キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
昼休みが終わり、また時間が経って今は学校終わりの放課後。うたの案内で影人、ななの二人はうたの家である喫茶グリッターにやってきていた。
「たっだいまー!」
「「お帰り!」」
「お帰りなさい。お姉ちゃん!あ、あと影人さん!」
「お邪魔します……」
ひとまず礼儀重視という事で普通に挨拶をした影人。勿論内心では面倒事に巻き込まれた後の顔をしていたが、それをうたの家族の前で見せるのは人としてダメなので普通の顔を維持した。
「今日は影人君だけじゃなくて、友達のななちゃんも連れてきました!キラッキランラン〜!」
「初めまして、蒼風ななです」
「いらっしゃい」
「こんにちは」
「こんにちは、ななちゃん。咲良はもりです!」
ななとうたの家族との挨拶も済んだという事で早速うたはななの手を握るとそのまま連れていく。
「ささ、ななちゃん。こっちこっち」
「っておい。俺は一旦スルーかよ」
「ひとまずはななちゃんに元気を出してもらうのが先だからね。ななちゃんはちょっとだけこの席に座って待っててね〜」
うたはカウンター席にななを案内するとぬいぐるみとしてプリルンを置き、一度準備のために奥の部屋に入っていく。
「はぁ……やっぱり予想通り俺の扱いが雑過ぎるだろ」
「あ、あの。影人さん」
すると影人の元にはもりがやってくると興奮したような顔つきで彼女は話し始めた。
「えっと、影人さんって確か夢乃ちゃんのお兄ちゃんだよね」
「……あれ?」
影人はそのタイミングで違和感に気づく。家族の予定が未だに合わない影響でこのお店には一度も夢乃は来ていないはず。なのに何故はもりが夢乃を知っているのか。気になった影人は聞く事にした。
「はもりちゃん。俺の妹を、夢乃を知ってるのか?」
「うん!実は小学校への登校班が一緒で……夢乃ちゃん、登校班での自己紹介の時に初めて会ったんだけど……その、とっても綺麗で……可愛くて。思わず見惚れちゃったんだ」
はもりは夢乃の姿を見て完全に虜になってしまったらしい。夢乃はまだそこまで本格的に化粧とかでおめかしはしていない。つまり、殆どすっぴん状態だ。それなのに彼女は兄以上の整った容姿や天性の吸い込まれるような瞳のお陰で周りの人を惹きつける。恐らくはもりも夢乃と会った際に彼女へと惹かれた一人なのだろう。
「それに、はもりが話しかけたらとても優しく話をしてくれて……目つきとか影人さんに似てるって思って聞いたら自慢のお兄ちゃんだって言ってて……」
「………」
影人はこういう接点のでき方もあるのかと勉強した一方で、多分この縁で夢乃と自分の友達やその家族が繋がる事に関してはもう止めようと思っても止められる物では無いと察した。
「そっか。いつも夢乃がお世話になって、あと……話し相手になってくれてありがとう」
「私の方は大丈夫だよ!むしろ、影人さんの方こそお姉ちゃんが迷惑とかかけてませんか?」
「ちょっ!?はもり、何で私が迷惑かけてる事前提なの!?」
そして影人が夢乃の事で優しくはもりに接していると丁度うたの事について話し始める。しかもそのタイミングでうたがななにクリームソーダを提供していたので話が彼女の耳に入ってしまったのだ。
「咲良さん……お姉ちゃんとは色々あるけど仲良くやってるよ」
「影人君、意外と友達のご家族には丁寧に接する人なんだね……」
「多分だけど、あんまり自分にとっての不利益は受けたく無い人だから波風が立たないように接してるんじゃないかな」
そんな風にボソボソとうたとななが話す中、影人は二人の話もしっかりと聞こえていた。ただ、この場の空気を悪くしないために敢えて聞こえないフリをする事に。
「あ、それはそうとどうかな?うちのキラッキランランなクリームソーダはどう?元気、出てきた?」
「うん。とっても美味しい」
「ふふっ。良かった!」
ななはグリッターのクリームソーダを食べてその美味しさに温かい元気が湧いて出てきた。そんな中、影人はメニュー表を見てクリームソーダの値段を見るとその金額分のお金をこっそりとはもりに渡す。
「はもりちゃん。後でこれ、クリームソーダのお代として咲良さんかはもりちゃんのご両親に渡しておいて」
「えっ、でも……」
「クリームソーダはこのお店の看板メニューでしょ?流石にお代を払わないのはダメだからさ」
「……う、うん」
影人はさりげなくクリームソーダの分のお金を払う。恐らくこのまま行けばうたはサービスとしてクリームソーダをななに提供する。だが、事情があるとしてもこのお店の看板メニューをタダで貰うのは影人としてはスッキリしない。なのでななに気づかれないように彼女の飲んだ分を払ったのだ。
「……あ、ピアノ」
するとななはふと視線の先にグリッターに置いてあったピアノを見つけた。
「ななちゃんピアノ弾けるの!?」
「うん」
「はもりも弾けるよ!きらきら星!!」
それからはもりはピアノの椅子に座るとピアノを弾き始める。まだななのように沢山の音を同時並行で弾いて出すのは無理だが、それでも一音一音を丁寧に弾くことで“きらきら星”を演奏した。
「……良い音だな」
「え?」
「はもりちゃんはまだ蒼風さんみたいな複雑な音は出せないけど、一つ一つの音が丁寧に聴き取れる。……咲良さんの妹だけあって人の心を掴めるような演奏だな」
影人は自然にその言葉を言うとうたは間接的に自分も褒められた事に気がついて影人へと驚いて問いかける。
「えっ!?影人君が……私を褒めてくれた?」
「はもりちゃんのついでだけどな?それと俺は褒める時は素直に褒めるからそんなに珍しくもねーよ」
影人がツンツンとした声色でそう言うものの、うたは影人が間接的だったとしても自分を褒めてくれた事が嬉しかった。
「そういえば、うたも幼稚園の頃習ってたけど……」
「あれは……」
「何かあったんですか?」
影人はあまり良い思い出では無さそうな両親の声色に一応何があったのかを聞いてみた。すると……
「発表会の日、うたはピアノよりも歌を優先しちゃってね。うたのピアノはそれきりなの」
「あー……。何となくその光景が目に浮かぶなぁ……」
影人もこれまでうたと接してきたイメージから彼女はピアノよりも歌で周りを惹きつけるような子だっただろうなと納得した。
「うたちゃんらしいね」
「そう?」
「そういえばその時の写真があったよな?」
それからうたの両親が一枚の写真を出すと影人達の前に出した。それを見ると影人は目を疑う。
「……あれ?多分この子が咲良さんだろ?……隣のこの子って……」
「これ、私だ!」
「ええっ!?」
ピンクのドレスを着た幼いうたの隣に映っていたのは同じく発表会に出ていた幼い頃のななだったのだ。
「……マジか。こんな偶然があったのかよ」
「そういえば、私……うたちゃんの事知ってる!!」
それからななはこの写真を撮った日にあった事を思い出すと語った。それは、ななの発表前の事。緊張して不安そうな顔をしていたななに話しかけたうた。うたが元気の無いななに元気を出すためのおまじないとしてウインクを見せた。それからなながうたのやったウインクをすると不思議と彼女の心に勇気が湧き上がる。
そして、うたに送り出される形でななは発表を最後までやり切った。それ以降、ななは不安になった時にうたから教わったウインクで気持ちをよく落ち着けるようになったのだ。
「あれ、ななちゃんだったんだ!?凄い凄い!運命の再会だ!!超キラッキランランだね!」
「今もあのおまじない、ずっと大事にしているよ!ありがとう!」
ななはそう言ってうたの前でウインクをしてみせる。うたは自分の言った事をずっと覚えてくれていたななを見て嬉しさが湧き上がった。
「本当!?嬉しいな!」
「……うたちゃんは優しいね」
そんな風に小さく言うなな。そして、二人が話す様子を見た影人は改めてうたの他人を元気にする才能を感じる事に。
「(……咲良さん、歌を歌った時もそうだけど、彼女の凄い所は、人を輝かせて自分も輝ける所。誰にも真似できないそれがあるからアイドルプリキュアに選ばれるのも必然だったってわけか)」
それからなながクリームソーダを飲み終わるとうたの母親へと声をかけ、そこにはもりもやってくる。
「ご馳走様でした」
「はーい!」
「ねぇ、ななちゃん。一緒にピアノ弾こ?」
はもりに誘われたななは二人でピアノの方に移動するとはもりが先程と同様に弾き始める。それを見たななは微笑むとそれに合わせるように多くの音を同時に出す両手での演奏を始め、それを聞いたその場の一同はその音の美しさに驚いた。
「……やっぱり、蒼風さんの演奏は今みたいにリラックスしている時が一番輝いてるな」
影人はこの時、ななの演奏が元に戻ったと確信。その証拠に自分の心はななのピアノを心地よく受け止めていたのだ。それから演奏が終わるとはもりが興奮したように声を上げる。
「ななちゃん凄い!」
「うんうん!お空がきらきら星で満開だよ!」
「うんうん!ななちゃん素敵!」
「そんな事……」
ななは姉妹揃って自分のピアノを称賛してくれる事に照れくさい気持ちがあった。するとうたの母親こと音がある事を思い出したように声を上げる。
「あ、もしかして今度の歓迎会。ななちゃんがピアノの弾くのかしら?」
「はい……」
「ななちゃんがピアノを弾くならはもりも観に行きたい!」
「はもり、静かにしてられる?」
「むーっ、できるもん!良いよね?お母さん!」
あれよ、あれよとうたやその家族の中で話が進む中、ななはやっぱり不安なのかうた達から見えないように不安そうな顔をしていた。
「……蒼風さん」
「影人君……」
「やっぱり不安か?」
「……うん」
ななは先程影人に言われた逃げるという手段も良いとは思っている。でもそれができるのはあくまでコンクールや発表とかが何も無い時に限られる。流石に発表の瞬間には逃げることはできない。
「………じゃあ、大切な誰かのために演奏をするっていうのはどう?新入生という不特定多数の相手を意識するんじゃなくて、例えば発表の時に観に来てくれている家族とかそれこそはもりちゃん達とかのためにやるとかさ」
「でも、それじゃあ……周りの期待を無視する事に……」
「別に良いじゃん。こういう時は何かしらの手法でピアノの演奏そのものを楽しまないと気持ちが保たないと思うよ?」
影人はまた落ち込みかけたななの気持ちを少しでも軽くしてあげようと提案する。そんな彼の提案を受けてななは躊躇。しかし、それでもななは良い演奏を届けるためならと最後には頷く事になった。
その日の夜。夕飯を食べ終わった影人の所に夢乃が来ると影人へと話しかけてきた。
「お兄ちゃん、今度のお兄ちゃんの中学校の新入生歓迎会、私も行っていい?」
「……別に構わないけど……誰かから誘われた?」
「うん。同じ班のはもりちゃんからさっき電話があって……。一緒に行きたいって言われててさ」
「そっか。……夢乃、こういう時に誘ってくれる良い友達ができて良かったな」
「……へ?」
影人はそう言って部屋に戻っていくと夢乃は影人が素直に自分のお願いを聞いてくれた事に驚く。普段ならまず間違いなく何かしらは言われていた所だからである。
「お兄ちゃん?何で?いつもなら何かしら言ってくるのに……。もしかして頭を打ったとか……」
「はぁ。別に良いだろ。今日夢乃とはもりちゃんが仲良いって知ったんだし折角の友達からのお誘いなんだから行けるなら行けば良い。そう思っただけ。これ以上の理由なんか無い」
そんな影人に夢乃は微笑むと影人へとお礼を言った。それから無事に迎えた歓迎会当日の事。
また次回もお楽しみに。