キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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失意のうた 帰還した田中との情報整理

プリルンとメロロンの二人と再開した翌日。影人達五人は普通に学校……なのだが、やはり昨日の事を思わずにはいられなかった。

 

「俺様は犬である。名前はもうある……」

 

今は国語の授業であり、クラスの生徒が席順で教科書を読み進める音読の時間である。

 

「(プリルンがキュアズキューンで、メロロンがキュアキッスだったなんて。凄っごくキラッキランランなはずなのに……)」

 

しかし、ただでさえいつも通りでもあまり授業に集中できていないうた。そこにプリルンの記憶喪失の件が絡んでしまうともうダメだった。

 

「(プリルン……何で……)」

 

うたの脳内はプリルンの事でいっぱいであり、目には涙が浮かんでいる。授業などまともに聞けてない状態だった。

 

「じゃあ続きを……咲良さん」

 

担任の富士見からの言葉に次はうたが読む番になってしまう。ただ、プリルンの事で脳内がいっぱいのうたはその声に反応できない。

 

「(咲良さん……って、何やってんだ。プリルンの事は黙ってた俺にも責任はあるけど……今は授業中……)」

 

影人はうたと隣の席なので彼女へと声をかけようとすると既に前の席である坂上が小声で声をかけていた。

 

「うた、指されてるよ」

 

だが坂上の声かけも虚しく、彼女の耳には届いていなかった。それどころか立ち上がると大声で叫んでしまう始末である。

 

「何でぇええっ!」

 

「えっ!?何でって言われても……」

 

富士見の困惑した声にクラスメイト達からの笑い声が響く。ただ、うたの友達である東中や新橋辺りはうたの様子が変だとわかっていたので坂上へと首を横に振るそぶりを見せて一旦そっとする方向で落ち着いた。

 

「(……はぁ。こうなるくらいならちゃんと共有しておけば良かったか)」

 

影人は今回のプリルンの記憶喪失によるショックは自分の判断ミスだと考えてしまう。うたの席からそこそこ離れているななやレイも今の彼女は見ていられないと言った目を向けている。

 

それからその日の学校が終わって放課後。……一同はうたの家であるグリッターに来ている。ここ暫くはアカペラ練習も上手くやれていない。

 

何しろ個人練習は可能で指導の先生達から意見を聞く事はできてもリードボーカルの役であるプリルンとボイスパーカッションのメロロンが抜けた状態。歌の主役とリズムキープを主に担う役割の二人がいないのだ。

 

加えて田中も家を留守にしているので練習する場所も変えないといけない。幸いにもレイの実家の事務所が空いている時間を使ってトレーニング用の部屋を貸し出してくれているからどうにか練習自体はできている。

 

「あのズキューンとキッスがプリルンとメロロンだったなんてビックリです」

 

「本当、プリルンはどうしてうたちゃんの事を……」

 

ななとこころの二人がカウンター席に座って落ち込んだような顔をしている。うたの方はいつもの元気さはどこへやらと言わんばかりに寂しさを紛らわせるべくきゅーたろうに話しかけている。

 

「ねえ、きゅーちゃん。プリルンがキュアアイドルの事だけ覚えているのに私の事だけ忘れてるなんておかしいよね?」

 

「ワン!ワン!」

 

「だよね、だよね〜!」

 

うたの言葉にきゅーたろうは同意するかのようにして吠える形で返す。そんな中、グリッターのドアが開くとそこにはレイと夢乃のマネージャーである姫野。更に影人が来ていた。

 

「カゲ先輩」

 

「姫野さん」

 

「レイ君も……」

 

「事情はお聞きしてます。……プリルンの記憶が失われてるなんて」

 

三人の中で一番最初に口を開いたのは姫野だ。彼女はあまり感情を大きく動かしているわけでは無かったが、残念そうな声色である。恐らく、うた達が落ち込んだ状態なので少しでも自分の方の感情は抑えているのだろう。

 

「姫野さん、すみません……田中さんがいない中でアカペラ練習とかの指揮やら色々と」

 

「いえ……田中さんがいないからこそ私が穴埋めをしないといけません。それに、プリルンやメロロンがいないからと言ってアイドルプリキュアと夢乃さんことドリーム・アイの折角のコラボを無くすのは勿体なさ過ぎますから」

 

とは言っても歌の軸に当たる役割の二人が抜けてはメンバー構成も考え直さないといけない。それはつまり、役割を変えて四人でも歌えるように調整するという事だ。

 

「今回のアカペラのアレンジャー……。つまり、原曲からアレンジを担当されていた先生。山上さんにもどうにか五人構成で歌えないか打診はしています」

 

「でも、正直今のうた達がそれをやるのは中々キツいですよ?技術的にも……精神的にも」

 

まず一にもニにもプリルンとメロロンの問題を解決、若しくはうた達全員が納得する形に収めない事にはこれから二人が抜けると仮定しても上手く歌えないのは明白。特にプリルンから直接忘れられた事実を突きつけられたうたへの精神的ダメージは計り知れないのだ。

 

「……皆、ごめん」

 

そう言って頭を下げたのは影人である。それを見てうた達その場にいた一同はいきなり謝罪した影人へと視線を集めた。

 

「実は俺、プリルンとメロロンがキュアズキューン、キュアキッスだった事……正体探しの前の時点で知ってたんだ」

 

「えっ?」

 

「具体的にはいつですか?」

 

「……こころとのデートの日。クラヤミンダーと戦った後だ」

 

「嘘、いつの間にクラヤミンダー出てたの!?」

 

「全然気が付かなかった……」

 

うたやななはあの時デートの場所に駆けつけなかったが、そもそも二人は気がつく事すらできなかったのだ。クラヤミンダーが出現したタイミング的に二人とも室内であったのとプリルン不在で感知ができなかった事が要因である。

 

「それでズキューンやキッスと直接話して確信が得られて、本人達からも裏を取れたんだ。……その時に、プリルンの様子がおかしい事には気が付いてた」

 

影人はそれからその時のプリルンの様子から見て記憶喪失の類になってるのではないのかと睨んでいた。しかし、ズキューンやキッスとの約束で皆に正体やこの予感をちゃんと言えなかった事を謝罪する事になる。

 

「ごめん。もっと早く言ってたら……あの時のショックを小さくできたかもしれないのに……。少なくとも、会う時に記憶喪失している心づもりを持たせられたのに……」

 

影人はまた頭を下げる。そこにこころが影人の前に立つと声をかけた。その近くにはななもいる。うたも少し距離があったが、影人を見ていた。

 

「頭を上げてください。先輩はプリルンやメロロンとの約束を守ろうとしてたんです。何も後ろめたい事はしてませんよ」

 

「うん。それにきっと、うたちゃんの事だから影人君から言われたとしても同じようにショックを受けたと思う」

 

「下手したら直接見てない分、影人の言葉を信じなくて余計に事態が悪化していたリスクもあったんだ。何にせよ、お前を責める人はここにはいないよ」

 

三人は影人に非は無いと話す。影人はそれからうたの方を向くと彼女も大丈夫だと言わんばかりに頷いた。

 

「……皆、黙ってた事。許してくれてありがと……」

 

「むしろ、私達が気がついて相談に乗れば良かった話です。ズキューンキッスを見つける事に気を取られてカゲ先輩の変化に気が付けなかったのは私の責任でもあります」

 

ひとまず、影人は黙っていた事をうた達に許してもらうとそこにグリッターの扉が開く音がすると一人の男性の声が聞こえる。

 

「……なるほど、そういう事でしたか……」

 

そこに来たのは髪はボサボサで葉っぱが付き、スーツもボロボロ。顔がゲッソリとしつつ長めの木の棒を杖がわりにして歩いてきた男性である。

 

その姿はまるで数日間ご飯をまともに食べられず、碌に休む事なく歩いてきた旅人の如き姿であった。当然うた達女子組はきゅーたろうと共に恐怖から悲鳴に近い声をあげる。

 

「「「誰ぇえっ!?」」」

 

「「………」」

 

「その声、もしかして田中さんですか!?」

 

ただ影人やレイは何となくこの男性の正体を察していたのと、姫野が慌てて声をかけたためにこのボロボロの男性が田中だと判明するまでに時間は掛からなかった。

 

「ええ、ただいま戻りました……。私です」

 

「もう、一体何をしてたらそうなったんですか……。ひとまず、うたさん。お風呂を貸してもらっても大丈夫ですか?」

 

「え?あ、はい」

 

「ご安心を、浴槽の方は使いません。田中さんは妖精になれますし、シャワーと湯おけを貸してもらえれば十分です」

 

それから姫野が田中に肩を貸す形で彼と共にうたに連れられてお風呂の方に向かっていく。

 

「姫野さん、こういう時の切り替え早いですね」

 

「まさに仕事人って感じ」

 

「取り敢えず、詳しい話はお風呂が終わってからになりそうだな」

 

そんな中、影人はスマホを取り出すとある人物に電話をかける。一応田中が帰ってきた上でマネージャーの姫野がいるという事で彼女(・・)もこの場に必要だと感じたのである。

 

「……夢乃、今からグリッターに来れる?下手したら今後に関わる重大な内容になる」

 

『うん、わかった。今から家を出て向かうね』

 

影人が呼んだのはアイドルプリキュアの一般人サイドとしての関係者、夢乃である。

 

それから暫くして。夢乃がグリッターに到着し、田中がシャワーから出てきて話ができる状況になったのでグリッター二階にあるスペースで話をする事になった。ただ、今回は話をする人数が多いので影人とレイの男子組、またマネージャーの姫野は座敷には上がらずに立った状態で田中からの話を受ける事になる。

 

「それで田中さん。キラキランドに行って何かわかりましたか?」

 

「えぇ、向こうで調べた結果……。もう皆さんもご存知だと思いますが、プリルンはうたさんの事を忘れてしまったのです」

 

それを聞いて女子組四人は絶句。影人やレイも無言になってしまう。夢乃が改めて問うと更に田中は絶望的な事を言い出した。

 

「それって、どこからどこまでの範囲ですか?」

 

「……残念ながら、うたさんに出会ってからの思い出全てです。更に言えば、無くした思い出はもう二度と蘇る事は無いでしょう」

 

「そんな……」

 

「………」

 

これにより、改めてプリルンがうた達の記憶を全て失った事を一同は痛感させられる。そしてもう記憶が二度と戻らないという事はプリルンとここまで築いてきた友達としての関係がリセットされて、思い出す事もできないという事だ。

 

「何で、何でですか!うた先輩達が……折角ここまで築いてきた絆が……何で」

 

夢乃は立ち上がると珍しく声を荒げる。それだけ彼女もプリルンを大事にしていたという事だろう。

 

「夢乃、落ち着け」

 

「お兄ちゃん、何で止めるの!」

 

「……今田中さんに八つ当たりしたって状況は解決しない。それに、こうなって一番辛いのは咲良さんだ」

 

夢乃の動転に影人は夢乃へと戒めの言葉をかける。それを聞いて夢乃は田中に当たるのは良くないと思い直すと力無く元の場所に座り込んだ。

 

「……すみません、取り乱しました」

 

「いえ……」

 

夢乃はまだ小学生。しかも本来なら反抗期に入るような年齢だ。こういう時の感情のセーブは中々難しい年頃である。影人からの指導のお陰である程度はセーブできるものの、その分セーブし切れなかった時の反動も凄まじい。影人がキッスに洗脳された時に彼へと怒ったのもそれが原因だ。

 

「それにしても、キラキランドがあそこまで酷い事になっていたとは……」

 

次に田中が話したのはキラキランドのことである。田中は今回、荒廃してから初めてキラキランドを訪れたらしい。ただ、あまりの荒廃しようにショックを受けてあのボロボロ状態になったそうだ。

 

「それであんな姿に……」

 

「大変だったんですね」

 

それから田中は目の前に置かれたパンと牛乳を食すとどうにか栄養の問題は解決した。

 

「でも、プリルン達の事は女王様に聞きました」

 

その瞬間、うたは田中の話に食いつくと自自身が手を置いた丸いテーブルごと前のめりになりつつ問いかける。

 

「田中さん!」

 

「うっ!?」

 

「プリルンはどうして私の事を忘れちゃったんですか!?何で!?」

 

「むぐうっ!?」

 

尚、うたが勢いよくテーブルを押し出すものだから田中はそれを腹にまともに喰らうとダメージを受けた様子となる。田中はどうにか食べたものを吐かずに耐えると話を続けた。

 

「二人はプリキュアになる時、伝説のハートキラリロックの力を使ったのです」

 

「ハートキラリロック?」

 

うたの問いに一旦説明のために一同は場所を変える事に。そして移動してきたのは前にプリルンとメロロンがデートした時に訪れたハート型のオブジェクトのある場所だった。

 

「ここって、誓いのスポットですよね?カップルが永遠の愛を誓うっていう」

 

「えぇ。しかし、元々の言い伝えは二人それぞれの一番大切な物を伝説のハートキラリロックに封印すれば……どんな願いも叶えられるという事です」

 

「なるほど、って事は……」

 

「レイさんの予想通り、プリルンはキュアアイドルを守りたいという願いを叶えるため……一番大事な物、うたさんとの思い出を封印したのです」

 

すると影人達の脳裏にプリルンと再開した時の記憶が蘇る。あの時のプリルンは明らかに異常だった。何しろ話しかけても首を傾げられるばかりで、しかも“初めまして”とまで言われたのである。プリルンと友達になって楽しく過ごした記憶を持つうた達からしたら辛すぎるだろう。

 

「それでプリルンはうたちゃんの事を……」

 

「その結果……残念ですが影人君、ななさん、こころさんを始めとした皆さんとの記憶も……」

 

これは仕方ない所だろう。何しろ、ここにいる全員がプリルンと知り合って話をしたのは彼女とうたが出会ったあの日が全てのキッカケである。

 

消滅した記憶の一番始めの部分がうたとの出会いなので、それ以降の思い出は全て消え去っても仕方ない。

 

「そうですよね……」

 

「また、二人それぞれの大事な物が必要ですから……」

 

「ッ、メロちゃんも何かを封印して……」

 

「……恐らくは」

 

「一体何を封印したんですか!?」

 

田中の言葉にこころが問いかけるものの、田中にそれはわからなかった。何しろ、女王ことピカリーネはメロロンが封印した事に関しては田中へと伝えなかったのだから。

 

「……女王様は“いずれ明らかになる”としか言いませんでしたし、結局わからず終いでした」

 

その言葉に影人はメロロンが自分に取るあの態度がもしかすると封印と何か関係があるのではないのかと思い至る。更に言えばメロロンは今の所、プリルンとは違って代償が表面化しているようには見えない。

 

だから何かはわからないが、禁忌に触れる行動があるのだと影人は考える事になる。

 

「良し!とにかくプリルン達と話してみよう!」

 

「そうだな。あの時は気持ちが動転してその間に先に行ってしまった。けど、まずは面と向かって話をしてみないといけない」

 

何をするにしてもまずは情報が必要だ。田中の聞いた話もピカリーネからという所謂人づての情報でしか無い。

 

「でも、プリルン達はどこにいるのでしょうか?」

 

こころの言葉に一同は考え込む。そんな中で影人は妖精仲間の姫野へと質問する。

 

「姫野さんは何かわかりそうですか?」

 

「……すみません、私は田中さん程プリルン達と会っていた時間が長くないので……」

 

「だったら後は……」

 

「「「「「チラッ」」」」」

 

それからレイや姫野以外の視線が田中へと集まる。やはりこういう時の田中の安心感が見て取れるだろう。

 

「……え?」

 

田中は少し悩んでから一つ思い当たった節があるためにその場所へと行くべく先導して移動。影人達もその後に着いて行くのだった。




また次回もお楽しみに。
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