キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
謎に包まれた戦士。キュアズキューンとキュアキッスの登場から一夜が明けた。結局、はなみちタウンフェスでのアイドルプリキュアのライブに関しては怪物が出てかなりの騒ぎになったためにアイドルプリキュアの大事を取って中止が宣告されてしまう。
折角練習を頑張ってきたものの、運営側も今回ばかりは仕方ないという判断だった。その代わりとして、新しい謎の二人組。キュアズキューン、キュアキッスが登場した事でそのライブがネットで拡散する形となる。
それはさておき。今現在は夜が明け始めた朝。はなみちタウンにあるビルの屋上にて。そこにはその噂のズキューンとキッスが明るくなっていく街を見ていた。
「わぁ……。ねえ、キッス。この街、はなみちタウンって言うんだっけ?」
「ええ、そうです」
ズキューンの問いにキッスは淡々と答えを返す。しかし、そこに冷たさは感じられない。ズキューンもそれがわかっているので話を普通に続けていた。
「……こんな綺麗な所。生まれて初めて!」
ズキューンが嬉しそうにキッスへと微笑む。どうやら彼女は一度もはなみちタウンに来たことが無いらしい。その風景の美しさに見惚れているようだった。
「……ええ、私もです」
キッスはそう返す中、その脳裏にある風景が浮かぶ。それは……ハートキラリロックの鍵をかける場面だった。あそこにはプリルンとメロロンしかいなかったはずだが、何故か彼女はそれを知っている。そしてキッスは小さく呟いた。
「……お姉様、この街の事も覚えてないのですね」
キッスのこの言い回しだと、彼女達二人は既に一度この街に来た事があるという事だった。そんな中でキッスはその脳裏にある情景を浮かばせる。
「……影人、あんなに傷ついてて。私がもっと早く行ってあげれてたら……。もう前のようには話せないけど……影人の事は絶対に私が守る」
キッスの言葉には悲壮な覚悟が宿っていた。加えて、何故彼女が影人の名前を知っているかについての問題もあるが……それはまた後に回すとしよう。
場面は変わって咲良家。うたの部屋ではいつも通りにうたが物凄いいびきを立てつつ寝ていた。鼻提灯と言い、このいびきと言い、こういう所でのヒロイン力のあまりの低さが目立つ。
「もう朝ぁ……おはようプリル……」
うたは寝ぼけ眼の状態で目を開けると眠たそうに擦りながらいつも隣で寝てくれていたプリルンを見るために自分の左側を見る。
しかし、そこにプリルンの姿は無かった。その代わり、自分と同じベッドの上。しかも同じ布団の中にキュアズキューンが横になってうたの方へと微笑んだ顔つきを向けていたのである。
「なぁんだ。キュアズキューンか……」
そう言ってうたはまた布団の中で二度寝をしようと目を閉じる。……だが、寝ぼけていた状態のうたでも流石にこの状況はおかしいと感じたのか……我に返ると大慌てで顔を赤くしつつ声を上げた。
「え?どぅええっ!!キュアズキューン!?」
うたが眠気も一瞬で吹き飛びそうなくらいなリアクションを取る中で、キュアズキューンの方もうたへと指でファンサのズキューンをする。
「ズキューン♪」
「はわぁ……ぐはっ……う〜た〜れ〜た〜」
うたはズキューンに撃たれて思わずベッドから転げ落ちると状況的に頭か背中を打ったはずなのにノーダメージであった。それどころか夢見心地のような幸せな顔を浮かべる程である。その直後、うたの顔つきは覚醒したように目を開けると完全に夢から覚めてズキューンのいた場所を見た。
「はっ……え?え?」
しかし、そこには誰もおらず。先程いたはずのズキューンもいつの間にか消えてしまっていた。ここに来てようやく自分が寝ていた際に見た夢で寝ぼけていたのだと察する。
「……夢か。もうビックリした〜。ね、プリルン」
うたはそう言って近くにいるであろうプリルンへと声をかける……が、そこで彼女はプリルンが未だにキラキランドから帰ってきてないと思い出す。
「あ、そっか。プリルンはまだキラキランドから帰ってきて無いんだった」
うたはそれから窓越しに外を眺めると心配そうな顔つきでプリルンを心配する。
「元気でやってるかな。……はぁ」
そんな流れでプリルンを心配したうたであったが、今はプリルンの事を一旦放置しても大丈夫と思えるくらいの興奮がまた体の中に駆け巡る。
「てゆうか、キュアズキューンの事を夢にまで見ちゃうなんて!はわわわ……。気になる……」
そんな風にうたはまるでキュアズキューンの虜になってしまったと言わんばかりに脳内はキュアズキューンでいっぱいになると何をやっても彼女の事を考えるようになった。
「どこから来たの?キュアズキューン?一体何者……キュアズキューン!!」
歯を磨く時、朝食を食べる時、制服を着る時、何をやっていたとしてもキュアズキューンの事が頭から離れてくれない。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
うたは妹のはもりにさえも心配されてしまうくらいに熱に浮かされたような顔つきであった。その時にうたは一応はもりへとキュアズキューンの事で頭がいっぱいな心境を伝えるが、やはり伝わらずに更に心配される事になった。
「もう、キュアズキューンの事を知りたすぎて……我慢できない!うう……気になる気になる……キラッキランラン〜!」
キュアズキューンの事を考えて考えて……色々と気になり過ぎたうたは学校へと行く際もズキューンの事を考えながら猛スピードで登校していくのだった。
それから約三十分後。学校にて昨日のはなみちタウンフェスの話題がクラス内で挙がることになる。
「凄かったなぁ……はなみちタウンフェスでの事」
話題を振っているのはフェス会場にいた東中であった。勿論内容は新しく出てきたキュアズキューンとキュアキッスについてである。
「そうだ!聞いたよ?怪物が出たって」
「最近よく聞くよね……。大丈夫だった?」
「うん。怖くて逃げちゃったけど、考えてみたら怪物なんて有り得ないし……」
話には新橋や坂上も参加。そのタイミングで影人と話をするために近くに来たレイは話の流れから最近チョッキリ団の影響でよく出てくるようになったマックランダー、クラヤミンダーの事だと察する。
「あはは……。怪物の事をあり得ないって言ってるけど、君達の中の三人中二人は既にその怪物になったんだけどなぁ……。というか、着々と怪物騒ぎも世間に広まりつつあるな。なぁ、影人」
アイドルプリキュアにうたが覚醒。その活動が始まって以降、チョッキリ団の影響でマックランダーやクラヤミンダーは度々街に出没。その度に人々に危害を加えるので幾ら見た人間が少数だったとしてもそろそろ隠し切れなくなってくる頃合いと見れる。
また、その話をしている三人の中で東中はアイドルが一人だけで頑張っていた初期の頃。新橋は球技大会のタイミングでチョッキリ団にキラキラを抜かれたせいで二人共怪物化してしまっている。それはさておき、レイは目の前で席に座った状態で力無く寝そべっているような体勢の影人に話しかけても何故か自分へと返事を返してこない事に違和感を抱く。
「おい影人、お前にしては珍しく完全なスルーかよ」
「………」
レイがそう言っても尚まだ彼は何も返さない。レイはそんな影人に違和感を感じまくる。幾ら普段から揶揄いに晒される影人とは言ってもここまでずっと無反応という事例はほぼ無かったがために余計に気になるのだ。
「おーい、影人。生きてるか〜?」
そんな風にレイがどうにか終始無言の影人へと呼びかけを続けていく中で自分の席に座っているうたの方も影人同様にボーッとしたまま外を眺めていた。すると脳内で外に見える雲がキュアズキューンとして変換される。
「はわわ〜」
うたはただ想像しただけのキュアズキューンを見て顔を綻ばせては彼女へと想いを馳せた。それと同時並行で東中達の話も進む。
「でも、ネットの人達はあんまりその怪物を信じてなくて。今回のもズキューンキッスが出てくる前の盛り上げだったって噂もあるくらい」
「マジか……」
「(いや、流石にそれは無理があり過ぎるだろ……)」
レイは影人へと話しかけつつ内心でそう考える。普通に考えてみれば幾ら何でもおかしい話である事くらいには気がつくはずだ。第一、アイドルプリキュアの動画だけネットにアップロードされててマックランダー、クラヤミンダー達が暴れる所だけのシーンが妙にアップロードされないのはかなり違和感がある。
現に怪物が暴れる際にその場にいた人達からしたらこのネット民の意見はたまった物では無いはずだ。
「そんな事より、あの配信見た?」
「うん!見た見た!」
東中と坂上の二人は早速立ち上がるとその配信であったポーズを実演しつつ名乗りを挙げる。
「キュアズキューン」
「キュアキッス」
坂上がズキューン、東中がキッスのポーズをしつつ彼女達をイメージして名乗りを真似た。
「おー、似てる似てる〜!」
その名乗りを見ていた新橋は二人の名乗りに拍手をして褒める。それから三人での話が弾む中でボーッとしていたうたの元にななが合流。
「昨日の二人、もう話題になってるね。朝のテレビでもやってたけど……うたちゃん見た?」
ななはそう言いつつ朝のニュース番組で取り上げられていた場面を思い出す。動画自体はキッスがアップロードしたあの配信画面から切り抜かれており、二人の名乗りシーンに加えてライブシーン放送されている。
世間ではアイドルプリキュアとは別のグループとして二人組のアイドルのズキューンキッスとして注目を浴びている。
「二人合わせてズキューンキッスと呼ばれてるみたい……」
「ズキューン!?」
「うわっ!?」
なながズキューンの単語を一度出すだけでうたは過剰反応。席を立ち上がって大声も上げる始末だ。勿論いきなりこうなったらななもビックリするわけで。
「うたちゃん?」
「今、ズキューンって言いました!?」
「え?言ったけど……」
「もう、ワクワクもんだぁ〜!」
「それって魔法を使う先輩のアレだろ……。何ならその先輩も初期メンバーはコンビが売りだし」
うたは約10年ほど前にやったプリキュアとしての大先輩で尚且つほんの数ヶ月前まで(※この話の時系列当時)未来の事を描いた二期が放送されたあのプリキュアの主役みたいな台詞を言って興奮。
そんなうたへとレイがメタ発言をしつつツッコミを入れる。影人が完全に機能停止状態なのか全くの無反応なのでツッコミ役をレイが一手で担っている形だ。
「そうだよ。本当にどうしたの?うたちゃん。今日、ボーッとしてるし。放っておいたらキュアップ・ラパパとか言い出しそうだし、何だか変だよ」
「「「うんうん」」」
「蒼風さん、それほぼ言ってるような物だからな?」
ななの天然にレイは手を頭に置いて呆れる。ひとまずそれはさておき、今は少しおかしいうたの事だ。
「ボーッとって言うか……うーん、ズキューンってしてる!」
うたがキュアズキューンのようなポーズを取ると興奮気味にそう言う。本当に先程からズキューンの事ばかりを浮かべている彼女にレイはこっちもダメだと考えた。
「あ、そういえばさっきから大人しいけど……影人君は?」
「あ〜、影人ならさっきからずっとここにはいるぞ?なんか咲良さん同様にボーッとしてるっていうか……凄い無反応過ぎるんだよ」
「えぇ……」
ななもそんな影人に困惑する。すると突如として影人は立ち上がると顔つきはうたと同様にどこかボーッとしたような多少興奮したような変な感じになっていた。
「……キュアキッス……メロメロ夢〜チュ〜……」
「か、影人君!?」
「お前もかぁ……」
どうやら影人はうたと同様に完全にボーッとしてしまった状態らしい。どちらかと言えばうたよりも心なしか夢の中にいる感が凄い状態であったが。
「お〜い影人、もう朝だぞー。いつまでも夢の中にいるみたいな状態でいるなよ」
「うぇ〜……レイ、お前もキッスの夢においでよ……夢中になれるからしゃ〜……」
「お前は酔っ払いか!というか、今のお前こころに絶対会わせられないような顔してるからな!?」
レイの言う通り、今の影人をこころに会わせてしまえば確実にこころから嫌われてしまいそうな雰囲気さえ感じられる。そのくらい彼の心はキュアキッスの事に染まってしまっていた。
「そういえば、影人君の言ってるメロメロ夢中って……確か」
「蒼風さん、何か知ってるのか?」
「うん。うたちゃんの方は兎も角、影人君の方はこうなった理由が何となくわかるというか。この事を話したら多分こころちゃんは納得してくれるとは思う」
「そっか。だったら取り敢えず今日は放課後になるまで影人が単独行動しないように気をつけないとな」
それから学校の授業時間に突入してしまう。ここからはいかに影人やうたが変な状態になってる事を気が付かれないように過ごすかの話になってくる。ななとレイの苦労が始まるのであった。
また次回もお楽しみに。