キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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張り切るプリルン 闇に閉じ込められるカッティー

一日続いた砂浜でのトレーニングが終わった後の夜の時間にて。うたは寝る前にトイレに入っていたのか、水を流す音がしてからドアを開ける。

 

「ふわぁああっ……。今日は疲れたから一段と眠い……。ん?」

 

そんな中、一階へと続く階段の近くにある電気の消えた暗い部屋で何かの音がするのをうたは聞く。

 

「きゅーちゃん?」

 

うたは最初、家で飼っている犬のきゅーたろうと考えた。しかし、次の瞬間には高速で小さな影が暗い部屋の中を動くのが目に映る。その瞬間、うたは驚くと慌てて後退りするわけで。

 

「じゃない!?ま、ま、ま、まさか……お化け!?」

 

うたが慌てる中でもまだ黒い小さな影は忙しなく動き回る。加えて、その影が発していた言葉に聞き覚えがあった。

 

「プリ!プリ!」

 

「……プリ?」

 

うたがそっと部屋の電気を付けると明るくなった部屋の中にいた小さな影……プリルンの姿が露わになる。どうやら彼女は自撮りで写真撮影中であり、何枚も自身のカメラで写真を撮っていた。

 

「プリ……プリ!」

 

するとプリルンは自撮りした写真を見るとコレじゃないとばかりに声を上げる。

 

「ウインク難しいプリ!できないプリ〜!」

 

どうやら昼間にできなかったウインクの練習中だったらしい。だからと言って暗い部屋の中で写真を撮りながらウインクをしたってまず暗くて上手くカメラに映らないはずだが……。ひとまずそれは置いておこう。

 

「プリルン!?何してるの?」

 

「プリ!ウインクと決めポーズの練習してたプリ!」

 

そう言って笑顔でうたの方を向くプリルン。うたもそんな風にアイドルプリキュアの一員として頑張っているプリルンに嬉しい気持ちが湧いてきた。

 

「プリルン、気合い入ってるね!」

 

「プリ!」

 

それから二人は時間も遅いため、他の家族に見つかる前にうたの部屋に戻るとベランダに出て綺麗な夜空を見上げてお話しをしていた。尚、いつもならこの状況を見たら黙っていないメロロンは珍しくもう先に寝てしまったらしい。

 

「プリルンはキラキランドを救うためにアイドルプリキュアを探してこの街に来たプリ。だけど……」

 

「だけど?」

 

「もうそれだけじゃないプリ!うたと皆との毎日は凄っごく楽しくて、キラキラで。プリルンの宝物になったプリ!」

 

そう言ってプリルンは手にした自分のトイカメラの写真を見返していく。そこにはうたとプリルンのツーショットにお泊まり会の時のウインク。更にお泊まり会を経て完成したキュアアイドルとキュアウインクのマスコットを持ったこころとキュアアイドルの衣装を着たプリルンによる写真も収められていた。

 

他にもプリルンが不意打ちで影人とメロロンの写真を撮影していたり、レイの写真もちゃんと撮っている。この感じだと彼等との思い出もプリルンにとって大切な一ページとなっているというわけだ。そして、それはうたも同じなわけで。

 

「えへへ、私も!」

 

「プリルンは、うたが言ってくれた事。とっても嬉しかったプリ。プリルンもアイドルプリキュアのメンバーって」

 

「プリルン……」

 

プリルンはうたから言われたプリルンもアイドルプリキュアのメンバーであるという言葉がとても嬉しかった。これまではアイドルプリキュアを応援するだけの存在だった自分が、正式にアイドルプリキュアのメンバーとして認められたという事になるのだ。むしろ嬉しくないわけが無いだろう。

 

「今日、皆と一緒に特訓できたの……とってもとっても嬉しかったプリ!プリルンはこれからも頑張って練習して、歌もダンスもウインクも。皆みたいに上手に頑張るプリ!いっぱい、い〜っぱい!頑張るプリ!」

 

「今のプリルン、最高にキラッキランラン〜!」

 

「プリ〜!」

 

「私も負けてられないな!キラッキランラン♪キラッキランラン♪キラッキランラン♪」

 

「プリ!プリプリプ〜リ♪」

 

それから二人でリズムに乗って体を揺らすと一度顔を見合わせてから二人で夜空を背景に記念撮影をするのであった。

 

「メロ……何だかねえたま無しじゃ寝られないのメロ」

 

そんな中でプリルンが隣で寝ていないせいか、メロロンが起きてしまうとうたとプリルンのいる窓際付近にやってきてしまう。

 

「メロ、あれはねえたまと……咲良……うた?」

 

メロロンはこのタイミングまではまだ寝ぼけ眼状態だった。ただ、目の前でねえたまことプリルンがうたと親しく話している現状を見てしまえば眠気は一瞬で吹き飛んでしまう。加えて、彼女の怒りのボルテージは一気に最高にまで上がった。

 

「め、メロ……咲良うた!このねえたま泥棒!!」

 

いつも通りにメロロンが怒りのあまりベランダに続く窓を開けるとうたの顔面……では無く、今回はお腹へと突進。鳩尾辺りにメロロンからの全力タックルを喰らってしまう。

 

「ぐええっ!?」

 

結局いつも通りの結果になったうた。そんな彼女を尻目にメロロンはプリルンの手を引っ張って行ってしまうのだった。

 

「ねえたま、そろそろメロロンと寝るのメロ!」

 

「プリ?確かにそろそろ眠くなってきたプリ」

 

「め、メロロン……タックル強すぎ……無念」

 

うたの方はギャグ補正ありとはいえ、メロロンからの突進をまともに喰らって約30分ぐらいその場で痛みに悶えるのであった。

 

それから一週間はあっという間に経過。学校で授業を受けて放課後に短縮版で砂浜特訓を行う。そんな五日間が過ぎて“はなみちタウンフェス”を翌日に迎えた土曜日の事だ。

 

「今日は歌とダンスのレッスンですね!」

 

「……ああ。ただ……やっぱり改めて見ると田中さんの家って凄いな」

 

今現在、影人達アイドルプリキュアの四人とレイ、田中。加えてプリルン、メロロンは田中の家ことキラキランドの出張所に来ていた。そして、その内部の一室。そこには内側の壁が全て鏡となっており、音響設備もしっかり完備したダンススタジオであった。

 

「こんな事もあろうかとこの一週間でレッスンスタジオを用意しておきました」

 

「なるほど……」

 

「準備良すぎてちょっと怖いくらいだけどな」

 

それはひとまずさておくとして。このスタジオがあれば思う存分踊る事が可能であるし、歌も普通に歌いながらやっても周りに心配をかける必要が無い。

 

「う、うたちゃん痛い痛い!」

 

「あっ!!ごめん、ななちゃん」

 

そんな中でうたがななをストレッチで押しすぎたがために元々体が固めのななが声を上げていた。

 

影人達四人がストレッチをする中でプリルンもダンスのためにストレッチに励んでいた。尚、メロロンの方はいつも通り一人で読書中である。

 

「そうだ。ダンス練習の前に……プリルン、メロロン!」

 

「プリ?」

 

「何なのメロ?」

 

それからうたが二人へと差し出したのは二つのスプーンマイクであった。一つは緑のリボンが、もう一つはピンクのリボンが付けられている。

 

「じゃーん!私からのプレゼントだよ。一緒に歌おう!」

 

うたが二人にそれを渡すとそれぞれ受け取る。それはうたも持っているスプーンマイクとリボンの色は違うものの、お揃いの物であった。

 

「これは何なのメロ?」

 

「プリ!うたとお揃いプリ!これでプリルンも皆と一緒に歌えるプリ!」

 

「……メロロンはこんなの別に要らないのメロ。でも……ねえたまが喜ぶのなら」

 

そんな風にチラッとプリルンの方を向くメロロン。やはりメロロンの行動基準はプリルンの気持ちが優先なのだろう。

 

「……あなたの笑顔、一番星の煌めき。いつも私を導く道しるべ」

 

メロロンがいつも通りポエムを口ずさむ中、そんな彼女を微笑ましい顔で見るななやこころ。

 

「メロロン、デートしてますます愛が大きくなったような」

 

「ですね」

 

「まぁ、メロロンにとってのプリルンは何者にも代え難いくらい大切な人だからな。それに、嫌でもちゃんと受け取ってはくれてる。今はそれだけでも十分だろ」

 

そのタイミングで田中が手を叩くと雑談はここまでとばかりに声をかける。

 

「さて、そろそろ始めましょうか」

 

「時間は有限。少しでも多く練習しないとだからな」

 

こうして、早速影人達四人はダンスのトレーニングをする事になる。まずはプリキュアへと変身した。ダンスの練習をするだけなら変身前でも十分可能ではあるが、今回必要なのは翌日に必要となる本番での感覚。

 

四人がステージの上で踊るのはアイドルプリキュアとしての姿のためにその姿でダンス練習をするのが正解という事だろう。

 

「「「「プリキュア!ライトアップ!キラキラ!ドレスチェンジ!YEAH♪」」」」

 

四人は同時に掛け声を言うとブローチの両側のスイッチを押し込む。これにより、四人は姿をプリキュアへと変えていった。

 

「キミと歌う、ハートのキラキラ!笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」

 

「キミと瞬く、ハートの勇気!お目目パッチン、キュアウインク!」

 

「キミと踊る、ハートのリズム!心キュンキュン、キュアキュンキュン!」

 

「キミと昂る、ハートの情熱。高鳴る魂、キュアソウル!」

 

「「「「We are!キミとアイドルプリキュア♪!」」」」

 

四人がチーム名名乗りまで済ませるとまずはアイドルの曲という事でアイドルから鏡の前に立って始める事になる。

 

「ミュージック、スタートプリ!」

 

プリルンの掛け声と共に出張所の一室でのダンス練習が始められる。そんな中、チョッキリ団のいつものアジトではやはり今日も今日とてカッティーがアイドルプリキュアの動画を閲覧中であった。

 

『『『Sing!♪音符に夢乗せて〜♪キミ、あなたのもとへ〜for you!♪もっともっと輝き合えるね〜♪』』』

 

カッティーはアイドルプリキュアの歌を聴きながら顔が僅かに興奮したような物になる。

 

「やはり良いですなぁ」

 

「……何が良いんだい?」

 

カッティーがそう言った瞬間。突如として少し離れて彼の後ろからチョッキリーヌが声をかける。

 

「ぬおっ!?チョッキリーヌ様!?」

 

カッティーは慌てた様子で動画再生を止めるとすぐさま高速で手を動かして画像を検索。とある猫がゴロンと仰向けに寝転んで可愛い顔を向ける様子を映す。

 

「この猫の画像であります!」

 

「……何癒されてるんだい!そんなの見ている暇があったらさっさとキラキラを奪っておいで!」

 

チョッキリーヌがそう命令するとカッティーはアイドルプリキュアと戦いたく無いのかまた前のように仮病を使おうとする。

 

「あ、ゴホッ、ゴホッ……。自分カッティーながら風邪をひいたようで……」

 

「ならザックリー。アンタが生きな」

 

チョッキリーヌが手にしたビリヤードのキューを指差し棒のように使うとザックリーを名指しする。しかし、ザックリーはバーのカウンターに突っ伏したままであり、彼からの返事は無い。

 

「……ザックリー、聞いてるのか?まず、起きろ!」

 

そう言ってチョッキリーヌが無理矢理起こそうとする。……しかし、そんな彼はおでこどころか目や耳の辺りまで真っ青になっており、加えてその下側が熱で赤く変わった挙げ句鼻水まで垂らす始末。

 

ザックリーの方こそ完全に体調不良状態でこれでは返事する事すら難しいと言わんばかりの状態だった。

 

「ん、ざっくりマジで調子悪いっす。すんません……」

 

いつもは強気なザックリーも顔から湯気を出すくらいの高熱を出している今の状態ではどうする事もできない。チョッキリーヌもそれがわかっているのか慌てたような顔つきになる。

 

「って、こっちの方が完全な風邪じゃないか!今日はカッティー。アンタの出番よ!」

 

「えっ!?」

 

カッティーはそこは自分が行くのでは無いのかとツッコミたかったが、上司のチョッキリーヌの命令には逆らえない。ここにスラッシューがいたなら代わりに出た可能性も無きにしも非ずだが……そんな事言っても彼女は今、影人達の懐に潜入中であまりここには帰ってこないので仕方ないだろう。

 

「わ、わかったのですぞ……」

 

カッティーが渋々出現するとまずはいつものワープで“はなみちタウン”へ移動して森の中の小道を歩く。ただ、彼の顔つきは浮かない物だった。

 

「はぁ。クラヤミンダーを出現させ、またアイドルプリキュアと戦う事になったら……」

 

“うぅ。カッティー、酷い!”

 

カッティーは脳内で涙目になって自分へと声を上げるアイドルの姿を思い浮かべて頭を抱える。

 

「ぬぉーっ!しかし、自分は所詮チョッキリ団。キラキラはチョッキリするのですぞ!……ん?」

 

カッティーが何かを感じ取ると再びワープで空中へと移動。その視線の先には森の中にポツンとある家……キラキランドの出張所が存在していた。そこから発生する大量のキラキラがカッティーの目に映る。

 

「あそこから大量のキラキラが。オーエス!してやるのですぞ!」

 

カッティーはいつものようにキラキラを引き抜くべく移動を開始。その際にいつもの綱引きのようなポーズこそしたものの、対象を絞り込んで無いと引き抜けないのか不発に終わっていた。そして、彼は出張所の前に到達する。

 

「ここか……ぬ!?」

 

カッティーの視線の先にいたのは窓を挟んで反対側にいるガラスアイドルプリキュアの四人であった。

 

「な、何故ここにアイドルプリキュアが」

 

カッティーが驚く中、アイドルプリキュアの様子を改めて見る。四人はダンス練習をしながらお互いに足りない所のアドバイスをして和気藹々と練習を進めていた。

 

「今の皆、凄く良かったよ!」

 

「うん。息ぴったりだった!」

 

「でも何か足りない。……もう一回やりましょう!」

 

「俺も賛成。まだ気づいてないだけで直せるところはあると思う」

 

「うん!何回でもやろ!ステージを見てくれる人を最高にキラッキランランにしたいもん!」

 

四人のキラキラを見てカッティーはあまりのひたむきさについ見入ってしまう。そして心の中で考えた。

 

「(何というひたむきなキラキラ。華やかなステージの裏には、こんな努力があったのですな)」

 

するとそんなカッティーからキラキラが出てきてしまう。それからいつの間にか、カッティーはハートキラリロックの伝説の言い伝えのあるパワースポットことハートのオブジェクトの近くで頭を抱えて座り込んでしまう。

 

「ぬうううっ!?ダメですぞ!自分はもう、プリキュアとは戦えない。こんなにも心惹かれてしまっては。……感じますぞ、ここに……。確かなキラキラを」

 

カッティーは最早チョッキリ団としてクラヤミンダーを呼ぶ事ができなくなってしまった。それだけアイドルプリキュアと戦う度に彼女達のキラキラを間近で受け続け、心がキラキラに染まっていってしまったのだろう。

 

……しかし、キラキラに染まってしまったカッティーをある人物は許すつもりは無かった。

 

『……キラキラは要らん』

 

その言葉がカッティーの脳裏に聞こえた瞬間、カッティーはハッとして顔を上げる。それと同時に目を見開いた。

 

「な!?」

 

するといきなりカッティーの影が一瞬だけ伸びると赤黒くなって別の人物の影へと変化。それは、カッティーの……いや、チョッキリ団そのものが仕える主……ダークイーネの物であった。

 

「ダークイーネ様」

 

ダークイーネの目が赤黒く発光するとカッティーの胸に突き刺すような闇の感覚が発生。その場に苦しみながら倒れ伏す。

 

「が!?ぐ……うぅ……」

 

するとカッティーの胸からキラキラが出現。そしてそれは同時に彼もクラヤミンダーの素体として変化する条件を満たしてしまったと言える。

 

「ぐあああっ!」

 

カッティー必死に引き抜かれまいと両手で押さえるが、ダークイーネに勝てるはずもなくキラキラは引き抜かれるとリボンとして生成。それが切断されるとカッティーは闇のエネルギーボールに包まれてしまう。

 

『……世界中をクラクラの真っ暗闇にせよ』

 

ダークイーネの命令と共にカッティーを素体にしてクラヤミンダーのような怪物が出現。

 

その姿は機械仕掛けのカッティーという名前が相応しいと思う程にロボットのようなメカメカしい見た目をしており、両腕や両脚はロボットのような形状で胸にはクラヤミンダーのような鋏の形をした装飾も存在していた。ただし、色はクラヤミンダー特有の緑では無く赤であるが。また、目元は黒く。さながらサングラスをかけているようにも見える。

 

これにより、カッティーがクラヤミンダー化。……通称、カッティンダーが姿を現すのだった。

 

「うぉおおおっ!」

 

カッティンダーが叫ぶと同時刻。グリッターでバイトをしていたスラッシューこと天城は頭に鈍い痛みが走り、思わず手を頭に当てた。

 

「っ!?」

 

するといきなり天城が手を頭に当てたためにうたの両親が心配したような顔つきをする。

 

「切音さん!?大丈夫ですか?」

 

「いえ……一瞬めまいがしただけなので」

 

「無理はしないでね」

 

「はい……。ご心配をおかけしました」

 

天城がうたの両親へと返す中、彼女はいきなり感じたこの感覚にどこか覚えがあるようだった。

 

「(……思わずブルっと来てしまったわね。……この感覚はダークイーネ様が出たって事かしら)」

 

天城は分身体を作れるだけの時間的余裕が無いため、ひとまずテレパシーで鞄の中にしまっておいた水晶に指示すると水晶は勝手に人目を盗んで移動。ぶるっとした感覚が示す先へと飛んでいくのであった。




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