キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
アイドルプリキュアの前に立ち塞がるクラヤミンダー及びスラッシュー。するとスラッシューは考える仕草をする。
「さてと……」
「その感じ、また誰を相手にするか悩んでるんだろ?……だったら俺が相手してやる」
ソウルは自らスラッシューを相手にすると声を上げる。そんな彼にスラッシューは一瞬驚いたような顔になると笑みを浮かべた。
「ふふっ。それは嬉しいお誘いね。……じゃあ、お言葉に甘えさせもらおうかしら」
「ソウル……大丈夫ですか?」
「心配するな。どの道クラヤミンダーの浄化には俺が欠けた所で問題は無い。むしろ、スラッシューの足止めが俺一人で済むならこれ以上無いくらいに楽な話だろ」
ソウルとしては自分無しでもアイドル、ウインク、キュンキュンが揃う状況ならクラヤミンダーを相手させても問題無いと考えていた。その分自分がスラッシューをしっかりと抑えようという算段である。
「オッケー。じゃあ、ソウル。お願いするね」
「ああ、任せろ」
「お話は済んだわね?じゃあ、遠慮無く!」
スラッシューが踏み込むと一気にソウルへと接近。そのスピードは前を更に上回っていた。
「はあっ!」
スラッシューからの蹴りをソウルは防御する中、その凄まじさに腕が痺れる。
「ッ、スラッシュー。お前……」
「ええ。おかげさまでまた一段と強くなりましたわ」
「……最後に戦ったあの時とは比べ物にならない強さ。加えて、まだアイツは得意の歌を使ってない。幾ら俺もパワーアップしたって言っても油断したらすぐ負けるかも」
ソウルもこの一瞬の戦闘だけで彼女が凄まじい進化を遂げていると察するとそのまま二人の戦闘は激化していく。そんな中でカッティーもクラヤミンダーへと指示を出した。
「やるのですぞ!クラヤミンダー!」
「クラヤミンダー!」
クラヤミンダーが鍵穴から赤く巨大な鍵を射出。プリルンとメロロンは巻き込まれないように離れるとアイドル達三人は跳び上がって回避する。
「ソウルを助けるためにも、私達が頑張って早めに倒そう!」
「それが良さそうですね」
任せるとは言っても相手はあのスラッシュー。一筋縄で行かないことは目に見えて明らかだ。となれば自分達が早めにクラヤミンダーを倒すのが良いと感じたアイドル達三人は早速散開する。
「プリルン達は逃げるプリ!」
「そうメロね……メロ?」
そんな中、メロロンは逃げる中でとある看板を見つける。そこにあったのは“伝説のハートキラリロック”の看板。更に絵にはハート型の南京錠とハート型の鍵も描かれてあり、メロロンはその絵に見覚えがあった。
「伝説のハートキラリロック、メロ?この鍵……メロロンの!」
メロロンが看板の所で立ち止まる中、三人は息の合った連携でクラヤミンダーを攻撃していく。
「はあっ!」
まずはアイドルが突撃してクラヤミンダーと拳をぶつけ合う。勿論これだけではクラヤミンダーは崩せない。そのタイミングでクラヤミンダーの右側からウインクが跳び上がってのキックを放つ。
「やあっ!」
「クラ!」
クラヤミンダーはアイドルを一度押し返すとウインクを迎撃しようとするが、流石にパンチはもう間に合わないので防御という形で防ぐ。
「今です!」
そこにすかさずキュンキュンがクラヤミンダーの左斜め後ろから迫ると死角からクラヤミンダーのU字型の金具の部分へとダブルスレッジハンマーと呼ばれる両腕を合わせての振り下ろし攻撃を命中させる。
「クラヤミンダー!?」
流石にノーガードで受けるとなるとクラヤミンダーもタダでは済まない。クラヤミンダーが押され気味なのを見て慌てるカッティー。
「ぐぬぬ……クラヤミンダーが押されているのですぞ」
そんな中、カッティーの耳にどこからか声が聞こえてくるとその方向を向く。
「アイドルプリキュア〜!頑張れプリ〜!メロロンも応援するプリ!」
「メロ!?メロロンは……」
それはアイドルプリキュアを応援するプリルンの声であった。彼女は両手にキラキライトを持っており、メロロンも応援に誘っている。それを見たカッティーはアイドルプリキュアを応援しているプリルン達へと嫉妬の気持ちを湧かせた。
勿論、チョッキリ団という立場でさえ無ければ今すぐにでも応援したいのが彼の本音。ただ、自分がチョッキリ団という肩書きを背負っている以上、アイドルプリキュアの応援はできない。むしろ、してしまえばチョッキリ団を裏切る事にもなる。そのため、彼は何のしがらみもなく応援しているプリルン達に苛立ちを募らせた。
「お、おのれ……自分だって……“プリキュア〜!頑張っティーン!”っとこんな風に全力で応援してみたい物ですぞ!こうなれば……クラヤミンダー!そこにいる羨ましい妖精共を捕まえるのですぞ!」
「ええっ!?」
「クラヤ・ミンダー!」
カッティーの指示を聞いた瞬間、アイドルが驚きの声を上げる。そんな彼女を無視してクラヤミンダーはアイドルプリキュアへと背を向けてからすぐに手で構えを取るとプリルンとメロロンを覆うように赤い宝箱を出現。それをさっさと閉じてしまった。
「プリ!?」
「メロ!?」
勿論、閉じ込められた妖精二人はいきなり狭くて暗い箱の中に入れられる形となると当然慌てるわけで。
「プリィ〜!?」
「メロ〜!?」
「それから出られないように……こうですぞ!」
クラヤミンダーが二人を閉じ込めた宝箱を持つとクラヤミンダーが生成した鍵を使ってカッティーが宝箱をしっかりと施錠。完全に二人を閉じ込めてしまう。
「自分カッティーなのですぞ!」
「プリルン、メロロン!」
アイドル、ウインク、キュンキュンは二人を助けるために走り出す中、カッティーはその手に鍵を握った状態で空中へと飛び上がるとどこかへと行ってしまう。勿論クラヤミンダーが持っている宝箱を奪わなければならないものの、それだけでは鍵が開けられない。となれば先にカッティーを追う必要が出てきた。
「これで二人は人質、いや。妖精質ですぞ!」
「このままじゃ鍵が!」
「クラヤミンダー!」
アイドルプリキュアの三人はクラヤミンダーよりもカッティーが持つ鍵を優先。するとクラヤミンダーが鍵穴部分からまた赤い鍵を三発連射。。ウインクはそれにバリアで対抗する。
「ウインクバリア!」
先に鍵を取ろうとしたアイドルプリキュアだが、クラヤミンダーの妨害込みだと難しいと判断。そのため先に宝箱を確保するためにクラヤミンダーにターゲットを変えるとバリアを前にして突っ込む三人。
そこに鍵が三発命中するも、それで壊れるどころかヒビすら入らない。すかさずアイドルとキュンキュンが跳び上がる。
「アイドル、行きますよ!はぁああっ!」
キュンキュンがアイドルの手を両腕で握るとそのまま自分を軸に回転。そのまま思い切りアイドルを前へと投げ飛ばす。勢いよく投げられたアイドルは二人の妖精を助けるためにブローチをタッチする。
「二人を返して!アイドルグータッチ!」
その一撃がクラヤミンダーの目の部分である緑のハサミに命中。クラヤミンダーは堪らずに宝箱を手放してしまう。
「クラヤミンダー!?」
「プリ!?」
「メロ!?」
空中を飛ぶ宝箱。勿論中にいるプリルンとメロロンは驚く中でウインクがそれをしっかりとキャッチ。これで後は鍵だけだ。
「順番が入れ替わりましたけど、後は鍵ですね!」
「うん!」
三人は一度クラヤミンダーを放置すると鍵を持って逃げ出したカッティーを探す。すると彼は先程まで自分達がいたハートの木に向かうのが見えた。
「あっ、あそこ!」
「行こう!」
三人がカッティーを追いかける中、ソウルとスラッシューの方はスラッシューからの猛攻をどうにか捌いていた。
「ふふっ。そんな物じゃないでしょう?もっとあなたの力を見せてほしいわ!」
スラッシューが放つ炎弾にソウルはしっかりと反応。どうにか弾くと振り払う。
「だったら!」
ソウルがソウルメガホンを出すとそれを紫に合わせる。そのまま紫のエネルギー弾を生成した。
「リズムの力、ソウルバレット!」
ソウルがソウルバレットを放つとそれをスラッシューは手を翳すと熱線によってそれは切断。粉砕されると周囲に煙が発生。スラッシューの視界を奪う。そのタイミングで迫ってくるソウルの影がスラッシューの左側に見えた。
「そこ!」
スラッシューがそれを迎撃するために炎の剣で切り裂くと影は真っ二つになる。ただし、その手応えはまるで岩を切ったようだった。
「ッ……これは。って事は後ろ……」
「ああ、キラキラの力、ソウルソリッド。それと今回は真正面だ!」
その直後。切られた影の更に後ろからソウルが出てくると切られた影の形がエネルギーとして変化。ガントレットとなると両腕に武装。そのまま物理的に強くなった両腕の拳によるダブルパンチをスラッシューへと叩きつけた。
「だあっ!」
「がっ!?」
そのままスラッシューは吹き飛ばされると地面に激突。ソウルは降り立つと油断無くスラッシューが激突した場所を見る。彼女がこんな態度でやられる程弱い奴で無いと感じ取っていた。そんな中、彼女は平然と立ち上がると体への痛みを感じ取る。
「……ぷっ、ふふっ……あははっ!」
だが、彼女はダメージを受けて狼狽えるどころか機嫌を良くして笑い始めた。そんな彼女にソウルは警戒する。
「ごめんなさいね。アイドルプリキュアになれなくて、あんなに自分の弱さを嘆いていたソウルが私に傷を負わせるぐらいに強くなった事が嬉しかったの」
スラッシューとしては今のダメージに関しては特に怒る様子は無く、むしろソウルの力を認めるような言葉をかける。そんな彼女の言葉にソウルはやはり警戒を強めた。
「そういや、今回は歌わないのか?」
「歌うわよ。ただ、今回はそのお楽しみを取っておきたくね」
「つまり、歌いながら戦うのにはやっぱり何か制限があるのか?」
「……そうね、制限ならあるわ。でもそれを私から明かすのは面白く無いわ。自分で見つけてみなさい」
「そりゃだろうな」
ソウルとしてはここでスラッシューが上機嫌のままに歌の弱点を晒してくれると嬉しかったが、流石にそこまではしてくれないらしい。
「さてと。お望みの歌をやる前にだけど……あなた、少しは気にならない?あなたの力について」
「は?どういう事だよ」
スラッシューが唐突に言い始めた自分の力についての話にソウルは当然首を傾げる。
「その言葉のままの意味よ。自分のキラキラの無いあなたが何故アイドルプリキュアとして戦えるのか?あなたも疑問に思った事無い?」
「輝きが……無い?」
スラッシューから自然に出てきた重要な言葉にソウルは困惑する。自分のキラキラが無い。その事実を聞いた彼の気持ちは少しずつ脳の整理が追いつかなかったせいでゴチャゴチャになり始めた。
「ええ。あなたの力はあくまでアイドルプリキュアの他の三人のキラキラを受け取って初めて成り立つ物。所詮、あなたの力は自分の力なんかじゃ無い。誰かから借りないと使えないような……そんなちっぽけな物なのよ」
スラッシューはソウルへと己の力のカラクリをレイが彼へと明かすよりも前に先回りして暴露。言葉による彼の心への揺さぶりをかけたのだ。
「ッ……じゃあ、俺があの時一人だけ強くなったのは」
「ええ。あなたが初めて変身したあの時。あなたが持っていた輝きはあくまでブレイクから浄化された時に受け取ったキュアキュンキュンの力だけ。そして、あなたは戦いを通じてアイドル、ウインクの力を受け入れた。だからこそクラヤミンダーとの初戦闘の際に三人分の力を束ねて圧倒できただけに過ぎないわ」
ソウルは信頼できるレイから改まった状態で聞くのでは無く、スラッシューから不意打ち気味に重要な事を悪意のある言い方で説明されてしまった。そして、これこそが彼女の狙い。実は、今回の戦闘では最初から彼女はソウルを狙う事に決めていた。先程ソウルの言葉に応えたのはそれを勘付かれないようにするためのブラフでもある。
「ッ……じゃあ、俺自身のキラキラは」
「そんな物全くもって出てないわ。アイドルプリキュアになれたのもキュアキュンキュンからキラキラを取り込んだからできるようになっただけ。ソウルの持つカラーリングがキュンキュンの物に似たのもそういう事よ。あ、強いていうなら黒や濃くなった紫はあなたの元々持っていた闇の色かしら」
スラッシューはソウルへと次々に言葉の棘で心を貫こうとする。今回のスラッシューが歌を最初使わなかったのはまずこの事実を伝える前にソウルが潰れないようにするための措置でもあった。
「今のあなたにはキラキラを出すことなんてできないの。だからアイドルハートブローチはあなたを認めなかった。キラキラの無いあなたにアイドルプリキュアなんて似合わないのよ。……もう一度ブレイクとして私の元に来なさい。そうすれば、あなたの中に眠る力を呼び覚ましてあげるわ」
スラッシューはそう言ってソウルを誘う。彼にキラキラが無いという衝撃を与える事で心を弱らせ、そのまま自陣に引き込もうと提案した。その言葉にソウルは俯くと目元が影になって見えなくなる。それから彼はゆっくりとスラッシューを見ると彼女へと言葉を返すのであった。
また次回もお楽しみに。