キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
遊園地の各地で苦戦するアイドルプリキュア達の状況を打開するべくソウルは遊園地の中央部を目指す。
ソウルが遊園地の中を駆ける一方で、アイドルプリキュアの中のアイドル、ウインク、キュンキュンが戦闘する近くの物陰での事。
「アイドルプリキュア!頑張るプリ〜!」
「負けるなヨイ〜!」
そんな風にアイドル達を応援するプリルン及び、ヨーヨイ。しかし、やはりメロロンはあまり乗り気では無かった。
「メロ……。最終的にアイドルプリキュアが勝つのメロ。応援しなくたって同じなのメロ」
メロロンとしてはここまで何だかんだありつつもアイドルプリキュアが勝つ様を見てきていた。そのため、メロロンは応援しなくともアイドルプリキュアが勝つためにそれをやらなくてもあまり問題無いと思ってしまっていたのだ。
「何言ってるんだヨイ!アイドルプリキュアは応援を力に変えるんだヨイ!応援しなきゃきっと……」
ヨーヨイがメロロンの行為を咎めたその時。バリンという音と共にウインクバリアが粉砕されると三人纏めて吹き飛ばされてしまった。
「「「ああっ!?」」」
「プリ……このままじゃ負けちゃうプリ……アイドルプリキュア、頑張れプリ〜!」
プリルンが必死の応援をするが、やはりこの空間その物がアイドルプリキュアに不利に働くのかあまり力として届いていない。
「メロロン、頼む。応援してあげてほしいんだヨイ。メロロンだってこのままアイドルプリキュアが負けたら……」
ヨーヨイがそう言っているとアイドルがブローチをタッチしつつ飛び出していく。
「アイドル、グータッチ!」
「「クラヤミン……」」
「ダー!」
突撃してきたアイドルに対してクラヤミンダーはお化け屋敷個体とゴンドラ個体がコースター個体を後ろから押し出す形で援護。勢いの付いたコースター個体は猛スピードで突進し、アイドルの放ったグータッチことパンチとぶつかる。そのままアイドルの方は火力不足で吹き飛ばされてしまった。
「きゃああっ!」
「アイドル……ッ!また兵士達が……」
「だったらもう一度止めます!キュンキュンレーザー!」
キュンキュンがレーザーを放つ事で定期的に自分達を包囲しようと動く兵士達を蹴散らす。ただ、兵士達も頭数が多いので中々押し切れない上に空間のせいで再生してくる。
「ダメです……やっぱり効きません」
「でも、一瞬でも動きが止まってくれるなら何とか……」
そんな時だった。ウインクは何かに気がつくと妖精達の隠れている物陰を向く。そして彼女は叫んだ。
「プリルン、メロロン、ヨーヨイ!危ない!」
それを聞いて妖精達はびっくりすると振り返る。そこには妖精達を発見した影響で彼女達をターゲットにした兵士達が近づいてきていた。
「プリ……これってもしかして……」
「ああ、二人共。逃げるヨイ!」
「メロ……」
「メロロン、行くプリ!」
メロロンが恐怖で足がすくんでしまったためにプリルンが慌ててメロロンの手を引くとヨーヨイも含めて三人で逃げ出す。
「アイドル、大変!プリルン達が……」
「えっ!?プリルン達を助けなきゃ……」
「そんな事言っても私達だって手一杯ですよ!せめてブレイキンに……」
キュンキュンが唯一手を空けられそうなブレイキンに連絡しようとするとクラヤミンダーは三体揃って突っ込んでくるとアイドルプリキュアの三人を一人ずつ攻撃して彼女達は纏めてまたダメージと共に吹き飛ばされてしまう。
「「「きゃああっ!」」」
アイドル達三人が苦戦する中、ブレイキンの方もクラヤミンダーへと中々ダメージを与えられないせいで体力もどんどん消耗していった。
「クラヤミンダー!」
「がっ!?」
ブレイキンは体力の減少でクラヤミンダーを追いきれなくなっており、蹴りや突進でまともにダメージを受けるようになってしまう。
「クラヤミンダー!」
するとクラヤミンダーは再度ブレイキンの背後に回って後ろ脚で強烈な蹴りを放つ。
「ブレイキンパリィ!」
ブレイキンは咄嗟に馬の蹴りの本体だけでも受け流すためにブレイクダンスをしながら竜巻を纏って攻撃を弾く……が、やはりパワーまでは止めきれずに吹き飛ばされて地面に体を打ちつけた。
「ぐっ……ダメだ。このままじゃ、体力だけがすり減らされる」
「むう……。もう少しでアイドルプリキュアを倒せるはずなのにやっぱり胸がモヤモヤするのですぞ……いやいやいや!世界中をクラクラの真っ暗闇にするため、このまま倒すのですぞ!」
尚、カッティーは一瞬アイドルプリキュアが負けるのを心苦しそうにしてしまう。彼の心はアイドルプリキュアに染められつつある証拠だ。
また場面は変わり、走り続けるソウル。そんな中で彼の前にアイドル達三人の所から流れてきた兵士達が立ち塞がるが、相手をするだけ無駄なのでソウルはソウルソリッドを起動する。
「アイドルの力、ソウルソリッド!」
すると兵士達の足元から草結びの如く伸びた物体が兵士の足を引っかけるとそのまま地面に固定。動きを封殺した隙にすり抜けた。
「確か攻撃が止められたのはこの辺……ッ、やっぱり姿はいないな」
どうやら相手もあまり自分の存在を勘付かれたく無いのかずっと透明化しているらしい。なのでそう簡単に居場所を知らせそうに無かった。
「最悪移動してる可能性も考えないとか。……だったら、俺にしかできない対策法……見せてやる」
するとソウルが再びソウルメガホンを取り出すと再度ダイヤルをピンクに合わせてソウルソリッドを発動。その力によって周囲の地面に幾つものスピーカーのような小さな物体を出現させた。
「更に、ソウルソニック!」
その瞬間ソウルソニックによって発生した音波はソウルメガホン……からでは無く、地面に発生したスピーカーから発動。ソウルメガホンは逆にスピーカーから発生した音波を拾う事で音の反響を調べるために役立つ事になる。
「……そこか!」
ソウルは耳にインカムを装着する事でソウルメガホンからの情報を共有。姿を消すはできても音を受ける事による反響まではどうしようもできなかったのか、姿を消していたクラヤミンダーはあっという間に捕捉される。
「クラ!?」
「遅せぇよ!だあっ!」
ソウルが踏み込むと姿を消していたクラヤミンダーへと拳が命中。クラヤミンダーは堪らず吹き飛ばされると叩きつけられ、その姿を露わにした。
「クラヤミンダー……」
「一気に決める!」
ソウルはクラヤミンダーが何かしらの反撃をする前にライブ技で決めるべくソウルメガホンをライブ状態にしようと手をかける。だが、その瞬間ソウルの足元にトランプが突き刺さると爆発した。
「ッ!?」
ソウルは咄嗟に後ろに跳んだことで爆発の直撃を回避したものの、速攻での撃滅ムードをぶち壊した犯人へとその視線が行く。
「こんなタイミングで来んなよ……スパット!」
「おっと、これは失礼。手が滑ってしまいました」
スパットはピエロのお面の下で笑みを浮かべながらソウルを煽るような口調で話す。彼が何故ここにいるのか。ソウルは質問を投げかける。
「お前、何でここにいるんだよ。まさかと思うけど、張ってたとか無いよな?」
「ふふっ。先程のあなた方の通信を聞きましてね。先回りさせてもらいましたよ。……困るんですよねぇ。そうやって簡単に我々の策を止められるのは」
「スラッシューに聞かれてた時点で想定するべきだったか」
どうやら通信をしたせいでアイドル達三人の所にいたスパットにも話を盗み聞きされてしまったらしい。彼はアイドルプリキュア側の作戦を聞いてソウルがここに来ると知り、先回りしてきたのだ。
「お前の相手するのが一番嫌なんだけど」
「おやおや奇遇ですねぇ。私もあなたの相手をするのはあまり好きじゃないんですよ。どうです?ここはお互いに退くという事で」
「それはクラヤミンダーを全部人間に戻した上で遊園地から退くって意味か?」
「ご冗談を。この場から移動するだけですよ」
「じゃあ俺も冗談はよせって所だな」
これにより、交渉は決裂。スパットの相手をせざるを得ない事になってソウルは面倒そうな顔をする。
「さぁ、この私を楽しませてくださいよ?」
スパットが手に剣を構える中、ソウルもソウルソリッドによって剣を生成。お互いに剣を持った状態で睨み合う。
その静寂はまるで達人同士の駆け引きのようであった。ソウルはどちらかといえばカウンターによる崩しの方が得意であるのと、スパット相手にどう攻めるべきか考えているために余計に彼からは踏み込まなかったのである。
「……私を警戒してますねぇ。でも、そんなに長々と警戒を続けて良いんですか?お仲間は一刻も早い打開を望んでますよ?」
スパットはそう言ってソウルを焦らせようとする。現にソウルはホープフルがスラッシュー相手に一人で残っている場面を見せられているので余計に不安だろう。
「はあっ!」
ソウルがこれ以上は無理と踏んで踏み込むと敢えて剣を振るのでは無く投擲。それをスパットが剣で弾く一瞬の隙を狙って懐に入った。
「この距離なら俺の拳の方が早いぞ!」
ソウルはスパットの反撃にカウンターする形で掌底による一撃を見舞う。……だが、やはりスパットは対応済みのようで。
「ざぁんねんでした!」
ソウルの掌底がぶつかった瞬間にスパットの姿は溶けるように消えていく。それと同時にソウルは体が宙に浮くと視界が反転していた。
「は?」
ソウルが地面にぶつけられる中、すかさずスパットは追撃の剣による衝撃波を連発。ソウルは急いで立ち上がるとそれを回避するべく走るが、爆発が追いついてしまうと彼を吹き飛ばした。
「ほらほら、どうしたの?さっきまでの威勢はどこに行ったのかしら?」
それに合う形でスラッシューと交戦するホープフルも火炎弾を足元にぶつけられて爆発が起き、それが晴れると崩れ落ちてしまう。
「ううっ……。強すぎるわ……ソウルがどうにかしてくれないと本当に勝ち目が……」
ホープフルは自分の予想した通りスラッシューとの実力差が大きい事を身を持って味わっていた。
「この程度で私は満足しませんわ。私相手に粘れるって啖呵を切ったのだからもう少し頑張ってほしいんだけど」
「煩いわ……。まだ終わってないのよ」
ホープフルは立ち上がるが、もう全身がダメージで傷ついている。長くは保たない状況だろう。
「どうにか時間を作れば、ソウルが……」
「ふふっ。ソウルの事を信じてるのね」
「当たり前でしょ。最初はブレイキンを、蓮を何も知らないくせに色々言ってくる嫌な奴って思ってたけど……。それでも彼は信じられる男だって今は胸を張って言えるわ」
どうやら蓮と影人が出会ったばかりで喧嘩をした頃に笑華もその話を聞いて一度影人の事を嫌な奴だと思ったらしい。ただ、彼と会う間にその気持ちは消えていったのだが。
「そう。じゃあ、もう少し遊んであげるわ。歯、食いしばりなさい」
そう言ってスラッシューがホープフルへと追い討ちの攻撃を放つ事になる。
アイドルプリキュアがどんどん劣勢に追い込まれる中、プリルン達妖精三人はどうにか兵士達を撒くと遊園地の中を進んでいた。
「プリ……キュアアイドル達……大丈夫かな」
「俺達が信じなくてどうするんだヨイ。ヨーヨイ達が信じればきっと何とかしてくれるヨイ」
「そうプリ!プリルン達が応援するプリ」
「メロ!あっちで戦いの音がするのメロ!」
プリルン達三人が進むとその先にいたのはスパットからの攻撃を受けて倒れ伏したソウルだった。
「あ……うっ」
「メロ……ソウル……何で」
「おや?誰かと思えば無力な妖精さん達ですか。丁度アイドルプリキュア達の希望……キュアソウルが力尽きた所ですよ」
その光景を見たメロロンの心に絶望感が広がる。メロロンにとってソウルはアイドルプリキュア達の中では唯一友達として頼れる人間だった。そんな彼が目の前で無惨に倒れていたらメロロンの心が不安になるのも当然だろう。
「そんな……嘘メロ!」
「嘘じゃないんですよね〜これが」
メロロンが呆然としたそんな中だった。プリルンとヨーヨイはキラキライトを必死に振り始める。
「キュアソウル!負けちゃダメプリ〜!!」
「頑張れヨイ!ソウルなら立ち上がれるヨイ!」
「脳みそお花畑の妖精達の戯言ですか。……だったらまずはあなた方から始末してあげましょう」
スパットはプリルンとヨーヨイをターゲットにするとその方向を向く。それを見てメロロンは慌てたように声を上げる。
「ねえたま、にいたま、逃げるメロ!」
「プリルンは、プリルンはアイドルプリキュアを応援したいプリ!そうすればきっと……」
「きっと頑張ってくれるんだヨイ!だから、だから負けるなヨイ!」
「ふん。応援なんて無駄なんですよ。……さっさと諦めてもらいましょうか」
スパットは手にしたトランプをプリルン、ヨーヨイに投げようとする中。一人、メロロンの中にある気持ちが強くなっていた。そして、彼女は行動する。
「メロロンは、メロロンは……アイドルプリキュアに、頑張ってほしいメロ!頑張れ!キュアソウル!頑張れ、アイドルプリキュアメロ〜!」
メロロンはどれだけアイドルプリキュアが傷ついても、倒れたとしても希望を持って応援し続けるプリルンやヨーヨイを見てようやく感じ取った。自分達の応援が無ければきっとアイドルプリキュアは頑張れないと。そして、もう手遅れかもしれないとわかってても……少しの望みに賭けたかった。
「終わりですよ!」
スパットが妖精達の応援を止めるべくトランプを投げようとした瞬間。いきなり後ろから音がしたと感じると振り向く。
「ッ、まさ……ぶっ!?」
その直後。振り向いたスパットの顔にソウルの拳が突き刺さっていた。それを喰らったスパットは目を見開く。
「馬鹿な……」
そんな彼へと一撃を見舞ったソウルは降り立つ。そして、妖精達の方を向いた。
「悪い……応援、ありがとうな。……お前らのおかげでまだ頑張れそうだ!」
ソウルは妖精達の応援によって持ち直すとスパット相手に構える。そんな中、スパットは面白く無さそうにソウルを睨んだ。
「ぐぬぬ、あのまま倒れていれば良かったものを。ならば、起き上がった事を後悔させましょう」
その瞬間、スパットの姿が四人へと分身。ソウルを取り囲むとほくそ笑む。
「さぁ、疲れたあなたに本物がどれかわかりますかね?」
スパットが得意そうに言う中、ソウルはスパットが取った手を見て小さく笑みを浮かべる。
「はぁ……お前さっきの俺のアレ見てないのかよ。……それ、俺相手には悪手が過ぎるぜ?ソウルソニック!」
その瞬間、先程同様に音の反響を利用するとソウルは一発でスパットの分身を見切ると本体へと蹴りを放つ。スパットはそれを紙一重で回避するものの、一発目でいきなり分身が見破られたので多少動揺する。
「ッ、随分と見破るまでが早いですねぇ。これはあなたには効きませんか」
スパットはこの技では通用しないと知るが、まだ余裕そうに振る舞いつつ邪悪な笑みを向ける。そんな彼を見てソウルは無言になった。
「……おや?急に黙ってどうしました?それ以上来ないなら私から行きますよ!」
スパットは再び剣を構えて動きを止めたソウルを一気に仕留めようとする。ソウルはそれを受けてスパット相手にダランとしていたが、スパットが剣を振り抜こうとするとそのタイミングに合わせてカウンター気味にアッパーカットを放つ。それを受けたスパット……いや、先程まで隠れていたはずのクラヤミンダーが吹き飛ばされた。
「クラヤミンダー!?」
「だからバレバレっつったろ。お前が分身に乗じてその中の一体をクラヤミンダーを擬態させた分身として紛れ込ませるのもわかってんだよ」
ソウルはそう言うとクラヤミンダーへと浄化技を使おうとする……が、そのタイミングでソウルは手を止めた。
「……俺がもしスパットなら……」
その瞬間、ソウルはソウルソリッドを使うと倒れたクラヤミンダーを地面から生やした蔦で拘束。地面に縫い付ける。これでクラヤミンダーの移動を封じると手にしたソウルメガホンを紫に合わせた。
「キュンキュンの力、ソウルバレット!」
ソウルがノールックでソウルメガホンを構えると誰もいない方向へとソウルバレットを放つ。この一見無駄に見える行動。しかしそれは姿を消し、隠れていたスパットの不意を突くには十分だった。
ソウルからのノールックショットが決められたスパットはダメージを受けて下がる。その際に何かのボタン付きのリモコンを落としてしまった。
「なっ!!」
リモコンが落下したのを見てすかさずソウルはスライディングでリモコンを拾う。
「良し、予想通り」
「何?」
「いやね、性格の悪いお前の事だからさ……敢えてクラヤミンダーとその能力を使うためのスイッチは別にしてるんじゃないのかなって思っただけ」
結果、ソウルの読みは見事的中。ソウルはクラヤミンダーが使っている能力を止めるためのスイッチを手にした。
「これで……壊れてくれ!」
ソウルがスイッチを落とすとすぐに踏み潰して破壊。その瞬間、クラヤミンダーが発動していたドーム能力は解除。これにより遊園地全体を覆っていたドームは効力を失うと消えてしまうのだった。
「しまった……」
空はドーム能力による宇宙の星空のような場所からいつも通りの暗い空となっており、ソウルはこれで自分達の攻撃が通るようになったと感じる。
「ドーム生成まではスラッシューさんの考えを採用しましたが、彼女に黙ってクラヤミンダーの内部にある電源機構だけをスイッチとして引き抜いたのが仇になるとは……」
スパットが作戦を見破られたとばかりに狼狽える中、ソウルの前にもう姿を隠す必要の無くなったクラヤミンダーが立ちはだかる。
「クラヤミンダー!」
「さぁ。ここから反撃開始と行こうか!」
こうして、クラヤミンダーによる遊園地を包むドームは解除されるとようやくアイドルプリキュア達はクラヤミンダー達とまともに戦えるようになるのだった。
また次回もお楽しみに。