キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
プリルンとメロロンが影人の家にお泊りをした翌日の朝。咲良家にあるうたの部屋にて。そこではうたが珍しく鼻提灯を出さずに寝ていた所、何かの声が部屋に聞こえていた。
「プリィ……プリィ……プリィ……」
そんな異様な音に気がついたうたは目を覚ますとベッドから降りて部屋の中にある上の階へと移動する。そこにその音の発信源があるからだ。
「プリルン?」
先程からの異様な音の発信源はプリルンであった。うたは彼女の様子を見に行くとその光景を見て目を見開く。そこにあったのはプリルンの体にメロロンの耳が前日同様に横たわっており、そのせいで彼女はかなり寝苦しそうに寝ていたからだ。
「あ、大丈夫?プリルン!」
うたはプリルンが苦しそうに寝ていたので慌てて彼女を助け出すと持ち上げる。プリルンは寝起きのせいで眠そうにしつつもようやくメロロンの拘束から解放されて一安心と言った顔つきだった。
「プリ……」
「寝てる間にメロロンの耳が絡まっちゃったみたい」
「……違うのメロ、絡まったじゃないメロ、絡めたのメロ」
そんな中、いつの間にか隣にいたはずのプリルンがいなくなったせいなのか、メロロンが起きるとプリルンの背後からメロロンが不機嫌そうな顔を覗かせる。
「絡め……」
「ねえたまが寝ぼけてそっちのベッドに行ったらダメなのメロ!ねえたまはメロロンと一緒に寝るのメロ〜!」
メロロンの言い方からするとプリルンは絶対に自分の側から離したくないらしい。恐らく、プリルンを自由に動かさせると万が一、プリルンがうたのベッドに行ってしまう可能性があった。
だからこそ自分の耳をわざと絡ませる事でどうにかプリルンをキープしておきたいという事だ。昨日の朝もプリルンを耳で絡めた上でもう片方の耳を影人の首に巻きつけたのも二人と一緒に寝たいという気持ちの現れでもある。
「あ、でも影人となら三人で寝るのも良いメロね〜」
メロロンはそんな風に影人とも一緒に寝たいと言い出す中で、プリルンはまだ眠気が残っているのか眠たそうにしていた。
「皆で寝るプリ……」
「メロロンはねえたまと二人きり。多くても影人との三人でが良いのメロ」
ただ、やっぱりプリルンは皆で仲良くしよう思考の子なのでメロロンから向けられている特大の矢印には気がついていない。
「どうしてプリ?」
プリルンが聞き返す中、うたはプリルンの声で一度起こされたものの、まだ不完全な起床なのか眠気が再び彼女を襲うと今度は鼻提灯を出しながらコクリコクリとしてしまう。
ただ、メロロンの方はこのやり取りの間に完全に起きる事に。そのため早速近くの上下に開くタイプのカーテンを開けながら朝の日差しを取り入れつつポエムを述べる。
「それは……問われる度思い知る。近くにいてもハートは遠く、こんなにもあなたを……」
そんな中だった。メロロンが振り返るとそこには誰もおらず。メロロンは一瞬呆然としてしまう。ただ、すぐにプリルンを探しに下の階……うたのベッドを見るとそこではうたとプリルンが仲良く添い寝をしてしまっていた。
「え?」
しかもご丁寧に二人揃って鼻提灯を出す始末である。勿論こんな事をされればメロロンはプリルンをNTRされたと思うわけで……。
「メラメラメロ!」
メロロンは嫉妬と怒りの炎にその身を包むとその怒りをぶつけるかのように寝ているうたへと突撃。
「咲良うた!このねえたま泥棒!」
「ぐえっ!?」
メロロンがかなりの勢いでうたへと頭突きするとその衝撃でベッドのマットレスが少し浮かぶぐらいの勢いでうたが上に跳ね上げられる。メロロンも頭突きによる反動でそれなりに痛かった……という事もなく平然と喋り出す。
「ねえたまは影人以外には渡さないメロ!それと、ねえたま。メロロンとデートするのメロ!」
メロロンはそう言って可愛らしくウインクする。どうやらプリルンとは違ってメロロンはウインクを普通にできるらしい。
それから時間が経ち、喫茶グリッターの店内。そこには影人、なな、こころ、レイの四人が来ていた。
「……って事があったらしくてね」
事情を話しているのは田中と共にバイト中の天城である。彼女もそれなりバイトする姿が板に付いてきた形であった。
「天城さん、次はこれを」
「はい」
「それで、田中さん。天城さんは大丈夫そう?」
「ええ。むしろ、何でもすぐに吸収できるくらいに器用なので私の負担が凄い減りましたね」
どうやらバイトの腕は田中と良い勝負ができるくらいに短期間で上達したらしい。天城はそれだけここのバイトとして優秀なのだろう。
「ただ、一つ不安があるとすれば……」
田中がそう言っているときゅーたろうが入ってくる。そんな中、天城が時間的にきゅーたろうのご飯タイムなのでドッグフードを入れて出した。
「はい、どうぞ」
「うーっ!」
相変わらず天城はきゅーたろうに嫌われているのか、なかなか心を開こうとしない。むしろ、何かをやらかしてしまったのかと言わんばかりに警戒心が前よりも上がっているのだ。
「きゅーちゃん、天城さんは良い人なんだからそんなに警戒したらダメだよ」
「ここまで人に懐かないきゅーちゃんを見たのは初めてかも」
うたがきゅーたろうを嗜める中、ななも意外そうな顔つきで見ている。下手したらこの場にいるのが天城一人だけだったら今にも噛みついてもおかしくないと言わんばかりの警戒感を持っている。
「あはは、良いんですよ。私が怖がらせてる原因を作ってるので、これからじっくり仲良くなれば」
天城はそう言って周囲を和ませた。きゅーたろうの方は少しだけ天城を見てから何かを言いたそうにうたの方を向くものの、やっぱりそれは伝わらない。
「まぁ、天城さんがきゅーたろうに好かれないのは仕方ないとして。メロロンから凄い目をつけられてるね。影人」
「ああ、そうだな」
「そうですよ。カゲ先輩、浮気とかしたらダメですからね」
「しないって。こころもわかってるだろ?俺が浮気なんてするような奴じゃないと」
「まぁ、そうですけど……不安なものは不安なんですよ」
どうやら前日の朝までプリルンとメロロンが影人の家に泊まったという事実は見逃せないのか、こころの気持ちは複雑そのものだった。
「私の誕生日の時、家には泊まってくれませんでしたし……」
こころが少しだけ頬を膨らませると小声でそう言う。影人もそんなこころの気持ちを多少は察してるのか、内心で申し訳ない気持ちになった。
それはさておこう。同時刻、グリッターの上の階ではプリルンとメロロンが普段は影人達が囲むテーブルの所にいる。彼女達は机の隣に座布団を何枚も積み重ねるとその上に座っていた。
「デートって何プリ?」
プリルンは改めてメロロンからデートに誘われたためにその意味を聞き返す。どうやらプリルンはデートの意味を知らないらしい。そのため、プリルンはメロロンからデートの意味を教えられる事になる。
「デートっていうのは大好きな人と二人でお出かけするのメロ」
「カフェデートは定番メロ〜」
「メロロンは物知りプリ!」
そんな風にメロロンが説明し、プリルンは納得する。ただ、一つ問題点があるとするとこの街にキラキランドから来た本物の妖精がデートする用のカフェがあるのか……という所だが。
何しろ二人が空中を飛んで移動するだけで街中では大騒ぎになる。ましてや店の中に入ればまたここでも騒ぎになるだろうし、二人はこの世界のお金を持っていない。そうなれば確実に無銭飲食になるだろうからこれもまた問題となってしまう。
「一緒に楽しくお喋りして、ねえたまにはメロロンにメロメロになって欲しいのメロ」
メロロンが情熱的な誘いをする中、影人、レイ、なな、こころの四人は二階に上がるとそんな二人の微笑ましい時間をそっと見る事になった。
「デートだなんてメロロン可愛い……」
「なな先輩がメロロンに心キュンキュンしてます」
「色々ツッコミ所がある所を除けば単純に応援したいが……」
「でも、メロロン的には影人以外の人間は邪魔者扱いだろうけどな」
影人とレイの男子組が現実的な方向に目を向ける中、ななとこころの女子組は更に話を続ける。
「プリルンに構って欲しくて一生懸命な所とか、凄く可愛い」
「……むう、そんな事話しているのを聞いてたらまたカゲ先輩とデートしたくなりましたよ」
すると下から上がってきたうたがグリッターのエプロンを付けた接客モードになった状態でお盆にクリームソーダを乗せて持ってくる。
「お待たせしました!うちの名物のクリームソーダだよ!キラッキランラン〜!」
「プリ!」
うたがそう言って二人の前にクリームソーダをそれぞれ出す。影人はそんな様子を見て溜め息を吐く。
「おい、店の商品だろそれ……お金どうするんだよ」
「まぁ、これも大人の都合じゃね?」
「メタ発言すんなよ、レイ」
するとクリームソーダを出されたメロロンはそれを見ながらボソッとまたポエムを口にした。
「……暗い暗い氷を溶かしたのは温かなあなた。すくって口にすれば……あなたの胸で甘く解ける。……って、咲良うた!いつまでいるメロ!」
「いやぁ、味どうかな〜って!」
メロロンはクリームソーダを出した後にいつまでも自分達の前に座っているうたへと文句を言う。やはりメロロンはプリルンとの二人きりが良いようだ。ただ、うたの方はクリームソーダの感想がどうしても聞きたいらしい。
「そっちの三人もメロ!影人以外にそんなジロジロ見られるのは好きじゃないメロ!」
「ごめんね、気になって……」
「私はうた先輩が何か余計な事をするんじゃないのかなって」
「酷っ!?」
ななとこころからのメロロンへの返しに対して、うたは自分がこころにしれっと辛辣な言葉を投げられた事にショックを受ける始末だ。ただ、このこころからの言葉はこれまでのうたの発言やら動きを見ていると言われても多少は仕方ない事にはなってしまうだろう。
「それにしてもメロロン、影人は良いんだな」
「当たり前なのメロ!影人はねえたまと同じくらいの存在メロ。同じくらいの存在を隣に置く事の何が悪いのメロ」
「しれっと前と比べて二番手から同格になってるんだな。メロロンの中の俺の立ち位置……」
この辺りはメロロンから影人がそれなりに信頼されている証拠と言えるのだろう。
「うた達は一緒じゃダメプリ?」
「メロ!」
プリルンからの問いにメロロンは頷く。プリルンとしては皆と一緒に過ごす時間の方が好きなのか他の皆との事も引き合いに出す。
「だって……ねえたまにはメロロンだけを見てほしい……メロ」
そう言ってメロロンは可愛らしい女の子のような上目遣いの目線をプリルンへと送る。
「見てるプリ!」
「そうだけど、そうじゃないメロ」
「じーっ」
「メロ〜」
「じーっ」
「メロ」
「じーっ」
「メロ」
「じーっ」
「メロ」
「じーっ」
「メロ」
「じーっ」
「メロ」
「じ——っ」
「メロ?」
六回くらいプリルンとメロロンの視線の送り合いが続いた後にうたからの視線を受けたメロロン。それに気がついた彼女はうたの方を向くが、やっぱり彼女にとってはうたは邪魔な存在なわけで。
「あっち行くメロロロロッ!」
「ぶっ!?」
メロロンは自身の体を軸にして高速回転するとうたの頬へと渾身のタックルを繰り出す。
「おー、決まった。ローリングメロロンアタック」
「何だその技名は」
影人とレイがメロロンからのうたへのタックルに技名を付けながらこの状況を楽しんだ。それからメロロンはプリルンと共にクリームソーダを食す事になったが、結局うたを蚊帳の外に弾き出すことはできず。
これ以上言うのも面倒だと感じたメロロンは害が無いなら大丈夫という事でそのまま食べるという流れになるのだった。
そんな中でまた場面は下の階に移ると天城はウェイトレスとして客に出来上がった食事や飲み物を丁寧に客へと置いていく。
「はい、こちらご注文のカフェラテですね」
「わぁ……綺麗なラテアート」
天城は手先が器用なだけあってラテアートもかなり上手い。それはずっと手伝ってきたうたよりも上手いくらいである。流石にこの前手伝ったレジェンドアイドルの響カイトには及ばないが。
「ふふっ、どうぞごゆっくり」
天城の美しさとその丁寧な対応はこの付近でも評判になっており、客足は前と比べて多少伸びた感じも出ていた。
「天城さんって客への対応が丁寧だからいてくれると助かるわ!」
「いえ、田中さんの教え方が上手いんです。それに、仕事の上手さでいえばまだまだ田中さんにも及びませんよ」
天城はそう言って謙遜する。田中の方は天城の優秀さを身に染みて感じると共に彼女がバイト仲間として手強いライバルだという認識も持ち始めていた。
「……天城さんを見ていると私も頑張らないとと思えてきますね。マネージャーとして、負けていられません」
天城の姿は仕事人としての田中の良い刺激相手になっていたのだ。こうして、バイトの二人組も一生懸命に仕事へと集中する事になる。
また次回もお楽しみに。