キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ななの近くに座った影人とうた。それから二人が弁当を広げるとななはやはり暗い顔つきのままである。
「……」
「うーん……!」
うたがどうやって落ち込んだななを励ますか少しの間思考するとある事を思いつく。そしてうたはななの弁当箱へと自分の弁当のおかずであるタコさんウインナーを置いた。
「えっ!?」
「ふふっ。元気のお裾分け!……なんちゃって!」
「ありがとう!」
それからなながうたから貰ったウインナーを美味しそうに食べるのを見てうたは上手く行ったと顔が綻ぶ。
「(やっぱり咲良さんはこういう時落ち込んだ相手への気遣いが上手いな……)」
影人はななが悩みを自分の口からまだ言ってないのでどう入るべきかタイミングを見計らっている所だった。
「プリ!プリルンにもあーんプリ!」
プリルンがうたにそう言うとうたはそれに応えてタコさんウインナーを食べさせた。
「プリ〜!影人、影人からも何か欲しいプリ」
そんな風にプリルンが影人の方を向いてお弁当をねだるプリルン。影人はプリルンにあまり煩くされるとななに秘密がバレるリスクがあるので要望にちゃんと応える事にした。
「わかった。プリルンにはこの卵焼きをやるよ。その代わり、少しの間静かにしてくれ。これから大事な話をするからな」
「プリ。わかったプリ」
プリルンは影人からふわふわの卵焼きを食べて美味しさに幸せそうな顔になると自分の近くを飛んできた蝶が気になったのか、そっちの方を見始めた。
「……コンクール、失敗しちゃった」
するとななは自分が落ち込んでいた理由を話し始める。その目は今の青い空をボーッと見つめるようであった。
「ピアノが大好きで、毎日ずっと弾いてきたんだけど……今はもう逃げたい」
ななは視線をうたの方に戻すと自分の心に秘めた気持ちを吐露。うたはそんな彼女の顔を見て少し考え始める。
「……良いんじゃない?逃げてもさ」
そんな風に口を開いたのは影人である。うたは影人の言葉に驚くと“逃げても良い”という後ろ向きな発言に指摘した。
「ちょっと、逃げても良いってどういう……」
「そのままの意味だよ。……蒼風さんはその性格上、真正面から重圧を受け止めがちだと思う。蒼風さんがピアノが上手くなって周りから期待される程にそれがどんどん大きくなって……。今はもう一人で受け止められるような重さじゃないのかもな。だから逃げたい時は逃げれば良い。別に一度や二度と逃げたって誰も蒼風さんを責めたりなんかしないって事」
影人がそう言うとななは“逃げても良い”というある意味ネガティブな方向に行きそうな言葉にやっぱり不安は募ってしまっていた。
「じゃあ、目の前の壁から逃げて私はどうすれば良いの?」
「……一度落ち着いて自分の本当の気持ちを考える事かな。もし、蒼風さんにピアノが楽しくてまだ続けたいという気持ちがあるのならまた自然に立ち向かえるようになる。結局、辛い事があった時に無理に立ち向かおうとしたらいつか耐えきれなくなって折れる。だから今は一度逃げて気持ちを立て直すのが一番なのかなって」
影人はそう言いつつ自分の心の中で自分はその“逃げ”ができなかったせいで夢を諦め切れずに無理に抗った結果、心は粉々に折れて今のような自分に自信が全く持てない性格になってしまったのだと付け加えた。
「どうしてもダメなら逃げても……良いの?」
「ああ。むしろ、蒼風さんはここまでずっと逃げずに頑張ったんだ。そのくらい皆許してくれる」
ななはその言葉を聞いて僅かに心が軽くなると同時に心の中にポカポカとした温かい力が湧くような感覚になった。
「じゃあ、私からもななちゃんに歌をあげるね」
「え?」
「ななちゃんのピアノ〜♪笑顔も大好き〜♪ずっと♪一緒にいたいんだ〜♪隣で歌いたい〜♪ななちゃんのピアノで歌うの、私も影人君も大好きだよ!なんかこう……キラッキランランな気持ちになるんだ!」
「……!」
「そうそう。蒼風さんのピアノはとても……っておい!咲良さん、何で俺が勝手にピアノ大好きみたいな表現するんだよ!」
「事実じゃん!影人君、音楽の授業でCDの音楽を使って歌う時よりもななちゃんがピアノを弾く合唱の練習の時の方が活き活きしてるよ!」
「うぐっ!?」
影人はそれを聞いて核心を突かれたせいで動揺が広がる。影人が照れ隠しのためにうたに言い返そうとするとななはそんな二人のやり取りにクスリと笑った。
「ふふっ……二人共ありがとう。気持ちが少し軽くなったよ」
「プリ?プ、プ、ぷえっくしょい!」
するとその瞬間、うたの後ろで蝶が飛ぶのを見ていたプリルンの鼻に蝶が止まったせいでプリルンは鼻がムズムズしてしまうと特大のクシャミを放った。
「えっ!?」
「「……あ」」
「ごめんプリ……」
プリルンがポカをやらかしたせいで影人は何度目かわからないプリルンへの呆れを抱き、うたは慌ててプリルンを掴んで弁明をした。
「こ、この子は迷子のう、宇宙人?なんちゃって」
「プリルンは、プリルンプリ!」
「うわあっ!?」
「お前はまずその余計な口を閉じろよ……」
うたの弁明の際にプリルンはまた余計な事を口走ったためにうたは更に慌ててしまう。
「違う!いや、違くないけどそうじゃなくてえっと……この子がプリルンで私がキュアアイドルなわけ!」
「そうプリ!」
「……ダメだコイツら慌てて秘密の事全部言っちゃったよ」
影人がそう言うと自分達が隠していたプリキュアの話を全部ななの前でぶちまけたと言う事を自覚。
「「言っちゃったー!!」」
「うたちゃんが……キュアアイドル?あっ、だから影人君があそこにいたの!?」
「……へ?」
ななの言葉に影人も顔が凍りつく。影人は何で自分がキュアアイドルと一緒にいたという事実が知られているのか困惑した。
「蒼風さん、まさかと思うけど……キュアアイドルが思いっきり戦ってる所……見た?」
「……うん」
影人はななの言葉にアングリと口を開けてしまう。影人の弱点として、生身でマックランダーに立ち向かわなければならないという事に加えて変身しているうたことキュアアイドルと比べて変身せずに現場にいる影人は見られたら一発で身バレするコースに入ってしまうのだ。
「影人、何やってるプリ!人の事言えないプリよ!」
「まずお前らが先に自分からプリキュアの関係者って言ったんだろーが!それが無いなら確証は無かっただろうよ!」
プリルンが影人へと文句を言うが、影人からして見れば自分から正体を名乗ったプリルン達の方が戦犯度が高いわけで。まだ名乗る前なら他人の空似だと誤魔化せたかもしれないが、今はもう無理だ。完全に一般人のななの前で全部を言った事になる。
「ごめんななちゃん。えっと、今の話……物凄く内緒というか何というか……」
「物凄く内緒にして欲しいプリ!」
「うわあっ!」
プリルンがまた思いっきり浮かんで話す所を見てうたが慌ててプリルンをまた捕まえる中、ななはまた微笑んで指切りの指を出した。
「わかった。内緒ね」
「……ありがと」
「ひとまず一安心……か。他の人がこんなの見てたら一発アウトだよ。でも、蒼風さん。どうして?」
「誰だって他人にバレたらいけない秘密とかあるでしょ?だからかな。……影人君もね」
ななは何となく察していた。先程自分を励ましてくれた影人の言葉の中には影人自身の実体験に基づく内容も入っていると。
「影人君がくれた温かさ、確かに受け取ったから」
「……やめろよ。そんな事。俺の言葉に重さなんて無い」
ななが微笑むとうたもそれにつられて微笑む。そんな二人を見てプリルンはまた浮かぶとニコニコと笑う。
「プリルン、私はなな。よろしくね」
「プリ!」
それからプリルンはななが差し出した手を小さな妖精の手と合わせて握手に近い事をした。
「それでさ、さっきのキュアアイドルが戦ってる所を見た話なんだけどさ」
「そういえば見ちゃったんだよね〜」
「あんな怖いモンスターに立ち向かえるなんて……強くて」
「いや〜」
「勇気があって」
「それ程でも〜」
「キラキラしてて……」
「もう一個タコさんウインナーいる?」
うたはななに褒められまくってまた調子に乗って増長し始める。影人はこの光景も見飽きたとばかりにツッコミもしなくなった。
「うたちゃん、本当にカッコ良いよ」
「そっか。ありがと!」
「……でも、うたちゃんもカッコ良いけどそれと同じくらい影人君も強いなって思う」
「……何でだよ。俺はプリキュアじゃないんだぞ?結果的に周りの人を救えてないし」
「でも、影人君。プリキュアじゃないのにうたちゃんをちゃんと叱って支えてた」
影人はななの言葉でうたへと説教する所とかその後にマックランダーへと立ち向かってうたが立ち上がるまでの時間をちゃんと稼いでいた所も全部見られていたと察する。
「もしかしてキュアアイドルがピンチになった辺りとかも含めて全部見てた?」
「うん。影人君、プリキュアじゃないのに。周りから見たら凄く危なっかしい事してるのに……。怖さだってあるはずなのに。そうやって一人で立ち向かう所。私は影人君なりの強さだと思う」
「……やめろよ。俺にそんな物は……」
「だから、私はうたちゃんや影人君みたいに強くなりたいって思えるんだ」
ななが微笑んで下を向くとうたは何かを閃いたかのように立ち上がって声を上げた。
「そうだ!だったら今日の放課後、二人共私のうち来ない?」
「良いの?」
「うん!」
「ふふっ。ありがとう」
「……俺も強制?」
「勿論!」
「ですよね……」
影人がうたに付き合わされる事が確定して半ば諦めたようにそう言う中、そんな三人が話している所を見たバラバラの方向から見る二つの影があった。
「カゲ君……また知らない女の子と……今度は二人に増えてるし……何で」
一つは紫のアホ毛にツインテールの髪が目立つ少女、紫雨こころ。彼女はこの日、偶々ここを通りかかった際に影人、うた、ななの三人が話している所を見てしまったのだ。尚、偶々プリルンは視界に映ってなかったためにそこは問題無かった。
「カゲ君……私よりも二人との方が良いのかな」
こころは首をブンブンと横に振った。自分は年下で学年が違う。影人本人もクラスメイトだと言っていたし、そんな関係では無いと思い込む。
「やっぱり私、カゲ君を見ると心、キュンキュンして……ッ!?」
するとこころの胸に抱いたキュンキュンという気持ちは少しずつ薄れると別の感情が湧いてきた。それと同時に胸の奥がチクリと痛くなる。
「心……チクチクします」
こころはその気持ちを忘れるためにさっさとその場から離れると影人が他の女子といる場面を忘れようとする事に。そして、もう一つの影の正体は教室から出て行った三人がなかなか帰ってこないのを見て心配になったレイであった。
「……やっぱり影人には人の心を掴む力がある。もし上手く行かなかったらフォローするつもりだったけど……もう必要無さそうだな」
レイは影人がちゃんとななの悩みをある程度まで解決してくれたと踏んでこちらもまたその場を去ろうとすると彼の視線の先に去っていくこころを見つけた。
「あの子は確か新入生で、東中さんが言ってた……ッ。影人の奴、やっぱりあの子に好かれてるじゃん」
レイはこころの目に薄らと涙が浮かんでいるのを見てまた見届けないといけない事が一つ増えたと感じる。問題は影人がこころのこの気持ちにちゃんと気づけているかどうかであるが。
「……ま、アイツの事だしなるようになるだろ。わざわざ言う必要も無いしな」
レイからの影人への興味が尽きる事は無い。その事実にレイは面白そうに笑うとそのまま教室へと戻ってく事になるのだった。
また次回もお楽しみに。