キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
影人達がズキューンキッスの正体に迫る中、チョッキリ団のアジトのバーでは、ザックリーがバーの椅子に座ってネットに違法アップロードされたズキューンキッスの動画を見ていた。
『『取り戻したい〜♪光の世界〜♪』』
そこにチョッキリーヌが背後からやってくるとそんなザックリーへと声をかける。
「ザックリー、何を観てるんだい?」
『その笑顔♪……』
するとザックリーは特に慌てる事無く動画を止めると振り返ってチョッキリーヌへと答えを返す。
「この前現れた奴らっす。キュアズキューンとキュアキッス」
ザックリーはカッティーとは違い、あくまでも平然とした様子で答えを返す。その態度を見たチョッキリーヌはカッティーとの違いを感じ取る。
「へぇ。アンタは私に見られても隠さないんだね。カッティーと違って」
「……別に。敵を知るために観てるだけっすから。前回は調査不足感が否めなかったですし。……アイドルプリキュアも俺の心には一ミリも刺さらねえっす」
ザックリーはカッティーとは違って特段アイドルプリキュアに魅了されてるわけでは無い。だからこそこうやって普通に会話をしている。加えて、彼の答えた納得する理由にチョッキリーヌはそれ以上言及する気は無くなった。
「ふ〜ん。ならさっさとキラキラをチョッキンしてきな」
「ザックリ了解!」
そんな話が入るとそこにスラッシューが歩いてきた。そんな彼女を見てチョッキリーヌは苛立ったような顔を見せる。
「チョッキリーヌ、何でそんなに苛立ったような顔を見せるのかしら?」
「別に。アンタがまた余計な真似をするんじゃないか心配してね」
「あははっ、余計な真似ね?いつも出撃しているザックリーが私に対してそう思うならともかく、普段から出撃せずにサボりにサボってるあなたが言うのかしら?」
スラッシューはいつものようにチョッキリーヌへと煽りの言葉を言うとザックリーへと話しかけた。
「ホント、身勝手な上司がいると部下は苦労するわね。心中お察しするわ」
「………」
スラッシューはそう言って去っていく。そんな過去にザックリーは無言になるしか無かった。尚、そんな彼を見てチョッキリーヌは改めて行くように声を荒げたのは余談である。
場面はまた戻って影人達の元へ。ズキューンキッスの正体を探す一同であるが、その片割れであるキュアズキューンの正体と思われる人物を後ろ姿として見つける。
「まさかあんなにそっくりな人がいるなんて」
「まさかまさか本当にズキューンの正体だとか!?」
「……わかんないけど、追いかけてみるしか無いよね!」
「聞いてみるしか無いですよ。“あなたがキュアズキューンですか?”って!」
うたやこころはようやく見つけたキュアズキューンの正体らしい人物に興奮しまくっていた。そんな中でレイはある事を言う。
「……あの人がキュアズキューンの正体なのかもっていうのは良いんだけどさ。この状況でつむぐさんが来たら不味いんじゃ……」
「あ、レイ。それを言ったらフラグに……」
「あの人がズキューンなのね!?」
そこにタイミングが良いのか悪いのか……バラバラに行動していたはずの貴島つむぐがやってきてしまう。
「「「つむぐさん!?」」」
このままでは不味い。ズキューンの正体に近い人物を見つけたまでは良いが、アイドルプリキュアと無関係の貴島に変身前の姿としてバレてしまうのは色々と問題だった。
とは言っても影人から見たら杞憂でしかないのだが、うた達視点ではそうでは無い。
「話を聞かなきゃ!」
「(大変だ……ズキューンの正体が……バレちゃうううっ!)」
貴島はズキューンの正体(?)を走って追いかけてしまう。うたを先頭に五人もその後を追いかけると貴島を止めようと後を追う。
そんな中、空中ではその光景を遠くから見つめる小さな影。そこにはプリルンとメロロンがいた。ただ、プリルンはうた達を見たにしてはかなり大人かった。まるで彼女達を知らないみたいに。
「あれは咲良うたメロ……影人も近くにいるみたいだし、何してるのメロ?」
「メロロン、どうしたプリ?」
「どうもしてないのメロ!」
「プリ?何を見てるプ……」
「見なくて良いのメロ!」
メロロンは慌てた様子でプリルンがうた達を見るのを止めさせる。その声色にはうたとプリルンが会う事に対しての怖さも混じっていた。少し前まで普通に会っていたのに。
「ねえたまはメロロンといるのメロ!折角ふたりっきりになったのメロ」
「プリ?どうしたプリ?プリルン、メロロンといつも一緒プリ!」
「ねえたま!」
プリルンが笑顔でメロロンの言葉に返す中、メロロンも嬉しそうな顔になる。するとプリルンのお腹が鳴り響いてしまう。
「……お腹空いたプリ」
「メロロンが何か持ってくるのメロ。ここで待ってるのメロ〜」
そんなプリルンへとご飯を持ってくるのは自分の役目とばかりにメロロンはどこかへと行ってしまう。そんな彼女をプリルンは手を振って見送るのだった。
同時刻。とうとう貴島はズキューンも思わしき人物へと接近。話しかけてしまった。
「あの!突然すみません!」
そして、それを止められなかったうた、なな、こころの三人は動揺した顔つきである。
「どうしよう……」
ただ、影人とレイは例によってあまり気にしていない様子だった。そして、貴島はズキューンの正体と思った人物へと質問する。
「……あなたが、あなたがキュアズキューンですよね?」
それを聞いてその人物が振り返る。その目元には鮮やかなアイカラーが入っており、瞳はキュアズキューンとは違ってキリッとした雰囲気を見せる。それはまるで男の目のよう……否、男の目であった。
「……ズキューン……って何?」
そこにいたのはキュアズキューン風の雰囲気を出した何かの衣装を着たただの一般人の男性だった。
「「「はぇえっ!?」」」
彼は役柄として女性の役をやるつもりだったのかかなり濃い口紅も塗ってあり、ヒールのある靴や長い髪等。後ろから見たらあたかも女性のように見えてしまうような雰囲気を出していたのである。加えて、女性が付けるようなキュアズキューン風の髪のリボンも紛らわしくした要因の一つだ。
「はぁ……。やっぱこうなるよな?」
「俺から見ても咲良さん達はちょっと慌て過ぎだとは思うな」
影人は案の定の答えに溜め息を漏らす。レイもかなり落ち着いた反応を見せていた。恐らく彼には追いかけていた人がキュアズキューンの変身者では無いと確信があったのだろう。
「そもそも俺達アイドルプリキュアの衣装はその殆どが変身後に出てくるやつだろ。変身前からキュアズキューンのリボンが出てる時点で何となく察せられるだろうが……」
アイドルプリキュアの衣装は基本的に変身時に後出しで装着される。だからこそうた達ならわかると思っていたのだが……。影人の買い被りに終わってしまった。
そんな中で人違いだとわかった貴島は慌てたような顔つきになると声をかけた男性へと謝った。
「すみません!人違いでした!」
「ふっ……さらばだ」
そう言って男性は背を向けて歩き始める。その去り際も何故か神々しさが溢れていた。そして、人違いだったのでキュアズキューンの正体は結局知られないまま。うたは思わず安堵の声を上げた。
「はぁ……本物じゃなくて良かったぁあ……」
「え?」
「じゃなくて残念だった……」
「「あはは……」」
うたが安堵のセリフを思わず大声で言ってしまったせいで貴島に驚きの目を向けられたが、どうにか誤魔化すと事なきを得た。
「だよね……良し、めげずにまた手分けしよう!」
「はーい!」
「じゃ、私はこっちを探すわ!」
「私達はあっちを探しまーす!」
そんなわけで貴島はまた一人、ズキューンキッスを探すべく走って行ってしまう。そして、アイドルプリキュアの関係者じゃ無い貴島がいなくなったタイミングで影人がジト目を向けた。
「影人君?」
「……取り敢えず色々とツッコミたいが、良いか?」
「あはは……お手柔らかに……」
「カゲ先輩、少しは手加減してくださいね?」
それから影人は幾ら何でもあんな見え見えの人違いに焦り過ぎだという事を三人へと言うことになる。加えて、最後にうたの自爆のせいで貴島から疑惑の目を向けられたのも良く無いと指摘するのだった。
同時刻。影人達五人がいた場所から少し離れた街の上空にザックリーが出てきた。
「今日のキラキラは……」
ザックリーがクラヤミンダーの素体を探すべく空中から見渡すと彼の視線の先にズキューンキッスを見つけるべく気合い十分で走る貴島が映る。
「頑張るぞー!ズキューンキッスの記事を読めば、きっと皆元気になるもんね!ブンブンブーン!」
そんな彼女から溢れ出るキラキラをザックリーは視認。勿論彼がそれを許すはずが無い。
「あ、ブンブンブ〜ン……って良いキラキラじゃねーか!」
ザックリーはノリツッコミ風にキラキラを指摘。早速彼女を素体とする事に決めた。
「お前のキラキラ、オーエス!」
「きゃああっ!?」
「はい、ザックリ行くぜ!」
ザックリーがいつも通り、彼女から出てきた胸のリボンを真っ二つに切ってしまうと水晶と素体の人間を合わせる。
「来い!クラヤミンダー!世界中をクラクラの真っ暗闇にしやがれ!はぁい!」
「クラヤミン……ダ!」
今回出てきたクラヤミンダーはカメラから手足や緑の鋏、リーゼントヘアが出ているような感じである。
その頃、上空でメロロンを待っていたプリルンはいつもの如くブルっとした感覚を感じ取る。
「ブルっと来たプリ!?」
ただ、周りに誰もいない中で彼女は一目散にその感覚が示す方向へと向かうのだった。
そして、同時刻。影人達五人はクラヤミンダーが出てきた事など梅雨知らずと言った感じで普通にズキューンキッス捜索を続けていた。
普段ならプリルンがいるので彼女の反応がクラヤミンダーを知るトリガーとなる。しかし、今はプリルンが帰ってきていないためにクラヤミンダーが出てきても影人達には空模様が変わってしまうまで知る手段が無いのだ。
「ブンブン、ブンブン!」
影人達は貴島と再度別れてから今度は商店街を探す事に決めた。そんな中でうたは先程の貴島のように四つん這いになると地面に顔を近づけて犬のように匂いを探る事になる。
「ズキューン……どこ?」
「うた先輩、かなり怪しいですよ?」
「完全に貴島さんのやり方を始めちゃったなぁ……」
「ブンブン、ブンブン……」
「何も手掛かりが無いと難しいよね」
何だかんだここまでずっとズキューンキッスを捜索していたが、未だに手掛かりの一つすら無い。このままではズキューンキッスを見つける事はかなり困難と言わざるを得ない。
「じゃあこれ!どんな手掛かりも絶対に見落とさないようにしなきゃ!」
そう言って出したのはプリルンのトイカメラである。そのままうたは手掛かりになりそうな街の風景を片っ端から撮り始めた。
「咲良さん、闇雲に撮ってもあんまり意味は……」
こういう写真で痕跡を探る系の行為は痕跡その物が無いとあまり意味が無い。勿論、写真を見て偶々痕跡を見つける事に繋がることもあるが……闇雲に撮ってるだけで何も見つからなければそれはただの迷惑行為である。
「どこ〜どこ♪どこ〜どこ♪ズキューンを見つけちゃおう♪」
「あのなぁ。そういう事したって偶々ズキューンやキッスが通りかかる所を撮れないと意味が……」
影人がそう言った瞬間だった。突如としてうたの顔つきが凍りつくとカメラの写真を凝視する。
「……ん?んんっ!?」
うたはその光景に目を疑った。そのくらい衝撃的な物だったのである。そして、そんな彼女を見たレイが話しかけようとした。
「咲良さん?どうし……」
「え?え?プリルン!!」
突如としてここにはいないはずのプリルンの名前を叫んだうたは走り出す。それを聞いて影人はすぐに空を確認。……無情にも彼の視界には暗い空が映ってしまった。うたが叫んだプリルンの名前、走り出す彼女。
その情報のみで一瞬にして状況を察知。影人は咄嗟にうたがいなくなった路地の方へと走り出す。
「ヤバい!今行ったら!」
「うたちゃん!!」
「カゲ先輩まで!?」
「俺達も行くぞ!」
うた、影人の順で二人がとある路地へと入るように走っていく。それを見てレイは二人を追いかけながらななやこころにも行くように促す。
うたが何故走り出したのか……。その理由は単純。うたが先程カメラで撮った写真に映っていたのは……今自分達が走る路地に入っていくプリルンがいたからだった。
「プリルン!帰ってきてたの!?」
うたの視線の先にはプリルンがいた。しかし、プリルンはうたの声を聞いてもまるで聞こえてないとばかりに一目散にどこかへと行ってしまう。
その行動をうたの後ろから追跡する影人が目撃。彼は嫌な予感を感じてしまった。
「(やっぱりおかしい……。咲良さんの声でも反応しないなんて。まるで、咲良さんと会っていた記憶がゴッソリ抜け落ちたような……まさか……本当にそうなのか!?)」
影人にはある予感があった。朝の時点ではその予感を信じたく無いという理由で拒絶頭の中から追い出していた。……しかし、今のプリルンの反応を見てその考えがまた過ってしまう。
「待ってプリルン!」
「(だとしたら余計に不味い。予感が正しいにしても間違ってるにしても、今咲良さんとプリルンを会わせたら……)」
影人は絶対に二人を会わせたらダメだと急いでうたへと追いつくべく加速する。そんな二人を更に後ろから追いかけるなな、こころ、レイの三人は影人の目の色が変わったと感じ取っていた。
「カゲ先輩、速っ!?うた先輩を止めようとしている?」
「こころちゃん、レイ君……あれって……」
そう言って二人はななは二人に声をかけると三人で空を見上げる。そこには先程影人が見たクラヤミンダーが出た際の暗い空を認識した。
「この空の色……クラヤミンダー!?」
「まさか、影人が隠してるズキューンキッスの正体って……」
レイは先程のうたの叫びと影人の行動から彼も自力でズキューンキッスの正体について心当たりを付けてしまう。そんな中でプリルンが止まったのは路地裏にある駐車場だった。
そこにうたが辿り着くとその隣に追いついた影人も来た。影人はうたを何としてでも止めようとするが、その前にうたはプリルンへと話しかけてしまった。
「プリルン!プリルンだよね?」
「……プリ?」
そのタイミングでようやくプリルンが自分を呼ぶ声に気がつくが、そこにクラヤミンダーが降り立ってしまう。
「クラヤミンダー!」
立ち位置的にはクラヤミンダーを一番奥にして影人とうたの場所とクラヤミンダーの場所の中間ぐらいの所にプリルンはいた。そのため、うたは慌てて声をかける。
「プリルン、危ないよ!そんな所にいないで早く逃げて!」
「咲良さん、向こうで変身するぞ」
影人はうたの手を掴むと無理にでも連れて行こうとする。その挙動にうたは困惑。何故影人が自分を連れて行こうとするかがわからなかった。そして、それは後から追いついたななやこころも同じ。
「カゲ先輩、何やってるんですか」
「うたちゃんを連れて行こうとしてる?」
「ッ……蒼風さん、こころ、ここじゃなくて別の所で変身してから出直すぞ」
「そんな必要無いよ!早くプリルンを助けなきゃ!
影人の周りくどい言葉にうたはそれでは手遅れになると言わんばかりにパニックの声を上げる。そんな時だった。プリルンが声を上げたのは。
「キュアアイドルは……プリルンが守るプリ!」
「「「「……え?」」」」
プリルンの宣言に影人を除く四人が困惑したような声を上げる。そこに離れていたメロロンが到着した。
「ねえたま!待っててって言ったメロ!……メロ!」
「ッ……」
メロロンがプリルンの後ろを見ると完全に自分達の姿を影人達五人に見られていると認識。それを受けて影人は申し訳なさそうに俯いた。
「行くプリ!」
ただ、プリルンの決意は待ってくれない。ここまで来てしまったらやるしか無かった。
「……メロ!」
メロロンはプリルンの隣で頷くとある覚悟を固めた。……例え自分達と正体がバレるとしても、プリルンの願いを叶えると。そして、二人の姿は光に包まれる。
直後、プリルンとメロロンとは別の二人の大人っぽい掛け声がその場に響き渡ると同時に光はより一層強くなるのだった。
また次回もお楽しみに。