キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
こころからうたはキュアズキューン沼にハマったと宣告されたうた。ただ、その際に当のうたと付き添いで来たななが沼や推し活等の単語がわからなかったのでこころは早速その説明をする。
「推し活。それは自分が推している。つまり人にオススメしたいくらい好きなアイドルを色んな形で応援する活動の事」
こころはいつの間にか教師のような服装に早着替えしており、ホワイトボードや指示棒を使って解説をしていた。
「つまりこころがアイドル研究会やら自宅やらで色々やってるのも推し活の一種ってわけだな」
「俺もキュアキッスのために推し活をしゅりゅべきかにゃ……」
「お前は一回黙ってろ」
影人の横槍にレイはハリセンで軽く影人を叩いて止める。こころの説明が先に進まないからだ。
「カゲ先輩の事は一度置いておいて、続いて沼!キュアズキューンとかアイドルプリキュアをどんどん好きになって底なし沼みたいにハマって抜け出せなくなっちゃうよーっていうのを表した言葉です」
「「へぇ……」」
「というか、こんな子供向けコンテンツの中で推し活やら沼やらを説明しても大丈夫なのか?」
「まぁ、原作でもやってますし大丈夫でしょう!」
「そういう問題かよ……」
それはさておき、そんな経緯もあってうた、ななの二人は流れるようにしてアイドル研究会への所属が決まった。尚、レイは家の事もあるのであまり時間が取れないために一旦仮所属という名前の保留に留めている。
「と、いう訳で咲良うた先輩と蒼風なな先輩がアイドルプリキュア研究会に入会しましたー!」
いつの間にやら作ってあったくす玉が割れると中身から垂れ幕が降り、二人の入会を歓迎する言葉が書かれていた。
「ありがとうございますー!」
「あ、ありがとうございます。私も入っちゃった……」
部員達からは二人の入部に関しては歓迎の様子であり、拍手で出迎えられた。ちなみにレイは完全にダウン状態の影人を連れて教室に戻っている。最初に影人は休むと言っておいたのと、未だに影人の方は調子が戻らないのでレイが二人のいない間も影人の面倒を見るという事になったのだ。
「あの、質問良いかな?」
「はい、みこと先輩!」
「二人は誰が好きなの?」
うたやななと同じクラスで初期から研究会に所属している東中は二人がどのアイドルが好きなのか気になった様子で質問。それを聞いてこころは間髪入れずに六枚のカードを手にして話に飛び込む。
「はい、これ大事!推しは誰かって事ですね。じゃあまずはなな先輩から!」
「えっ!?私……?」
それからこころはななの前にアイドルプリキュア四人+ズキューンとキッスの画像が入ったカードを提示した。
「えっと……キュアウインク以外かな」
「えっ?」
ななは少し恥ずかしそうな顔つきでそう言う。ハナから見たらキュアウインクだけ認めないみたいなアンチのような言い方になってしまうだろう。ただ、誤解の無いように補足するとななとしては自分を褒めるのが恥ずかしいのに加えて自分で自分を推すという事がちょっと変だと感じたためのこの言葉であった。そんな彼女の気持ちがあったという事を留意しておこう。
「そうなんだ。……キュアウインクも凄っごく可愛いよ!」
「だよな!俺、キュアウインク推し!」
「私も!」
「そ、そうなんですか!?」
「なな先輩が照れちゃダメですよ……」
ななはキュアウインクを褒められた影響でアイドルプリキュアとしての自分が褒められていると感じ、思わず照れてしまう。ただ、今の自分はアイドルプリキュアでは無いのでこころにツッコミを受けてしまった。
「はっ……」
「それで、うた先輩は?」
「私は、キュアウインクもキュアキュンキュンも大好き!」
そんな風に言われてななとこころは嬉しそうな顔になる。それからこころはうたへと改めて問いかけた。
「でも、先輩。今一番心キュンキュンなのは……?」
「キュアズキューン大好きぃいっ!」
うたはいつの間にか両手に握っていた白く光るキラキライトを上に万歳しつつ掲げる。うたの推しの発表に他の部員達も嬉しそうだった。
「うた、キュアズキューン推しなんだ!」
「そうみたい!どうしてなのか自分でもわかんないんだけど……私、キュアズキューンのファン!」
そのまま昼休みが終わるまで研究会で過ごしたうた達。そのまま午後の授業に入る事になった。
「ふにゃあ……キッスぅ……一生推してあげるよぉ……」
「影人君がかなりヤバい発言してる!?」
「本当にいつになったら目覚めるのやら……」
尚、影人は昼休みが終わった後もおかしな状態のままであった。こうなってくると逆にいつになったらこの状態から戻るのやらって所だ。
そして、放課後。うた、なな、こころ、影人の四人は喫茶グリッターにやってきていた。尚、レイに関してはまた家の事で忙しいために影人を送る事だけ手伝ってから自分の用事の方に行ってしまう。
「俺はキッスにメロメロ夢中だよぉ……」
影人がふやけたような顔つきでグリッターのカウンターに突っ伏す中、うたの方はいつものお手伝いのエプロンを付けて、きゅーたろうにキュアズキューンのカードを見せていた。
「ねぇねぇ!これ、キュアズキューン!キラッキランランだよね!」
「ワン!」
「だよね〜!!きゅーちゃんもファンになったっぽい」
そんな風にうたは話す。早速うたはきゅーたろう相手にキュアズキューンの布教活動を始めたようだ。
「これはまさしく、推しができた時あるある!布教活動です!」
「布教活動……って?」
「布教活動とは、推しの素晴らしさを皆に広める事!立派な推し活の一つです!」
うたはキュアズキューン推しとなり、その魅力を周囲に布教する。うたもこころがいつもやっているような事をやるようになったのだ。
「へぇ……。一緒に推す友達が増えたら楽しいもんね!」
「ワン!」
「はい!」
そんな中、はもりの相手をしていたなながこころへと話しかける。それは未だに夢の中にいるような状態の影人についてだ。
「こころちゃん、影人君の事。大丈夫そう?」
「……やっぱり複雑な気持ちはあります。でも、カゲ先輩が推すって言ってる以上無理強いはできませんよ。私だってキュアアイドルやキュアウインクを推すのを認めてもらってる立場ですし。それに、レイ先輩は疑ってましたけどきっとキュアキッスも悪意があってカゲ先輩をこんな風にしたってどうしても思えなくて」
こころは影人がキッスの影響で見ている夢を楽しんでいるのをそっと彼の頭を撫でながら見守る。
「ここりょ、おいで……。俺と一緒にキッスを推そう……」
こころが影人に触れるだけでちゃんと影人はこころを認識する。それだけでも彼女にとっては安心できる物だった。ななもこころの事を影人が認識するという状態を見るだけでも見ていて安心感があるのかそれ以上は言わない。
もしこのタイミングでこころの事ではなくキッスの事を口走っていたらもっとこころは不安に思っただろう。その点において影人のこの反応は救いとも見て取れる。
「おーい、ナポリタンできたぞ」
するとそのタイミングでうたの父親である咲良和がメニューの中の一品、ナポリタンを完成させると声をかける。それを聞いてうたはやる気のスイッチオンがいきなりオンになるとササっと動き出した。
「はいはーい!やるやる〜!」
それからうたは和からお盆を受け取るといつもよりやる気に満ちた声色で客へと提供する。
「お待たせしました〜!ごゆっくりどうぞ!」
「ありがとう!」
そんなやる気十分なうたを見ていたこころは何か気になったのか考え込んでいた。
「うーん、あの漲るやる気はもしかして……」
「「?」」
こころは何か心当たりがありそうな雰囲気であり、それに気づいたななやはもりはこころの方を向くと首を傾げる。
するとうたの体からキュアズキューンを連想させるような白いオーラが立ち昇っていた。
「洗い物溜まっちゃった。いつもなら天城さんがいてくれるけど今日はお休みの日だし……」
少しして、グリッターの厨房ではうたの母親の音が客が食べるのに使用した皿が山のように積まれているのを見て嘆く。普段であればこういう事は天城が先に気がついてやってくれるものの、今日彼女はバイトのシフトが無いのでお手伝いが無い状況下なのである。
「やるやる〜!うぉおおおっ!」
それからうたは普段の何倍もの超高速で正確に、確実に洗い物を済ませていく。これだけ早いペースなのに洗い残しや手を滑らせる事による皿の破壊も無いのでノンストレスで片付けが進んでいくのだ。
「うた、パスタ買いに……」
「行ってきま〜す!」
「速っ!?」
次は切らしてしまったパスタの追加の買い出しだが、お願いされる前に速攻で買いに行ったうたを見て和は唖然とする。それから少し時間が経ってうたが戻ってきた。
「ただいま!」
「きゅーちゃんの散歩を……」
「するする〜!」
すかさずきゅーたろうの散歩が必要になった所にうたはまた自ら名乗りを上げ、彼を連れて散歩に行った。
「うぉおおおっ!」
「ワンワン!」
またそこそこの時間が経つとうたはきゅーたろうを連れて帰ってくる。ただ、いつも以上のハイペースでの散歩だったためにきゅーたろうは疲れてダウン。それでもうたと散歩できたきゅーたろうは嬉しそうな顔をしていたが。
「うた、そろそろ宿題やったら?」
「もう終わってる!」
「……うたが宿題をもう終わらせるってぇ……何かの夢じゃにゃいのか……うー」
「カゲ先輩、それはカゲ先輩へのブーメラン発言ですよ」
影人は気の抜けた顔をしながらうたの方を向いて話すとこころが鋭く指摘。それにしてもいつもであれば宿題を嫌がりそうなうたが既にやってる辺り、普段の数倍はやる気パワーが充填されているうたにかかればこのくらいお安い御用というわけだろう。
「今日のお姉ちゃん、いつもよりお姉ちゃんって感じだね!」
「これも正しく、推しができた時あるある!推しができると毎日が楽しくて、何でも頑張れちゃうんです!」
「「へぇ〜」」
こころが実体験に基づく説明をするとななやはもりは納得し、うたの方も嬉しそうな顔をしていた。
「そうかも!キュアズキューンってカッコいいし、可愛いし。私もキュアズキューンみたいにキラッキランランになりたい!頑張ろうって思う!」
うたの宣言に一同が微笑ましい顔になる中で影人はただ一人未だに気の抜けた顔つきをするのだった。
その頃、チョッキリ団アジトにて。そこではビリヤードを打つチョッキリーヌとカウンターの椅子に座ったザックリーがいる。
「ったくよ。カッティーの奴全然帰って来ないっすね」
「……アイツはもう戻らないよ」
「は!?何で!?」
ザックリーの問いにチョッキリーヌは淡々とした様子で答える中、質問をしたザックリーは唖然とする。
「幾らボーナスが無いからって、チョッキリーヌ様が全く働かないからって!」
「……何だって?」
ザックリーは思わずチョッキリーヌへと普段仕事に出て行かない彼女への文句を言ってしまい、彼女から睨まれると慌てて両手で口を塞ぐ。
「何でも無いっす」
ザックリーが慌てて訂正するとチョッキリーヌは溜め息を吐いてからまたビリヤード台の方に向き直る。
「……カッティーの奴は闇に呑み込まれたのさ」
「はぇ?」
それと同時にチョッキリーヌが弾いたボールが台にある穴へと吸い込まれる。ザックリーは同僚の急な失踪(チョッキリ団からの無断退職)に息を呑む。
「きっと、ダークイーネ様のお怒りを買ってね」
「……何だぁ?つか、カッティーがいないと俺の仕事がザックリ増えるじゃねーかぁっ!?」
そんな風に頭を抱えるザックリー。現在のチョッキリ団の立ち位置的にザックリーが一人だけ一番下なのでこうなるのも無理は無い。そこにローブ姿のスラッシューがやってきた。
「……ザックリー、久しぶりね」
「す、スラッシュー様!?」
「チョッキリーヌの言った事は本当よ。カッティーはもうチョッキリ団の一員では無い。ダークイーネ様によって闇に飲まれたからね」
尚、スラッシューは嘘は言ってない。ダークイーネによって闇に呑み込まれたのも事実だし、そこから浄化されてチョッキリ団の仲間でなくなったのも本当だ。
「ゴクリ……」
「……お前一人でアイドルプリキュアの相手をするのはキツイでしょう?私もお手伝いしましょうか?」
スラッシューはそう言ってザックリーへと囁く。ザックリーはスラッシューに手伝ってもらえるなら勝てると考える。
「あ、でも協力の代償か何かあるんじゃ……」
「別に無いわ。特に貸し借り無しで手伝うと言ってるのよ」
スラッシューからの言葉にザックリーの心は揺れる……が、彼は首を横に振った。
「……いや、手伝ってくれるのはザックリ嬉しいが……俺にも意地がある。今回は俺一人でやらせてくれ」
「そう。まぁ、大変になったら頼りなさい。少なくともあっちのブラックダメ上司よりは力になれるから」
しれっとスラッシューはチョッキリーヌへの煽りの言葉を口にしてから部屋を出ていく。どうやら彼女としてはバイトの休みの日に偶々寄っただけらしい。ザックリーはスラッシューの協力を断った以上、どうにかアイドルプリキュアに勝つための作戦を考えつつ部屋から出ていくのだった。
また次回もお楽しみに。