キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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影人の異変の経緯 夢乃の苦労

チョッキリ団での動きがある中、場面は再度グリッターの方へ。そこでは未だにカウンター席で夢見心地の影人を除いた三人が二階にあるテーブルを囲んで座っていた。

 

その中でうたはプリルンの残したトイカメラを使うとズキューンキッスのライブ映像を見つつ鼻歌を歌っている。

 

『『キミと明日を〜願うチカラで♪生まれる〜私たちのハーモニー♪響け〜♪』』

 

「うたちゃん、本当にハマっているね」

 

それからライブが終わると次の動画へと移動。そこにはプリルンがいなくなる前にうた達のために残した映像があった。

 

「あ、プリルン!」

 

『プリルン、キラキランドにお出かけしてくるプリ!』

 

「プリルンともキュアズキューンの事、話したいなぁ!」

 

そんな風に動画を再生しつつ、今はいないプリルンへの想いを馳せるうた。

 

「キラキランドに行ってからちょっと時間経ちましたよね」

 

「プリルンとメロロン。大丈夫かな?」

 

「きっと大丈夫!待っててって言ってたから。プリルンを信じよう!」

 

うたはいつものポジティブな顔つきで二人へと話す。どうやらうたの気持ちがキュアズキューンを推す気持ちであるとこころに教えてもらってから彼女の方は元の調子に戻ったらしい。尚、影人の方はどれだけ話しても戻らない様子であった。

 

「あの〜、すみません」

 

「田中さん!!」

 

そのタイミングで階段を登ってきたのはついさっきバイトのためにやってきた田中である。その証拠に彼はバイト用の姿であるエプロンを付けていた。

 

「美しく纏まった所恐縮なのですが、私がキラキランドに帰って様子を見てこようかなと思います」

 

田中の提案に一同は真剣な顔になる。田中は元々はキラキランドの妖精であるので、妖精の姿になれば問題無くキラキランドへと戻ることが可能だろう。

 

「そっか、田中さんキラキランドの人だから……」

 

「戻る事もできるんですよね」

 

「ええ。ピカリーネ様からも連絡が来ませんから、ここは行ってみるしか。二人の事は私に任せてください」

 

プリルンやメロロンを心配する気持ちは田中も同様らしい。彼からしてみればご近所の仲良しが突然いなくなった形なので心配するのも当然だろう。

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

そう言って田中はかけている眼鏡をクイッと上げる。そんな時だった。グリッターの扉が開くと一人の少女が慌てた様子で駆け込む。

 

「お兄ちゃん!」

 

「んぁあ……夢乃、お前もキッスの美しさにメロメロォ……」

 

「レイ先輩の言った通りだ。お兄ちゃんまだ戻ってなかったの?しっかりして!」

 

夢乃はカウンターで寝てしまっている影人を慌てた顔つきで揺らす。そんな彼女の声を聞いてうたが急いで夢乃の元に向かう。

 

「夢乃ちゃん!?何で……確か今日ははもりと遊ぶって話は……」

 

「うた先輩すみません。うちの兄がこんなにもご迷惑を……」

 

そう言って夢乃は頭を下げる。そんな夢乃を見たうたは慌てて頭を上げさせると彼女にも今日一日の影人について話をした。

 

「……そうだったんですね。……こころ先輩、うちの兄が本当にすみません!こころ先輩と恋人になっておきながらこんなふしだらな所を。元に戻ったら絶対謝らせるので」

 

夢乃としては兄のこころへの不義理が許せなかったようである。影人はこころと恋人になりながらも他の女にうつつを抜かしたとなれば夢乃も申し訳ない気持ちでいっぱいなのだ。

 

「夢乃ちゃん落ち着いてください!その、きっとカゲ先輩は悪気があってこうなってるわけじゃないんです」

 

「うん。影人君を責めるのは正気を取り戻して、その対応を見てからにしよ」

 

「お二方がそう仰るのでしたら……はい、わかりました」

 

夢乃はこころの心の広さに感謝すると彼女も交えた情報整理をする事になった。

 

「それで、夢乃ちゃんが影人君の異変を知ってるって事は……」

 

「はい。今朝起きたらお兄ちゃんがこんな感じで。ただ、昨日の夜はそこまで大きな変化があったわけじゃ無さそうなんです。一日寝ただけなのに……」

 

「オッケー。じゃあ、私達の方の話も終わったし、夢乃ちゃんが知ってるカゲ先輩の挙動を話してくれても良いですか?」

 

「わかりました。では、昨日の夜からお話ししますね」

 

夢乃はそう言って昨日の時点での影人の挙動について話し始めた。加えて、夜から朝にかけた影人視点の話も入れる事にしよう。

 

〜回想〜

 

キュアキッスによって白と黒の光を入れられた後の事。家に戻った影人の元に夢乃が慌てた様子で駆け込んでくる。

 

「お兄ちゃん!良かったぁ……無事でいてくれて……」

 

いきなり飛び込んできた夢乃に影人は困惑する。それから夢乃に話を聞くとどうやら戦いの経過とかについても説明を受けたらしい。

 

「そっか……。ごめん夢乃、心配かけたな」

 

「本当だよ……。でも、お兄ちゃんが無事に戻ってくれて良かった」

 

夢乃もあの場所ではアイドルプリキュアを信じていたものの、やはり不安も強かったのだ。特に影人の体へのダメージが一番大きかったというのと彼がアイドルプリキュアの力を失いかけたせいで余計に心配を与えたらしい。

 

「それと話にも出てきた新しいアイドルプリキュア?の二人組」

 

「キュアズキューンとキュアキッスか」

 

「うん。お兄ちゃんの事を助けてくれたって?」

 

「ああ。黒い方の人、キュアキッスが俺の事を助けてくれた。彼女に聞いたら気まぐれって言ってたけど……何だかそうじゃない気がする」

 

「え?何か意図して助けてくれたって事?」

 

影人はそう言って頷く。すると夢乃は影人を見て何かを感じたのか声をかける。

 

「お兄ちゃんどうしたの?顔……なんかちょっと赤くない?」

 

「そうか……?まぁ、ちょっと体が熱い気はする。でも怠い感じじゃ無いからきっと平気だ」

 

影人はそう言って部屋へと戻っていく。夢乃は気になる気持ちが残ったものの、これ以上影人へと詮索するのはよくないと一旦自分も部屋に戻る事になった。これにより翌朝、夢乃はこのときに何が何でも止めるべきだったと後悔する事が確定する。

 

その日の深夜、影人は眠くなるといつも通り布団に入る。そんな時、目を閉じると影人の前に今日の戦闘の風景が浮かぶ。

 

「ッ……。ダメだ、結局俺は……俺は何もできなかった。むしろ、力が抜けた瞬間足手纏いに……」

 

影人はアイドルプリキュアとしての変身アイテム、アイドルキラキラブローチを手に取る。

 

「この力も元々はスラッシューが俺を洗脳した時に渡された力を使ってるだけ。……改めて思い知らされるな、俺の力は誰かの借り物でしか無いんだって」

 

影人は自分自身の力を持たない事を悩んでいた。もしあの場面で自分の力をちゃんと使えていたら、そうすればきっとズキューンやキッス無しでも三人を救えたと感じているのである。

 

「……考えても仕方ない。俺は自分の力を失いかけて、あの二人に助けられた。それがあの戦いの答えだ」

 

影人はまた眠りにつく。それから影人が寝ていると彼は目を開ける。そこは不思議な空間だった。影人が夢で起き上がるとそこはライブが始まる前のライブステージのような場所だった。

 

ただし、今自分がいるのは観客席の方だった。そして、周りの観客達は黒いキラキライトを振っている。

 

「ここは……」

 

そんな中、暗闇にスポットライトが差し込むとキュアキッスが姿を現す。それから彼女が手を翳すと影人の体が浮かび上がり、キュアキッスの近く。つまりステージの上に降り立つ。

 

「え?俺、今変身してないよな?何でキッスが……」

 

影人は変身前の自分を知らないはずのキッスが目と鼻の先に来ると優しく微笑み、それから彼女は口元に手を当てる。

 

「メロメロ夢〜CHU♡」

 

それからキッスは影人へと投げキッスをするとハート型のエフェクトが影人に命中。その瞬間彼の心は高鳴り始めると少しずつ彼女の事を異性としてでは無く、推しのアイドルとして好きな気持ちが昂ぶり始めた。

 

「何だ……この胸の高鳴り。おかしい、キッスから目を背けられない。体も熱い。ダメだ、俺にはこころという恋人がいる。彼女を裏切るなんてできない……」

 

影人はどうにかこの感情に逆らおうとする。せめてこころに一言言って許可を取らないとと考えた。

 

「……何をそんなに我慢してるの?私の事をアイドルファンとして夢中になって推す事の何が悪いの?それだったらあの子だってアイドルファンじゃない。気にするだけ疲れるわ」

 

キッスの誘惑に影人はどんどん逆らえなくなる。勿論、無理矢理では無い。元々キュアキッスに助けられたお陰で影人は彼女へと良い印象を持っていた。加えて、彼女の凛々しさは影人のタイプであったのである。

 

「さ、私の事を受け入れなさい」

 

「は、はい……キュアキッス。俺はあなたをアイドルファンとして推したいです……」

 

影人は完全に彼女の虜になってしまうとそこからはもう逆らえなかった。影人の中にあったキッスを推したいという気持ちが何倍にも増幅されたためにもう彼女から目なんて離せない。

 

「さぁ、思う存分。好きなだけ私を推して。あなたのためにだったら幾らでも歌ってあげるから」

 

「メロメロ夢〜中……」

 

こうして、影人は完全にキッスの沼にハマり始めるとそこから朝になっても甘い夢をむさぼるようになった。

 

翌朝、夢乃が起きると欠伸をしながら廊下を歩く。そんな中、彼女は未だに起きていない影人を見て違和感を感じる。

 

「……あれ?お兄ちゃんがこの時間で起きてない?」

 

夢乃は嫌な予感がすると急いで影人の部屋にノックして入る。そこには完全にキッスの虜になってしまった影人がいた。

 

「あ、おはよう夢乃〜。お前もキュアキッス推すかぁ?」

 

「え?お兄ちゃんどうしたの!?そんな顔して……」

 

夢乃は慌てて影人を揺らす。しかし、影人は未だに夢から目覚めて無いかのように腑抜けた顔をしていた。

 

「キッスぅ、もっと歌ってぇ……」

 

「……は?お兄ちゃん、何言ってるの?お兄ちゃんが好きなのはこころ先輩だけでしょ!」

 

「折角ならこころと一緒に来たかったなぁ……」

 

「お兄ちゃんってば!」

 

それから夢乃は何としてでもキュアキッスの虜になった影人の目を覚させようとするがどの手段を使っても効果無し。

 

「どうしよう。こんなお兄ちゃん、こころ先輩に会わせられない……」

 

しかし、もうそろそろ準備を始めないと自分も遅刻してしまう。仕方なく夢乃はこころと会わない事を祈りながら小学校に登校。その帰り道に影人をグリッターにまで送って家に帰る途中のレイとエンカウントすると影人の惨状を聞いて慌てて駆けつけたのだ。

 

〜現在〜

 

「一応私視点の話はこんな感じです。本当に寝て起きたらこうなっちゃってて」

 

「うーん、やっぱり打開策無しですか……。どうしましょう」

 

「自然回復するしかどうにかする方法は無いのかも」

 

「でも、その間兄はこころ先輩を裏切り続けるんですよね……。私だったら彼氏がこんなに長い間ふしだらになったらきっと愛想を尽かしますよ」

 

夢乃がそんな風に言う中、うたは何かを思いついたようにある提案をした。

 

「あ、キュアキッスに聞けば何かわかるかも。影人君をこうしたのはキュアキッスの投げキッスが原因だと思うし」

 

こうなったら影人がここまで腑抜けた元凶であるキュアキッスに今回の件の原因を聞かなければ解決しない。そんな事もあってうたの発言に全員が頷く。次にキュアキッスと出会ったら何故影人がこうなったのかを聞こう。そういう結論に落ち着くのであった。

 

その頃、街中ではチョッキリ団のアジトから出撃したザックリーがいつも通り姿を現す。

 

「……さて、今日キラキラしてんのはどいつだ……ん?」

 

ザックリーの視線の先にいたのは一人の少女であった。彼女の髪型をよくよく見るとリボンを使用してキュアキッスの髪型であるツイストヘアを上手く再現していた。

 

「ふふっ、嬉しい!」

 

どうやら少し前に美容院で推しと思われるキュアキッスと同じ髪型にしてもらったらしい。そのため、彼女は推しと同じ髪型になれてキラキラが出ていた。

 

「良いじゃねーか。アイツに決めたぜ!」

 

ザックリーは早速クラヤミンダーを召喚するべくいつもの綱引きをしてキラキラを引き抜いてしまう。

 

「お前のキラキラ、オーエス!」

 

「きゃああっ!?」

 

「はい、ザックリ行くぜ!」

 

そのままザックリーはいつも通りに胸のリボンを真っ二つに切ってしまうと水晶と素体の人間を合わせる。

 

「来い!クラヤミンダー!世界中をクラクラの真っ暗闇にしやがれ!はぁい!」

 

ザックリーは数日前の風が治った病み上がりとはいえ、元気になったのでその喜びを力に変えてクラヤミンダーを呼び出した。

 

「クラヤミンダー!」

 

今回の姿はまるで手鏡を連想させるような形をしており、早速クラヤミンダーが咆哮を上げる。勿論人々は突然現れた怪物に逃げ惑った。

 

「クラヤミンダー!」

 

クラヤミンダーが自販機を踏み潰す中で、暗くなった空を遠目に確認したうた、なな、こころは目を見開く。

 

「あれ!」

 

「こんな時にチョッキリ団!?」

 

「早く行かないと!」

 

「って、影人君はどうしよ……」

 

「お兄ちゃんは私が連れて行きます。なので皆さんは気にしないで先に行ってください!」

 

「ごめん夢乃ちゃん、お願い!」

 

夢見心地のせいであまり早く動けない影人を夢乃が連れて行く事になり、うた達三人は先行してクラヤミンダーが暴れる場所へと移動するのだった。




また次回もお楽しみに。
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