キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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妖精達の母親 最悪の事態

影人とこころがデートを楽しんでいる最中での事。喫茶グリッターではこころの誕生日パーティーの準備も着々と進行中であった。

 

「よいしょ、よいしょ……」

 

「うたさん、こちらはもうすぐ完成なので少し手伝いますね」

 

「ありがとうございます、姫野さん」

 

「いえ……最初に脚を引っ張ってしまったので少しでもお力になりますよ」

 

今現在、うたと姫野は購入してきたアルファベットバルーンに空気を注入していた。二人分しか空気を入れるための空気入れを準備できなかったのでこの二人がやっているのである。

 

「なな先輩、こんな感じでどうですか?」

 

「うん。バッチリだよ」

 

「夢乃ちゃん、作るの上手だな」

 

「えへへ……」

 

こちらもこちらでなな、レイ、夢乃が飾り付けの準備を更に進めている形であった。そんな中で夢乃がふと質問をする。

 

「そういえば、今日はこころ先輩の誕生日である一方で母の日ですけど先輩方はお母さんにどんな風に感謝を伝えますか?」

 

「私は直接会うのは厳しいから通話してメッセージを贈る事になるかな」

 

「俺の方はプレゼントと共にメッセージを贈ると思う。一応もう物は事前に揃えてあるし」

 

ななの母親は前にもあった通り、ピアニストとして海外で活動している。そうなると直接会って感謝を伝えるのは難しい。そのため、必然的に彼女への感謝の言葉はビデオ通話という形になる。

 

また、レイの方は今日のこころの誕生日パーティーの準備があるとわかった段階で母の日用のプレゼントの購入は済ませていた。あとはその時に合わせてプレゼントするだけである。

 

「夢乃ちゃんは?」

 

「私はお兄ちゃんに頼んで今日のデートで一緒に母の日のプレゼントを買ってもらってます。多分、夜帰ってから渡す流れになるかなと」

 

「皆ちゃんと決まってるんだね」

 

「うたちゃんは?」

 

ななに問われてうたは固まる。そんなうたの反応を見てレイは何となくうたが今置かれた状況を察した。

 

「咲良さん、もしかしてまだ準備してない?」

 

「う……。実はその……そうです」

 

うたが半ば申し訳なさそうな顔つきでそう言う。うたのそんな様子を見てレイはいつも通りのうただと納得した。

 

「それはやっちゃいましたね……。今からプレゼントを買いに……」

 

「でも、皆のお手伝いするって言ったし今から抜けるのは申し訳ないよ」

 

「……でしたら、歌で気持ちを伝えるのはどうでしょう。歌であれば最悪プレゼント無しでも感謝を伝える特別な物になるかと」

 

田中は完全に意気消沈してしまったうたへとそう言ってフォロー。うたも田中からのアドバイスを聞いてバッと立ち上がると水を得た魚の如く喜んだ。

 

「それだよ!歌!いつもお母さんありがと〜♪たくさんありがと〜♪母!母!の日!の日!心の思いも伝わるよ〜♪」

 

そんな風に毎度の如く即興で歌を作って歌ううた。やはり歌に関してで言えば彼女は尋常じゃない程の能力を発揮するらしい。

 

「うたの歌はキラキラしてるプリ!」

 

「おー、そのアドリブ力をもっと他の事でも活かせたら完璧なんだけどなぁ」

 

「まぁまぁ……。でも、これならうたちゃんも問題無さそうだね」

 

それぞれの想いの伝え方も聞き合った所でプリルンが今更ながらある事を質問する。それはキラキランドには無い母の日の件についてだ。

 

「そういえば母の日って何プリ?」

 

「キラキランドに母の日は無いからな。知らないのも無理ないか」

 

「母の日はね、大好きなお母さんにありがとうって伝える日だよ!」

 

「プリ〜!」

 

プリルンはうたからの話を聞いて何だか楽しそうだと考える。そんな中、夢乃はメロロンへと母親について聞いてみた。

 

「そういえばメロロン、メロロンのお母さんってどんな感じな妖精なの?」

 

「……いないメロ」

 

その言葉を聞いて夢乃は脳内がバグったのか首を傾げる。そして改めて聞き直した。

 

「え、えっと……メロロンのお母さんだよ?」

 

「だからいないのメロ」

 

「お母さんがいない?」

 

「それについては私どもからご説明を」

 

「はい、説明用の紙芝居をお持ちしました」

 

疑問符を浮かべたうた達に対して用意周到な田中と姫野が対応をする。姫野に関してはどこから持ってきたかわからない紙芝居さえも用意する始末だ。

 

「キラキランドでは皆、ビックキラキラリボンの光を沢山浴びたキラキラの木から生まれてくるのです」

 

「「「おお!」」」

 

話を始めて聞いたうた、なな、夢乃は拍手すると特にななは妖精の誕生を微笑ましいような顔つきで見ていた。

 

「メルヘンチックだね……」

 

「凄くキラキラプリ!とっても素敵プリ!」

 

「メロ……」

 

プリルンも嬉しそうに話す中でメロロンは一人で溜め息のように小さな声を発する。そんな彼女の声は誰にも届かずに話は進んだ。

 

「……って事はプリルン達のお母さんは……木!?」

 

“ツリー!”

 

うたの脳内で浮かんだのは桜のようなキラキラの木にプリルンのような顔が生えている姿であり、しっかりと喋る様子であった。

 

「えっ!?い、いや……そういうわけじゃなくて、なんというかあの……」

 

「咲良さん、世の中にはな……あまり触れてはいけない大人の事情っていうのもあるんだぜ?」

 

「どういう事!?」

 

レイがうたを諭すように話す中、うたは思わずツッコミを入れてしまう。姫野はそんなノリの彼女達に呆れていた。

 

「……夢乃さん、いつもあんな感じなんですか?」

 

「はい。でも、姫野さんも本当はこんなに賑やかにお話ししてるのは楽しいんでしょう?」

 

「……そうですね。こんな風に友達同士でお話しているのを見ると私がキラキランドにいた頃の日々を思い出します」

 

姫野は懐かしい思い出のページをめくるような顔つきとなると少しだけ経ってから彼女はある事を言う。

 

「……それで、いつまで作業の手を止めてるつもりですか?時間もそこまで無いのですよね?」

 

その直後、その場の全員の話が一旦止まると我に帰る。それで自分達は今、こころの誕生日パーティーの準備中であるとやっと思い出した。

 

「あっ……」

 

「はぁ……。とにかく急ぎましょう。それと応援も呼んだので少しは効率化できるかと」

 

その直後、グリッターのお店のドアが開くとそこには姫野が呼んだと思われる助っ人達が姿を見せる事になるのだった。

 

「あなた達は……」

 

その頃、いつものチョッキリ団のアジトにて。バーのカウンター席に座ったカッティーとその隣にいるザックリーが駄弁っていた。尚、今回もカッティーはアイドルプリキュアの曲を聴いていたのである。

 

『元気をあげるね♪ゼッタイ!(ゼッタイ!)アイドル!(アイドル!)ドキドキが止まらない!急接近♪』

 

そのため、ザックリーはもうカッティーの動画視聴は言っても止められないと判断していちいち話題にする事も無く手にした氷入りのウイスキーを飲んでいたのだが……。

 

「アイドルプリキュアはキラキラ輝いているのですぞ」

 

「ぶーっ!?ええっ!?おまっ、どうした!?」

 

いきなりカッティーが発したアイドルプリキュアへの発言に関しては流石に予測不可能だったので口に含んだウイスキーを思わず噴き出してしまうくらいに驚いていた。

 

『笑顔のユニゾン、応えてほしいな〜サンキュー♪最高のステージで〜……』

 

「……何を見てるんだい?」

 

更にそのタイミングでいきなり二人の上司ことチョッキリーヌがカッティーの後ろから声をかける。そのためカッティーは勿論、彼の事情を知っているザックリーも驚いて慌てふためく事になる。

 

「「のわあっ!?」」

 

「な、なんでも無いのですぞ!」

 

カッティーなんて本来倒すべき敵であるアイドルプリキュアの曲なんて聴いていたと知られたら不味いので驚いた衝撃で上に放ってしまったスマホを慌ててキャッチし、動画を止めた。

 

「そ、それより!今日は母の日という贈り物をする日らしいのですぞ!」

 

カッティーはこれ以上この話題を振られたく無いと言わんばかりに話を誘導して母の日の話題へと切り替える。それを聞いたチョッキリーヌは笑みを浮かべた。

 

「ほう。じゃあアタシ達チョッキリ団はキラキラを集めるチャンスじゃないか」

 

チョッキリーヌの話す事はもっともである。母の日にはプレゼントを買ったり贈ったりする関係で必然的に他の日よりもキラキラの出る総量は多くなる。そう考えるとチョッキリ団にとっても襲撃にはもってこいの日と言えるだろう。

 

「へへっ、チャンスならザックリ俺の出番ですわ」

 

そんな中で手を挙げたのはザックリー。彼はウキウキな様子で出てくると襲撃への意欲を示す。

 

「よーし、ザックリー。チョッキリーヌ様のために世界を真っ暗闇にするんだよ。……それとカッティー」

 

「何ですかな?」

 

「……スラッシューの様子を見た感じだと人間界に完全に溶け込んでいる。その解釈で間違い無いわね?」

 

「そうなのですぞ」

 

チョッキリーヌの問いは以前、スラッシューを捜索に出たカッティーへと成果を改めて問う物だった。

 

「ふーん。本当に彼女はちょっと目を離しただけで抜け駆けしようとするからねぇ……」

 

「ですが、キュアソウルの弱点を見つけてそこを的確に突いたのですぞ。我々も同じ事をすれば……」

 

「馬鹿ね。それがスラッシューの狙いだと何故気が付かない?」

 

その言葉を聞いてカッティーは何故チョッキリーヌがそう言ったのか意味がわからない。

 

「報告を聞く限りだとクラヤミンダーの攻撃でキュアソウルがおかしくなったとはあったけど、それはあくまでスラッシューが素体になったからじゃないのかい?私達のクラヤミンダーでなってるならとっくにお前達がクラヤミンダーを使った時点で不調となったはず」

 

チョッキリーヌの指摘にカッティーは勿論、隣で話を聞いていたザックリーも納得の顔つきとなる。

 

もし普通にクラヤミンダーを出してそれがキュアソウルを不調に落とす直接的な要因ならば、スラッシューが素体になる前も二度程クラヤミンダーが出ている上にソウルはクラヤミンダーからの攻撃を受けている。

 

なのでとっくに不調に陥ってもおかしく無いはずだが、何故か二人の時は全くの無反応なのだ。

 

「それらから推測するに、スラッシューは何かしらの特殊な手段を用いる事でキュアソウルを封じたと考えるのが自然だね」

 

「でも、だとしたら一体何なんすか。カッティーも聞いてないのかよ」

 

「こちらに帰還する前に多少接触しましたが、残念ながらそれは全く話してくれなかったのですぞ」

 

「だとしたら、キュアソウルが動けなくなると期待するのはお門違い。ザックリー、これらを踏まえて油断は決してしないようにするんだよ。さぁ、わかったら出撃してきな!」

 

「イェス、ボス!」

 

そんな風に会議の時間が終わったのでザックリーはいつも通りのチョッキリ団のポーズを取るとキラキラをチョッキンするために張り切って向かうのであった。

 

「ほっ……」

 

尚、カッティーは先程のアイドルプリキュアの動画も併せて出撃する事にならなくて一安心と言った顔つきだ。

 

同時刻、影人とこころの二人はショッピングモールでの昼ご飯や買い物を終えて駅に向かって歩く所だった。日は既に傾き始めており、もう夕方と言った所である。

 

「こころのお母さんは何時くらいに駅に来る予定なんだ?」

 

「時間的に見たら多分もうすぐだと思いますけど……」

 

そして、駅に到着すると既にそこでは母の日でお出かけをしていた家族や若いカップル等でキラキラがとにかく溢れている状態だった。

 

「お母さん、ビックリするかな」

 

「もしかしたら泣いて喜ぶかもね」

 

「ふふっ。もしそうなってくれたら……嬉しいな」

 

影人とこころの二人の会話は迎えの事でいっぱいとなっており、ここからも幸せが溢れている。

 

そんな中、本当にタイミングの悪い時によく来る奴等……チョッキリ団のザックリーが駅の上空に姿を現す。すると彼の目にも周囲にある凄まじい量のキラキラに目を奪われていた。

 

「ひゅー!本当に今日は特別キラキラが多い日だなぁ。よりどりみどりでザックリ迷っちんぐ!」

 

ザックリーとしてはここまでキラキラが多いと逆にターゲットの選定に迷うらしい。普段の場合はキラキラを発する人は大人数の中の一人とかなので探すのが大変なのだから彼が喜ぶのも無理はないだろう。

 

そんな中、彼が一人の女性を見つけるとそのキラキラが一際大きい事に気がつく。

 

「お、決めぴ!抜群にキラキラしてる!コイツだな!」

 

ザックリーがターゲットに定めたのは丁度駅から家に帰るために出てきたこころの母親……紫雨愛であった。

 

「あ!お母さんいた!」

 

こころは喜んだ様子で影人の元から駆け出す。影人は感動的な親子の時間に水を差すのは悪いと敢えてゆっくりと歩きつつ見守る事にした。

 

「こころ、嬉しそうだな。やっぱり、ずっと支えてくれた母親との時間は大事なんだろ……」

 

しかし、本当にタイミングの悪いザックリーはターゲットにした愛からキラキラを引き抜いてしまう。

 

「お前のキラキラ、オーエス!」

 

「きゃああっ!?」

 

「はい、ザックリ行くぜ!」

 

そのままザックリーは愛の胸のリボンを真っ二つにしてしまうとその様子はこころからも、更に後ろにいた影人からも見えていた。そのためにこころは絶望顔を浮かべ、影人はいきなりの事に唖然としてしまう。

 

「お母さん!?」

 

「嘘だろ……おい」

 

「来い!クラヤミンダー!世界中をクラクラの真っ暗闇にしやがれ!」

 

そして、そんな事は知らないと言わんばかりにザックリーはクラヤミンダーを召喚。降り立つ事になる。

 

「クラヤミンダー!」

 

今回の個体はホールケーキような姿であり、体の上にはロウソクやイチゴのような装飾も存在した。そして、降り立ったクラヤミンダーを見て人々は恐怖で逃げ惑う中、影人とこころの気持ちは怒りに染まる。

 

「お母さんをクラヤミンダーに閉じ込めるなんて……」

 

「テメェら……よくもこころの気持ちを踏み躙りやがったな。絶対に……」

 

「「許さない!」」

 

二人はそう叫ぶとブローチを構えると同時にプリキュアへと変身。そのまま名乗る事になる。

 

「「プリキュア!ライトアップ!キラキラ!ドレスチェンジ!YEAH♪」」

 

「キミと踊る、ハートのリズム!心キュンキュン、キュアキュンキュン!」

 

「君と昂る、ハートの情熱。高鳴る魂、キュアソウル!」

 

二人での変身を終えると以前お泊まりの時にやった名乗りと同じように手を重ねてからそれを上に上げつつ二人バージョンでのポーズを取る。

 

「「ふたりは!キミとアイドルプリキュア♪!」」

 

今回は二回目という事もあってか影人も心の準備は整っていた……というより、そんな余裕が無いくらいに彼の心は怒りに染まっていた。

 

「出たなプリキュア、行け!クラヤミ……」

 

その瞬間だった。一瞬でソウルの姿が消えたかと思うとソウルメガホンの力を掛け声やメガホンの力無しで発動。ソウルバレットを手に構えた状態でクラヤミンダーの顔面に直接叩きつけるとそのままクラヤミンダーを地面にめり込ませるぐらいに押し込む。

 

「クラヤミンダー!?」

 

「お、お前っ!?こういう時の攻撃は指示前にはやらないってお約束ってのが……」

 

「煩せぇよ……今の俺は……虫のいどころが悪いんだ」

 

ソウルの目は怒りその物であり、完全にブチギレ状態に入っていた。こころの気持ちを踏み躙ったザックリー、クラヤミンダーを本気で始末する状態になったのだ。

 

「……こころのお母さんを素体にしやがって。俺は怒ったぞ……ザックリーィイイイ!」

 

ソウルの声色はマジの怒り状態そのものであり、その体からはレーザー光線のような凄まじい光が溢れ出ると普段よりも相当なまでのパワーが溢れ出る事になる。




また次回も楽しみにしてください。
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