キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
キラキランドでプリルンとメロロンがピカリーネと話をしていた頃。はなみちタウンでは夜が明けており、はなみちタウンフェスが始まっていた。
そんな中で前日アイドルプリキュアを苦しめたカッティーが変身した怪物。カッティンダーは人目に付かないようにしゃがむと頭を抱えていた。
「ぐ……うぁああっ!」
どうやらカッティーの意識その物はまだ残っており、それが暴走したい本能をどうにか押さえ込む形でここまで暴れる事無く耐えてきた。
するとそこにローブ姿となったスラッシューが降り立つ。
「はぁ……。カッティー、やっぱりあなたがこうなってしまったのですか。……ダークイーネ様を裏切るからこうなるのですわよ」
前日、密かに水晶を移動させたスラッシューはカッティンダーの事を探っていた。加えてダークイーネからの言葉でカッティーの裏切りと彼を強く戒めるために自分の力によって怪物にしたと聞いていたために彼女はそんなカッティーを見つけたかったのだ。
「さてと、どこかしら……」
そんな中で場面はカッティンダー内部で苦しんでいるカッティーの元に戻る。
「自分は……何という事をしてしまったのですぞ……。アイドルプリキュアを傷つけるなど……」
カッティーは前日にカッティンダーとして暴走したとはいえ、アイドルプリキュアを傷つけてしまった自分の行いを悔やむ。
「ぐうう……」
カッティーが頭を抑えていると突如としてカッティーが今いる闇の空間にまた赤黒い禍々しい闇のオーラを纏ったダークイーネの影が出てきた。
『闇から逃れる事はできない』
「ダークイーネ様、アイドルプリキュアは自分をキラキラにしてくれたのですぞ!これ以上、戦う事などできないのですぞ!」
カッティーはどうにかこれ以上の戦いをしないためにもダークイーネを説得しようとする。だが、ダークイーネ相手にそのような説得が通用するはずが無い。それどころか、ダークイーネからして見たらカッティーが自分に背く裏切り者として認知するわけで。
「ひっ!?」
ダークイーネの目が紫の炎のように発光すると目から飛び出したその炎のようなものが巨大な紫の手として伸ばされていく。
「や、やめてくれですぞーっ!」
カッティーはどうにかダークイーネからの支配から逃れようと走って逃げ出すものの、カッティーの逃げる先にはずっとダークイーネの影が伸びており、彼女からは絶対に逃れられないという事が伝わってくる。
そして、それを示すかのようにカッティーはダークイーネの紫の手に握りつぶされるようにして彼女の持つ力を取り込んでしまう。そのため今度こそカッティーは完全に支配され、カッティンダーは頭を抑える動作をやめた。
「うぉおおっ!」
するとカッティンダーが両脚のジェット噴射によって空中に浮くと一度体が闇に包まれて変化していく。そして、一度分離していた両腕や両脚が再合体。最後に頭部も合わさって変身が完了する。
両腕や両脚は一回り太く、強靭な物へと変化。脚が伸びた分だけ身長も高くなっており、胸にある赤い鋏もより尖った造形へとなっている。目元もサングラスから伸びている眉毛のようなパーツが伸びており、強化されている事がわかった。
これによりカッティンダーは更なる形態……強カッティンダーへと進化を遂げる。名前に関しては恐らく、単純にパワーアップを示す単語の強化とカッティンダーを合わせたという形だろう。
『世界中をクラクラの真っ暗闇にせよ』
「カッティンダー!」
ダークイーネは改めてカッティーへと命令。ダークイーネに二度も強く洗脳されたせいか完全に理性を失ったカッティー。そしてそんな彼をスラッシューは見てまたドクンと胸が高鳴ると頭に痛みが来る。
「うっ……。ッ、まただわ……。ダークイーネ様が力を使っただけなのに何でこんな」
スラッシューとしてもダークイーネが力を発揮した瞬間にこうなってしまうのは本当に想定外らしく。カッティンダーが強化されて自分達にとってはプラスのはずなのにダークイーネが動いただけでこうなる理由がわからなかった。
「カッティンダー!」
カッティンダーはそれから脚のジェットで空を飛びながらキラキラが一番集まっている場所を探して移動を開始する事になる。
同時刻。はなみちタウンフェスの会場では人々が数多く訪れており、賑わっていた。会場内では“はなみちタウン”のイメージキャラのはなみぃちゃんが子供達と一緒におり、今回のフェスに合わせて様々な出店も立ち並んでいた。まさにはなみちタウンという街が総力をあげた一大イベントと呼ぶに相応しいだろう。
そんな中、一番の目玉はフェスに来るスペシャルゲスト。アイドルプリキュアのスペシャルライブである。そこにはアイドルプリキュアのファン達がキラキライトや推しうちわを手にしてアイドルプリキュアの出番を今か今かと楽しみにしながら待ち侘びている。
『うた、見てるプリ?プリルン、キラキランドにお出かけしてくるプリ!プリルンも頑張るプリ!だって、プリルンもアイドルプリキュアのメンバープリ!だから待っててプリ!キュアアイドルはプリルンが守るプリ!』
その頃、アイドルプリキュアの待機場所として用意されとテントの中にいる影人、うた、なな、こころ、レイ、田中の六人はプリルンがうたの家に残したトイカメラにあった映像を見ていた。
それはプリルンとメロロンが出かける前に残した伝言のような役割を果たしている。
「……朝起きたらこのメッセージが残ってたんだ」
「プリルン、どうして急に……」
「頑張ると言っていましたが……」
「はい、どういう事なんでしょう?」
影人達はプリルンがいきなりメッセージだけを残してメロロンと共にいなくなってしまう理由がわからなかった。しかも自分達に何の相談も無く……である。
「一つ確かなのは、プリルン達は俺達の事を大切に思っててくれた上でのお出かけって事だ。だから出かけた理由がネガティブな物って可能性はかなり低いだろうな」
「うん!プリルンが何でお出かけしたかはわからないけど、今はプリルンを信じて待とう!」
うたの言葉になな達も同じ意見なのか、頷く。そんな中で影人はただ一人無言のままだった。そんな彼が気になったのかこころが声をかける。
「カゲ先輩、どうしたんですか?」
「……」
「カゲ先輩?」
「え?あ、ごめん。何だった?」
「……カゲ先輩。プリルン達が気になる気持ちは私もよくわかりますけど、今は気にしても仕方ありませんよ。それよりもこの後のステージに向けて気持ちを集中させませんと」
「ああ。わかってる……」
影人はこころへとそう返すものの、やはり声色はすぐれない。影人の中に残っているのは今日の朝、夢乃から貰った一通の手紙だった。
〜回想〜
「お兄ちゃんおはよ」
「おはよう。……っとその手紙は?」
影人は朝起きて夢乃と会うといきなり手紙を持っていた彼女が気になって質問する。
「これ?昨日の夜メロちゃんから貰った手紙だよ」
「メロロンから?……ちょっと待て。メロロンって確か咲良さんの家にいたはずだろ?」
「……メロロンはプリルンと一緒にキラキランドに行くみたい。私は偶々昨日トイレで起きて部屋に戻ったら窓の向こう側に二人がいて」
それから影人は夢乃から夜に起きた二人の訪問による起きた事を一通り聞くと改めて手紙を見つめた。
「プリちゃんもメロちゃんも凄い真剣な目をしてた。特にプリちゃんの方はうた先輩のために頑張る気満々って感じで。……それと手紙だけどメロちゃんにはお兄ちゃんに一番最初に見てほしいって言われてるから中身はまだ見てない」
夢乃からそう言われて早速影人は手紙を開くとその中身を見る。そこにあったのはメロロンの気持ちだった。
“影人、突然いなくなってしまってごめんなさいなのメロ。ねえたまがキラキランドに戻って咲良うた達を助けたいって言い出して、メロロンも着いていく事に決めたメロ。……メロロンにとって大切なねえたまのやりたいと思った事だから、メロロンも放っておけないのメロ。影人にはここまで沢山お世話になったのメロ。メロロンにとって影人はもうねえたまと同じくらい大切な存在。影人はねえたま以外のお友達がいなかったメロロンにとって……大切なお友達メロ。初めて出会ったあの時からずっと助けてくれてありがとなのメロ。またキラキランドから帰ってきたら今度はキラキラしている影人をメロロンが取り戻すメロ。それがメロロンにできる影人への恩返しだから。
〜枯れ果てた泉、他人から分けられた水で埋められたそれはいつか湧き出る自分自身の水で泉を満たすための兆し〜
それじゃあ影人、行ってくるのメロ”
「……メロロン」
影人はその手紙の最後の方が一部濡れたように丸い跡が幾つか残っているのを見つけるとそれはメロロンが流した涙であると察した。それから一度深呼吸すると気持ちを落ち着ける。
「お兄ちゃん、メロちゃんからはなんて?」
「……俺への感謝の気持ちが綴られてた。こんな書き方した置き手紙すんなよ。本当のお別れ前の台詞みたいに見えてくるだろうが」
奇しくも影人も夢乃と同じような事を考えていた。この辺はやはり兄妹という事だろう。
〜現在〜
「(メロロンも並々ならない気持ちでプリルンについて行ってる。だったら俺もここでステージを失敗するわけにはいかないだろ)」
影人はそう考えるものの、やはりどこかに怖さは残ってるのか手は震えている。そんな時、影人へとこころがそっと手を繋いだ。
「カゲ先輩、大丈夫ですよ。私達がついてます」
「……ああ」
だが、やはり気持ちが入らない。プリルンとメロロンの事を割り切っても本番が近づくに連れて過去のトラウマがまたぶり返して来そうだったのだ。
「ッ……」
「……カゲ先輩。少しの間先輩のトラウマを忘れられるおまじないをしますね」
するとこころはそんな影人の気持ちを察したのか声をかけてくると影人がそれに反応するより早く影人へと近づく。
「……チュッ」
こころは影人の唇へと背伸びして軽い方のキスをする。それを受けて影人は少しだけ唖然としたが顔が赤くなる。
「なっ!?」
「……カゲ先輩が中々安心した顔つきをしないからですよ……。私にここまでさせたんですからその……しっかりしてください」
こころにそう言われると影人はようやく気持ちが戻ってきた。今は怖がってなんかいられない。そんな事をして他の三人の折角の晴れ舞台を台無しにしたらダメなのだと。それだけじゃない。こころが勇気を出してくれたのに自分が応えないわけにはいかないと影人は覚悟を決められた。
「影人。彼女にここまでしてもらって、まだ怖いだの言うつもりか?」
「(何やってんだ俺……。こころだって緊張してるのに。俺がこんな所で足引っ張れるかよ)」
レイにも怖がってる自分を指摘され、影人は自分の頬を両手で一度軽く叩き、気持ちを引き締める。
「悪い。今は楽しまないとな。来てくれた皆の心をメラメラさせないと」
「もうすぐ出番です!」
「「「「はい!」」」」
するとそのタイミングでスタッフがテントの外側から声をかける。一応スタッフ達にもアイドルプリキュアの正体に関しては伏せられており、中に入れるのはマネージャーとアイドルプリキュア本人達だけと言ってある。
それだと中に入る所をずっと見られてたら危険ではあるが、スタッフ達もずっとその場所にいるわけでは無いのでそのリスクも無いと同じだろう。
「それじゃあ皆、頑張れよ。俺と田中さんはステージを裏から応援してるからな」
「うん!じゃあ皆、いよいよライブだ!キラッキランランなステージにしよう!」
それから四人で手を重ねて自分達の気持ちを一つにする。そして、うたの掛け声と共に四人は変身した。
「「「「プリキュア!ライトアップ!キラキラ!ドレスチェンジ!YEAH♪」」」」
四人がその姿を変えると今回も観客向けの変身のため、一旦名乗りはお預けにしてテントから舞台袖に移動。そして、ステージのスピーカーからアイドルの持ち歌である“笑顔のユニゾン”のインストが流れると四人はステージへと出た。
「ッ……」
そこから見える景色は四人の目を一瞬奪わせるが、そんな気持ちにずっと呑まれるわけにはいかないのでまずは自己紹介等の入りからだ。
「こんにちは〜!」
アイドルの掛け声と共にステージを観ている客達から歓声が聞こえる。ちなみに四人共ステージ用のインカムを最初から展開済みであり、声はしっかり後ろにまで届いている。
「待ってたぞ!アイドルプリキュア!」
ファン達からの声を受けて四人の胸の昂りは大きくなっていく。そんな中、レイや田中はプリルンの残したトイカメラを使って撮影を開始。その様子は今日来れなかった人達のために生配信としてネットに配信・拡散されている。
「(こんなに沢山……)」
「(緊張しちゃうけど、嬉しい)」
「(心キュンキュンしてます)」
「(これが……本来のステージとしての姿)」
四人がそれぞれ感じる気持ちを胸に浮かべる中、アイドルは更に言葉を続ける。
「まずは改めて私達の自己紹介、行っちゃうよ〜!」
アイドルはいつものハイテンションでここまでやらずに温存していたアイドルプリキュアとしての名乗りを行う。
「キミと歌う、ハートのキラキラ!笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」
「キミと瞬く、ハートの勇気!お目目パッチン、キュアウインク!」
「キミと踊る、ハートのリズム!心キュンキュン、キュアキュンキュン!」
「キミと昂る、ハートの情熱。高鳴る魂、キュアソウル!」
四人は変身時にこの名乗りをやらない関係上、ポーズの手順等はステージ用にアレンジされている。例を挙げるとキュンキュンの名乗り時の両腕を頭に置くようにしてハートを作るポーズをする前に何回か回転するのだが、今回はそれを回転無しに変更した特別バージョンである。
これは無意識で回転している変身時と違ってキュンキュンが意識的にやらないといけないので色んな意味での事故防止も兼ねた変更であった。
「四人揃って、せーの!」
「「「「We are!キミとアイドルプリキュア♪!」」」」
四人がチーム名を名乗ると会場は更に歓声と共に盛り上がる。そのままキュンキュンが話を始めた。
「今日は私達、アイドルプリキュアに会いに来てくれてありがとうございます!」
「皆さんを最高にキラッキランランな気持ちにできるライブをお届けします!」
「楽しんでいってください!」
キュンキュン、ソウル、ウインクの順で話していくと早速と言わんばかりにアイドルが声をかける。
「それじゃあ、盛り上がって行くよー!ミュージック……」
その時だった。突如としてステージと観客を挟んだ反対側。丁度ソウル達四人の視線の先に轟音と共に何かが降り立つと観客達は驚いて振り返る。
「何だ!?」
「まさか……」
そこにいたのはダークイーネによって更に闇の力を底上げされたカッティンダーであった。そして、彼は両腕をアイドルプリキュアへと向けて攻撃体制となる。
「カッティンダー!」
そして、そんな事になれば観客達は慌てて逃げ惑うわけで。会場はあっという間に大混乱に陥ってしまう。
「あれって、カッティーさん!?」
「ちょっと形変わってませんか!?何だか前より強そうです!」
「強そうに見えるどころじゃない……。アイツ、確実に強くなってる」
ソウルの震えるような呟きがこの事態の深刻さを物語っていた。また、それと同時にレイや田中が人々へと避難を呼びかけていく。
「皆さん、あちらへ!」
「落ち着いて避難してください!」
レイも田中もこの緊急事態にひとまず生中継でアイドルプリキュアの戦闘を見せるわけにはいかないと一旦画面だけ差し替えてすぐにトイカメラをその場に捨てる。こうしておけば最悪戦闘が撮られてしまう事によるネットでのアイドルプリキュアの実態の拡散は多少マシになるからだ。
「折角のステージが……。行こう!ウインク、キュンキュン、ソウル!」
「うん!」
「はい!」
「やるしか無いか」
そのまま四人は一旦インカムを解除してから強カッティンダーとの戦闘を開始。何としてでも会場を守る事を優先するのだった。
また次回もお楽しみに。