キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
戦いの後、どこかに去って行ったズキューンとキッスを追いかけるアイドル。そんな彼女を一人だけ先に行かせてしまうわけにいかないためにソウル、ウインク、キュンキュンが慌ててアイドルを追いかけていく。
「ズキューン待って〜!」
「「アイドル待って〜!」」
「何だかんだで結局こうなるのかよ……」
「アイドル、凄っごく心キュンキュンしてます!」
ちなみにこの場にいない夢乃とは一旦別れている。夢乃は生身の人間であるし、アイドルプリキュアの関係者だとあまりバレるのは良くないからだ。そんな中で、ズキューンを追いかけるアイドルとそんなアイドルを追いかける三人という構図を作ったこの追いかけっこの元凶のキュアズキューン。彼女の隣にいるキッスは自分達が四人に追われていると気がつく。
「……お姉様」
「え?うん……」
それからズキューンとキッスの二人は街中にある両側に木が生えて後ろからでは見えにくい場所に飛び込む形でいなくなってしまう。
「あっ!?」
「「あ……」」
そして、アイドルが先頭で四人もズキューンとキッスがいなくなった場所に降り立つとそこに二人はおらず。そのためアイドルが慌てた様子でキョロキョロと見渡す。
「あれ!?いなくなっちゃった!?」
「不意に姿を消すとは謎多き二人。ミステリアスです!」
「そういう所も素敵だね!」
ウインク、キュンキュンがそう言う中でアイドルは悩んだかのような目をすると疑問を浮かべる。
「仲良くなりたかったのになぁ〜。どうして行っちゃったんだろ」
「何かわけがあるのかも」
「うーん……」
するとアイドルは体を横に倒すくらいに考え込むような仕草を見せると気になったのかキュンキュンが指摘した。
「……どうしたんですか?」
「キュアズキューン、何だか前から知ってるような気がして。……何でだろ?」
それを聞いてソウルはまた考えるような仕草を見せる。するとウインクがそんな彼を見て問いかけた。
「ソウル、さっきもそうやって考えてたけど……何かわかりそうなの?」
「……いや、何でもない。確証も無いし、きっとただの杞憂だ」
「その感じだと何か引っかかってるの?」
「ああ。何となくだけどな」
ソウルの中では彼の中の勘に引っかかる何かがあるらしい。やはりどうしてもその引っかかる何かを言うには証拠が色々と足りないようだ。
「……そうだ。さっき言ってた俺が気絶している間に何があったかについて。説明してほしい」
「「……あ」」
アイドルとウインクが声を合わせる中、キュンキュンはまたジト目を向けてくる。ソウルとしてはその話をするだけでずっとキュンキュンことこころからジト目を向けられるのはあまり良い気持ちにはなれない。
ただ、自分が何をやったのかをちゃんと知っておかないと反論もできないのでこうして聞こうとしている。
「……え、えっとぉ……」
「取り敢えず、レイ君これで状況証拠って録画しておいてくれたから」
ウインクが差し出したのはプリルンが使っているトイカメラであった。そこにはプリルンからのメッセージの隣に新しく撮影された映像がある。そこにはソウルこと影人が何をやらかしたのかがしっかり録画されていた。
早速ソウルはそれを再生する。すると、僅か十秒足らずでソウルの顔が凍りついた。
「……は?え?これ……本当にさっき撮った映像なの?」
“キッスぅ……俺にもっとファンサしてぇ……。もっと俺の方を向いてよぉ……”
ソウルの顔つきはどんどん青ざめていく。声は完全にキュアキッスに心を心酔し切ったような物であり、しかも映っている自分は他人にお見せできないような緩み切った頬にとろけた顔つき。正直自分で見ていて吐き気がするくらいに気持ち悪い物だった。
「き、キュンキュン……これはその……」
「……そうですよね?仕方ないですよね?ソウルは意識を失ってたんですから。……キュアキッスは私なんかよりもずっと大人っぽい体つきですし。すみませんね、私なんかまだまだ子供の体で……」
「……あ、あぁ……」
キュンキュンは完全にキッスに心酔してしまったソウルこと影人へと冷たい視線を向けてしまっている。ここからソウルにできる事はたった一つだった。
「……本当に申し訳ございませんでしたぁああっ!」
ソウルの謝罪が響く頃。アイドルプリキュアの四人が追いかけていたズキューンとキッスがいなくなった先の茂みを挟んで反対側。
「ねえたま、早く行かないとバレちゃうのメロ」
「でも、キュアアイドルがプリルンと友達になりたいって……」
そこからフワフワと浮かぶようにしてこっそりとどこかへと移動する影がいた。それは紛れもなくキラキランドに向かっていたプリルンとメロロンだったのである。プリルンとメロロンは小声でそんなやり取りをしながらどこかへと飛んでいくのだった。
さて、それはさておき時間はその週の週末の土日にまで飛ぶ事になる。今現在、影人はキチンとしたお出かけ用の服に身を包んではなみちタウンにあるショッピングモールに来ていた。
「……時間前にちゃんと来ることはできたけど……くぅう……。まさかたった半日気絶していた間に黒歴史を量産する羽目に遭うとは……。おかげで夢乃からも滅茶苦茶怒られたし」
影人はズキューンとキッスを見失い、アイドルやウインクことうた、ななの二人から自分が気絶している間に何をしていたのかの説明を受けた。そして、それが終わった後に影人は改めてこころへと土下座をする形で謝る事に。
勿論この土下座はおふざけとかでは無く本気のである。こころも流石にここまでさせる程責めるつもりは無かったのか、一応許してはくれた。ただ、影人はそんな態度で許されるなんて思ってない。だからこころに今回の分の埋め合わせについての希望を聞いた。影人は彼女からのお願いを何でも一つ叶えるという形でこころへの誠意を見せようとしたのである。
「てか、レイの野郎もあそこまで揶揄う必要はねーだろうがよ」
今回の件、当然のようにレイに揶揄われる事になる。レイとしては暴走していた状態の影人のブレーキ役を担うのはかなり大変だった。ただ、だからこそ我に返って黒歴史状態になった今の影人を揶揄いまくっているのだろう。
「クラスメイトや先生にも最初しっかり心配されちゃったし。どれだけ暴走してたんだよ……」
影人は正気に戻った翌日、前日の暴走っぷりを見ていたクラスメイトや教師達から軒並み心配の声を貰った。普段しっかりしているからこそ体調不良を疑われたと取れる。
「はぁ……」
影人が溜め息を吐いているとそこに影人が待っている相手は……紫雨こころはやってきた。
「あ、カゲ君。お待たせしました!」
「ああ。それと俺は今来たばかりだからそんなに待ってないよ」
影人はそう言ってこころを安心させる。影人としては今回の埋め合わせ……所謂デートで彼女からの信頼を取り戻そうと考えていた。
「じゃあ早速行こっか」
「はい!」
それから二人はさも当たり前かのように恋人繋ぎをして移動を開始する。今日ははなみちタウンにあるショッピングモールへと行ってのショッピングだ。
同時刻。チョッキリ団アジトではザックリーがいつものようにダーツを投げていた。
「ほいっと」
ザックリーの腕は日に日に上達していた。伊達に出撃前に毎日ここで遊んでいるわけではない。
「くそッ。キュアズキューンにキュアキッスか。あんな奴等が増えてるなんて初耳だぞ」
前回は完全に準備不足であった。流石に情報無しでのズキューンやキッスの相手はキツイと言うしかない。スラッシューが何かしら言っていれば解決の可能性はあったが、彼女はこのタイミングで情報開示をせずにサボった。
「スラッシュー様、まさかと思うがあの時知ってて言うのを渋ったとかじゃねーよな?」
「……私がどうかしたのかしら?」
「うわあっ!?」
ザックリーはいきなり後ろに立っていたスラッシューからの言葉に驚くとダーツを明後日の方向へと投げて外してしまう。
「す、スラッシュー様……」
「さも私がキュアズキューンとキュアキッスの事を言うのを忘れてたみたいな言い方ね?」
「それは事実じゃないんっすか?」
「えぇ、そうよ?でも……あなた、言ったわよね?手助け無用と」
「……へぇ?」
ザックリーからの問いにスラッシューは至って平然としたまま答えを返す。それを聞いたザックリーは冷や汗が出てきた。確かに自分はあの時手助けは要らないと言ってしまったのだ。これで二人の事を言わなかったスラッシューの行動は正当化され、ザックリーは追い込まれてしまう。
「す、スラッシュー様。流石に汚いっすよ」
「ふ〜ん。この期に及んで言い訳ねぇ。まぁ、今日はアンタを責めに来たわけでは無いわ」
「……え?」
それからスラッシューがダーツを一本手に取るとそれをど真ん中に投げて突き刺す。
「仕方ないから今日は私が行って差し上げますわ」
「スラッシュー様が?」
「えぇ。あなたは私が行っている間にしっかりと、ズキューンやキッスへの対策をリサーチしてなさい」
スラッシューはザックリーには自分から答えを言わずに自分で調べさせる事にした。ここで自分に甘えさせたらダメだからである。
「……それと、影人君の事も気になるしね」
スラッシューの目にはここ数日間、喫茶グリッターへと足を運んでいた影人を見て気になることがあった。
「……影人君、他人から受け取って纏っている光の色合いが前から変わった。アレが意味する事は……」
スラッシューはひとまず考えてばかりでは始まらないという事でまずは行って実物を見てから考えようと感じてさっさと出て行く。
「(……それにしても、チョッキリーヌのサボり癖は相変わらずですわね)」
本来ならこのバーにいるはずのチョッキリーヌは今日は休暇という事でこの場にいない。本当に普段から碌に働いていないくせに何故休みを貰っているのやらって所である。
「はぁ……」
スラッシューはそう溜め息を吐くと胸にまたチクっとした痛みを感じる。それを受けて彼女は舌打ちしてしまう。
「チッ……。……またこの痛み。私にこんな迷いなんて要らないのよ」
スラッシューは無理矢理それを押し潰すとさっさと世界中をクラクラの真っ暗闇にするべく移動するのだった。
場面はまた変わってはなみちタウンにある森のような場所。そこにはフワフワと二匹の妖精が浮かんでいた。それはプリルンとメロロンである。
「メロロン、こっちに向かってどうするプリ?プリルン、お腹空いちゃったのプリ」
「メロ。もう少しで着くのメロ」
この二人はキラキランドに向かってからここ数日間、あまりご馳走を食べる事ができていなかった。一応食べられる物は山とかにあるので飢えとかに関しては大丈夫だったのだが、やはり普通のご飯も食べたい。
加えて、プリルンの事を考えたメロロンがうたの家に戻らなかったので自分達が寝るための寝床もまともに無い状況だったのだ。
「メロロン、もう限界が近いプリ〜」
「あ!ねえたま、見えたのメロ!」
それからプリルンとメロロンが到着した場所。そこにあったのは木で作られた一軒家……いや、田中が住んでいるはなみちタウンの出張所であった。
「プリ?メロロン、ここはどこプリ?」
「メロロン達がここに来てた時に元々住んでいた家メロ」
メロロンはそう言ってプリルンへと平然とした顔つきで嘘を吐く。ただ、こうしないと自分達の家が無い状況で活動しないといけないのだ。
「プリ!そうなのプリ?プリルン、この街に来た事があったのプリ?」
「メロ。取り敢えず、この家をメロロン達の家に改造するのメロ」
それから二人は田中がキラキランドへと向かった後で完全に不在の状態の家に侵入。そのまま家にある食料を少し食べてから早速家の中を自分達が住むために模様替えしていった。
「ここにはねえたまとメロロンの写真を飾るのメロ」
「メロロン、こっちはこれで良いプリ?」
「ありがとうなのメロ」
これだけ見れば二人の可愛らしい妖精達による温かい時間なのだが、やってる事は不法侵入からの空き巣同然行為である。
本当に不在の間に家に不法侵入された挙げ句色々と中を荒らされてしまう田中の身にもなってほしい所だが……プリルンやメロロンにこの世界の法など知った事では無い所があるためここは仕方ないだろう。
「メロ、これで完成メロ!」
「やったプリ〜!」
二人が模様替えを終えるとメロロンが自分達の家の完成お祝いに早速ペアルックのマグカップで乾杯をしようと自分のリュックに手を入れる。そんな時だった。
「……メロ?そういえばこれ……」
メロロンが出したのはアカペラをやるための譜面だった。そして、それはプリルンの分もある。
「……影人とアカペラ……」
メロロンはそう呟いて胸を痛める。もう自分達にとってこの譜面は要らないもの。そう思った彼女は捨てようという単語が頭によぎる。もう自分達は影人達と過ごせない。そう考えるとこの譜面は持っているだけ無駄なのである。しかし、メロロンはどうしても譜面を捨てようという気持ちにはなれなかった。
「……ねえたま、メロロンと一緒に歌の練習をするのメロ」
「プリ?これは何プリ?」
「ねえたまに歌ってほしい曲なのメロ。メロロンはリズムを取るからねえたまはキュアアイドルの前で歌うつもりで歌ってほしいのメロ」
「それってキュアアイドルは喜んでくれるプリ?」
プリルンからの質問にメロロンは詰まる。ただ、プリルンにこれを歌ってもらうには肯定するしか無かった。
「メロ。これを聴いたらキュアアイドルは元気になってくれるのメロ」
「プリ!じゃあやるプリ!」
次の瞬間、二人の姿は光に包まれると変化。かつて影人やうた達と練習していたこの曲をプリルンが歌い、メロロンがポイパでリズムを取るのだった。
また次回もお楽しみに。