キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
スラッシューから不意打ちで告げられた言葉。それを聞いたソウルの心に動揺が広がる。スラッシューはそれに手応えを感じると笑みを浮かべていた。ソウルはスラッシューの言葉に俯いてから一度息を吐く。それから答えを返した。
「……そっか。そうだよな」
「ふーん?意外とあっさりとした返事ね」
スラッシューとしてはソウルがここで絶望する可能性が高いと睨んでいたのだ。仮にそうならなくとも動揺して荒れる事も考慮していたのだが、そのどちらでも無い落ち着いたソウルの雰囲気にスラッシューは意外そうな顔をする。
「俺もなんとなく薄々だけど察してはいた。俺自身のキラキラは戻ってないって」
「ふふっ。そう、でも不本意ではある……そうでしょう?」
「当たり前だろ。そうやって面と向かって言われたらショックはショックさ。ただ、俺の輝きはあくまで他人の力無しでは生まれない事は俺が一番よく知ってるからな」
それを聞いてスラッシューはかつて、アイドルプリキュアの三人が新しい技を生み出した際にソウルが三人を後押しするために発した言葉を思い出す。
“アイドル、ウインク、キュンキュン!俺の輝きはお前達の輝きだ。三人の眩い輝きを支えるために……俺はここにいる!そのために……俺は自分にできる事を頑張らせてくれ!”
「なるほどね……だからあの言葉を……あはははっ!」
スラッシューはようやく理解する。ソウルは自分の力が自分自身のキラキラによってできているなんて初めから思ってなかった事を。そして、それを受け入れた上で三人の脇役として存在するという覚悟を叫んだ事を思い出した。
「キュアソウル、いえ。黒霧影人君……あなたは私にとって最高のライバルで高め合う相手よ。私の言葉に屈しず、戦意を失わなかったあなたへの敬意を表し……私の新たな歌を聴かせてあげるわ!」
「新たな……歌?」
すると普段彼女から鳴り響くイントロとは違う別の曲のイントロが鳴り響く。それはスラッシューにとって新たなる力を意味していた。
〜挿入歌 BIGBANG My BLAZE〜
その音楽は前の曲よりも激しく、より彼女の心の炎が熱く燃え立つようであった。
「幸せはいつの日も唐突にすり抜ける♪弱い自分はその時をただ見てるだけ〜♪」
「ッ!?」
スラッシューは歌詞を歌い出した瞬間。爆発的なスピードでソウルへと接近。彼が反応して拳を繰り出すがそれを直前で反応して跳び上がると背後に降り立つ。その直後。ソウルの体へと後追いで二発のダメージが入る。恐らく、今の一瞬で二撃分の攻撃を当てたのだろう。
「がっ!?コイツ、前より更に速い……」
「どんなに足掻いたとしても叶わない夢はある〜♪だからこそ、私は手段を選ばない〜♪」
ソウルはこのままスラッシューのペースで戦うのは不味いのでせめてフィールドを変える事にした。
「アイドルの力!ソウルソリッド!」
ソウルがソウルソリッドを使うと地面からエネルギーの棘が幾つも出現。それがソウルの周囲に幾つも天に向かって伸びるとスラッシューが地上で動きにくくする。
「そして、私はいつも奪われる♪大切な物全て♪だからもう奪われぬよう、強く燃えるんだ♪」
スラッシューはそれに対して歌いながら指を鳴らすと手に炎の鞭のようにしてそれを周囲に叩きつける形で障害物を粉砕。砕いていく。
《
ただ、そこにはソウルはいない。すると彼はスラッシューへと肉薄するとまたメガホンの技を使う。
「キュンキュンの力!ソウルバレット!」
ソウルが作り出した紫のエネルギー弾が放たれるとスラッシューはそれにモロに直撃。そのまま歌が中断されるかに思えた……が、それでもスラッシューの歌は少し音程が乱れただけで止まらない。未だに歌は聞こえてきた。
「闇の中、深く沈む私の体全て〜♪」
「今のでやられてないのかよ」
その直後、ソウルへと逆襲と言わんばかりにスラッシューが生成した火炎弾が飛んでくる。ソウルは回避に徹する形でそれを避けていく。ただ、その火力は凄まじいのかやはり地面が抉れたり当たった場所が炎の熱で溶けたりと炎弾の一発一発の強さがとんでも無いことを暗に示した。
「ただの弾幕でもあのパワー……ッ!」
ソウルがスラッシューを見やると彼女が両手を真上に上げており、そこでは巨大な炎のボールが生成されていた。例えるなら○ラゴンボールの○気玉だ。ただし、それと比べると割と可愛いサイズではある。
「やばいな。だったら一か八かだ!」
ソウルはあの火力に対抗するには前に凄まじい力を放出した白と黒のダイヤルを連続で合わせる事で使った技。ソウルスクリューを放とうとする。
しかし、ソウルがダイヤルを合わせてもソウルメガホンはうんともすんとも言わず。何も発生せずにエネルギーは露散して消えてしまう。
「ッ!?何で……」
そこにスラッシューが最大出力にまで高め、エネルギーを濃縮させると巨大火球玉を放つ。
「どんな試練、私に立ち塞がろうと♪(BURNING!BURNING!)燃え立つ私は今、生まれる♪(BURNING!BURNING!)誰かを頼るんじゃ無い♪新しい自分が今!♪ここにビッグバン!誕生だ!♪」
《
スラッシューから振り下ろされたその一撃はエネルギーが内部に凝縮されており、生半可な力では対抗できないのが一目でわかった。
「不味い!ウインクの力、ソウルアブゾーブ!」
そして、先程のソウルスクリューの件で手間取ったソウルは今からでは回避が間に合わないとどうにか耐えるために攻撃を吸収するタイプの円形型のエネルギーのバリアを張る。
「ッ……」
だが、スラッシューからの攻撃の出力は凄まじい。そのパワーを前にソウルはどんどん後ろに押されていった。
「くううっ」
「はぁあっ!」
そして、とうとうソウルアブゾーブのエネルギー吸収限界に到達するとヒビが入っていくとそのまま粉砕。そのままエネルギーの膨張が臨界点に達すると爆発。ソウルは地面に強く体を打ちつけると激痛が体を襲った。
「あ……ぐっ……」
そんなソウルを見下ろす形でスラッシューが降り立つと彼女はソウルの顔を覗く。
「くうっ……」
ソウルはまだ諦めないと言わんばかりに体をピクリと動かすとどうにか立ち上がろうとする。ただ、やはり体への痛みは誤魔化せないのか何度か崩れ落ちていた。
「流石キュアソウルね。他の三人だったら今ので確実にダウンしてる。私が見出しただけあって別格って所かしら。今日はこの辺にしておくわ。もうあなたからの返事は良いものを期待できなさそうですし」
スラッシューは傷だらけになりながらも抵抗しようと足掻くソウルの元にしゃがむと微笑みかける。
「ふふっ、可愛い顔。……いつかあなたは自分で光れるようになると良いわね」
「……は?」
その直後、スラッシューはソウルの頭を優しく撫でると子供を可愛がるかのような笑みを浮かべてからそのまま消え去ってしまう。
「……最悪だ」
ソウルは敵であるスラッシューに揶揄われたと感じ取ると顔つきが不機嫌な物になる。恐らく、今回の彼女は全力で無いとソウル本人がわかっていた。そのため、もし仮に彼女が本気でかかっていれば自分は相手にすらならなかったのだと自覚する。
「アレでまだ全力じゃ無いってヤバすぎんだろ。一回攻撃を当てたからって調子に乗り過ぎたな。クソッ……」
ソウルはゴロンと転がって仰向けになると腕を頭に当てて悔しさを押し殺す。
「俺自身のキラキラ……。それがあればスラッシューにも勝てるのかな」
ソウルはそう感じつつ一度痛む体を休める事にするのだった。そんな中、場面は移り変わるとハートの木付近での事。そこではプリルン、メロロンを閉じ込めた上で自らは鍵を持って離脱したカッティーが一息付いていた。
「ふぅ。ここまで来れば大丈夫なのですぞ」
そんな風にカッティーが言う。ただ、彼は知らなかった。その台詞は大体の場合、この後追いつかれてしまう人間が言うものであると。するとカッティーが建てたフラグを一瞬で回収するかのように彼の前にアイドルプリキュアの三人が降り立った。
「カッティー、鍵を渡して!」
「ぬ!?」
アイドルはそう言うとカッティーへと近づいていく。彼は大慌ての顔つきになるといきなり目の前に姿を現したアイドルが自分の元に近づいてくるせいか、余計に混乱してしまう。
「え?これ、あ……いや……あ、あぁ、ああ!」
加えて、アイドルはカッティーの前に立つと彼をジーッと見つめる。今のカッティーは完全にアイドルプリキュアのファンだ。そして、普通のアイドルファンの人の中にも推しの人物が急にいきなり目の前に来たら慌てて頭が真っ白になる人も多い。カッティーはそちら側の人間であった。
「ジーッ」
「近、近、近かかっ……んんん、はい!ですぞ!」
そのため彼はテンパリまくった挙句、頬は真っ赤に照れた状態で手にしていた鍵をアイドルへと差し出してしまう。アイドルとしてはここまでアッサリくれるとは思ってなかったために逆に動揺した。
「あ、あれ!?」
それでも自分が欲しいと言った物を差し出された以上、受け取らないわけにはいかない。そんなわけで彼女が鍵を取るとカッティーは抵抗一つしなかった。
「ふぁあっ!?」
「ありがと!」
カッティーとしては推しのキュアアイドルが自分の手に触れた上にアイドルスマイルというファンサまでしてくれたのだ。チョッキリ団としてでは無く一人のファンとして。これ以上の喜びは無かった。そのまま彼は眩しいアイドルからの光をその身に受けると尊さのあまり、光となって消し飛びそうになってしまう。
「さ、触っ……キラッキランランですぞ……」
尚、カッティー本人はあくまで演出上のみの消し飛びのために浄化その物はされてない。何にしてもこれで宝箱が開けられるとプリルンが飛び出してきた。
「プリ〜!ありがとプリ!」
それから三人の目線がメロロンの方にも向くと彼女は一瞬ビックリするが、照れつつもちゃんとお礼を返した。
「メロ!?ありがとメロ」
「メロロンが……」
「ふふっ、ウインクが心キュンキュンしてますね!」
そんな風にキュンキュンが微笑ましい顔を向ける中、クラヤミンダーは律儀にもアイドルプリキュアを追いかけてきたのか歩いてきていた。
「あ、クラヤミンダーも来ましたよ!」
「私達がいなくなったら暴れてると思ったけど……」
「でも、向こうから来てくれるのなら……皆、行くよ!」
そのまま三人は領域を展開して浄化技を発動。一気にクラヤミンダーを浄化しにかかる。
♪決め歌 Trio Dreams♪
「「「ウー、レッツゴー!Try, try, trio dreams♪」」」
『Let's sing, let's swing, let's dance, let's bound,Let's smile, let's fly』
「「「ハート上げてくよ!」」」
三人の技が発動すると三人のプリキュアはインカムを装着。それとほぼ同時にクラヤミンダーは技の効果で問答無用に強制着席。そのまま歌が始まるといつもの浄化タイムに入る。
「「「Sing!♪音符に夢乗せて〜♪キミ、あなたのもとへ〜for you!♪もっともっと輝き合えるね〜♪みんな、キラッキラン!♪瞳水晶にいつだって〜♪笑顔映し合おう〜promise!♪キミがいるからパワー、生まれるよ、今日も〜♪Try, try, trio dreams♪……プリキュア!ハイエモーション!」」」
三人が力を合わせる事で発生した虹のエネルギーがクラヤミンダーへと降り注いでその体を浄化させていく。
「「「キラッキラッタ〜」」」
クラヤミンダーがやられた事によって今回も新たなキラルンリボンが生成。それをプリルンが付けるといつものポーズを取った。
「プリ!プリルンのファンになっちゃうプリ〜?」
プリルンの可愛らしいポーズの時間が終わると空がまた晴れ渡り、手に触られて唖然としていたカッティーが我に帰る。
「ま……眩しいですぞーっ!」
ただ、やっぱり推しのアイドルに触れられた嬉しさは計り知れなかった。チョッキリーヌに邪魔されたとはいえ、前の握手会では自分の番が来る前にクラヤミンダーを出されたせいでおじゃんにされた事もあって余計に嬉しさが来たのだ。
カッティーは嬉しさで飛び回るとそのまま霧となって撤退。アイドルプリキュア達は平穏が戻って良かったとなる中、そのタイミングでどうにか戻って来れたソウルが降り立つ。
「その感じだと浄化はできたっぽいな」
「ソウル!大丈夫だった?」
「ああ。体の方はどうにか保ってくれた」
ソウルは先程の浄化の光で体が多少回復しているのを感じており、だからこそスラッシューに完敗したことを伏せておいた。
「……あれ?カゲ先輩。どこか具合が悪いんですか?少し顔色が」
「いや。気にしなくて良いよ。きっと気のせいだから」
ソウルはそう言って誤魔化す。その言葉にアイドルとウインクはホッとする中、キュンキュンだけはソウルを不安な顔で見ていた。やっぱりこれだけでキュンキュンを誤魔化すのは無理らしい。加えてメロロンもソウルの受けた心の傷をわかってるのか、心配そうにしていた。
そこに避難誘導が終わったレイが戻ってくるとソウルは三人へとデートの邪魔をしないように促す。
「さて、事件も解決したし。俺達はプリルンとメロロンのデートの邪魔だ。早めに行こうか」
ソウルはそう言って他の四人も頷く。そんな中、物陰から見ていたスラッシューは笑みを浮かべていた。
「黒霧影人。本当は味方に欲しかったけど、でもあの高鳴る魂。ソウルは汚れなく存在している。……いつか絶対に闇に引き込んで私が物にしてみせるわ」
スラッシューはそのまま森の木々の中に溶け込むように消えていく。恐らく、分身として残した自分の元に向かったのだろう。こうして戦いがまた一つ終わるのであった。
ちょっとしたお知らせです。アニメ15話の話が終わった後になりますが、この度寿垣遥生さんの小説である“キミとアイドルプリキュア♪ -朱蓮のダンサーとアイドル達-”とのコラボ回投稿が決まりました!
寿垣遥生さんの小説のURLは下記に記載しますのでコラボ前に読んでおきたいという方はこちらから飛んでください。
https://syosetu.org/novel/366128/
恐らくアニメ15話分は次回で終わりとなります。それではまた次回もお楽しみに。