ToLOVEるIF・FINAL 銀河最強の女帝 作:ヒアデス
早朝、町のはずれに数人の男女が光に包まれながら現れた。全員ラフな私服姿で、そのまますぐ町に入れる格好である。
「ここが
スマホに映った地図を見ながら呟く男に、短い茶髪の少女もスマホに目を落としながら頷きを返す。
「うん。ここにデビルーク星の元王様と王妃様、王女様たちもいるはずや……“結城リト”って男の子も」
「よし。じゃあまずは王女達が通っている高校に潜入するぞ。ここは“管理外世界”だから“上”からの支援や応援は望めない。十分気を付けるように」
「うん!」
「了解です、
一緒に来た栗色髪の少女と長く下ろした金髪の少女も頷きと返事を返す。
そこへ――
「やあやあ先輩たち、お久しぶりでーす!! ようこそ彩南町へ!」
あらぬ方から女の子のものらしき声が響いて、一同はそちらに目を向ける。
そこには短いサイドアップに結んだ青髪の少女が立っていた。
彼女を見て、男はふぅと短いため息をついてから口を開く。
「まだここに居たのか。騒動に巻き込まれないうちに向こうに帰るよう言ってるはずだが」
「いやー、ネタも話題も豊富にありますから、まだ帰る気はありません。それに先輩たちの案内役ができるぐらいには溶け込んでますから、遠慮なく頼ってください」
“元後輩”の言葉に、少女二人は心配そうに顔を見合わせる。
一方、男は副官でもある茶髪の少女と視線を交わし、頭を掻きながら返事を返した。
「わかった、じゃあ案内と校長あたりとの仲介を頼む――“
そう言いながら顔を向けてくる先輩たちに対し、理保はドンと強く胸を叩き「任せてください!」と告げた。
◆
セフィの貧乳化や昨年と比べてやや無難に終わったスポーツフェスタから一週間ほど経ったある日の事。
「リトさん、ネクタイ曲がってますよ」
「えっ? 本当か?」
「おいモモ、適当なこと言ってリトにくっつこうとすんなって! コケてまたエロいことされるぞ!」
二人を引きはがそうとナナが二人の間に割って入る。そんなやり取りを交わしながら廊下を歩いていると――
「あははっ! 相変わらず仲いいですね先輩たち!!」
向こうから黄色い声が響き、リトとナナはなんだと思いながら、モモはまさかと眉を顰めながらそちらを見る。
モモが思った通り、そこにいたのは――
「モモ先輩おはようございます! 噂通りリト先輩にべったりですね。彼女の西連寺先輩にバレても知りませんよ♪」
「卯敷さんですか……」
サイドアップに結んだ青髪の下級生、卯月理保を見てモモはあからさまに顔をしかめながらリトから離れる。
一方、ナナは理保を見た途端、紫色の瞳をぱちくりさせて、
「あれ? お前ってこの前スポーツフェスタで司会やってた――」
「はい! 配信部の部長にして【UZURIPO CHANNEL】の
「えっ……?」
最後の一言にナナは唖然と声を返す。そんなナナの横をすり抜けて、理保はリトの傍まで近づいてきた。
「初めまして結城先輩。先輩のことも色々聞いてますよ、彩南中の美少女を独り占めしているハーレム王とか、コけたふりで女の子の体を好き放題揉みしだいてるとか、女帝騒動の真の元凶とか色々♪」
「え、それはその……」
意地が悪そうな笑みを浮かべながら重い事実を並べてくる後輩を相手に、リトは言葉を詰まらせる。
それを見て、モモがこめかみを引きつらせたところで――
「もうリホちゃん! また先輩たちを困らせて!!」
後ろから響いた声にリトと姉妹はそちらを振り向く。
そこには短いツインテール状に
三人もの上級生に見つめられているのに気付き、女の子はすぐに頭を下げた。
「すみません先輩。リホちゃんったら話題や噂になってる人を見るたび、私たちが止めるのも聞かず飛び込んで行っちゃうので」
悪びれもしてない理保の代わりに謝罪を繰り返す彼女に対し、ナナは片手を振りながら笑みを向けて返事を返した。
「いいよいいよ。リトがスケベなのと姉上がグレちまった原因っぽいのはホントだし」
「リトさんに悪気はないし、今は転倒癖もなくなってるんですけどね……ところで、あなたはもしかして理保さんの……」
胸元に付けられた赤いリボンを見ながら尋ねるモモに、彼女は笑みを作りながら姿勢を正し――
「あっ、初めまして。一年C組のラン・エルニィです。友達が失礼して本当にごめんなさい――ほらリホちゃん、先輩たちに迷惑だしもう教室に帰るよ!」
「あっ、待ってラン! “先輩たち”の案内もしないといけないから――」
可愛らしい口喧嘩をしながら、ランと理保は職員室の方へ向かっていく。リトもナナたちは唖然としながら彼女たちを見送り、自分たちの教室に向かうべく階段を登っていった。
ランが告げた名前と姿を思い出し、『“誰か”に似てるような』と思いながら……。
◆
二時間後。今年はクラスが別というのもあって今日も春菜と話をする間もなく、授業を終えて廊下をぶらついているリトの前に、山積みになったプリントの束を抱えながら歩いている女の子が見えた。
根元だけが黒い白髪の少女を見て……。
(あの子は朝リホって子と一緒にいた――)
「よいしょ――あっ!」
顔が見えなくなるまで積まれたプリントに、ランは足をよろめかせ、プリントを抱えたまま転びかける。そこへリトが手を伸ばし、彼女の肩を支えた。
「大丈夫か?」
「あっ、すみません先輩!」
リトのおかげでかろうじて転倒を免れたランは、リトに頭を下げようとする。が、プリントが崩れかけるのに気付き、慌てて持ち直す。そこへリトがプリントを半分ほど奪い取るように持って言った。
「俺も手伝うよ。半分借りるよ」
「あっ、いいですよ。私の手伝いなんかで先輩の休みを邪魔するの申し訳ないですし」
「気にすんなって。暇でぶらぶらしてたとこだから。どこに持っていくんだ?」
リトの問いに「職員室です」と答えながら、ランも半分残ったプリントを抱えてリトの隣を歩く。
「休み時間にプリントなんか運ばされてて、クラス委員の仕事かなんかか?」
「はい。友達の推薦で委員になっちゃって。先生やみんなから頼られるのはうれしいんですけどね」
ランは笑みを浮かべながら付け加える。その表情を見て、リトの脳裏から先生やクラスメイトを責めようという気は薄れた。
「朝一緒にいた子は? 友達みたいだけど手伝ってくれないのか?」
「リホちゃんは知り合いの人が留学に来るみたいで、その人たちの案内のために校長室に行ってます」
「校長室に……」
あの変態が脳裏に浮かび、リトは顔を青くする。そこへちょうど「ぎにゃっ!」と野太い男の叫び声が響き、二人はびくりとしながら顔を向ける。
そこは目的地の職員室――の隣にある校長室の扉だった。
「すみません、つい」
「いえいえ、校長先生が失礼しました。どうぞこちらへ」
会話が聞こえてしばらくして、がちゃりと扉が開き、教頭と四人の男女が出てくる。四人とも
真っ先に出てきた男は「んっ?」と、黒い右目と緑色の左目を下げてリトたちを見た。
「え……えっと、どうも」
初めて見るオッドアイとかすかな威圧感に竦みながら、リトは挨拶らしき言葉をかける。男もそれに頷き、
「初めまして。今日から一週間だけこの学校に留学することになりました。よろしくお願いします」
「あ、どうも。結城リトです」
丁寧に頭を下げる男に、リトも敬語で自己紹介をし頭を下げ返す。
が……
「結城リト……君がか?」
「は、はい? そうですが……」
訝し気に自身の名を呼ばれ、リトも怪訝な声で返事を返す。不穏な空気にランはおろか教頭まで立ち尽くしている中、御神の後ろから声がかかった。
「もう
男の後ろから現れた十字の髪飾りを付けた短い茶髪の女子は片手を立てて、リトと隣に立つランに詫びを入れる。さらに彼女の後ろからツインテールに分けた栗色髪の女子と長く下ろした金髪の女子まで出てきた。
その後ろには
「あっ、リト先輩、二時間ぶりですね! ランも一緒だったんだ……いやらしい事されなかった?」
にやけた顔で尋ねる理保にランはぶんぶんと頭を振って否定する。そこで理保はリトに顔を戻し、なんでもなさそうに言った。
「ちょうどよかった。紹介しますね。私が
紹介しようとするリホに「ああ、さっき聞いた」と短く返し、男はリトの前まで来た。
「
そう言って御神健斗は片手を伸ばそうとするが、リトが持っているプリントの山に気付き、手を戻しながら軽く頭を下げる。
そんな留学生たちに対し、リトとランは「よろしくお願いします」と返すしかできなかった。
【別Side】
「ほう、君たちが聖祥からの留学生さんですかー」
感嘆とした声を漏らしながら尋ねる校長に、理保は軽い頷きを返す。
「はい。四人とも私がお世話になった先輩たちで、成績も素行も問題ありませんよ」
「お忙しいところ迷惑かもしれませんが、よろしくお願いします」
リホの隣で頭を下げる健斗に、校長は片手を振る。
「いやいや、聖祥の学生さんたちが当校を留学先に選んでいただいて光栄ですよ。一週間と言わず、好きなだけいらしてください……それに」
「三人ともかなりの逸材――特に金髪の君」
「えっ――私?」
サングラス越しに視線を向けられ、フェイトは上ずった声を発する。それに構わず……
「金色に輝く長い髪に赤い目……まるでヤミちゃんが成長したかのよう。そう考えただけで――」
「まずい! 君たち、早く逃げ――」
校長の変化に気付き慌てて教頭が叫ぶが、最後まで言い切る間もなく――
「ふおおおおおぉぉ、たぎってきたーー!!」
一瞬ほどの間もなく、校長はスーツを脱ぎ捨て
その間に健斗は足音も立てず校長の後ろに移動し、彼の首筋にとんと手刀を立てた。
手刀を受けた瞬間、「ぎにゃ」と短い呻きを漏らしながら校長は床に倒れ伏す。
御神は手をさすりながら教頭に向かって頭を下げた。
「すみません、とっさの事でつい」
謝罪を受けた瞬間、教頭は我に返ったようにはっとし、
「い、いえいえ、校長先生が失礼しました。後はこちらで済ませますので、どうぞこちらへ」
そう言って、彼は扉の方に向かう。
その下で校長は倒れたまま、
「せめて、カワイ子ちゃんにお仕置きされたかった……」
そんなうわ言を漏らす校長を白い目で見下ろしながら、健斗は理保に視線を移し。
「……いつもこんな事が起きてるのか?」
その問いに理保はこくりと首を縦に振る。
「はい。これぐらいはいつもの事です。校長ぐらいなら護身術で何とかなりますし、リト先輩も三年になってからはハレンチなトラブルを起こす事がなくなったので、噂より平和なぐらいですよ!」
――これで平和なのか。どうやらとんでもないとこに来てしまったらしい。が、“女帝騒動”とやらの危険度を調べるためにここを外すわけにいかん。まずは王女たちと女帝の元婚約者という“結城リト”とやらをあたってみないとな。
そうこう考えているうちに扉が開き、一同の前にぽかんとした顔でこちらを見ている茶髪の男子と黒毛の混じった白髪の女子が見えた。
そのうち片方が女帝騒動の元凶とされている、“結城リト”である。
新キャラが登場しすぎかと思いますが、これ以上延ばしても仕方ないのでランの話と健斗たちの登場シーンを混ぜる事にしました。
早く健斗と〇〇の戦いを書きたい。