キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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母の日デート こころの大事な思い出

影人とこころの二人は紫雨家を後にしてデートを開始。二人が街中を歩くと今日が母の日であるためか街は活気で溢れており、人通りも多い。加えて、母の日のフェアがあちこちで開催中であった。

 

「どこもかしこも賑わってますね」

 

「ああ。母の日だし、母親への感謝を伝えるための日だからだね。特に多いのは子供連れの父親とか若い大人とかだな」

 

子供は自分に愛情を注いでくれている母親にお礼を言いたいという事で自分の父親にねだる事をしているし、若い大人達はもう自分達で母親への感謝を伝えるための物を買う事ができるようになっている。そう考えるとこれらの年齢層が多いのは自然な事だろう。

 

「カゲ君はお母さんには何を贈るつもりですか?」

 

「俺は無難にシャンプーとかトリートメントになるかも。母さん、髪の毛の手入れとか結構やってるイメージだし」

 

「そうなんですね……。私は、カーネーションを贈ろうかなと」

 

「カーネーションか。真っ直ぐにお母さんへの気持ちを伝えようとする感じ、こころらしい選択だな」

 

それから影人とこころは早速花屋に入るとこころはカーネーションを購入。それと同時に影人も何故か購入していた。

 

「あれ?カゲ君はカーネーションを贈らないはずじゃ……」

 

「これは夢乃が贈る分。夢乃からお金は貰ってるし、一緒に探してきてと頼まれてたから」

 

「なるほど、だからカゲ君は夢乃ちゃんとの被りを避けるためのシャンプー系なんですね」

 

影人と夢乃では手持ちのお金の関係で影人の方が高い買い物が可能だ。そのため、夢乃の方をお手頃かつ確実に母の日のプレゼントになるカーネーションにする事で二人が喧嘩する事なくプレゼントできるようにしているのである。

 

こころはそんな妹想いの影人の話を聞いて改めて感じた事をそのまま口にした。

 

「そう考えるとカゲ君ってやっぱり夢乃ちゃんに凄い甘くて優しいですよね」

 

「ああ。ちょっと甘やかし過ぎて極度のブラコンになってしまったのがやらかしだがな……」

 

影人はそう言って少し悔やまれるような顔つきになる。ただ、こころとしてはアレだけ夢乃は影人に甘やかされているのにそれで堕落して兄に頼りきりな子にならないのが不思議であった。

 

「でも、その割には夢乃ちゃんはしっかりした子ですよ。私が見ても完全にカゲ君へと依存してるわけじゃありませんし。夢乃ちゃんのカゲ君への気持ちは大好きなお兄ちゃんって程度に止まってます。普通なら甘やかされ過ぎたらその人に依存すると思いますよ」

 

こころは一人っ子なので自分以外で家族内には兄弟姉妹がいない。ただ、こころには弟や妹がいないのに自身がしっかりしているのはやはり彼女の家庭の事情があるのだろう。

 

「俺から言わせたらこころも十分しっかりしてると思うけどな」

 

「……私なんてまだまだですよ。いつもカゲ君には頼ってばかりです」

 

こころは自分の情けなさを嘆くようにそう呟く。影人はそんなこころを優しく撫でた。

 

「少なくとも、俺から見たこころはしっかりしてるって言える。卑屈になるのは良いけど、あまり気負い過ぎるのは俺も気分が良くない。今日はそういう感情は無しで行こう」

 

「はい……」

 

そんな中、店員がカーネーションを購入した影人達へとプレゼント用の包装をしたカーネーションの入った袋を手渡す。

 

「お待たせしました」

 

「わぁ……」

 

「あれ……これって……」

 

こころがプレゼント仕様のカーネーションを見て顔を輝かせる中、影人がとある物も袋に付いているのを見て指摘していた。

 

「今日は母の日なのでメッセージカードもお付けしてます」

 

それを聞いてこころは少し考え込む。どうやらメッセージについて気にしているらしいのだ。そんな中で店員がコッソリと影人へと近寄る。

 

「あの、先程のカーネーション……包装を分けるように言われたのってもしかして」

 

「……彼女には内緒でお願いします」

 

「ふふっ。優しい彼氏さんですね。きっと彼女さんも喜びますよ」

 

そんなやり取りが二人の間にある中で、こころはいつまでも影人が店員と何かを話しているのが気になったこころが声をかけた。

 

「カゲ君〜?何してるんですか?」

 

「悪い、ちょっと世間話をな」

 

「……カゲ君、最近ちょっと私への隠し事多くないですか?」

 

「大丈夫。少なくとも、こころを悲しませるようなそんな隠し事じゃないのは保証する。もう少ししたら明かすから待っててくれ」

 

「むう……。なんだか納得できませんがわかりましたよ……」

 

こころは少し膨れたような顔つきになると不機嫌そうな感じである。最近、自分への隠し事を増やしている影人にこころはどうしても疑惑の目線を向けてしまうのだ。

 

「(カゲ君、私にも話せない事って何を隠してるんでしょうか……。ううん。疑ってばかりじゃダメです。カゲ君は悲しむ事じゃないって言ってましたし、カゲ君を信じましょう)」

 

こころは影人が自分にしている隠し事に不安を抱きつつ、影人は自分を裏切るような人では無いとわかっているので彼を信じようと考えて自分を納得させる事になる。

 

「そう言えば、こころは何を悩んでたんだ?」

 

「え?」

 

「ほら、さっきメッセージカードと睨めっこしてただろ」

 

「……私が書くメッセージ……どうしようかなって思ってて。正直、伝えたい事が多すぎて何を書けば良いのかなって」

 

こころが悩んでいたのはメッセージカードの中身の部分であった。彼女は母子家庭であるため、幼い頃に亡くなってしまった父親の代わりに女手一つで自分を育ててくれた母親にこころは感謝の気持ちでいっぱいなのである。

 

「うーん……こころがお母さんと作った思い出の中で一番心キュンキュンした物とかを書くのは?」

 

「一番心キュンキュンした思い出……」

 

こころがそれを聞いてまた考え込む。しかし、こころの顔は次第に曇っていく。

 

「……その感じだと一つに絞れてないな?」

 

「はい……その、色々と思い浮かび過ぎて……」

 

「そうか」

 

影人としては母親への感謝の気持ちをちゃんと伝えられる文であるなら大丈夫だと言いたかった。しかし、それはこころにとっての最適解では無いとも感じている。何度も言うが、こころは幼い頃にはもう既に父親を亡くしてしまっているのだ。そう考えると、母親への気持ちは普通の人よりも何倍も強い。

 

勿論、父親への気持ちもあるだろうが一緒に過ごしてきた時間や父親を最後に見た瞬間から時間が経っているがために、現在進行形で側にいる母親へと気持ちが偏るのも無理はないだろう。

 

「……だったら何か思い出に紐づいた普段はやらないような特別な行動をしてみるっていうのはどうだ?」

 

「特別な行動……」

 

「日頃手伝いでやらない事をするとか」

 

「でも、私は大体の家でのお手伝いなら普段からやってるので……」

 

「こころの性格から考えるとそうだろうな」

 

こころは母親が亡くなった父親の分まで働いている事もあるのと、一緒に暮らしている母方の祖父、祖母の力になりたいという事で大抵のお手伝いは普段からやっている。それでは感謝は示せても特別感は無いだろう。

 

「……無理に今すぐ思い出さなくても良い。今日中にできる何かがたった一つあればそれを満たせる」

 

影人からの提案にこころは影人とのデート内で何度目かわからないくらいに考え込む。

 

「こころ、考える時間を作るためにあそこに寄っていこうか」

 

「え?は、はい」

 

影人が指差す先には大人が買うような高価な物から手頃に買える安い物まで揃っているアクセサリー店があり、こころはそれに頷くと二人で入った。

 

「カゲ君はどうしてここに?」

 

「ちょっと探したい物があってな」

 

影人と共に二人で回る中、二人は一旦大人の女性が付けるようなネックレスとかのコーナーへと入る。

 

「ふわぁあ……綺麗です」

 

「宝石の輝きが凄い眩しいくらいだな」

 

「でも、カゲ君が買うにはちょっと値段が……」

 

「あはは……流石にこれは手が出しづらいのはそうかもな」

 

流石にこのコーナーにある宝石とかがあるアクセサリーはちょっとお高い。そう考えると今影人が見るべき物では無いようにも見て取れる。

 

「珍しいですね。カゲ君がこういうアクセサリーを重点的に見るの……。しかもこれ、女性用ですよ?」

 

「ん?こころが将来、どんな人になるかな〜って想像しながらこのネックレスとかを付けてキラキラしてる姿を予想してる」

 

「か、カゲ君!?私はまだ……」

 

「気が早いのは俺も感じてる。でも、そのくらいこころといられる時間が幸せって事。……あ、あそこかな」

 

こころの質問に影人が答えつつ彼はとある物を見つけたのか、その方向へと歩き出した。そんな彼を追いかけるこころが見た視線の先にあったのはペアルックで存在する黒みのかかったバイオレットのような紫と明るめの蛍光色に近い白い縁取りも施されたライトパープルのカラーリングのブレスレットだった。

 

「良かった……ちゃんと発売したてって事もあってまだ残ってたな」

 

「カゲ君……。この色合い……もしかして」

 

「ああ。少し前にレイや田中さんから話を聞いてた隠れのアイドルプリキュアグッズだよ」

 

どうやら、このペアルックのブレスレットはほぼ同時期に登場した紫に近いカラーリングであるキュアソウルとキュアキュンキュンをモチーフにしたペアルックのブレスレットらしい。

 

「でも、何で隠れなんですか?アイドルプリキュアのグッズだって言えばもっと売れるはずなのに」

 

「……これの開発者さんの意向なんだと。アイドルプリキュアの人気に引っ張られて売れる物にしたく無い。むしろ、このブレスレットは数の少ないレアアイテムにしたいって」

 

元々レイや田中に転がり込んだ依頼内容としてはこのペアルックブレスレットを作る際にキュアソウルとキュアキュンキュンのカラーリングをモチーフにしても良いかの確認。及び、隠れモチーフとして使って良いかの許可が欲しかったのだ。

 

「プリキュアとして俺達が出た当時、お付き合いを始めた事もあって持ってたら恋愛で良いことがきっとあるっていうおまじないも込められてるとかね」

 

「そんな事情があったんですね……って、だとしたら何で私の方に話が来なかったんですか?うた先輩達は知らされなくても仕方ないとは思いますけど」

 

「それは俺が先回りしてレイと田中さんに頼み込んだ。今日ここでサプライズで見せるために」

 

そう言って影人はペアルックの片方であるキュンキュンが隠れモチーフの方のブレスレットを渡す。

 

「もう、カゲ君。また私に隠し事して……。でも、嬉しいです。私とカゲ君が隣に並んでるみたいで」

 

それから影人はレジに向かうと相談の結果、今回は割り勘で二人で購入する事にした。尚、この時も影人は店員から可愛い彼女のために色々としてあげているのだと察せられて言われたが、影人は苦笑いしてそれをどうにか捌く事に。

 

「カゲ君、サプライズでありがとう」

 

「ああ。俺の方もブレスレットが最近発売したてって事で多分残ってる確証はあったけど、無かったら焦る所だったから」

 

こころは早速購入したブレスレットを右腕に付ける。影人もそれに倣って左腕に付けると影人はこころへと手を差し出す。

 

「こころ、恋人繋ぎしよ」

 

「……もう、当たり前じゃないですか」

 

それから二人が手を繋ぐとその瞬間、こころの脳裏にいきなりある光景が浮かび上がる。

 

〜回想〜

 

それはこころが幼い頃、母子家庭という事で遅くまで働いている母親が迎えに来るまで一人で保育園の館内で一人で寂しく遊んで待っていた事を思い出す。

 

周りの子達は数時間前にとっくに迎えが来ては次々に帰ってしまっていた。外は日が沈んで暗くなっており、夕方どころか夜になってしまっていたのだ。

 

「………」

 

幼いこころにも友達はいたが、流石にこんな夜の時間まで親が迎えに来ない事なんて無い。時間が時間なので積み木の玩具も片付けなければならず、一人でただひたすらに迎えを待っていた。普通の子なら寂しがってもおかしくなかったが、こころにとってはこれは日常。

 

更に彼女はこの頃にはかつてこころの祖父祖母から話があった通り、心の中で無意識に気持ちを押さえ込む癖を覚えてしまっていたので特に周りにそれを悟られる事も無い。でも、そんな彼女が顔を綻ばせる瞬間があった。

 

「こころ!」

 

「あっ……お母さん!」

 

それは、遅くに自分を迎えに来てくれた母親の温もりである。こころを迎えに来た愛は仕事の疲れもあったにも関わらず、こころを優しく抱きしめてくれた。

 

「遅くなってごめんね……」

 

「ううん……。大丈夫だよ」

 

「さぁ、お家に帰ろう」

 

そして、最後は母親と手を繋いで一緒に歩いて帰るのだ。暗くなってしまった夜道の中で夕ご飯の話をしながら……。

 

「ねぇねぇ、お母さん。今日のご飯何かな?」

 

「今日はこころの大好きなピーマンの肉詰めだよ!」

 

「やった!」

 

こころにとって、どんなに遅かったとしても自分をちゃんと迎えに来てくれる母親が大きな心の支えだった。そしてピーマンの肉詰めが出たその日の夜、紫雨家の食卓にはこころの前に一瞬だけピーマンの肉詰めのレシピッピも姿を現していた。

 

「ピピピ〜ッ!」

 

こころは当時、その姿が一瞬しか見えなかったので見間違えで済ませたのだがそれが今朝の光景にも繋がったのである。

 

〜現在〜

 

こころは幼い頃の思い出を浮かべるとその頃から自分の側にずっと寄り添ってくれた母への感謝の気持ちがとめどなく溢れ出てきた。

 

「そっか……あの子が出てきたのはこの日だったんだね……」

 

「あの子?」

 

「ううん。私の独り言」

 

こころが影人の問いにこう返す中、彼女はふとある事を思いつく。それは影人がくれたブレスレットのおかげで手を繋いだ事によって思い付けた事だった。

 

「あ、そうだ!今日は私がお母さんをお迎えに行こう!その、カゲ君も来てくれる?」

 

こころがそう聞いてくると影人は優しく彼女へと笑顔を向けてその意思を尊重する。

 

「……当たり前だろ、こころ。今日はこころのやりたい事に付き合うって俺の中で決めてるから」

 

「そっか……。ありがと、カゲ君」

 

「ただ、まだ今から迎えに行くのは早すぎるしお昼とかも済ませないとだから……駅の方向に向かいつつ行こう」

 

「うん!」

 

それから二人は恋人繋ぎをしたまま駅のある方向へと歩いていく。こころの母親を迎えに行くために移動する二人の顔つきは幸せそうな表情であった。




また次回もお楽しみに。
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