キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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記憶を取り戻すための思い出のピクニック

それからあっという間に日付は経過。プリルンに記憶を思い出してもらうためのピクニックの日となった。

 

「わぁ……。お空キラッキランラン!」

 

うたは空が綺麗な晴れ模様になってくれた事が嬉しく、思わず両手を空に掲げる。

 

今日この場に来ているのは影人、うた、なな、こころの四人である。尚、レイはまたいつもの如く家の予定が原因でピクニックに参加できなくなってしまった。

 

更に本来なら夢乃も参加するはずだった今回のピクニックだったものの、まさかの夢乃がうっかり作文の宿題をやる事を失念していたらしく。提出期限もあと数日に迫っているので今日はそれに対処せざるを得なくなってしまったのだ。

 

それに加えて姫野はいつもの如く、仕事に追われて来ることができず。本来の予定よりも人数が少ない状態でやらざるを得なかった。

 

「咲良さん、ちゃんとプリルンとメロロン用のポシェットを持ってきたよな?」

 

「勿論だよ!」

 

四人共登山用の服装を揃えていた。普通なら今の時期は半袖だが、山の中に入るとなると肌は極力見せない方が良い。そのための長袖スタイルである。

 

「例の作戦は?」

 

「準備オッケーだよ」

 

「プリルンの記憶を取り戻すのが一番だけど、折角のピクニックだ。楽しい思い出にしよう」

 

するとそこに登山用のそこそこ大きめなリュックを背負った田中が歩いて来る。

 

「おはようございます」

 

「皆、おはようプリ!」

 

「「「「おはよう!」」」」

 

プリルンや田中といつもの挨拶をする中、メロロンは多少面倒くさそうな顔をしていた。

 

「メロロンも来てくれたんだね!」

 

「メロロンはねえたまといつも一緒なのメロ」

 

「ま、仕方ないでも来てくれて良かった」

 

影人はメロロンにそう言うとうたとプリルンの騒がしい系コンビの二人が元気十分な様子を見せる。うたは腕をブンブンと回し、プリルンはバタバタと手足を動かす。

 

「よ〜し、今日は思いっきり楽しもうね!」

 

「プリ!」

 

「メロ……」

 

「それじゃあ田中さん、行ってきますね」

 

「出発ー!」

 

「「おー!」」

 

「プリー!」

 

それから中学生組の四人が登山道を登り始める中、田中だけは何故かリュックを背負った状態のまま登り始めなかった。完全に田中も登山に参加すると思っていたプリルンは質問する。

 

「そういえば、どうしてタナカーンは一緒に行かないプリ?」

 

「田中さんは別の道から登山したいんだと。一応この山には登山道が幾つかあるし、その辺りは田中さんの気持ちを尊重しような」

 

「プリ、よくわかんないけどわかったプリ!」

 

影人とプリルンがやり取りをして気を引いている間にうた達三人はチラリと後ろを見て田中とアイコンタクトを取る。それから暫くはごく普通の山登りタイムだ。

 

「ふわぁあっ!気持ち良い〜!」

 

「これ、楽ちんプリ!」

 

「ねえたまとギュギュ、メロ」

 

プリルンとメロロンは嬉しそうにうたが襷掛けにしたポシェットの乗り心地を堪能。それを聞いたうたは早速話題にするチャンスと声をかける。

 

「プリルン、このポシェットに見覚えない?」

 

このポシェットは前にお泊まり会をした時にプリルンの分の人形が無かったので彼女のために作った物だった。

 

「初めて見たプリ!凄っごく可愛いプリ!」

 

「覚えてないかぁ……」

 

プリルンからの反応にうた、なな、こころは揃ってガッカリとしたような顔つきになってしまう。やはりプリルンはこのポシェットの事もしっかりと忘れてしまっているようだ。

 

「プリ、川があるプリ!」

 

プリルンが指差す先には川が流れており、そこには橋がかかっている。そんな中で四人は目線を合わせると影人が通信用のトランシーバーを構えた。それから影人がそれに向けて話しかけた。

 

「お願いします」

 

『了解』

 

トランシーバーから何故か田中の返事が返ってくると四人は橋に差し掛かる。するとプリルンは川が透き通っているのを見て目をキラキラさせていた。

 

「綺麗プリ……。川の中がよく見えるプリ!」

 

「あっ、アレは何だ!?」

 

そんな時、うたが声を上げる。プリルンとメロロンはそれに釣られるとうたが見ている川の上流の方へと視線を移す。

 

そこにあったのは巨大な桃……に見せかけた桃の形に削り、ピンク色に塗った巨大発泡スチロールである。

 

製作者は影人、レイ、田中の男三人衆。水に長時間浮かぶ事は既に検証済みのため、何かにぶつからない限りは沈む心配は無い。

 

また、事前調査でこの川の流れるスピードなら桃が川の流れにしっかり沿ってくれる事もわかっている。だからこそ最初に田中を別働隊として動かしたのだ。

 

「「「「ばーん!」」」」

 

「あれはまさかの!?」

 

「「「桃がドンブラコ!」」」

 

尚、“ドンブラコ”の台詞は影人もしっかり言っている。最初は遠慮した彼だったが、プリルンの記憶を戻すために強制参加となったのだ。

 

「あんなに大きな桃、拾うしか無い!」

 

それからうたは大急ぎで履いていた靴を脱ぐと躊躇なく川へと飛び込む。幸いにも、川の深さは大した事無いので膝下ぐらいが浸かる程度だ。

 

「手伝うプリ!」

 

「ねえたまがそう言うなら仕方ないのメロ」

 

この川の安全性もちゃんと下調べ済み。橋の付近の深さは割と浅い事もわかっていたので躊躇なく降りても問題無く取りに行ける。

 

それから三人がかりで作られた巨大な桃を持ち上げる。ちなみに、発泡スチロールのイメージとして水に浮かぶから軽いと思うだろう。ただ、物によっては建築用に使う発泡スチロールは強度確保のために空気の密度が低いので重さもそれなりに出てくる。

 

ただし、それも水にはちゃんと浮くので桃としては問題無く機能するのだ。

 

それはさておき、発泡スチロールの密度の関係で桃はそこそこ重い。うた、プリルン、メロロンの三人がかりでやっと持ち上げられるくらいである。

 

「(もう少し軽い物も作れたけど、思い出の引き出しをこじ開けるならリアルのMOMOの重さに近づけた方が良い。わざわざ田中さんにお願いして田中さんのMOMOの感じを参考にさせてもらったからな)」

 

「(これをやれば初めて会った時の事を思い出すかもしれない!)」

 

影人やうたはそんな思考もあってMOMO作戦を実行し、うたがプリルンへと質問する。

 

「プリルン、何か思い出さない?」

 

「プリ?思い出すプリ?……プリー……」

 

それからプリルンが考え込むような顔つきを見せる。そんな彼女をジッと見るうた。このままプリルンが思い出せば大成功……だが、うたの気持ちとは裏腹にプリルンは苦しそうな声を上げ始める。

 

「思い……重い……」

 

「もしかして思い出した!?」

 

するとそれを橋の上から見ていたななやこころが異変を察知。慌ててうたへと声をかける。

 

「あれ?うたちゃん!?」

 

「うた先輩、もう少し力を入れてあげてください!」

 

「え?」

 

「重い……重いプリ……」

 

「あれ!?」

 

「ねえたま、大丈夫メロ!?」

 

どうやらうたは思わずプリルンの方にMOMOの重量を預けてしまったらしく、プリルンは今にもMOMOに押し潰されそうになってしまう。結局、プリルンはMOMOを見ても思い出す事はできなかった。

 

「お花、可愛いプリ!」

 

プリルンとメロロンが山に咲く花に気を取られている間に四人は輪になる形で話をする。

 

「MOMOでも効果無しだったか。これ、何だったら思い出すんだろうな?」

 

「でも、諦めるにはまだ早いですよ」

 

「うん。思い出すキッカケはどこかにきっとある」

 

「まだまだここからだよ!」

 

ひとまず、MOMOをそのまま置いておくとゴミを不法投棄したと言われかねないので回収は田中に任せて次の思い出だ。

 

「ほら、プリルン。見て!」

 

うたが出したのはプリルンのために作ったキュアアイドルの衣装である。それを見たプリルンはキュアアイドル関連の事なのですぐに反応した。

 

「キュアアイドルの服プリ!」

 

「そうだよ!誰かさんにピッタリのサイズだよ」

 

「本当プリ!」

 

プリルンの反応を見て一同はプリルンが記憶を思い出せたと感じる……が、やはり現実はなかなか上手くいかないものだ。

 

「メロロンにピッタリプリ!」

 

「メロ!?何でメロ!?」

 

まさかのプリルンは差し出された服がメロロンの服だと勘違い。メロロンは慌てる中、そこから服を渡そうとするプリルンとそれから逃げるメロロンの構図ができるまであっという間だった。

 

「ねえたま、違うメロ!メロロンじゃ無いのメロ〜!」

 

「着てみるプリ!」

 

「……ダメですね、これ」

 

「確かにサイズ的に見たらメロロンの物に見えなくも無いけど……話の流れで普通わかると思うんだけどなぁ」

 

影人はプリルンの鈍感さに思わず呆れたような顔つきになってしまう。衣装で思い出す作戦も失敗。うたはそれならとばかりに偶々近くを通りかかったある人物を連れてきた。

 

「プリルン、この人は?」

 

「僕くりきゅうただよ」

 

それはかつてプリルンと影人、うたが初めて顔を合わせた日にプリキュアを探していた所に出会った力士。くりきゅうたである。彼はその日にプリルンが一気食いしてしまったホットドッグを食べながらそこにいた。

 

「栗……思い出したプリ!」

 

「「おお!思い出せたの!?」」

 

ななやこころが嬉しそうな顔つきになる中、プリルンが出したのは本物の栗である。

 

「おやつに栗を持ってきていたプリ!」

 

「ズコーッ!?」

 

影人はまた期待を裏切るプリルンの言動に滑ってしまう。それからまさかのプリルンが栗をプレゼントする事になる。

 

「あげるプリ!」

 

「ありがとう。じゃあ、いただきます」

 

「くりきゅうたが、栗食った……」

 

「そんな事言ってる場合かよ……」

 

プリルンから栗を貰ったくりきゅうたは早速その栗を生で食べる事になる。

 

「これもダメみたい」

 

「というか、栗って生で食べるのは大丈夫だったっけ?」

 

影人がそれを不安視する。一応不可能では無いが、独特な渋みがかなり強いのであまりオススメはしない。何にせよ、これも失敗だ。

 

「ぐぬぬ……だったら!」

 

それからうたが出したのはPretty_Holicで発売されていたリップである。まだ前の物ではあるが、丁度Pretty_HolicのCM出演の時に使った物のためにCM撮影を連想できるかに思えた。

 

「Pretty_Holicのリップだよ!」

 

「面白いプリ!」

 

「……あれ?」

 

うたはリップを塗ってプリルンへと見せる……が、プリルンの反応は面白い物を見る目だった。

 

「うた先輩、はみ出てます」

 

「うたちゃん……」

 

「せめて自力で無理だってわかってるなら手鏡くらいは持ってこいよ……」

 

うたはCMの時のNGカットと同じで思いっきりリップがはみ出してしまっていた。そのため一同から呆れられてしまう始末である。

 

「……だったら、皆。あんまり合わせられないかもだけどやるよ」

 

「オッケー!」

 

「うん!」

 

「任せてください」

 

それから四人が並ぶと影人がリズムを取るようにして手を叩きつつ声をかける。

 

「ワン、ツー、ワン、ツー、スリー!」

 

「「「「誰もが目を奪われていく♪君は完璧で究極のアイドル♪金輪際現れない〜♪一番星の生まれ変わり♪」」」」

 

影人達はリードのプリルン及び、ボイパのメロロン抜きという圧倒的に合わせづらい状況下になりながらも影人のベースを軸にどうにかアカペラを合わせる。それを聞いたプリルンは目を輝かせた。

 

「プリ〜。プリルンも歌った事ある曲プリ!」

 

「本当!?じゃあ、もっと続けるね」

 

うたはプリルンの好反応に嬉しそうにすると更に歌を続ける。しかし、やはりベースだけでは不十分であるのかリズムキープが上手くいかずにコーラスの三人が崩れ始めてしまう。

 

「……仕方ないのメロ」

 

「「「「その笑顔で愛してるで誰も彼も虜にしていく♪その瞳がその言葉が嘘でもそれは完全なアイ♪」」」」

 

するとメロロンがバラバラになりそうになった所にボイパで参戦。メロロンのリズムキープのおかげでどうにか歌は合わさり、最後まで歌い切る事ができた。

 

「プリ!凄く綺麗な歌プリ!プリルンも一緒に歌いたいプリ」

 

「思い出してくれた?プリルンも前にこの歌を一緒に歌っていたんだよ」

 

「……プリ?メロロン、プリルンもこの歌をこの人達と歌っていたのプリ?」

 

一瞬の光明が見えたのも束の間、どうやらプリルンが覚えていたのはあくまで田中の家を占領した際にメロロンと一緒に歌った時の事を思い出しただけであった。そのために四人はこれも失敗だと判断すると全員揃って力無く岩へとうつ伏せになってしまう。

 

「これでもダメ……」

 

「もう打つ手無しですよ……」

 

「これが一番手応えあったのに」

 

「どうすれば……」

 

影人達四人がグロッキー状態になる中でメロロンが四人へとトドメを刺すが如く残酷な現実を話す。

 

「幾ら頑張っても無駄メロ」

 

「「「「え?」」」」

 

「だってねえたまは誓いによって、もう願いを叶えたメロ。だからねえたまはあなた達の事を思い出す事は絶対に無いメロ」

 

メロロンの言葉にうた達はまた精神的なダメージを受けてしまう。影人はそんなメロロンに何かを返そうとした時だった。

 

「プリ!あれ乗りたいプリ!」

 

プリルンの声が聞こえて一同がその方向を向くとそこにあったのは頂上へと続くリフト乗り場であった。

 

「あ……」

 

「……咲良さん、俺も言いたい事は色々ある。でも今は、プリルンのやりたい事を尊重しよ」

 

影人の声色は前向きな雰囲気であり、うたもそんな影人に元気を貰うように頷いた。

 

それからリフト乗り場へと移動すると最大で三人乗りと書いてある。そうなると、六人では乗り切れない。

 

「じゃあ、三人ずつのチームに分かれよ」

 

「それならメロロンはねえたまと……かげ……ねえたまと二人きりで……」

 

「じゃんけんで決めましょう!」

 

「賛成プリ!」

 

「メロ!?」

 

メロロンはプリルンと二人きりになりたかったが、一同の意見は公平にじゃんけんで決めるつもりらしい。しかもプリルンもそれに賛成したのでメロロンは仕方なくそれに参加する事になる。

 

「「「「ペアペアじゃんけん、ポイ!」」」」

 

それから影人達は三人のチーム二つでリフトへと乗り込むと出発する事になるのであった。




また次回もお楽しみに。
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