キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
メロロンが影人の元で慰められている頃。グリッターの二階スペースに残されたうた達の方である。メロロンがいなくなったために外側から見ているだけや傍にいたうた、なな、こころ、レイの四人がテーブルを囲んで座るとプリルンはフワフワと宙に浮かんでいた。
「うぅ……。また怒られちゃったよ。メロロンと仲良くなりたいだけなのにな〜」
うたは口を尖らせるとそう言って文句を言う。ただ、流石に先程の行為はメロロンの事を考えてない発言だったためにこころが指摘する。
「……それはうた先輩が余計なことを言うからですよ」
「えっ!?」
「右に同じだな。さっきのは咲良さんの発言が悪い」
「ええっ!?」
更にレイからも追撃が入ったうたはしょんぼりしてしまう。そんな中、ななが三人へと提案した。
「だったらさ、まずはメロロンがどんな子かを知る所から始めない?」
ななの提案にうた達は賛成するとその話題を唯一メロロンをよく知ってるであろうプリルンへと振ろうとする。
『女王です!女王です!』
すると狙っていたのか、偶々タイミング良くかけてきただけなのか、うたこアイドルハートブローチが鳴り響くと女王からの連絡が入った。
「あっ!」
「女王様プリ!」
「これは、女王様に色々聞くチャンスだな」
そのため、うたはブローチを出すとテーブルの上に置く。そこにプリルンが自らが付けていたキラルンリボンを装着すると映像が投影されて流れ始める。
『良かった。メロロンと合流できたのですね』
まず開口一番にピカリーネが言ったのはメロロンがちゃんと合流できた事に対する安堵であった。
「メロロンはキラキランドでお留守番だと思ってたプリ。いきなり来てびっくりプリ!」
『あの子は一人で行ってしまったのです。プリルンに会いたい一心で』
ピカリーネのその言い回しだと本来ならキラキランドからは出られなさそうな感じであった。ピカリーネ曰く、プリルンを送った事でキラキランドからこちらの世界に繋がるゲートはエネルギーを使い果たして一度光を失っている。ただ、メロロンはプリルンへの想いだけでその光を一瞬だけ取り戻させると自らはなみちタウンへとやってきたのだ。
「なるほど、メロロンが来たのは女王様のお力では無かったのですね」
「タナカーン!」
するとそのタイミングで下からエプロン姿の田中が階段を登ってきた。そんな彼は先程までバイト中だったはずなのだが、何故か来たことにレイが質問する。
「あれ?そういえばバイトの方は大丈夫なんですか?」
「ああ、それでしたらつい先程ひと段落したので少しだけ交代で小休憩を貰いました。今は天城さんが頑張ってくれています。
どうやらお店の方の仕事が減ったので小休憩という形で田中と天城が交互に休憩を挟むことになったらしい。プリルンはそんな田中を見ると安心感が出るのか、座った彼の肩に乗った。
「それで、女王様。彼女は何者なのでしょうか?」
『メロロンは……特別な子です』
「……特別?」
ピカリーネが口にしたのはメロロンが特別な子という事だった。どうやら、彼女には普通のキラキランドの妖精とは違う何かを持っているらしい。
「……確かにメロロンには多少特殊な部分がある」
「え?そうなの?」
レイは女王ことピカリーネからの話を聞いて納得したような顔つきをしていた。
「例えばの話だ。キラキランドの妖精達は体のどこかに音符マークを付けているという特徴がある。プリルンだったら前髪に当たる部分に。田中さんことタナカーンにはネクタイ部分。女王様はお腹の辺りに。それぞれ音符マークがある……が」
「そういえば、メロロンの音符マークはちょっと特殊ですよね。二つの音符が繋がったような形ですし」
そう。プリルン、タナカーン、ピカリーネ。更に言えば姫野やキラキランド出身の講師達には右のようなタイプの音符マークがある。(♪)
ただ、メロロンに関してはこころの話す通り、二つの音符が横並びになったような右のような音符マークが付いているのだ。(♫)
これらを踏まえるとメロロンの特殊性がここでもハッキリ出ているとわかるだろう。
「他にも、時々ポエムも口ずさんでますよね」
「ポエム?」
続いてななが指摘したのはメロロンの呟くポエムだ。アレも他の妖精達には当てはまらない内容だろう。ただ、やはり頭が悪いうたにはわかってないようで。ななは一例を挙げる事にした。
「“……暗い暗い氷を溶かしたのは、温かなあなた。すくって口にすれば、あなたの胸で甘く解ける”」
「さっきメロロンが言ってたやつ!」
「その言い回しだとクリームソーダの事じゃ無いですよね」
クリームソーダは時間経過のせいか、上に乗っているアイスがかなり溶けてしまっている。加えて、内部の氷も小さくなっていた。それはさておき、ななはピカリーネへと問いかける。
「メロロンのポエムには何か意味があるような気がするんですよね」
『……あの子は一人で深く深く考え、詩のように想いを紡ぐんです』
「うた先輩が歌うのと似たような物でしょうか?」
「あ、そういう事!?」
違いがあるとすれば、うたは自身の歌を周囲に聴かせているが、メロロンの方は一人で詩を呟いて完結させてしまう所である。
「でも、キラキランドには他の妖精もいるはずですよね?一人で……というのは?」
それを聞いたピカリーネは言いづらそうに一瞬俯く。するとそのタイミングでメロロンの事をよく知っているプリルンが声を上げた。
「プリ!そういえば、メロロンはいつも一人で本を読んでたプリ!」
〜回想〜
プリルンの言った内容を説明するためにも今から少し時間を遡る。チョッキリ団の襲撃前、キラキランドのビッグキラキラリボンが健在であった頃。
ある日、沢山の妖精達に見守られて新しい妖精が誕生した。新たな仲間の誕生にキラキランドの妖精達は嬉しそうにしており、全員でそれを歓迎していた。
「生まれたコン!」
勿論その中にはプリルンもおり、プリルンは早速知り合いであるメロロンの住処へと行くとこの事を知らせた。
「メロロン!新しいお友達が生まれたプリ!一緒にお祝いするプリ!」
ただ、嬉しそうなプリルンを他所にメロロンは一人で住処の中で本を読み耽っている。そんな彼女の住処は小さめな洞穴の中で外から光は入ってくるが、奥の方は薄暗かった。メロロンはその奥側で本を読んでいる。
「……光は光。闇は闇。光と闇は溶け合わない」
メロロンはそう言って本を閉じるものの、結局プリルンからの誘いを断ってしまう。プリルンはこの誘いを断られた事は特に気にしなかったものの、人間界で言えば協調性が無いのと同じ。
そしてそれはキラキランドでも同じなのか、メロロンはキラキランドが真っ暗闇に包まれるその時までプリルン以外の他の妖精達と関わる事は無かった。
〜現在〜
「そっか……。いつも一人だったんだ」
ただ、メロロンとしては他の妖精達から関わらないようにされているのが特段悪いわけでは無いのかその状態を変えようとしない。結局、うた達にとってのメロロンの謎は深まる一方である。
「光と闇って?」
「メロロンの言うことは難しいプリ……」
プリルンがそう言って疲れたような顔をした。どうやら、プリルンにはメロロンのポエムをあまり深く理解できていないような感じである。
『……メロロンは他の皆のようにキラキラできないと悩んでいました』
「キラキラ……できない?」
「という事は、ポエムの暗い暗い氷って……メロロンの事?それを溶かした温かなあなたは一人だったメロロンの心を温めてくれたのかも」
ここまで話してやっとうた達にも状況が読めてきた。メロロンがプリルンの事を好きになった理由。それは、暗い氷の中に閉じ込められたメロロンを溶かして温めてくれたプリルンへの気持ちだったのである。
「それってプリルンなんじゃ!?」
「そういう事!?」
「その可能性が高くなったけど、プリルンはどう思う?」
それから一斉に視線がプリルンへと注がれる……が、プリルン本人はそこまで深く自覚してないのかただ首を傾げただけであった。
「……プリ?」
「ダメだ、本人に全然伝わってない……」
「ああ。この感じだとメロロンからの特大の気持ちという名前の矢印を全く理解できてない感が凄いな」
プリルンは普段の言動からもそこまで難しい事への理解力が高く無いのは容易に察せられるが、やはりこの場面でもそれが足を引っ張ってしまった形である。
「これはメロロンの事を応援するしか無いですよ!」
「だね!」
「うん!」
「応援するプリ!」
こころの発言にうた、ななが揃って同意する中でプリルンもピンク色のキラキライトを振って応援する気満々……だが、彼女がそれをしたらダメなのだ。
「プリルン、絶対わかってないでしょ……」
「ああ。一番応援したらダメな奴が応援に回ってるって、メロロンが可哀想に見えてくるな」
そんなプリルンへと苦笑いを向けるうたとレイ。それからメロロンの事を教えてくれたピカリーネへと感謝を伝える事に。
「女王様、メロロンの事を教えてくれてありがとうございます!」
『ふふっ、メロロンの事。どうかよろしくお願いしますね!』
「「「「はい!」」」」
「畏まりました」
メロロンの話に決着が付いてようやく話がひと段落……という所でレイはここまでの話を踏まえて一つまた疑問が出てきた。
「……そういえば、自分なんかには輝けないって言葉。ここに来たばかりのアイツもよく口ずさんでたよな」
「あっ!……そういえばカゲ先輩も最初再会したばかりの頃はそんな事ばかり言ってましたね」
そう。メロロンが自分は輝けないと言っているのと同じで影人も最初、自分が輝く事ができないと言っていたのだ。
「なるほど、だとしたらメロロンが影人さんの事を気に入ったのは……」
田中は影人とメロロンには同じような闇を抱えている者同士、同じ闇側の存在であるからすぐに溶け合った……つまり、仲良くなるのが早かったのだと解釈する。
「でもさ。今はもう影人君も輝いてるよね?それに、メロロンと出会った頃には影人君もアイドルプリキュアとして輝いていた気がするんだけど」
ただ、一つ腑に落ちない点あるとしたらそこだ。メロロンがやってきたのはアイドル、ウインク、キュンキュンが合体技を初めて披露した直後の時系列。そして、その頃には影人もキュアソウルとして更なる力……輝きを手にした頃に一致する。そう考えると影人とメロロンの思考に差ができてそのまま溝になってもおかしく無いのだ。
『……そろそろ皆さんには言っておかないといけませんね』
「「「「え?」」」」
するとピカリーネが呟くようにそう言うと彼女は影人についての話を始めた。
『皆さんからしてみたら今の影人は輝いているように見えますね?』
「はい。むしろ凄く生き生きとしてますよ」
「まぁ、少なくとも最初よりは笑顔を見せるようになったな」
うた達四人から口々に言われるのは影人が輝いているような証拠ばかり。ここ最近の影人を見ていると彼女達にとって、影人が輝いていないようには見えないのだ。
『残念ですが、影人はまだ輝いてなんていません』
それを聞いて一同は耳を疑う。影人が輝いてないなんてそんなはず無い。その気持ちでいっぱいになった。
「ちょっと待ってください!どうして……カゲ君はあんなに楽しそうで、輝いて見えるのに……なんで……」
「こころ、落ち着け」
「ですが……」
レイが事実を受け止めきれずに混乱して強い口調になってしまったこころを制する。
「ねえ、プリルンって確か人のキラキラが見えるんだよね?影人君を見て何か変化があった?」
「プリ?影人からのキラキラプリ?……見ててよくわからないプリ」
「プリルン!真面目に答えてよ!」
「そんな事言われても……うたとななとこころのキラキラが一緒にあるような……本当によくわからない感じプリ」
それを聞いてレイは何となく今の影人の現状を理解する。そして、これを言うべきか迷った。
「レイさん……。その感じだとわかったんですか?」
「はい。……ただ、これを正直に言っていいものか」
「レイ君は何かわかったの?」
そこに食いついたのはななである。するとうたやこころもレイの方向を向く。彼は一度溜め息を吐くと話さざるを得ないと感じた。
「わかった。全部説明する。……ただ、ちょっとショックな内容になる覚悟だけはしてくれ」
レイからの念押しの言葉に三人は頷く。そして、レイはそれを受けて自分の仮説を話す事にした。
「……今影人が持ってる輝き。キラキラと言うべきか。それは、咲良さん、蒼風さん、こころの三人分のキラキラを使っているだけなんだ。わかりやすく言うとアイツのキラキラはあくまで他人頼みの物でしかない。アイツ自身が自分で出しているオリジナルのキラキラでは無いって事だ」
それからレイはわかりやすくするための説明を始める。普通は、人々は嬉しさや楽しさなどの正の感情を高めると輝きを放出する。それがプリルンやチョッキリ団から見えているキラキラに当たる物だ。そして、キラキラはどんなに似た物だとしても一人ごとに違う種類のキラキラを放つ。
しかし、影人の放っているキラキラはうた、なな、こころのキラキラと完全一致したものしか無い。つまり、この三人のキラキラを何かしらの形で受け取る事で初めてキラキラを放つ事ができるようになるのだ。
「そんな。じゃあ、カゲ君は……カゲ君自身のキラキラは……」
『恐らく、かつて自身の夢を失って絶望したあの時からずっと枯れたままでしょう』
「それと同時に、これで影人が……キュアソウルだけが他の三人と比べて強くなったのかの説明も付く。うた、なな、こころの力はあくまで当人の一人分の力だけしか無いが……影人の場合は三人から受け取った光で戦えている。そう考えると単純計算でアイドルプリキュア三人分の力が混ざった力を使えているんだ」
そしてその理論であるならば、ソウルだけが専用アイテムであるソウルメガホンを使えているということ。更にアイドル、ウインク、キュンキュンの三人の能力に準じた技を使う事ができているのかも説明が付く。
『影人とメロロン。二人がそれぞれ問題を抱えている状況で大変だと思いますが、これからも皆さんには頑張ってもらいたいです。どうか、お願いします』
ピカリーネの言葉を最後にその話は一度終わりとなる。ピカリーネは話が終わったので映像から消えるとプリルンがリボンを外してまた自らに付けた。
そんな中でやはり影人の彼女であるこころは複雑な顔つきになると溜め息を吐く。
「はぁ……私……カゲ先輩の事を助けられたと。力になれたと思ってたのに……結局ダメでした」
こころはそうポツンと呟く。影人が一度ブレイクとして乗っ取られ、自分はブレイクから助けた時に一緒に影人を救った気になっていた。それなのに、影人の心のキラキラは戻ってないと来ている。
「仕方ないよ。だって、あんなに元気になった影人君を見てたら誰だって勘違いしちゃうから」
実際、こころに助けられる前まで影人はかなり重めな精神的な苦痛を背負ったままだった。そのため、こころは影人を救った事に間違いは無い。
「それで、レイ君。この事を影人君には」
「勿論話す。ここには隠し事が苦手な奴が多いからな。特に影人は勘が良いから隠しても結局即バレるだろ。だからタイミングを見て俺から話す」
「でも、それでカゲ先輩がまた落ち込んだら……」
「だったらこころがもう一度彼の側に寄り添えば良い。そのための覚悟なんてとっくに決めてるんだろ?」
レイからの言葉にこころは頬を一度パチパチと叩くと気を取り直して頷く。
「はい。勿論です!」
こころの気持ちが戻った所でうた達はまずは目の前にあるプリルンとメロロンのデートの話を進める事にした。
その頃、下の階で働いている天城ことスラッシューはその話を全てとある方法を使って盗聴。話の流れを全て把握していた。
「(そう……やっとあの子達も影人君の力の秘密の一端に触れたのね。なら、次に私が打つべき手は……)」
天城は脳内でとある考えを巡らせながら目の前の仕事は完璧にこなす。こうして、彼女も彼女で次の動きを始めるのであった。
また次回も楽しみにしてください。