キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
キュンキュンがクラヤミンダーへとキュンキュンレーザーを放ち、それに対抗してきたクラヤミンダーからのエネルギー砲とのぶつかり合いの最中。キュンキュンレーザーの出力ではどんどん押し込まれるともう少しでやられそうになってしまう。
「ううっ……」
キュンキュンは歯を食いしばってクラヤミンダーからの攻撃を押し返そうとする。そして、彼女は心の中で囚われている母の事を想った。
「お母さん……」
するといきなり時間が止まったかのような感覚となるとキュンキュンの意識はどこかへと飛ばされる。
キュンキュンが目を覚ますとそこは自身が幼い頃、それこそ影人と出会う前の時間だった。日が傾き、夕暮れ時の遊園地。楽しい遊園地での乗り物ではしゃいだ影響か疲れて眠ってしまったこころは父親である紫雨信二の背中に背負われて寝てしまっていた。その隣には愛もいる。スヤスヤと可愛らしい寝顔を見せるこころとそんな彼女を優しく見守る両親達。
「(これって……私が小さい頃の……っ!お父さん……)」
キュンキュンは思い出の中とはいえ、久しぶりに生きている父親を見る事になった。キュンキュンは嬉しさで父親へと話しかけようとするが、自分の手を見ると透けてしまっているのがわかる。
「(そっか……思い出の中だから……私が話しかけてもお父さんには聞こえないんだ)」
キュンキュンは自分の目の前にいるのに気づいてすらもらえないこの現状に胸が苦しくなっていく。しかし、父親の背中で幸せそうに寝ている幼い頃の自分を見ていると自然とキュンキュンはその様子を静かに見守る事になる。
その後、場面が変わるとそこでは病院の服を着た父親が病室のベッドの上にいた。すぐ近くには彼を心配してか、愛と幼いこころの二人が心配して彼のお見舞いに来ている。
「(……そっか、もうお父さんは病院で寝たきりになっちゃうんだよね)」
幼いこころは父親と話せる時間が嬉しいのか笑って過ごしていた。しかし、キュンキュンはそれを見てまた胸が苦しくなり始める。今思えば、この時点で自分の父親は既に余命宣告もされていたと思う。それでもこころの笑顔を絶やすわけにはいかないと普通に接していた。
そんな父親を見て何も知らない幼いこころは嬉しそうな顔をしている。キュンキュンが会話を聞いていると父親の信二はもうすぐ病院から退院できると、そうしたらまた一緒に楽しい思い出を作ろうと……少しでもこころが安心するような言葉ばかりを話していた。
「(お母さん、少し複雑そう。……って事はお母さんも全部知ってたんだ。お父さんはもうダメだって……)」
キュンキュンは自分が幼かった時、何も知らなかったのだ。周りは皆、事情を知ってる。なのに自分にはそれは伝えられなかった。そして今なら、そうされていた理由もキチンとわかる。
「(お父さん……私を悲しませないように、笑っててくれて。だから私は何も知らないままでいれた。お父さんが死んじゃう最期の時まで)」
そして、また場面は移り変わる。そこでは喪服を着て泣いている幼いこころがいた。彼女が顔を押し付けてる先にあったのは同じく喪服を着た母親の愛である。
「(お母さんだって、きっと辛かったはずなのに。……私はやっぱり何も知らなかった。今ならこの時のお母さんの気持ちも少しは理解できる。カゲ君が私と二度と会えなくなったら……辛いって思えるから)」
それでも愛は目の前にいる自分の娘のこころの前で泣くなんてできないと、父親と二度と会えなくなったと伝えられて泣いているこころを慰める側に回った。本当なら、彼女も泣きたい気持ちでいっぱいだっただろうに。
「(お母さん、今にも泣きたそうな顔をしてる。でも、私がいたから。お母さんに我慢させてたんだ)」
キュンキュンは当時、父親がいなくなったせいで母親の愛がどんな気持ちで自分の涙の受け皿になっていたのかを今になってやっと知る事ができた。その日の夜、泣き疲れて寝てしまったこころが目を覚ますとそこは薄暗い部屋の中にある布団の上。泣いた後が顔にあるこころが隣を見るとそこには同じく泣いた後の影響か目尻が赤くなっていた母親が自分の手を握っていた。
「(お母さん、きっと私が目を覚ましたあの時。私のいない所で悲しさで泣いて、泣いて、泣いて……。でも私の前ではそれを悟らせないくらいの安心できる姿を見せてたんだね)」
愛は強かったのだ。夫を失って心に大穴が空いたような感じだっただろうに、それを一切悟らせないような顔でこころを安心させようと尽力した。守るべき娘のために母は強さを見せていたのだ。そんな母親のおかげでこころは時間がかかったものの、父親を失った悲しさから戻る事に。
それを最後にキュンキュンの意識はまた浮上すると現実世界に戻ってくる。そこでは彼女が戻ってくるのを待ってくれたかのように意識が過去に行く前と全く変わらない光景があった。
「(お母さん……私、お母さんのおかげで立ち直れた。お母さんが立ち直らせてくれたおかげで外に出られるようになって……だからこうしてカゲ君と奇跡にも思える出会いができて。今の私がいる!)」
するとキュンキュンの体に先程まで全力だったはずの力が更に湧いてくるのを感じ取る。その影響でキュンキュンレーザーはクラヤミンダーの攻撃を少しずつ押し返し始めていた。
「な!?何だ!?」
「(……伝えたい事が沢山あり過ぎちゃって、一番心キュンキュンした思い出。お母さんにしてもらって心キュンキュンした事……)」
キュンキュンがそう考えると今度は意識が飛ばないものの、過去の出来事が浮かんでいく。それは、影人に教えてもらったダンスを家でテレビの前で踊る自分の姿だった。その様子を母親の愛はご飯を作りながら優しく見ている。
そんな中でキュンキュンは自身の中に更に湧き出てきた力をキュンキュンレーザーに上乗せ。エネルギーはどんどん増幅されていく。
「(それはきっと……いつも私の側にいてくれて、私が寂しくないように……。ずっと私のために頑張ってくれたお母さん。だから今度は私がきちんと感謝を伝えたい)」
それと同時にまたキュンキュンの脳裏には母親との沢山の思い出が溢れ出ていく。忙しい合間を縫って家で一緒にダンスの練習をしてくれた事。発表会で自分のダンスを観に来てくれた事。感謝したい事なんて幾らでもあった。
「(今日は母の日……お母さんにいつもありがとうって伝えたい!だから絶対……助け出してみせる!)そのためだったら……私は、私は!」
キュンキュンの想いはどんどん力に変わると彼女から溢れるキラキラとした輝きはより一層眩しくなって……そんな彼女を見たソウルは小さく呟く。
「行け……キュンキュン、今日の主役はお前だ」
その直後。キュンキュンの脳裏は桜並木の中に立つ母親の紫雨愛を映し出す。そして彼女はキュンキュンに、こころに……優しく声をかけた。
「こころ」
彼女の優しい言葉を聞いた直後。アイドルも押し返したキュンキュンを更に後押しするように想いを溢れさせると声の限り叫ぶ。
「行っけぇえええっ!」
キュンキュンは最高値にまで高まった想いを一気にぶつけるかのようにブローチをタッチ。心の叫びを口にした。
「お母さん、大好きだよおぉおおおっ!」
キュンキュンの想いに応えるかのようにキュンキュンレーザーを照射中に上乗せする形で再度発動。一時的に上方向に射出されたレーザーはキュンキュンが既に放っていたレーザーに合流する形で降り注ぐと単純な火力が倍……いや、彼女の想いの力が何倍にも増幅させるとあっという間にクラヤミンダーの攻撃を打ち破る事になる。
「クラ……」
そのままクラヤミンダーは自身のフルパワーを破られた挙げ句、チョココーティングで完全拘束されてるので逃げる事もできず。キュンキュンレーザーの奔流をまともに喰らうと吹き飛ばされた。
そのまま地面に叩きつけられると同時にコーティングは砕けるものの、アイドル達の前で完全に隙を晒したこのチャンスを逃すはずが無い。
「今だ、三人で決めろ!」
ソウルは体力切れの関係で技を使う事ができない。それに今回の主役はキュンキュンだとわかっている。だからこそ彼は三人による技を後押しした。
「はい、カゲ君。見ててください!」
キュンキュンがソウルからの言葉に応えるとアイドル、ウインクも合流して領域を展開する。
♪決め歌 Trio Dreams♪
「「「ウー、レッツゴー!Try, try, trio dreams♪」」」
『Let's sing, let's swing, let's dance, let's bound,Let's smile, let's fly』
「「「ハート上げてくよ!」」」
三人の技が発動すると三人のプリキュアはインカムを装着。それとほぼ同時にクラヤミンダーは技の効果で強制着席をさせられる。そのまま歌が始まった。
「「「Sing!♪音符に夢乗せて〜♪キミ、あなたのもとへ〜for you!♪もっともっと輝き合えるね〜♪みんな、キラッキラン!♪瞳水晶にいつだって〜♪笑顔映し合おう〜promise!♪キミがいるからパワー、生まれるよ、今日も〜♪Try, try, trio dreams♪……プリキュア!ハイエモーション!」」」
三人が力を合わせる事で発生した虹のエネルギーがクラヤミンダーへと降り注ぐとその体を浄化させていく。
「「キラッキラッタ〜」」
クラヤミンダーがやられた事によって今回も新たなキラルンリボンが生成。それをプリルンが付けるといつものポーズを取った。
「プリ!君の事、大好きプリ!」
これにより、クラヤミンダーはやられると破壊されてしまっていた地形は元通りになっていく。そんな中ザックリーはキュンキュンの想いのパワーを間近で見ると感傷的な気持ちとなっていた。そのせいか髪で顔つきは見えなかったものの、感動で涙を流しているようにも見える。
「くっ、ザックリ……良い話じゃねぇか……」
その言葉を最後に彼は撤退。そして高みの見物として戦いを最後まで見届けたスラッシューも満足した顔つきである。
「今日も面白い物が見れたわね……それにこの水晶の力も試せて良いことばかり。それと、ソウル。あなたの思ってた人間への擬態の弱点に関しては正解よ。じゃあ、また今度も楽しませてね」
どうやらこの口ぶりを見るに、クラヤミンダーが時折りやっていた紫雨愛への擬態能力を付与したのはスラッシューらしい。ただしクラヤミンダー自身がその能力を持っていたわけではなく、スラッシューが後付けで遠隔操作によって擬態能力を使っていたようだが。
何にせよ、彼女も撤退すると空もまだ夕焼けのままであった。時間的に見たらまだギリギリ日が沈む前らしい。
「アイドルプリキュア〜!今日もキラキラだったプリ〜!」
「メロ。影人が頑張ってたし当然なのメロ」
「メロロンが上から目線な態度を取るのには物申したいが……。とにかく何とか助けられたな」
するとキュンキュンはソウルへと抱きつくと彼への謝罪の言葉が嗚咽と共に出て来た。
「ごめんなさい!ソウル……私が、私が不甲斐ないせいで。ソウルには相当な負担をかけてしまって……」
どうやら、ソウルが体力切れして倒れたのを誰よりも心配していたらしい。ただ、あの場では母を助ける事を最優先にすると誓った以上、ソウルへと謝れなかった事が嫌だったようだ。
「よしよし……。キュンキュンや愛さんが無事で良かった。俺も体力切れはしたけど平気だからこれで、誰も悲しませずに済む」
結果的にソウルはこの結末を迎えられて一安心していた。やはり、あの場面で一人で愛を助けるのは肉体的にも精神的にもかなりの負担だっただろう。するとアイドルが声をかけた。
「そういえば、ソウルは何でクラヤミンダーの変身の弱点がわかったの?」
「………クラヤミンダーと戦いながらアイツを見ていたんだが、アイツが多彩な弾幕を張ってる間はどれだけ俺が攻撃を間に挟んでも変身をしなかった。多分、攻撃が出ている判定の間は変身ができないっていう制約があると読めてな」
要するに、生クリーム攻撃やイチゴミサイル。ホイップ兵も攻撃技に該当するからか、それをやってる間はまるで擬態する事が無いことにソウルは気がついたのだ。
ちなみに先程チョコケーキにされた際は攻撃判定にならないのでは無いのかという話になるが、アレはソウルがソウルソリッドで物質の形や中身を変えただけで判定としてはクラヤミンダーの攻撃が全部自分に帰ってきたという扱いになるらしい。
「それでもだいぶ分の悪い賭けだったから上手くいくかはヒヤヒヤしながら見てたけどな」
「でもそのずっとクラヤミンダーからの攻撃状態を維持するために私達に敢えて散らばったりする事を指示して攻撃を防御させなかったのは私達も大変だったけどね」
「悪かったな。こき使うような真似をして」
「ううん。むしろ、ソウルの方が働きすぎみたいだったし」
「キュンキュンを助けるためだから私達が弱音なんて言ってられないよ」
そんな風にソウル達が話をしているとベンチの上に寝かせていた愛の意識が戻り始めているのかピクリと体が動く。それを見て慌てて四人は物陰へと隠れた。
「あれ。私、何でこんな所で寝て……」
その直後。彼女は手にした腕時計を見ると時間がそれなりに経ったせいか、こころとの約束の早めに帰るができていないと慌て始めた。
「って、ええっ!?もうこんな時間!急がなきゃ……」
愛が慌てて紫雨家への道を早足に進む中、彼女が無事である事を見て改めてプリキュア達は安堵の顔となる。
「良かった……」
「やったね!キュンキュン」
「はい!ありがとうございます。皆さんのおかげです!ありがとうございました!」
キュンキュンは愛が無事であったために三人へとお礼の言葉を述べる。そんな中、アイドルやウインクは笑顔で返事を返す事に。
「ふふっ。母の日はまだ終わってないよ!」
「そうだね、早く帰らないと」
「あっ!そうでした!」
キュンキュンはこのままだと愛が先に帰ってしまう関係で逆に心配をかけると思い至る。そこにソウルが付け加えた。
「じゃあ。俺は彼氏としてデートでの責任を果たすよ」
「え?」
「……彼女を無事に家にまで送り届ける。それが俺がキュンキュンに、こころにしないといけない責任だ。だから、最後までデートを完遂させてくれ」
「ソウル……ありがと」
「じゃあ、私達は二人の邪魔をするのはいけないから」
「うん。この辺でお別れだね!」
こうして、アイドルとウインクはプリルン、メロロンを抱えるとプリキュア姿のままその場を去っていく。それと同時にソウルとキュンキュンは同時に影人とこころの姿に戻ると影人が話しかけた。
「それじゃあ、俺達も行こうか」
「はい。……あ、その。カゲ君。帰り道も手を繋いで良いですか?」
「何当たり前な事言ってるんだ。ほら」
「……はい!」
影人が差し出した手をこころは取ると二人で仲良く紫雨家への道を歩いていく。影人の中ではある事を考えていた。
「(さて、アイドルとウインクが先行して帰る形は作れたし。後はもう既に紫雨家にいるであろうレイ達が上手くやってくれてると良いけど)」
影人はそんな事を考えつつ母の日デートの最後に待ち構えているメインイベント。サプライズで企画したこころの誕生日パーティーが上手く行く事を祈りつつ、二人で話をしながら移動するのだった。
はい、この通り結局今回でも母の日回が終わりませんでした。次回こそは確実に終わると思うのでもう少しだけ母の日回にお付き合いください。それではまた次回もお楽しみに。