらっていいのかよ? 実際はあたしらの家で暮らして*1生活費もほとんど自分たちで持つとはいえ、さすがにお前たちの両親とかが黙ってないんじゃ……」

 

 動物番組に目も向けず尋ねてくるナナに、リトはセリーヌを膝に乗せたまま頷き、

 

「ああ、それなら大丈夫。あの後美柑を通してセフィさんもうちの親に直接頼み込んだらしいんだけど、親父もお袋も、ララの代わりと思えば今までと変わらないし、家事の手伝いまでしてくれるならリトも美柑も助かるだろう……ぶっちゃけ自分たちが大王や王太妃をやらされるような事にならなければ好きにしていいってさ」

 

「……あたしが言うのもなんだが、お前んとこの両親も結構変わってんな」

 

 ナナのつぶやきにリトは苦笑しながら同意する。そこで芳ばしい匂いが近づいてくるのに気づいてセリーヌが走りだし、その向こうから朝食を持ったセフィ、モモと美柑が入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 一方、学校内、特に異星人生徒たちはララの女帝即位の話で騒然としていた。

 昨日の演説で突如打ち立てられた『デビルーク大銀河連合帝国』、その女帝となったララがどのような政策を採るのか、各星に対してどんな要求をしてくるのか、まったく読めないからだ。

 彼らが知るララは両親を追放して王位を簒奪するような子ではないが、自ら造った発明品でトラブルを巻き起こすような一面の持ち主でもあった。

 その話や両親を追放したことを考えると、今回の『代替わり』が各星にとって好ましいものになるとは限らない。

 そのうえさらに、一部の地球人生徒も“ある動画チャンネル”を通してララの女帝即位とデビルークの帝国化を知り、その話に加わったり聞き込んだりしていた。

 

 彼女の半婚約者だったリトは生徒たちから質問責めに遭いながらも、経緯を知る友人たちや駆けつけてきた唯たち風紀委員に助けられて事なきを得た。

 

 そんな状態ではリトと春菜も一緒に昼食どころか会うことすら難しく、顔を合わせることもないままメールでのやり取りのみで一日を終える。そんな二人を一旦置いておき、放課後()()()()は保健室で顔を突き合わせていた。

 

 

 

「単刀直入に言います――昨日の一件、あなたたちの仕業じゃないんですか?」

 

 モモの問いに、一本だけ長く伸びたおさげが特徴的な赤毛の少女、黒崎 芽亜(くろさき メア)はコクリと首をかしげ……

 

「昨日のって?  なにかあったっけ?」

 

「昨日の夕方、プリンセス・ララがえっちぃ格好でデビルークの帝国化と女帝即位を宣言した事の話です。メアは解けかけのアイスを食べるのに夢中で気づかなかったようですが」

 

「えぇ、そんなことがあったの〜? えっちぃ格好のララ先輩、私も見たかった〜」

 

 残念そうに嘆く(メア)に対し、長い金髪と赤眼の少女、金色の闇(こんじき やみ)(ヤミ)は苦笑も漏らさず好物のたい焼きを口に運ぶ。

 そんな姉妹の横から――

 

「では後でララ姫の演説を撮った動画を見せてやろう。私がよく見てるサイトにもララ姫の演説があがっているからな。もちろん映像付きでだ!」

 

 黒髪褐色肌の少女ネメシスが言った途端、ヤミとモモは彼女にじとりとした目を向ける。前者は『メアにこれ以上悪影響を与えそうなものを見せないでください』という目で、後者は『あなたが黒幕じゃないんですか?』と訊きたそうな目で。

 現状、というか自分たちが知ってる中でこんな事件を起こしそうなのは彼女しかいない。だが、それを察したようにネメシスは二人の方を向きながら首を横に振った。

 

「確かにララ姫の豹変は私好みではあるし、銀河に混乱を起こそうとした『エデン』の目的にも敵う――しかし予想(きたい)を裏切ってすまんが、メアは勿論、私もこの一件に関わっていない。私が黒幕なら、とうにこの学校や地球を離れてララ姫の傍についておるだろうしな」

 

「ララ先輩に憑依してたらネメちゃんがここにいるのもおかしいし、操ってるにしても先輩の傍にいた方がコントロールしやすいはずだよね」

 

 ネメシスの意見とメアの補足を聞き、モモは顎に手をやりながら一考する。そこでたい焼きの最後の一欠片を飲み込んだヤミが不服そうに言った。

 

「なんにしても、私がこの場に呼ばれた理由がまったくわかりません。私にプリンセス・ララを変心させる理由はありませんし、この二人と同じ疑惑をかけられるのは(はなは)だ不愉快です」

 

 リトからネメシスと同類に区分けされつつあるモモは、ヤミの言葉に内心頷きたくなるほどの共感を覚えるが……。

 

「さすがにヤミさんが仕組んだとは思ってません……ですが『変身(トランス)能力』の持ち主、もしくは『エデン』の関係者なら何かを知ってる可能性がありますから。ヤミさんとティアーユ先生、御門先生にもお話を聞きたくて来てもらいました」

 

 そこまで言ってモモは話に加わらず黙って聞いていた長い金髪の女教師と短く揃えた茶髪の保険医に目を向けた。

 

 金髪の女教師はティアーユ・ルナティーク。『エデン』の元科学者にしてヤミの遺伝元でもあり、緑色の瞳を除けばヤミがそのまま成長したような姿をしている。

 茶髪の保険医は御門 涼子(みかど りょうこ)。宇宙では凄腕の闇医者として知られ、『ソルゲム』という反デビルーク組織からその知識と頭脳を狙われていた過去を持っている。

 

 モモと涼子を除いた全員が、銀河大戦の裏で暗躍していた研究組織『エデン』の関係者で、銀河の裏社会や組織と関わりを持つ涼子も何か知っててもおかしくない。だがヤミはもちろん、ティアーユも涼子もララが豹変した理由に心当たりはない。

 しかし……。

 

「まあ、ララ姫の()()()姿()を見たら私たちやエデンを疑いたくもなるか……」

 

「えっちぃ格好してたから? さすがにそれだけで疑われるのはちょっとな〜。えっちぃ格好してる人なら他にもいるよ。マジカルキョーコの悪役やってる時のルン先輩とか」

 

 仕方なさそうに零すネメシスに対してメアは不服そうに口を尖らせる。それを否定するようにヤミが呟きを発した。

 

「“眼”ですね――地球にいた時までのプリンセス・ララの眼の色は緑だったのに、昨日のプリンセスの眼の色は()でした」

 

 その答えにモモとネメシスが頷き、メアとティアーユがそうだったかなと思い出そうとする仕草をする。モモはデダイヤルを掲げ、以前撮ったララの写真を見せた。そこに映るララの眼の色は確かに緑色である。

 

「ヤミさんがおっしゃったとおり、昨日の放送で映っていたお姉様の眼の色は“赤色”でした……ヤミさんには失礼ですが、眼の色も格好もダークネス化したヤミさんにそっくりだと思います……」

 

 おそるおそる付け足すモモに対し、ヤミは不満げな表情を浮かべながらも彼女の言葉を否定できず、また過去に犯した醜態を思い出し、顔を赤くしながらモモたちから視線を外した。

 そんなヤミに代わるようにネメシスが口を開く。

 

「確かにララ姫の眼の変化は気になる……が、一定の科学力を持つ星でなら眼の色など簡単に変えられるし、誤魔化すだけなら地球のカラーコンタクトでも可能だ。それに何より、姫が変身(トランス)を使ったのを見たわけではあるまい?」

 

「…………はい」

 

 モモは苦虫を嚙み潰したような顔でうなずく。現状では眼の色と恰好がダークネスヤミと似ているだけで、ララがトランス能力を使ったわけでもエデンの残党やネメシスたちと手を組んだわけでもない。むしろこうして学校にのこのこ姿を現した分、疑いは薄くなったとみるべきだろう。

 そういえば……。

 

「ちなみに昨日からうち(デビルーク)の親衛隊や父に追われたりしていませんか? まだあなたたちは警戒されていますし、私と同じ考えを持った人もいるかもしれませんから」

 

 モモの問いにネメシスは腕を組みながら首を縦に揺すり。

 

「ああ、ついさっき元デビルーク王と遭遇して、ララ姫の変化の原因について心当たりがないか聞かれたな。知らんと答えたらそうかとだけ言って、どこぞへ去っていったぞ」

 

「……そうですか」

 

 相槌を返しながらモモは顎に手を乗せる。

 

――やっぱりお父様もネメシスを疑ってはいた。でも、私ほど強く疑っているわけではないみたい。他に心当たりがあるんでしょうか? それとも……。

 

「まあそう深く考え込むな、モモ姫。案外、力馬鹿の父親よりいい女帝になるやもしれんし、女帝などすぐに飽きてこの星に戻ってくるかもしれん」

 

「…………」

 

 それも否定できずモモは視線のみを返す。ララの治世が凶事を招くとは限らないし、気が済んだら王位を返上して何事もなかったかのように戻ってくる可能性も大きい。ギドがたまによその星へ遊びに出かけて戻ってくるパターンの逆だ。

 そこでネメシスは一息ほどの間を開けてから再び言った。

 

「それより一つ面白そうな話がある。一部の地球人がララ姫の即位やデビルーク帝国の建国を知っていただろう」

 

「ええ……そちらも気になっていましたけど……」

 

 ララの婚約者騒動をはじめとした事件がきっかけで、彩南町にはすでに多数の異星人が居住している。そのうえルン・エルシ・ジュエリアと霧崎 恭子(きりさき きょうこ)のカミングアウトによって宇宙人の存在が公になり、彩南町では宇宙人との交流や共存が半ば公然のものとなっている。

 しかし、他の街や国では都市伝説レベルの与太話として扱われていて、ルンと恭子のカミングアウトもキャラ付けとしか捉えられていない。宇宙全体からみれば、いまだ地球は他の星との交流どころか自らの星を出る技術すら持たない未発達の惑星なのだ。

 

 故に地球人がデビルークの放送を見ることなどできず、()()()()()()()()()()()()()()昨日の女帝騒動を知る者などいないはずだった。そちらもネメシスの仕業ではと思っていたが……。

 

「もちろん私ではない。昨日から“とある生徒”が動画チャンネルを開設したようでな。ララ姫が女帝になったことや演説の一部もそちらから流れた。そちらの方は音声だけだがな。私も登録したからお前たちも一度聞いてみるがいい」

 

 そう言ってネメシスはスマホを取り出し何やら打ち込む。それと同時にモモたちを含むグループ全員にURLが送信されてきた。

 

【UZURIPO CHANNEL】……傍目にはただの雑談配信にしか見えませんけど)

 

 

 

 

 

 その頃、ギドは部下も連れずただ一人公園に来ていた。

 この時世と平日の夕方とあって子供はほとんどおらず、学校帰りの生徒が何人かいるのみだった。それを見て『思った通り』とギドは目をすがめながら、スマホをいじってる一人の女子生徒に近づく。

 そしておもむろに彼女に向かって右手を伸ばし――

 

 

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「きゃあああっ!」

 

 突然エロガキにスカートをまくり上げられ、女子生徒は大きな悲鳴を上げる。

 その真下でエロガキもといギドは無邪気な笑い声をあげた。

 

「帰って来たぜー久々のパラダイス♪」

 

「理保、いったいどうしたの――きゃあっ!」

「ちょっとなにこの子!?」

 

 異変に気づき、彼女の友人をはじめ何人かの女子が集まってくる。

 そんな彼女らのもとにギドは滑り込み、スカートをまくり可愛らしい下着を露わにしていった。

 それを眺めながらギドは手をワキワキさせ……。

 

「久々に仕事から解放されて当分セフィの目も気にしなくて済むんだ。今のうちに思う存分堪能させてもらうぜ!! 次は胸をたっぷり――」

 

 

胸をたっぷり、どうするのかしら? ギド

 

【挿絵表示】

 

 

 

 氷のように冷たいしかし聞き覚えのある声に、ギドは動きを止め、ゼンマイのように首からギギギと音を立てながら後ろを振り返る。

 そこには買い物袋を持った妻、セフィの姿があった。

 

「……セフィ、あの坊主の家にいるはずじゃ? それにヴェールもつけずにこんな町中をうろついてていいのか?」

 

「以前ララが作ってくれた不可視のヴェールをつけているから大丈夫よ……それより、私や親衛隊がいない隙にあなたは何をやっているのかしら~?」

 

 その冷えた声と笑みを浮かべたまま青筋を立てる妻に、元宇宙の帝王ギドは脂汗を流しながら言い訳を考える。

 そんな夫の首根っこをひっつかみながらセフィは女子たちに謝り、「二度とこんなことしないようにきつく叱っておくわ」と伝える。

 女子たちは彼女に礼を告げながら、そそくさとこの場を後にしていった。

*1
結城家の屋根裏部屋に空間歪曲で作ったデビルーク家の家がある。




UZURIPO CHANNEL

『トラにちわ~! もう三回目となりました【UZURIPO CHANNEL】です! 構成上の事情で公開が遅れた第一回と第二回を見れなかった方は一話のあとがきから見てください。

 ララ先パイ、衝撃の女帝即位から翌日。早くも彩南町のあちこちはこの話題で持ちきりです。
 デビルークを追い出された元王様と王妃様は今どうしているんでしょう? 私が掴んだ情報によると、どちらかがララ先パイの元婚約者の家に居候しているとのことですけど、本当なんでしょうかね~?
 しかも、その婚約者の家もなかなか変わった家庭みたいですねー。設定ではお父さんは同居しているということになってますが、私が知る限りクリスマスにしか帰ったことありませんよお父さん! 子供二人を残して両親は海外や別の家に住んでるとかゲームやラノベかっつうの! 高校生のリト先パイはともかく、美柑ちゃんは完全に育児放棄ですよ! おっと、思わず名前出しちゃった。(※配信ではモザイクで名前を伏せています)

 それと私事(わたくしごと)ですが、実はさっき公園で尻尾のアクセサリーつけた子供にイタズラされてしまいましてね。あのガキ死刑にしてくれるんならララ先パイが地球を支配しちゃってもいいかなーなんて思っちゃったりもしました。
 スカートめくりは立派な犯罪なので、いい子も悪い子ももちろん大人の皆さんも絶対真似してはいけませんよ!

【挿絵表示】


 それでは本日はここまで! トラなら〜~!』
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