ToLOVEるIF・FINAL 銀河最強の女帝   作:ヒアデス

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次はスポーツフェスタをやると言ったな。あれは嘘だ。


第7話 女帝軍・特務部隊

 デビルーク星から遠く離れた某惑星。

 その星の人里離れた場所に建てられた鋼鉄製の基地の広間に、白色の制服を着た集団が集まっていた。

 

 先ほどまでざわざわ話し合っていた彼らだったが、目元にバイザーを巻いた老人が現れた途端、一斉に口を閉じ老人を注視する。

 老人はかつかつと杖を突きながらゆっくりと彼らの横を歩き、最奥に建てられた壇上に立つやわざとらしい咳払いとともに声を発した。

 

「皆、とうに知っていると思うが、この銀河の盟主星デビルークで大きな動きがあった。かの星の王ギド・ルシオン・デビルークが第一王女ララに破れ、王妃とともに遠い星に追放されたらしい」

 

 それを聞いて集団の中から――

 

「へっ、自分の娘に追い出されたのかよ。宇宙の帝王様がざまあねえな」

「所詮、見た目通りのチビガキに過ぎなかったってことか」

 

 何人かが嘲りの声を発した瞬間、所々から笑い声が漏れる。

 老人はもう一度ゴホンと大きな咳ばらいを立て、彼らを黙らせる。が、その表情に不愉快さはなく、むしろ小気味のよさそうに歪んだ笑みが浮かんでいた。

 

「ギドに代わって新たな王に就いたのは彼を打ち負かした王女、ララ・サタリン・デビルーク。本人は『女帝』と名乗っているがな。それをきっかけにデビルークによる支配体制からの脱退を考えている星も出始めていると聞く。

 ――これは絶好の好機だ。デビルークからの離脱を望んでいる各星に力を貸して独立戦争を起こさせる。そして愚昧(ぐまい)なデビルークに代わり、我々『ソルゲム』が銀河を導こうではないか!」

 

 

「首領閣下の言う通り!」

「デビルークやララなんて娘に宇宙は任せられねえ!!」

「銀河を支配するのは俺達だ!!」

 

 老人が片手を上げながら気炎を上げた瞬間、配下たちも鼻息荒く賛同の声を上げ、広間中に怒号と拍手が響き渡る。

 それを見て老人、いや“ソルゲム首領”はゆっくり片手を下ろしながら再び口を吊り上げた。

 

 

 彼らの名は『ソルゲム』。武器の違法製造・密輸から要人の暗殺、数百人もの民間人を巻き込むテロに手を染め、デビルークの支配体制の破壊をも企図した凶悪な違法組織だった。

 その危険性を重く見た別組織から“殺し屋クロ”が差し向けられ、壊滅状態に陥ったとされていたが、首領と一部の構成員は辛くも彼らの手から逃れ、この星に潜伏しつつ再起を図っていたのである。

 

 そしてついに“その時”が来た。デビルークと傘下星が混乱している隙を突いて各星に“商品(兵器)”を売りつけ、『新たな銀河大戦』を起こす時が。

 その兵器売買を一手に握れば、組織(ソルゲム)に途方もないほど巨額の金と一星系を支配できるほどの武力が手に入る。うまくいけば配下たちに言った通り、全宇宙を支配することも可能かもしれない。

 

 内心胸を躍らせながら、首領はデビルーク打倒に向けて新たな指示を出そうとした。が――

 

 

「ぐああああっ!!」

 

 おもむろに響いた鈍い悲鳴に、一同は笑みを消し外に顔を向ける。

 首領も不愉快げに顔を歪めながら『何事だ?』と怒鳴りつけようとした――その寸前にドアが吹き飛び、黒い服を着た集団が広間に押し入ってきた。

 

「な、なんだてめえらは?」

 

 ソルゲム構成員がとっさに銃を抜き、彼らに向けながら訊ねる。

 が、丸腰の彼らの後ろから“黒い尻尾”が伸び、構成員たちに向けられた。

 それを見て――

 

「その尻尾は、まさかデビル――ぐああああっ!!」

 

 続きを言いかけたところで尻尾からまばゆい光線が放たれ、構成員と十数名ほどの仲間が吞み込まれ、はるか向こうに(そび)える壁ごと吹き飛ぶ。

 それを合図に他の黒服も尻尾で構成員を消し飛ばし、または銃を抜いて狙撃し、または口からエネルギーを放って、構成員を撃ち倒していった。

 あっと言うほどの間もなく、ソルゲム構成員は二桁まで数を減らし、広間は荒れ果てた廃墟と化した。おそらく外の部屋も同じだろう。

 

「年貢の納め時だな、“元首領”。配下ともども大人しく降伏するがよい」

 

 隊員たちの後ろから厳めしい言葉が放たれ、部下をかき分けるように首領以上に歳を取った白髪の老人が姿を現す。だが、首領と違い杖など使わず二脚の脚で床を踏みしめ、まっすぐに背筋を伸ばしたその姿には一切の隙も衰えも見えなかった。

 

「ボーナム、貴様まだデビルークなどに従っていたのか」

 

 ボーナムという指揮官に首領は憎々しげな視線と言葉を投げつける。

 かつてデビルークの部隊がソルゲムの制圧作戦を実行した時、その部隊を率いていたボーナムと首領は対峙し、己が思想と力をぶつけあった事がある。首領が杖が必要なほどの負傷を負ったのもボーナムに破れた結果だ。ボーナムが一時期腰を悪くしたのもその戦いが一因かもしれない。

 

「ギド王も王妃も王女達もまだまだお若い。儂のような老木の知恵と経験が役に立つ時があるかもしれん」

 

「その王は娘に敗れて辺境に追い出されたらしいではないか! その娘も勝手に女帝を名乗り銀河中に不埒な姿を晒す始末。貴様ほどの男が付くに値せん連中だ。奴らなどここで切り捨ててワシと手を組まんか? ワシとお前が組めば銀河を支配することができる。お前にならソルゲム副首領の座と銀河の半分を譲ってやってもいい!」

 

 数メートルの距離にありながら、言葉どおりボーナムと手を組もうとするように首領は大きく片手を伸ばす。

 だが、ボーナムは険しい顔のまま首を横に振り。

 

「断る。ギド様とララ様が仲違いをしている今こそ、儂がどちらかのお傍におらねばならん。それにお主達の非道を見過ごすつもりも、まして片棒を担ぐつもりなどさらさらない。分かれば速やかにそこから降り投降せよ。お主のような悪党相手でも無用な戦いや殺生はしたくない」

 

「……そうか」

 

 迷いのない断言に首領は大きな溜息と諦めたような言葉を漏らす。

 “ボーナムに向かって片手を伸ばしたまま”。

 

「ならば――貴様が死ねええぇぇっ!!」

 

 首領が吼えると同時、彼の掌に取り付けられていた銃口が白く光った。ボーナムはすぐに身構え攻撃に備えるが――

 

 

 パンッ。

 

 

 ボーナムの後ろから軽い射撃音が響く。その瞬間、

 

「ぐおっ……きさま……」

 

 苦しげに胸を押さえ、首領は射撃先に向かって怨嗟に満ちた視線を向ける。ボーナムもそちらを見、気付いた。

 黒いローブとフードを被った者が銃を持ちながら立っているのを。

 ローブを着た者、通称“ローブ”は銃身をわずかに上げ、ボーナムが止める間もなく再び引き金を引いた。

 

「――ぐ!」

 

 脳天を撃たれた瞬間、頭から電撃が走り、首領はその場で倒れ伏す。

 それを見て構成員たちが顔を青ざめさせた直後、ボーナムが「捕らえよ」と言葉を放ち、隊員たちは駆け出し残りの構成員を捕らえていった。

 それを横目にローブはボーナムの横まで歩き、吐き捨てた。

 

「危ないところだったな、ボーナム将軍。あのような(くず)相手に情けをかけるからだ」

 

「……ああ、すまぬな。もしや殺めたのか?」

 

 ボーナムの問いにローブはくくっと喉を鳴らす。

 

「女帝陛下とデビルーク帝国に害をなそうとした者達だ。問題なかろう……と言いたいが、他の拠点や残党の有無も吐かせる必要があるしな。死んではおらん。――なんにしろ『デビルーク女帝軍』と『特務部隊』の運用試験としてはまずまずの成果か」

 

 その言葉にボーナムは肯定も否定もせず、自らの部下()()()()部隊の隊員達を見渡す。

 

 彼らはデビルーク星人とその他の星人を混ぜ合わせた混成部隊だった。

 女帝ララの“要請”により、デビルーク本星と友好星から集められた軍人からなる『デビルーク女帝軍』。

 さらにその中から選りすぐった『特務部隊』の指揮官に、ボーナムが選ばれたのだ。

 

 先王ギドの懐刀と呼ばれたボーナムの能力を買われたのは間違いない。しかしその一方で、未だギドに強い忠誠心を持つ彼が自身の命令通り動くか確かめる“試金石”でもあり、万が一に備えて自身から遠ざける口実でもあるのだろう。

 今まで見たこともない、男女かも分からぬような者を補佐(目付)に付けておくぐらいだ。間違いあるまい。

 

 

「反乱分子の壊滅と貴君の働きを聞けば女帝陛下もお喜びになるだろう。そう腐ることはない。――私はこの星に残って事後処理を済ませておく。将軍は一足先に部隊とともにデビルーク星に戻ってくれ」

 

 内心を見透かしたかの如く慰めのような言葉をかけるローブに、ボーナムは嫌厭(けんえん)感を覚えながらも……

 

「その“事後処理”とやらは女帝陛下もご存じのことか?」

 

 その問いに、ローブはボーナムの方を向き一呼吸ほどの間を置き、首を縦に振った。

 

「無論だ。“次の任務”の準備を言いつけられていてな。将軍達の手はいらん。私と部下で事足りる」

 

「……わかった。この星の王への報告は儂が済ませておこう」

 

 ソルゲムのような不穏分子を匿わないように釘を刺しておく必要がある。

 内心でそう付け足し、何かあったらすぐに報告するように告げてからボーナムは部下たちを呼び寄せてデビルーク星への帰還を告げる。

 辺境から解放される喜びや物足りなさを訴えながら出ていく一同をよそに、ローブはちらりと広間の片隅に目をやり、そこに歩を進める。

 そこで物陰から一人のソルゲム残党が飛び出て、ローブに向けて銃口を向けた。

 

「さ、騒ぐな! 一言でも喋ったら撃つ!」

 

 自らに向けられた銃に凄むことなく、ローブは冷ややかに相手を見つめる。

 そして……。

 

(おび)えなくていい。貴様ごとき私が手を煩わせる価値もない。大人しくしていれば見逃してやろう……と思ったが」

 

 ローブは震えた手で銃を構える構成員を向かって一歩また一歩近づきながら、

 

「ボーナムや軍人ども、そして私がしばらく気付かないほどの隠密能力。使いようによってはそれなりの駒になるかもしれん……」

 

 呟きながらゆっくりと自らの顔を覆うフードに手をかける。それを見て構成員は体を震わせ、

 

「う、動くな! 動くと本当に――」

 

 引き金にかかった指に力がこもる。本当に撃てばボーナム達が聞きつけてくるかもしれない事もすっかり頭から抜けて。

 

 

落ち着きなさい

 

【挿絵表示】

 

 

 

 ローブがフードを外した瞬間、構成員はぴたりと動きを止める。

 

 そこにいたのは長い銀髪の美女だった。それも絶世と言えるほどの。

 少なくとも()()()()()()()、目の前にいるのはこの宇宙で最も美しい人間だった。あのセフィ・ミカエラ・デビルークさえ霞むほどの。

 血のように真紅に染まった両眼でソルゲム構成員“だった男”を見下ろしながら、彼女は告げる。

 

「寄る辺を失ったお前に新たな生き方を教えてやろう。私に仕え、私のためだけに生き、私のためだけに死ぬという生き方を。その(ねずみ)のように隠れ潜む能力を私のために使え。それを誓えば、今から死ぬまでの間は私に仕えることを許してやる」

 

 冷たく甘い声が耳に届いた瞬間、男は銃から手を離し――

 

「は……はい、今から死ぬまでの間、貴女(あなた)様のためだけに尽くさせてください!」

 

 両手と頭を床にこすりつけながら忠誠の言を口にし、彼女の興を失わないよう必死に媚びを売る。

 彼女に仕え、彼女のために尽くすこと。それが今の彼にとって至上の()びとなった。

 反して、ローブは笑みを消し“新たな下僕”を冷ややかに見下す。

 その後ろから――

 

「いやー、相変わらず大したものですね~。さっきまでガタガタ震えながら銃を向けていたのに、顔見た途端これなんだから」

 

「……リンか。遅いぞ」

 

 ローブは驚きもせず呆れの息をつきながら後ろを振り返る。男が正気に戻って襲い掛かるなど、考えもしていない。

 一方、リンと呼ばれた緑髪の部下は二本のアホ毛を揺らしながら、カラカラと笑い声を返した。

 

「すいません、母星から連絡が入ってきまして。ララ様を怒らせてないかとか、いざという時は子供たちがいる地球という星に逃げろとか、心配性な叔父様ですよ。オレはこのとおりロブ様の下で十分満ち足りた生活を送ってるのに」

 

 そう言って、リンはにっと白い歯を向ける。

 一方、ローブは顎に手を当て……。

 

「“地球”か……ギドとセフィと残りの娘ども、そして変身(トランス)兵器達もいる惑星……女帝殿からは手を出すなと言われているが……突いてみる程度はしてもいいかもしれん」

 

「何だか知らないけど、ロブ様が行くならオレもついていきますよ! あっちにはツテというか利用できそうなのがいますんで、オレがいた方がいいですって」

「お、俺も! 小間使いでも弾避けにでも何なりとお使いください!」

 

 下僕たちは当然のように同行をねだる。そんな二人の間でローブは両腕を組み。

 

――ギドと結城リトはセフィの魅了(チャーム)を跳ね除けたと聞く。私の能力も効かなければ、最低でもあの二人は始末しておかねばならん。もし結城リトを下僕にすればララを完全に従えるのに使えるかもしれんしな。

 

 そこまで考え、彼女はにやりと唇を吊り上げた。




【UZURIPO CHANNEL】番外編


【挿絵表示】


「さあ、いよいよ始まりました。暑すぎる夏から春下旬に移行した彩南高校スポーツフェスタ!
 実況と司会は『配信部』の部長にして彩南校の『真・放送部長』とも言われるウズリポが行います!」

「ちょっと待った! スポーツフェスタの実況は放送部の俺がやると決まってんだ! なんで配信部だか何とかチャンネルをやってるからってウズリポに実況取られなきゃならねえんだ!」

 さっきまで後ろでピース向けながら、実況が始まった途端文句をつけてくる猿山にリホは大げさなほど肩をすくめ。

「猿山先輩じゃ華がないからですよ。原作・ハーメルン読者のほとんどは猿山先輩が放送部だったってことも覚えてないでしょうし。生徒アンケートでもお友達らしい数人以外はみんな私の方がいいって書いてるんですよ。はい見てください!」

 あらかじめ予測していたかの如く、リホは実況席に置いたプリントを突き出す。猿山はそれを受け取り鼻息荒くプリントに顔を近づけ、わなわなと体を震わせた。

「生徒360人のうち、352人がリホ、俺が司会でいいと言ったのはたった8人だとぉ〜」

 生徒のほとんどどころか、20人ほどの友達も半数以上が裏切った形になる。

「猿山先輩じゃエッチなハプニングが起こった時、校長と一緒に気色悪い歓声上げるだけなのが目に見えてますからね。というわけで、今年からは私が司会と実況をやらせてもらいます! チャンネルの配信も身元伏せればOKということになってますので、あしからず。
 それではスポーツフェスタ、開始〜!!」



前書きで語った通り、スポーツフェスタはここまでです。
私の筆力では全年齢を維持したままラッキースケベイベントを挟み込むのは難しい上に、そろそろ本編も進めたいのでご了承ください。
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