ToLOVEるIF・FINAL 銀河最強の女帝   作:ヒアデス

6 / 10
第6話 ぺったんこになった元王妃様

 ララの母星帰還と女帝即位から約一ヶ月。

 現在、彼女は当然地球にはいない……が、彼女が発明した作品のほとんどは居候していた家、『結城家』に残されたままだった。

 

 

 

 子供たちがいなくなった結城家の中で、波打った長い桃色を垂らした妙齢の女性が掃除機をかけ終え、ふぅと息をついて額に浮かんでいた汗を片手で拭った。

 

(久しぶりの家事もようやく慣れてきたわね。勘を取り戻すまで少しかかったけど、王宮の仕事と違って星々や銀河に影響を与えるわけでもないから気楽だし、久しぶりにやってみると結構楽しいものね)

 

 約二十年ぶりの家事の最中、心地よい疲労感と達成感を感じながらセフィは笑みを浮かべる。

 当時、ギドと結婚する前の彼女は女だけの自衛団に身を寄せており、そこで世話になる代わりに家事と雑用を請け負っていたことがあった――運命の相手と定めたギドを振り向かせるための花嫁修業も兼ねていたが――。

 

 

『ママさん! 充電終わったゼ! オレも手伝えることない?』

 

「あら、トライ。もう起きたの?」

 

 リビングに“飛び”込んできた二頭身のロボットを見上げ、セフィは返事と笑みを返す。

 

 名前通り三角形の頭をし、デビルーク人のものに近い黒い羽がついたロボットの名は『トライ』。ララがセフィ用に開発した、ペケとマルルに次ぐ『護衛コスチュームロボ』で、セフィが買い物や散歩などで外出する時は“不可視ヴェール”となって彼女を守っている。

 そんなトライもセフィが家にいてヴェールになる必要がない間は、小型ロボットの姿でセフィの手伝いや話し相手などをして過ごしていた。

 

「じゃあ、みんなの部屋を回って散らかってるところがないか見てくれる。トライじゃ持てないものがあったら、教えてくれるだけでいいわ」

 

『おう、じゃあ一回りしてくるゼ!』

 

 丁寧な(ペケ)(マルル)とは逆に、気さくな口調と片手を上げる仕草を見せながら飛んでいくトライを、セフィは手を振りながら見送る。

 

――男の子(息子)がいたらあんな感じだったかしら? ギドの子だったらもっとヤンチャに育ったでしょうけど。……さて人目を気にする必要もないし、今日は“カップラーメン”にでもしましょうか。お湯を入れて3分待つだけでできるうえに、王宮じゃ絶対食べられないのよね~♪

 

 セフィは鼻歌まじりに台所に向かい、地球で初めて食べてハマった好物を取り出し、かやくなどを入れて沸かしていたポットからお湯を注ぐ。

 そして3分経ち、ほどよく温まったカップ麺と箸を手にリビングに戻ったところでトライの声と浮遊音が飛んできた。

 

『ママさーん! 家の中を回ってきたゼー! ほとんどの部屋は綺麗に片付いてたんだけど、ひとつだけへんなメカだらけで散らかってる部屋があってよー。“これ”、そこからとってきたんだけど――』

 

「ああ、そこはララが使ってた部屋(ラボ)だからいいわ。発明品に触ったら何が起こるかわからないから」

 

 言いながらセフィはトライが持ってきた、スライム状の物体を取り上げる。が、物体を掴んだ瞬間もわもわと白い煙が吹き出し、セフィを包み込んだ。

 

『ママさんっ! 大丈夫かー!?』

 

「コホ、コホッ、私は大丈夫。トライは煙に近付かないで」

 

 セフィは咳ばらいを漏らしながらも片手を突き出してトライを止め、二人(?)して煙が収まるのを待つ。それからすぐ煙は収まり、何事もなかった()()()()()姿のセフィが現れる。

 それを見てトライは胸を撫でおろし……。

 

『ママさん、無事でよかった。オレがついていながらママさんに何かあったら、姉キとナナモモから大目玉食らっちまうとこだからな……あれ? でもなんかさっきまでのママさんと違うような……』

 

 トライは片手を(あご)に当ててこくりと首をかしげ、セフィは自分の体を見下ろす。

 

「そう? 特におかしなところはないみたいだけど…………えっ?」

 

 体を見下ろしたところで“ある部分”がへこんでいることに気づき、セフィは両手でそこに触れ、くにくにと揉む。が、弾むような柔らかい感触は返ってこず、平らな肌と硬い突起の感触だけが伝わってくるのみだった。

 

「これって…………もしかして……」

 

 ぶつぶつ呟きながらセフィは男子(に近いAI)のトライに背中を向けて上着をはだき、“それ”を見てしまった。

 

「――い、いやああああああっっ!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

「母上が寝込んじまっただってーー!?」

 

 帰宅直後、素っ頓狂な声を上げるナナにトライは申し訳なさそうに頭を下げる。

 

『すまねえ。オレが持ち込んだ発明品から出た煙を浴びた途端、突然悲鳴上げて倒れちまってよ。オレの体じゃ屋根裏部屋まで運べねえから空き部屋に寝かせてる。わりいなリト、美柑』

 

「ううん。それぐらいいいし、セフィさんを助けてくれてありがたいぐらいだけど……」

 

 美柑はテーブルに置かれたままの伸びきったカップ麺を見つけ、それを片付けに向かう。

 セフィが買い物に行く日はよくカップ麺を買い消費も激しい気がしたが、やはりあの人だったか。

 一同とともに呆れながらもモモは頭を切り替え……。

 

「それにしても、またお姉様の発明品ですか。そういえばペケさんぐらいしか持ち出していませんでしたね……ちなみにどんな物でした?」

 

『トライ、しっかり思い出しなさい。あなたの不注意が原因なのだから』

 

 美柑の防犯を終えた姉・マルルにまでせっつかれ、トライは顎に手をやりながら記憶を掘り起こす。

 

『たしかぶよぶよしたスライムみたいなもんだったゼ。そいつから出た煙を浴びた途端、ママさんの体に異変が起こっちまったんだ』

 

「スライム?」

 

 リトのおうむ返しにトライはおうと頷く。それを聞いて……

 

「スライムってまさか……」

 

「お母様が触れてしまった発明品って――」

 

 

 

 

 

 

『俺が魅了(チャーム)能力にかからない理由? セフィさんみたいなぺったんこな人のチャームになんかかかるわけないじゃないですか』

 

 未来の息子になるかもしれない少年はいつもの屈託のない笑みとはかけ離れた冷笑を漏らす。続いて――

 

『ぺったんこになっちまったお前に用はないぜ。俺は胸のでかい新しい王妃を迎える。エリザベス、ちょうどいいところに来てくれたなー!』

 

『あら、“元”王妃様じゃありませんか。ギド様から見放された“元”王妃様がなんでまだここに居座っているのかしらぁ?』

 

 夫に加え、悪役が付きそうな令嬢までぺったんこになった胸を指して嘲笑を浮かべる。

 そんな光景が次々に浮かんできて……。

 

「待って、リト君、あなた……いつか元に戻るはずだから……う~ん」

 

 部屋のベッドに横たわり目を閉じたままセフィはうわごとを漏らす。そんな中、モモたちは「失礼しまーす」と小さく告げながらそっとドアを開け、彼女を起こさぬようそっと部屋に入る。

 そしてシーツからはみ出た()()()胸元を見て、母の身に起こったことを確信した。

 

「本当に胸が小さくなっている。これは“あれ”のせいで間違いなさそうですね」

 

「“あれ”ってなんだよ? セフィさんの胸ってそれぐらいじゃなかったっけ?」

 

「いいや、もっとでかかった! お前も一度見ただろう、それも真っ裸を! っていうか、なんでお前まで入ってきてんだ? 寝てる母上に変なことする気じゃねえだろうな」

 

「バカ、そんなことするわけ。俺もセフィさんが心配で――」

 

「ナナ、リトさんも黙ってて! お母様が起きちゃいます!」

 

 小さくしかし威圧感のこもった声で一喝するモモに圧され、ナナとリトは口を閉ざしセフィの体を確かめるモモをじっと見守る。

 そして胸以外に異変はなさそうと安堵の吐息をつきながらモモは戻ってきた。

 

「やっぱり、胸だけが小さくなってしまっているようです。やはりお姉様が作った“あの発明品”のせいじゃないかと」

 

「“あの発明品”って、胸が小さくなるような発明品ってあったっけ? その逆ならあったような気がするけど」

 

「『ぱいぱいアップくん』……一時的に胸を大きくするためのメカです。“私のように”胸が大きい人に使うと逆に胸が小さくなってしまう欠点もありますが。おそらくお母様の胸が小さくなったのも後者の作用が働いてしまったせいかと」

 

 心なしか自慢げに胸を張りながら説明するモモに対し、ナナは面白くなさそうに舌打ちを漏らしながら言った。

 

「でも、あれってすぐに効果切れただろう。あたしもモモもすぐ元通りに戻ったじゃん」

 

「あの後持続時間が伸びるよう改良したのかもしれないわ。別の欠点がそのままなのはお姉様らしいけど。問題はいつになったら効果が切れるかなんだけど……もしかしたら今度は逆に制限時間自体がなくて、ずっとあのままかも」

 

「むね~、私のおむね~、はやく胸を戻さないとギドが悪役令嬢に取られて〜」

 

 モモの声に反応したかのごとく、セフィはぺったんこになった胸を押さえながら苦しげに寝言を漏らす。

 寝言の意味が分からずリトは首をかしげるが、母の苦しみを察したようにナナとモモは顔を見合わせ、こくりと頷きを交わした。

 いつもこれぐらい仲良くしてくれればいいのに。

 

 

 

 

 

 

「――というわけで、『母上の胸を元に戻そう作戦』を実施する!」

 

 翌日の土曜日。

 ナナはモモとともにリビングの中央に立ち、テーブルやソファに座る面々を見下ろしながら高らかに宣言する。

 なお、セフィはまだショックが抜け切れておらず、隣で慰めの声をかけるトライやマルルの声も届かず呆然とソファに座り込んでいる。ベッドから起き上がれなかった昨日よりはマシではあるが。

 

「他の発明品の例から時間経過で元に戻る可能性もありますが、別の手も取ってみるべきかと思いまして色々情報を集めておきました」

 

 モモはそう言いながらデダイヤルのボタンを押し、胸を大きくする(バストアップの)方法が載ったプリントを画面から出した。

 美柑はそれを引っ掴み、放心したままのセフィを除く面々とともに眺め。

 

「えーと……牛乳をたくさん飲む。腕立て伏せ100回……」

 

 美柑がそこまで読んだところでナナが冷蔵庫と食器棚を開き、200リットルの牛乳パックとコップを取り出した。

 

「カルシウムは体の成長に欠かせないものだからな! 身長にしろ胸にしろ、まずはカルシウムが必要だって。なあハルナ!」

 

「う、うん。カルシウムは大事だと思うけど……」

 

 アドバイザーとして招かれた春菜は遠慮がちに頷く。

 リトの前で自分が試していたバストアップ法を紹介されるのは恥ずかしい。しかし、胸をなくして意気消沈しているセフィの気持ちは分かるし、ナナに頼まれて断れるはずもなかった。

 

「確かに体に悪いものではないし、まずはその牛乳を全部飲んでください」

 

「えっ? これ全部?」

 

 真っ白な牛乳を入れたコップ――ではなく、その数倍の容量を誇るパックを指すモモにセフィは尋ね返す。

 

「はい。コップ1杯ちびちび飲んで胸が大きくなると思えません。それで大きくなったら世の中の女性もナナもみんなバインバインになってます」

「どういう意味だコラ!? ぺたんこで悪かったな!」

 

 隣で吠えるナナを無視して、モモはコトンと牛乳がたっぷり入ったコップを突き出す。

 別に牛乳が嫌いというわけではないが、一度にこれだけ飲むのかと思うと気が引ける。しかし、あの豊満な胸がなければチャーム能力が効かないギドが離れてしまう恐れもある。

 ――そんな有様で宇宙一の美妃を名乗れるものですか!

 

「わかったわ。いきます――」

 

 セフィはコップを持ち上げ、ぐいっと一気に飲み干す。それを見てトライとマルルが歓声を上げた。

 

『おっ、ママさんいい飲みっぷり!』

『さすが王妃さまですワ!』

 

「よし、この調子でもう一杯!」

 

 ナナがなみなみに牛乳を注ぎ、セフィは再びコップを傾け牛乳を煽り飲む。

 それを見て、『こいつら楽しんでるんじゃねえか?』と結城兄妹と春菜は思わずにいられなかった。

 ※一度に牛乳を大量に摂取すると体に悪影響を及ぼす事があるため、絶対に真似しないでください。

 

 

 

 

 

「き、気持ちわる……けどこれでラスト」

 

 セフィは口元を押さえながら声を絞り出す。お腹がぱんぱんで口も牛乳の味が染み付いて、当分牛乳は飲みたくない。

 にもかかわらず……。

 

「お母様の胸はナナと変わらないぐらいぺたんこのままですね。仕方ありません。次の方法に移りましょう」

「一言余計だ! ぺたんこで(略)」

 

 ナナの文句を流し、モモはリビングの隅へ歩きセフィに手招きする。それに従ってセフィと他の面々もそちらに移った。

 

「次は腹筋運動。床に手足を付けて100回腹筋してください。いわゆる腕立て伏せです」

 

「えっ? 腕立て伏せを100回も?」

 

 聞き返すセフィにモモはコクリとうなずく。

 

「はい。腹筋を刺激すれば胸も再び大きくなるかもしれませんから。ですよね春菜さん?」

 

「う、うん。効果はあると聞いたことがあるような……」

 

 春菜はきょどりながらも返事を返す。それに頷きながらモモは付け足すように言った。

 

「そうでなくてもここに来てからカップ麺ばかりとるようになって、お母様の栄養バランスが心配になってきたところです。健康維持のためにもここでしっかり運動してもらいます――はい、床に両手をつけて!」

 

 パンパンと両手を鳴らす末娘(モモ)に従い、セフィは両手を床について腹ばいになり、身体を上下に動かす。

 

「んん~、いち……にぃ……」

 

 兵士が訓練前の準備運動している時によく見たけど、自分でやると結構きつい~……。

 

 

 

 

 

『がんばれママさん!』

「あと4回です!」

 

「きゅうじゅうなな……きゅうじゅうはち…………きゅうじゅう…………」

 

 トライと春菜などの声援を支えに、セフィは苦悶の声を漏らしながら体を浮かす。その形相は苦しげに歪んでおり、王妃と呼ばれていた頃からかなりかけ離れている姿だ。

 

「ひゃ~~っくーー!!」

 

 一時間以上かけて、ついに百回の腕立て伏せを終えたセフィはそのまま床に倒れ込む。ひんやりした床の感触が伝わってきて心地いい、けど……。

 

「母上、お疲れさまー! で、胸の方はどう?」

 

「…………」

 

 ナナの問いに現実に意識を戻し、セフィは体を起こしながら体を見下ろす。しかし、肝心の胸は相変わらず平らなままだった。

 

「やっぱダメか。以前試したキューオクトパスを使った吸引法もあるけど、あれで大変な思いしたからな~」

 

「…………」

 

 呟くナナの横で春菜もその時を思い出し、顔を青くする。

 

「そうね。ナナのペットはすぐ暴走するし、他の方法を探した方が……」

 

 モモはデダイヤルを弄り、ある動画サイトにバストアップと打ち込み、見覚えのある姿を見つけ、思わずクリックする。すると……。

 

 

『では卯敷理保、最初の相談を読みます。胸が小さいのが悩みなんですが、大きくするにはどうすればいいのでしょうか?』

 

 袋いっぱいのたい焼きを右腕に抱えながら、金髪の少女は棒読みでもう片手に持ったスマホに書かれた相談を読み上げる。それに対し、青みがかったツインサイドの少女は顎に手を乗せて。

 

『バストアップですか。誰かに揉んでもらうと大きくなると聞きますね~。これは昔からある俗説ですが、異性に揉んでもらうとホルモンの影響と刺激で本当に大きくなるかもという研究発表があるとかないとか聞きますね~』

 

 

 

「異性に揉んでもらう!?」

 

 動画から届いてきた説にナナは思わず声を上げる。それを聞いて他の一同も大きく目を見張ったり顔を赤くする。

 

「この中で異性と言えば……」

 

 モモの言葉につられて、一同の目が“彼”に向かう。

 

『オレか? 胸くらいいくらでも触っていいけど――』

「違います!」

 

 モモはすげなく否定しながらセフィの元へ飛ぼうとするトライを引っ掴む。ペケより男子に近い性格のせいか、思わぬところでしゃしゃり出てくる。

 が、“肝心のもう一人”は――。

 

「いやいや! 俺がセフィさんの胸なんか揉むわけにいかねえだろう! 俺には西連寺がいるし!!」

 

 リトは残像が見えるほど首と両手をぶんぶん振る。が、モモは春奈に矛先を変えて――。

 

「春奈さん、リトさんがお母様の胸を揉むのを許していただけないでしょうか? チャームの問題がある以上、他の男性にお願いするわけに行きませんし、ここはリトさんにお願いするしか」

 

「ええっ――!?」

 

 突然にして予想外な頼みに春奈は素っ頓狂な声を返す。

 

(結城君に他の女の人の体を触ってほしくはない……でも、ララさんのお母さんをなんとかしてあげられるのは結城君しかいないみたいだし……)

 

「ちょ……ちょっと触るぐらいならいいんじゃないかな。触診みたいに異常がないか確かめるくらいなら……」

 

「――えっ?」

 

 か細い声ながら了承の返事を返す春菜に、リトは驚きと戸惑いが混じった声を上げる。

 こういう時真っ先に止めに入るナナもまさかの事態に目を点にしている。

 ここまで言われたら断る方がマズいんじゃないだろうか。

 そう思ってリトは覚悟を固めかける。ここから先は18禁版に移した方がいいだろうか?

 

 

「――って、やっぱマズいって! ギドさんとかに知られたら――」

「まうーー!!」

 

 リトが叫ぶと同時、長い緑髪の頂上に花びらを乗せた少女もとい幼女が部屋に飛び込んでくる。

 両手に『ぱいぱいアップくん』を持って。

 

「あれは――」

「いけない、あれを取り上げて!!」

 

 ナナは急いでセリーヌに走り寄る。が、セリーヌはナナの足元をすり抜けてセフィの元まで駆けてきた。

 さらにその拍子にセリーヌはスライムの上についているスイッチにぐいっと指を押し込んだ。

 その瞬間スライムの頭からぶわっと白い煙が噴き出し、セフィとセリーヌを包み込んだ。

 

「お母様!」

「セリーヌ! 大丈夫か!?」

 

 心配の声を上げるナナとモモ。その向こうから……。

 

「こほっ、こほっ、私は大丈夫……って、あら?」

 

 セフィは胸元の重みに気づき、ふと下を見る。そこにはたわわに膨らんだ胸が戻っていた。

 

「むね! 私のお胸が戻ってきたわ!! これでまた宇宙一の美妃を名乗れるわーー♪♪」

 

「まう~~」

 

 いきなり膨らんだ胸の重みでバランスを崩しこけるセリーヌとは対照的に、セフィは喜びのあまりその場をくるくる回り始める。

 ナナはセリーヌを助け起こしつつ……。

 

「もう一回吸ったら元に戻るのか。わかってたらすぐにガスを嗅がせたのに」

 

「胸の大きさが反転する発明品だからね。よく考えたらそれで戻るのも納得だわ」

 

 モモも腕を組み、ふむふむと頷く。

 その向こうでリトは胸に手を当てて安堵の息をついた。

 

(セリーヌのおかげで助かったー。でもセフィさんのためとはいえ、春奈ちゃんがあんなこと言うなんて)

 

 ちらりと春菜を見ると、彼女もその時を思い出したのか顔を赤くして床に視線を落とすのみだった。




【UZURIPO CHANNNEL】

「トラにちわー!! 毎度【UZURIPO CHANNNEL】の時間でーす! 今回は臨時アシスタントさんと一緒にお送りしまーす。今回アシスタントをしてくれるのは、あの変態校長をはじめ一部で人気のーー」

「金色の闇です。たい焼きを奢ってもらう代わりに、嫌々ながら今日だけアシスタントをすることになりました」

「おやー、今日だけでいいんですかー? “本業”を休んでから約二年、貯金が減って毎日のようにたい焼きを買えなくなったって困ってたじゃないですかー」

 意地悪そうに笑うリホに、ヤミはむすっと口を曲げる。
 そんな“元殺し屋”を恐れた様子もなく、リホはカメラに顔を戻した。

「さて、今回初めて登場した『トライ』というロボットですが、ヤミ先輩知ってました?」

 ヤミはたい焼きを一つ口にしてから頷き。

「はい。クイーン(王妃)・セフィ専用のコスチュームロボットですね。クイーンが出かける時は不可視のヴェール状態で彼女の顔を覆い、チャーム能力を防いでいます。他にもマルルのような護衛機能もあるとか。私はまだ見たことがありませんが」

「はー、なるほど。ペケ君やマルルちゃんと違って随分わんぱくですね。王妃様にも気安く『ママさん』なんて呼んでましたし」

「普段堅苦しい召使や護衛に囲まれてるクイーンにとって友達感覚で話せるロボットの方が楽しいかもという理由で、近所の子供や男子生徒を参考にAIを組んだとプリンセス・ララが言ってました。クイーン・セフィも弟ができたみたいと気に入っているようです」

「弟というより息子の方が近いんじゃ……まあうちの母も似たようなところがあるのでツッコみませんが。
 さて、セフィさんの胸も戻ってリト先輩も春菜先輩を裏切らずにすんだわけですが」

「あの結城リトにしては無事に終わりましたね。以前(原作)なら人目もはばからずクイーンにえっちぃことをしていそうですが」

以前(原作)レベルのトラブルをハーメルンでやったらR18送りですからね。そんなリト先輩にまたも試練! 今度行われるスポーツフェスタで、女子と密着する競技の数々が先輩に襲いかかる! ララ先輩と協力者もそろそろ動き出すかもしれませんし、どうなるんでしょう!?
 と煽っておいてあれですが、そろそろ愚王シリーズ4部を書くので次回までまたしばらく間が空くと思います。それまでのあいだトラなら~~♪」

「とらならー、モグモグ」


【挿絵表示】
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。