キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
昼休み、影人達はいつも通り校舎の外にある植え込みの所に座ってご飯を食べていた。今いるのは影人、蓮、うた、なな、こころ、レイ、プリルン、メロロン、ヨーヨイである。
「はい、プリルン。大好きなタコさんウインナーだよ〜」
「タコさんウインナー!可愛いプリ!あーん!」
そこではいつも通り、うたがプリルンへとタコさんウインナーを食べさせていた。やはりプリルンにとってタコさんウインナーは特別な物らしい。そんな中でメロロンも影人にカニさんウインナーを食べさせていた。
「メロ、影人。ありがとうなのメロ」
どうやらこちらの世界でもメロロンはカニさんウインナーを影人から食べさせてもらうのが日課らしい。
「影人が作るカニさんウインナーは最高なのメロ。メロ〜」
メロロンがニコニコ笑いつつクルクル回りながらご機嫌になる。ヨーヨイがそんなメロロンを見てある事を考えていた。
「メロロンがあんな幸せそうに……くっ、今度カニさんウインナーを作る練習をした方が良さそうだヨイ……」
メロロンが好きなヨーヨイは影人のように美味しいカニさんウインナーを作れるようになった方が良いと感じるとごちそうできるように後日練習しようと決意するのだった。
「あれ?そういえば蓮先輩、何か悩み事があるんですか?」
「……え?」
「ほら、蓮先輩って結構気持ちが顔に出るくらいわかりやすいじゃないですか。だから何かあったのかなって」
「……やっぱり俺って色々顔に出るんだな……」
「今更かよ。えっとな……」
レイが呆れたような顔つきになってから蓮の事情を説明し始める。それから事情を聞いたこころは“うんうん”と頷いた。
「なるほど、ふたばさんが蓮先輩に告白したと。……どうりでクラス内でふたばさんがそわそわしていたわけです」
「って事はこころはふたばさんと同じクラスなんだね」
こころは影人達から見るとひと学年下。そして、彼女の言葉からわかばの妹であるふたばと同じクラスらしい。こころ視点では午前中の間は告白を知らなかったので何故彼女がソワソワしていたかわからなかったが、これなら納得と言わんばかりであった。
「それで、蓮先輩はふたばさんからの告白の返事をどうするつもりですか?」
こころからの問いに蓮は言いづらそうな顔になる。その様子を見たこころはふたばへの返事について何となく察すると、その上で結論を話す。
「……なるほど、返事をどうするかはわかりました。ただ、ちゃんとお伝えはしないとダメですよ?」
「それはそうなんだけどな……」
「蓮、中途半端に断ったりすると後々問題が起きる可能性が上がる。そう考えたら少しキツイくらいにはハッキリ言わないとダメだ。それは覚悟しろ」
蓮としては初めてのラブレターの差し出し主だ。しかもふたばの想いが本物であるとわかってる。勿論、蓮にとって大本命がうたである事に変わりは無い。ただ、それでもやはり断る際の言い方には迷ってるらしい。
「もういっその事、中途半端に他の言葉を添えずにごめんなさいと一言言うだけでも十分だったりしないのかヨイ?」
「まぁ、どうしても言い方に迷うならそれが良いかもだが……」
ヨーヨイからの提案でもやっぱり蓮は迷う。そんな中、ひとまず重い話ばかりするのも良くないという事で話は一度影人とこころの方へと向いた。
「そういえば、影人君とこころがお付き合いを始めた時にやった告白ってどんな感じだったの?」
うたが今回の告白の件を踏まえた上で影人とこころの時がどうだったのかを問いかける。
「私達の時ですか?」
「俺達の時はハートの木の所で改めて想いを伝え合ったからな」
当時、影人が一度スラッシューによってブレイクとして闇堕ち。乗っ取られたものの、こころことキュンキュンの活躍で光を取り戻した。その後、彼は初めてアイドルプリキュアになると戦いが終わった後にお互いの気持ちを告白したのだ。
「カゲ先輩からの言葉に私、特別な心をキュンキュンを味わって……。とても嬉しかったです!」
「俺もこころの気持ちを聴けた時は心がメラメラして……気持ちが伝わって良かったって感じだったよ」
「カゲ君……」
「こころ……」
それから二人がうた達の前なのに少しずつイチャイチャするような流れになりつつあったために蓮がわざとらしく咳をすると二人の気持ちを戻させた。
「んんっ!お前らがイチャイチャするのは構わないけど、せめて家とかでやってくれ。……取り敢えず、お前らの意見はわかった。俺も覚悟を決めないとダメだって事もさ」
蓮の真面目な視線に彼自身の中で覚悟が固まった事を一同は察する。蓮としても折角勇気を出してまで告白してくれたふたばの気持ちを弄んだりするつもりは一切無い。だからこそ告白の返事はしっかりしようと決意した。
「皆、意見をくれてありがと。俺……決心が付けた気がする」
蓮がもう大丈夫そうな事に影人達は安心する。それから一同が弁当を食べ勧めているとふとうたが次の話題を出す。
「あっ、そういえば告白の話に引っ張られてたけど……今日だよね?ほら、西片エレンとドリーム・アイのコラボ配信!」
「そうだった!蓮君と夢乃ちゃんのコラボだよね!内容的には何やるのかな?」
「ああ、一応枠としてはゲーム配信とかになるかな。夢乃ちゃん的にやりやすいのもそれか後は歌ってみたくらいだし」
一応雑談も考えたのだが、雑談だと話が噛み合わなかったら終わりな所があるので二人だと安定しそうなのはやはりゲーム配信だろう。
「どんなゲームをやるの?」
「確か……集結!世界の遊び51選だったな」
そんな風に話す中、影人が蓮へと多少同情の目線を向ける。その視線を受けて蓮は首を傾げた。
「あれ?影人どうした?そんな顔して」
「……蓮、最初に断っておく。……ご愁傷様だ」
「へ?」
蓮はどういう意味で影人がそれを言ったのか分からなかった。蓮としてはただ遊ぶ物を言っただけ。それなのに何故影人から同情される事になったのか意味がわからない。
「影人、どういう事だ?」
蓮が困惑の顔を向けると影人は蓮へと気の毒そうに同情の目線を向ける。それから影人はその視線の意味を言おうとするが、敢えてそれを止めた。
「……一応言っても良いんだが、配信で初めて聞くっていうのも良いかもな。その方が生の反応がファンの人に伝えられるだろ。どうしても知りたかったら自分で調べて当ててみろ」
そう言って影人は蓮へと意味深な言葉を残す。そして蓮はこの日の夜、影人がそう言った意味を思い知るのだが……その話は後程に取っておこう。
それからまた時間が経過して昼休みが終了。ふたばとの約束の時間……放課後となった。
夕日によって空の色が変わる中、蓮は呼び出された通り校舎の屋上へと出ていく。ちなみに他の面々は蓮の事情を察して敢えて先にグリッターへと行っていた。ただしうたは最初はコッソリと着いて行こうとしたため、なながどうにか彼女を宥めて連れ戻したのは余談である。
蓮が屋上へと続く扉が開くとそこにはもう既にラブレターを贈ってきた相手……新橋ふたばがいた。彼女の顔つきは告白への緊張からか顔がほんのり赤くなっている。
そんな中で蓮はここに来る前のある事を思い出した。それは、ふたばの姉であるわかばからここに来る少し前に告げられていたある言葉である。
〜回想〜
「蓮君。少しだけ話があるの。良いかな?」
「わかば、どうしたんだ?」
わかばが蓮を呼ぶと少しだけ言いづらそうにしてから覚悟を決めてある事を言う。
「……ふたばの事、オッケーにしてもダメにしてもハッキリ返事をしてあげてほしい。あの子もそのくらい本気の気持ちで蓮君に告白してるから……」
わかばの言葉を聞いていると先日、翔太先輩へと告白するためにバレーの練習を頑張って試合でもその想いをぶつける形で本気で向き合っていた彼女の姿を思い出す。
「……勿論だよ。俺はこの期に及んで答えを濁すつもりはない。だから、もしふたばさんが立ち直れなかったら……姉としてフォローしてあげてほしい」
蓮からの言葉を聞き、わかばも彼の返事を察すると頷く。彼女自身、もしふたばの気持ちが実らなかったら彼女のフォローには入るつもりだった。そして蓮はこれから出す答えで彼女を傷つけるとわかっている。だからこそわかばにそのフォローを頼んだのだ。
〜現在〜
そして、場面は蓮とふたばの対面になる。姉譲りの髪色にショートヘアにして下ろした髪。蓮へと見せるその顔つきは恋する乙女の物だった。
「……その、蓮先輩。来ていただきありがとうございます」
「ああ……。手紙、見たよ」
「ッ……。その、返事……聞かせてもらっても良いですか?」
ふたばはそう言って問いかける。彼女に向き合う以上は答えないといけない。それが例え、彼女の気持ちに反する物であったとしても。
「……ごめん、ふたばさんの気持ちには応えられない。俺には……もう好きな人がいるんだ。だから……ごめんなさい」
蓮はそう言ってふたばへと頭を下げる。それを聞いてふたばは自分の気持ちは儚く砕け散ったのだと、自分の儚い恋はこの瞬間を持ってして終わったのだと自覚した。
「そうですか……。そうですよね」
ふたばはフラれたショックを受けつつも、どこか納得している部分もあった。自分が惚れた相手の蓮はその容姿から女の子にモテるイメージであり、実際もう誰かと付き合ってるとさえ思っているくらいだ。ただ、姉のわかばから聞いた話では蓮はまだ付き合って無いと来た。
だからこそ誰かに取られる前に自分の気持ちを伝えたかったのである。そして、ふたばの気持ちは届かなかった。彼女は唇を噛み締めながら必死に平静を取り繕うと微笑む。
「蓮先輩、その……返事、ありがとうございました。……蓮先輩の恋が実る事……私は陰ながら応援しますね」
今にも泣きそうだったのにふたばは我慢していた。蓮に罪悪感を抱かせないように笑って。それからふたばは蓮へと頭を下げるとその場を去っていく。
「……これで良かったんだよな」
蓮はふたばがいなくなるとボソッと呟く。彼女は泣くのを必死に我慢した。ただ、ここから去って自分の前じゃなくなった以上はきっと悲しさに暮れるだろう。
「わかば、後は頼むよ」
これ以上、蓮にはこの件においてふたばへとしてやれる事は何も無い。むしろそれは逆効果となる。だからこそフォローを事前にわかばへとお願いした。きっと彼女なら傷ついたふたばの心に寄り添えると信じて。
それから蓮は教室に置いてきていた鞄を取りに行くと下駄箱へと向かっていく。同時刻、誰もいなくなった一年の教室の方向から一人の女子のすすり泣く声とそれに寄り添う姉の姿があったのは余談である。
それから少しして。天城がバイトをしているとそこに先にグリッターへと帰ってきていたうたと遊びに来た影人達が到着した。田中の方はシフト時間が終わったために先に帰っている状態だ。
「ただいま!」
「「「お邪魔します」」」
尚、この場にいないレイは今日の夜に予定されるエレン×アイのコラボのための双方のマネージャー同士の最終打ち合わせに参加するためにここにはいない。
一応二人は所属事務所が違うので基本ビデオ通話が多めだが、こういう連絡は定期的に行っていた。そんな理由で彼は不在である。
「うたさん、ななさん、こころさん、影人君。お疲れ様です」
「天城さん、バイト時間だったんですね」
「ええ。でももう上がる時間ですし、着替えはしてしまいましたけどね」
よく見ると天城はエプロンを外して普通の服を着ていた。天城はバイトの際、来てくる服とは違う作業用の多少汚れても良い服を着てからエプロンを付けるようにしている。
「ワン!」
するとそこにこの家の飼い犬こときゅーたろうがやってきた。彼が飼い主のうたを見て嬉しそうに尻尾を振る。そんな中、厨房から出てきた天城が通りかかるときゅーたろうは敵意を剥き出しにして唸り始めた。
「うーっ!」
「だからきゅーちゃん、ダメだってば」
「まだ懐かないのか……本当に珍しいな」
「うん。きゅーちゃんがここまで人に懐かないなんて……」
きゅーたろうは相変わらず天城には警戒しっぱなしな様子である。それだけ天城を脅威に感じているのだろうか。これに関しては彼女がスラッシューである事に関係するが、それを知らない影人達からして見れば本当に疑問が浮かんでばかりである。
「あはは、それではすみません。この後用事がありますので失礼します」
「はーい。天城さん、またよろしくね」
「お疲れ様でした」
天城がうたの母親こと音と挨拶をするとお店を出て去っていく。それと入れ替わるようにして先程まで学校にいた蓮がお店へと到着するのであった。
また次回もお楽しみに。