キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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地獄の特訓!?はなみちタウンフェスに向けたトレーニング

特訓メニューが決定した翌日。予定通り今日はアイドルプリキュアがはなみちタウンフェスに出るための特訓の日であった。そのため、まずはアイドルプリキュア達は特訓のための現場入りをする事になる。

 

「わぁ……ここで特訓するんだね!」

 

「てっきりどこかのジムとか体育館とかを借りると思ってたけど」

 

「ここでフェスのための特訓出来るなんて心キュンキュンしてます!」

 

「「「海ー!」」」

 

そんな風に三人が声を合わせる中、一同がやってきたのはこの街にある海岸線の砂浜であった。うた、なな、こころの三人は季節よりも一足早めにやって来れた海に興奮気味である。特訓のため、アイドルプリキュアのメンバーは全員学校の体操服を着ている。これも全員の気持ちを一つにするための験担ぎの一つであり、彼女達のやる気も十分ある。……ただ一人を除いてだが。

 

「………」

 

影人だけは知っている。これからステージのためにかなりキツいトレーニングが待ち受けているという事を。だからこそ一人だけ海に来た興奮が無かったのだ。

 

「カゲ先輩、ちょっとテンション足りませんよ。折角海に来たのに」

 

「うん!それじゃあ早速泳いで……」

 

「待て、咲良さん。何で俺達がこの格好で海に来てるかわかるか?体操服を着てるのに海で泳ごうと言うとかアホか?」

 

「あ、アホ!?」

 

影人が早速泳ごうとするうたを静止。折角なら海に入りたい気持ちもわからなくも無いが、今回の目的は奥に見える海……では無くその少し手前。今影人達が踏みしめている砂浜にあった。

 

「さて、では早速やりましょうか」

 

「田中さん、準備オッケーですよ」

 

そう言ってレイがこのやり取りの間にとある物を出し終えたのか、田中へと声をかける。ちなみにこの場にいるのは影人、うた、なな、こころのアイドルプリキュア四人に加えて同じく特訓をするプリルン、そして特訓のサポート役のレイとメロロン。そして同じくサポートとして来たうたの家の犬こときゅーたろうだ。

 

とは言ってもメロロンときゅーたろうに関してはサポートと言いつつもほぼ傍観者だが。

 

「という事はトレーニング場所って……この砂浜?」

 

「ああ。砂浜でのトレーニングにはアイドルとして必要な能力を得やすいと判断してな。とは言ってもここにはいない姫野さんの案だけど」

 

今日、姫野は残念ながら別の仕事があるために来ることができなかったようである。

 

姫野の事は置いておき、ここで砂浜でのメリットを幾つか箇条書きで紹介しよう。

 

・足腰の強化

・バランス感覚や体幹を身に付ける

・関節への負担が小さめ

・持久力向上

 

主にこの四点が今回欲しい利点だ。砂浜は普段歩くアスファルトや土よりも柔らかく、踏み込んだ時に力が反発せずに逃げるので体へと負荷を抑えることが可能となる。また、柔らかいがゆえに足元は常に不安定。だからこそバランスや体幹を鍛えられる。

 

そして単純に砂浜での運動は体力を使う。はなみちタウンフェスまで時間的猶予も少ないため、少ない時間で体力を大きく消耗させる砂浜は短時間での持久力の強化にそれなりに貢献してくれるだろう。

 

「ただ、体への負担が小さいとは言っても足が取られやすいから転んだ時に足首を捻ったりしやすいのも事実だ。そこは注意しつつやらないとだな。……それと、はい」

 

レイが四人の前にそれぞれの足のサイズに合わせた砂浜用の靴を出す。砂浜でのトレーニングは基本的に素足かこの砂浜用靴でやるのが良い。素足は砂が太陽光で熱される事による火傷や砂浜に落ちている小さなゴミ等による怪我のリスクが高いのと、そこまではしなくて良いという事で今回は却下となった。

 

「靴もしっかり準備済みって事か」

 

「これなら持ってきた靴を汚さずに済むね!」

 

そして、今し方レイが準備した物というのが……まさかのタイヤである。更にタイヤにはロープが縛ってあり、いかにもこれを引っ張れと言わんばかりだった。

 

「で、レイ先輩が準備したこれ……もしかして最初はタイヤを引くんですか?」

 

「ええ。まずは基本の体力作りからですしね」

 

こころの質問に田中が答える。タイヤを引く事によるスタミナ強化はどこぞの超次元サッカーアニメでありそうな展開だが、それはさておこう。

 

「なるほど。これは結構本格的かも」

 

「……あれ、そういえばプリルンの分は?」

 

うたが問いかけると四つ並べられたタイヤの隣にピンクの小さなソリがあった。

 

「プリルンにはメロロンにこのソリの上に乗って貰った上でソリを引っ張ってもらいます」

 

「というか、よく妖精が乗るような小さなソリがあったな」

 

「出張所の倉庫に偶々置いてありまして。ここ暫くずっと使って無かったのですが何かの役に立つと思って置いてました」

 

まさに奇跡の掘り出し物と言った所か。それはさておき、影人はソリを一番右側と定義して順番にタイヤを見る中で一番左側に一つだけ明らかに他と比べて大きいタイヤを見つける。

 

「おい。このタイヤ、一個だけ一回り大きいな。何なく察しは付いたが改めて聞く。これ、明らかに俺用だよな?」

 

「当たり前だろ?女子の三人と一緒にしたらお前がトレーニングにならないか女子達が体を壊す。だったらお前だけ重いのは当然だろ」

 

「………」

 

影人は仕方ないとばかりに一番大きいタイヤの所に立つとタイヤに付けられたロープを腰に巻き付けて縛る形で固定。他の三人も同じようにする。

 

「固定が済んだ所で早速やるぞ。このまま砂浜ランニング」

 

「うう、やっぱりこうなるよね」

 

「でも、体力をつけるためです!」

 

「皆、頑張ろ!」

 

「プリ!プリルンも気合いバッチリプリ!」

 

「ねえたま、頑張るメロ〜」

 

そんな風に話しながら準備も終わった所で早速田中は首からホイッスルを下げると声をかける。

 

「では始めますよ。よーい!」

 

田中が手にしていたメガホンを振り下ろすと同時にホイッスルを鳴らしてそれと同時にプリルンを含めた五人は走り出す。プリルンに関しては妖精であるために走るスピードが遅いのは仕方ないが、影人達四人はほぼ同じペースで走っていた。

 

「皆さん。気合い入れてください!」

 

「これ、キッツ……」

 

「脚が重い……」

 

「うぉおおっ!」

 

うた、なな、こころがそう言う中、影人が他の三人と同じくらいのペースなのを見てレイが並走しながら声をかける。

 

「おーい影人。お前男なんだから女子よりも走れるだろ」

 

「煩せぇ!このタイヤ見た目以上に重いんだよ!」

 

「あー、そりゃそうだろうな。他のタイヤよりも中の素材が金属多めで重いから」

 

「だろうな!?クソッ!」

 

影人は案の定他の三人と比べてタイヤのサイズのみならず中の材質も重い物に設定されてると知って声を荒げる。ただ、まだ話自体はできるので死ぬ程追い詰められてるわけでは無いだろう。

 

そんな中でプリルンもメロロンを乗せたまま走り、メロロンがそんなプリルンへと声援を送る。

 

「プリプリプリ〜!」

 

「ねえたま!ファイトメロ〜!」

 

「プリルンはアイドルプリキュアのメンバープリ〜!だから頑張るプリ〜!」

 

プリルンもアイドルプリキュアの一人として気合い十分な様子で走る。そんな中、田中は更に気合い入れのために声出しを呼びかけた。

 

「声出して行きましょう!キラッキ〜」

 

「「「「ランラン!」」」」

 

「プリ!」

 

「キラッキ〜」

 

「「「「ランラン!」」」」

 

それから暫く走り続けてからランニングを終える頃には四人共既にヘトヘトであった。それからレイがタイヤを片付けている間に次のトレーニングへと移行する。

 

「次はファンサ1000本ノック。アイドルたる者、疲れた時こそ最高のファンサができなければなりませんからね」

 

田中の言葉に一同は頷くと早速田中に言われた通りにファンサを見せていく事になる。

 

「てか、改めて思ったが……1000ノックってモロ野球のそれだろ……」

 

「影人、つべこべ言わない!お前は知ってるんだから特に良いだろ!」

 

「ではまずはアイドルスマイルから!」

 

それからカメラで写真を撮りつつ毎回違うポーズを取ってカメラへと最高の一枚を常に収め続けられるようにしていく。

 

「おい影人、顔固いぞ」

 

「無意識にやってるライブの時は兎も角、俺にはこれが限界だっての」

 

「カゲ先輩、もっとリラックスですよ」

 

「このままじゃ、お前の分の回数を増やすからな」

 

「ぐぬぬ……」

 

うた、なな、こころの三人は割と手慣れた様子でリラックスした可愛い顔つきを向けているが、そんな中で影人は割と表情筋とかの顔の筋肉が固いのか中々上手くできない。影人が割と真面目な性格なのも相まって笑っても気難しさが出てしまうのだ。

 

「うーん。アカペラの時もそうだったけど、影人君って結構自分を主張して周りに魅せるのが苦手っぽいよね」

 

「多分頭は柔らかくて回転は早いから頭では何となくわかってるんだろうけどな……」

 

「影人、咲良さんをもっと見習え。あの自然な笑顔をやってみろ。何ならお前、こころやプリルンにも負けてるからな?」

 

「くっ……」

 

影人は上手い事表情の管理ができていなかった。そのためにどうしても苦戦してしまう。そんな中でプリルンの方はごく自然な笑顔を向けられている。

 

「ねえたま、素敵メロ!影人、もっと素敵な顔をみせてほしいメロ〜!」

 

メロロンはビーチパラソルの下で手にキラキライトを持ちながらブンブンとそれを振りつつ応援する。

 

「次は決めポーズ!」

 

今度は決めポーズだ。先程のアイドルスマイルの時は笑顔に添えるだけだったポーズを今度は体全体を見せるために大きくやる必要がある。その上で魅せるためにしっかりと決めないといけない。

 

「あ、影人君、ポーズ自体はちゃんとできるんだね」

 

「顔だけはやっぱりちょっと固めかな……」

 

これで影人のファンサにおける苦手な分野が収まりの良い綺麗な顔つきという事が判明。特に口角とかが多少引き攣り気味なので勿論そこも厳しく指摘が入る。

 

「カゲ先輩、普段から私に向けてくれる自然な顔で良いんですよ?」

 

「わかってる……。わかってはいるんだが……」

 

こう言ってる所からも影人としてはどうにか克服したい気持ちではあるらしい。しかし、ここは要特訓という所だろう。

 

「でもこうして見ると影人って昔の事も今回の事もできないなりに沢山努力してる人なんだって改めてわかるな」

 

レイは影人の能力の本質は決して何かに特化した天才肌というわけでは無く、度重なる努力によって生み出された努力型の人間であると再認識する。

 

「……こんなに頑張っても自分のキラキラを出せないなんて俺が他人から言われたら気持ちをちゃんと保っていられるのか……。正直、影人は凄いよ」

 

レイはおふざけとか無しで真面目に影人へと賞賛の言葉を贈っていた。それだけ彼がレイから見て尊敬できる人間だと思われてる証拠だろう。

 

更に、暫くやっていると影人はコツを掴んできたのか少しずつポーズの瞬間の顔の魅せ方が上手くなりつつあった。

 

「あ、影人君。顔つきがちょっと柔らかくなってるかも……」

 

「うん。……さっきより上手くなってる」

 

「ああ、どうにかコツは掴めてきた。皆をキラキラにするためにもこのままできないままでいたくないし……そりゃ必死で着いていくよ」

 

その言葉を聞いたと同時にレイは影人の過去の話をまた思い出す。影人は才能に溢れた天才型にはどうしても置いていかれる所はあるが、それでも時間をかけて努力や経験をキチンと積めていれば……。或いは今とは違う道を彼に歩ませたかもしれない。

 

それは影人の夢が枯れてしまう直前に芸能人の事務所に受かるレベルにまで到達できたという事実が裏付けているだろう。

 

勿論、芸能界で生き残るには能力だけで無く割と運も必要なので影人の場合は受けられた仕事や同期にそれなりに才能を持っている人がいた等の彼が挑戦した時の運の噛み合いが最低に近いくらいに悪かったというのもあるが。

 

「影人、カッコ良いのメロ!ねえたまも決まってるのメロ〜!メロ!メロ!」

 

「では次はウインク、行きますよ」

 

ある程度練習が進んだ所で次はウインクの練習だ。うた、なな、こころ、そしてこの分野では影人も次々にウインクを決める。影人はまだ顔の固さが残ってるものの、それは徐々に改善できているので最初と比べると十分な進歩だ。

 

「……プリ?うーん、できないプリ〜……」

 

「ねえたまのそんな所もキュートメロ!」

 

ただ、プリルンだけは前と同じくウインクが苦手なのでどうしても両目を瞑ってしまう。メロロンはそんなプリルンに興奮しまくっていた。最早、推しにだったら何をやらせても可愛いと感じるファンの思考である。

 

その後も地獄の特訓が続いた。腹筋等の筋トレ、パン食い競争、ビーチフラッグ、発声練習。そして再度のランニング。

 

幾つものトレーニングをこなす中で日は傾き、夕焼けが見える頃。田中が話しかける。

 

「皆さん、お疲れ様です。今日はここまでにしましょう」

 

「疲れたぁああっ……」

 

「もう無理……」

 

「ダンスやっててもキツかったですよこれ……。ただ……」

 

こころが横を見やると誰よりも疲れて顔面から突っ伏した影人がいた。その両腕両脚には錘が付いており、彼にだけ相応のハンデがあったのだとわかる。

 

「カゲ先輩、ほぼ全部のトレーニングで錘っていうハンデ有りでしたからね」

 

「クソ……マジでレイ今度覚えとけよ……」

 

ちなみにうたは砂浜の上に大の字になって寝転び、ななはその場にへたり込む形で疲労感を露わにする。唯一普段からダンストレーニングをしていたこころだけは倒れずに持ち堪えたものの、両手に膝を付いて下を向いて息を整えるくらいには疲れていた。

 

「もしかして影人君の錘を提案したのって」

 

「ああ。俺だよ」

 

レイはそう言ってサラッと答えた。特に悪びれもしてない辺り、いつも通りだろう。

 

「プ〜リ〜コテンプリ〜」

 

プリルンの方も一日頑張った影響できゅーたろうの体に自分の体を預ける形で鼻提灯を出しながら寝てしまう。そんなプリルンを見てメロロンはどこか複雑そうだったが、何故かきゅーたろうにだけは突撃しなかった。この辺りはきゅーたろうがプリルンをメロロンから取ったわけでは無く、プリルンが最初から自分の意思でその場所を選んだからだろう。

 

尚、この前のプリルンが寝ぼけてうたのベッドに自発的に行った際は容赦無くうたを攻撃したが。

 

「ねえたま寝ちゃったメロ」

 

「凄く張り切ってたもんね」

 

「……アイドルプリキュアのメンバーだと言われた事。余程嬉しかったのですね」

 

田中もそんなプリルンを見て微笑ましい顔つきになる。彼も昔に家がご近所で仲良しだったプリルンの気持ちをよくわかっているという事だ。

 

「そんでレイ……一応今後の予定話しとけよ……」

 

「影人君、まだうつ伏せ状態でそのまま喋ってるし……」

 

「そうだな。今後のプランだけど、フェスまではあと一週間。これから短時間で飛躍的な能力上昇は厳しいだろうけど、平日の放課後はここに集まってこれよりは簡易的になるけどちょっとしたトレーニングを毎日やろう。明日明後日くらいは筋肉痛が襲ってくるけど毎日やれば砂浜には慣れてくるし、週末には砂浜トレーニングやっても体が慣れて筋肉痛は無くなるはずだからな」

 

「って事は放課後になったら皆でここに移動だね」

 

「私の方もバイトのシフトを天城さんにお願いし、一部交代してもらいました。この一週間は午後の時間を毎日空けられます。私は学校終了のタイミングに合わせてここに来ますのでそこで合流しましょう」

 

「それに伴って放課後のアカペラ練習の方は急遽全中断。講師の方々もトレーニングを手伝ってくれるらしい。ただ、夢乃ちゃんへの指導は継続してもらう関係で一人は彼女の方につきっきりだけど」

 

そんな感じでこれから五日間の予定が決まった。ただ、はなみちタウンフェスは来週の日曜日。最後に残った土曜日はと言うと……。

 

「ラストの一日の土曜日は出張所でのトレーニングになるな。その日がトレーニング最終日だし、室内でやる事もある。後は皆の努力次第だ」

 

「よーし!皆、頑張ろ!」

 

それからうた、なな、こころは立ち上がると円陣を組む形で手を重ねる。影人もどうにか立つと手を重ねた。

 

「We are!」

 

「「「「キミとアイドルプリキュア♪!」」」」

 

うたの掛け声と同時に四人で手を上に上げるとこれから一週間ファイトの意味を込めた気合い入れをする。こうして、フェスへと向けた一週間に及ぶトレーニングの日々が始まるのであった。




また次回もお楽しみに。
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