キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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リフトでの会話 未だに戻らぬ記憶

影人達がリフトに到着したのとほぼ同時刻。チョッキリ団アジトのバーではカウンター席に突っ伏すザックリーの姿があった。彼はかなり疲れた様子でゲッソリとしており、かなり消耗している。

 

「はぁ……」

 

「こら!ザックリー、何サボってるんだい!」

 

そこに来たのは彼の上司ことチョッキリーヌである。彼女は疲れて休み中のザックリーを見て働くように声を上げた。

 

「何日連続勤務だと思ってるんすか!邪魔者は増えたのにこっちは俺だけ……。誰かもう一人雇ってくださいよ!!」

 

それはザックリーからの悲痛な叫びだった。これに関してはザックリーの同僚であったカッティーがいなくなってしまったツケと言えるだろう。そして、チョッキリーヌはそんなザックリーからの言葉に対して出した答えは……。

 

「絶対に雇わない!」

 

「ホワァアアイ!!」

 

無情にも拒否の一言だった。そのため、ザックリーは行かざるを得ずに歩き出す。するとそのタイミングでスラッシューがバーへと入ってきた。

 

「ッ、ザックリー。その顔で大丈夫?」

 

「あ、スラッシュー様……。すみません、俺はこれからザックリ出撃っす……」

 

そんな風に力無く言うザックリーを見てスラッシューは無言になるとチョッキリーヌへと話しかけた。

 

「チョッキリーヌ。これはどういう事かしら?」

 

「どういう事……って何?」

 

「ザックリーが一人で回してる現状についてよ」

 

スラッシューはチョッキリーヌを睨みつける。普段ならチョッキリーヌがスラッシューに軽くあしらわれる事が多いために、チョッキリーヌはチャンスとばかりに上から目線で話す。

 

「ふん、彼は私の部下なのよ?それを私がどう扱おうが私の勝手でしょう?まぁ、あなたはそもそも部下を雇わない主義だから扱い方なんて知らないのでしょうけどね」

 

それを聞いてスラッシューは少し考える。同時に彼女の脳内に浮かぶのは新人である天城としての自分に優しく接してくれる上司達……うたの両親や田中との時間だった。

 

「……そうね。部下を持たない私が突っ込むべき首では無い事は認めますわ」

 

「ふーん?アンタにしては随分と素直ね。なら私の命令でザックリーが動く事を止める資格はアンタには無いよ」

 

「代わりに一つ注告しておくわ。……いつまでも部下を大切にしないその態度を続けるのなら、後で痛い目を見るわよ」

 

それを聞いてチョッキリーヌは目を細めるとスラッシュー相手に敵意を見せる。

 

「私にわざわざ注告ねぇ。そう言って、手柄を横取りされたく無いだけじゃないの?」

 

「……手柄の話はこの際関係無いわ。ただ、あなたのように仕事を部下に押し付けてサボっているだけの上司はその内見限られる……それを言いたいだけよ」

 

そう言ってスラッシューは背を向ける。するとチョッキリーヌは嘲笑うような顔を向けた。

 

「スラッシュー、アンタ。まさかと思うけどプリキュアの家族の所でバイトをしている内にアンタも絆されたとか言うんじゃないだろうね?ダークイーネ様を裏切ったらどうなるか」

 

「ダークイーネ様とこの件は別問題に決まってるでしょう?……ま、せいぜいザックリーに捨てられないようにしなさいよ」

 

スラッシューはその言葉を残すとさっさとまた外に行ってしまった。それを受けてチョッキリーヌは珍しくスラッシューが感情的な話し方をする所を見てご機嫌である。

 

「……私があの家族に絆されている?……冗談よして」

 

スラッシューは呟きを残しつつまた自分の行動を開始する事になるのだった。

 

場面はリフトに乗った影人達へと戻る。一つ目のリフトに乗っているのはなな、こころ、そしてプリルンの三人だ。プリルンは妖精なので一応最初はなながぬいぐるみとして持っていき、リフトに乗った直後に係員にバレないようにななとこころの間に座らせる形を取った。

 

「あ、見てください!走ってますよ!」

 

こころが指差す先にはランニングで山道を登っている人がいた。プリルンはリフトがあるのにわざわざ走っているのを疑問に思って質問をする。

 

「何で走ってるプリ?」

 

「トレイルランニングだね。頂上にどれだけ早く辿り着けるか、タイムを測っているんだよ」

 

「走って登るなんて凄い……」

 

山道は傾斜があるので走って登るのはそれなりにキツい。それでもやる辺り、向上心がとても高いということだろう。これもまた、山登りの楽しみ方の一つの形である。

 

「「「頑張れー(プリー)!」」」

 

三人が声をかけると男性もそれに応えるかのように手を振ってくれた。この際にプリルンも思いっきり喋ってしまっていたが、幸いにも相手はランニングに夢中で気づかれる事は無かった。

 

そして、その後ろ。二つ目のリフトに乗るのは影人、うた、メロロンのトリオである。

 

「メロ……ねえたまと乗りたかったメロ」

 

メロロンは思わず愚痴を溢す。折角プリルンと二人きりで乗れるチャンスを逃して不機嫌そうだった。

 

ただし、プリルンとメロロンだけだと係員の目を誤魔化すのはかなり厳しかっただろう。何しろ乗っているのが人形設定の二人だけになってしまうからだ。

 

「メロロン、ありがとう」

 

「メロ?急に何メロ」

 

うたからいきなりお礼を言われた事に面食らったのかうたの方向を向く。そんな中でうたは続けた。

 

「メロロンはプリルンの願いを叶えてくれたんだよね?だからありがと」

 

「メロ……」

 

メロロンはどう返せば良いのかわからずに困惑。するとメロロンの頭に手が置かれた。

 

「影人!?何するのメロ!」

 

その手の主は影人であり、メロロンはいきなり影人に手を置かれて更に困惑したような顔つきを見せる。

 

「メロロンは優しいな」

 

「……どうしてそう思うのメロ?」

 

「だってそうだろ?……ハートキラリロックで叶えられる願いは一つ。そして、メロロンにもメロロンで元々何か叶えたい願いはあったんだろ?」

 

「ねえたまの願いはメロロンの願い。だからねえたまの願いを優先するのは当然メロ」

 

「……だったら尚更だよ。俺がメロロンの立場だったらきっと自分の願いを叶えようとする。それでもメロロンはプリルンに願いを合わせる形で譲った。だから優しい。単純な理由だよ」

 

影人の言葉にメロロンは無言になってしまう。その直後、今度はうたがメロロンへと話す。

 

「メロロンが譲ってくれたおかげで叶ったプリルンの願い。でも、それと同時に私達の事を忘れちゃったのは寂しいよ」

 

「それが伝説のハートキラリロックの運命(さだめ)メロ」

 

「うん。……でも、私諦めないよ!絶対に思い出させる!」

 

 

うたは両腕を上げて元気良く言い放つ。どれだけプリルンが思い出せない状況が続いてもうたは諦めるつもりは無かった。それだけ彼女との思い出をうた達も大切にしているという事である。するとメロロンは影人の方へとジト目を向けつつ問いかけた。

 

「……影人はうた達を止めないのメロ?」

 

「何でだよ」

 

「……影人の事だからねえたまやメロロンの選択を尊重するとか言いそうなのメロ」

 

メロロンの言う通りだ。普通なら影人も二人の意見を尊重して余計な手出しをしない方向に落ち着きそうなものである。

 

「事前相談があって、事情をちゃんと話していたらそうしてる。でも、今回は咲良さん達がプリルンの記憶を無くしているのを見てそれを取り戻そうとするのを見たのが先だからな」

 

今回の場合、影人が知らない間に二人はキラキランドに行ってハートキラリロックを使ってしまった。つまり、影人はその時の二人の事情を何も知らないのだ。それにまだうた、なな、こころがキュアズキューンの正体を探る件から始まった一連の流れの途中。三人を助けるという流れの中でいきなり三人を裏切りたくなかった。

 

「……それに、今回の件は俺も見過ごしたく無い。記憶を失う前のプリルンは騒がしい奴で手を焼いていたけど、それでも俺にとって今の現状は幸せとは言えないと思う。咲良さん達を救うために自分の記憶を無くしてしまったアイツを……このまま放っておきたく無い」

 

影人の決意は固く、メロロンはそんな影人の言葉に落ち込んだような顔を見せてしまう。影人なら自分達の選択やその事情をわかってくれると思っていただけに落胆も大きかった。

 

「……」

 

「メロロン。キュアキッスとして言ってたよな。“何も知らないくせに知ったような口を効かないで”と」

 

「それがどうしたのメロ。メロロンは何も間違った事なんて……」

 

「メロロンは何に苦しんでるんだよ。……その苦しみの中にはメロロンの失った物も関係あるんじゃないのか?」

 

影人の問いにメロロンは答えを返してくれない。どうしても言いたく無さそうな顔さえしている。

 

「メロロン、何で教えてくれないの?」

 

「言いたくないからメロ」

 

うたから聞かれてもメロロンはやはり素っ気ない反応を見せる。それを見て影人は結論を出した。

 

「……わかった。メロロンが言いたくなったらまたそれを話してくれ」

 

「影人君!?聞かなくて良いの?」

 

「今のメロロンに無理に言わせるよりタイミングを見て話してくれた方が心の負担が小さいからだ。こういう事は無理に言わせない方が良い」

 

「……うん」

 

こうして、二人はこれ以上の詮索をしない事に決める。そんな中でリフトは“はなみち山”の頂上に到着すると山頂だからかそれなりに人だかりができていた。

 

「お待たせしました」

 

「お弁当プリ!」

 

丁度そのタイミングで影人達一行は後から登山してきた田中と合流。五人は持ってきていたお弁当をレジャーシートの上に座って広げる事になる。そして、そんな様子を遠目から見るメロロンは二人へと小さく呟く。

 

「……寂しいくせにありがとうなんて、とんだお人好しメロ。それに、影人も何でそこまでメロロン達の事を気にするのメロ。あれだけ突き放したのに……」

 

メロロンの言葉を他所にうたは自分のリュックから取り出したお弁当をプリルンの前に出す。

 

「はい!咲良家特製お弁当はプリルンの大好物!さて何でしょう?」

 

うたの質問に少し考える仕草を見せたプリルン。その直後、割とすぐに興奮しつつ声を上げた。

 

「わかったプリ!」

 

それを聞いてうた達三人は喜んだような顔を見せる。ただ、影人にはある予感があった。

 

「(あれ?そういえば、あの時は確か……)」

 

「答えはカニさんウインナープリ!」

 

そんな影人の予感は的中し、プリルンは無情にもウインナーはウインナーでもカニの方を答えてしまう。

 

「「「あっ……」」」

 

「だろうな……。メロロンが完全に刷り込みしちゃってたし」

 

影人は前にプリルンとメロロンが二人でいる所を見た際に出されていたのはカニさんウインナーだった。また、それを見てプリルンが前のタコさんウインナーの時のように喜んでいたので、メロロンが上手く胃袋を掴んでいたのだと感じたのである。

 

「カニさんも良いけど、これはタコさんウインナー!」

 

うたが蓋を開けるとそこには大量のタコさんウインナーが詰まっていた。そのため、プリルンは嬉しそうな顔を浮かべる。

 

「咲良うたはやっぱりタコさんウインナー派なのメロ……」

 

そこに離れていたメロロンも来ると弁当の中を見た。その一方でプリルンは笑顔を浮かべつつ弁当の中身であるタコさんウインナーを食べる。

 

「いただきますプリ!あーん!……美味しいプリ!」

 

「良かったぁ。いっぱい食べてね!」

 

プリルンはそのままタコさんウインナーを食す中でうたは三人の方を振り向くと落ち込んだような顔を見せて思わず小さな溜め息も漏れてしまう。

 

「はぁ……。これもダメか」

 

「(……流石にここまでダメとなると幾らポジティブ思考の咲良さんとはいえ、精神的にキツい所があるよな。これ以上はちょっとヤバいか?)」

 

影人はうたが精神的にかなり追い込まれていると考えるとこれ以上の作戦実行は不味いと考える。そんな中でななやこころが声をかけた。

 

「うたちゃん。まだ希望はあるよ」

 

「とにかく今はお弁当、お弁当、ランランランです!」

 

ただ、ななとこころに励まされてどうにか気持ちを取り戻せたのか、また顔つきが明るいものに戻る。

 

「うん、そうだね。ランランラン!」

 

「「「ランランラン!」」」

 

「………」

 

ただ、影人はその言葉に参加できなかった。うたの反応がいつも通りとは程遠くなっていると考えていたのだ。このままではうたが潰れてしまう。そう考えた影人はそろそろストップする事を考える。そして、そんな四人を見てプリルンがメロロンに問いかけた。

 

「プリルン。さっきからずっとあの人達に言われてるけど、何か忘れてるプリ?」

 

「メロ、ねえたまは……」

 

そんなプリルンからの問いにメロロンは答えにくそうな顔をしていた。メロロンも複雑な心境なのだろう。

 

同時刻。頂上の近くの登山の坂道の上にザックリーが姿を現すと人々のキラキラを目の当たりにする。

 

「くうう……。休日エンジョイ……。俺も混ざりたい!」

 

ザックリーとしては自分は働いているのに人々は休みを楽しんでいる上にキラキラを出しまくっているため、余計にそれが羨ましく思えていた。

 

そんなザックリーは人々の中に混ざろうと頂上へと走り込んだ直後。そんな彼の横から何かがすり抜けると先に頂上へとゴールインしてしまう。

 

「やったぁ!新記録!」

 

それは先程なな達がリフトの上から見ていたランナーである。そんな彼を見てザックリーの視界はスローモーションになると彼から出ているキラキラが強い事を認識した。

 

「うぁああ……目障りなキラキラ見つけたぁあ……」

 

ザックリーは休日を堪能する人々へのあまりの嫉妬心と自分は仕事である事への精神的負担からテンションがハイになるくらいにおかしくなると脳が壊れたような言い方でキラキラを引き抜く行動を行う。

 

「お前のキラキラ、オーエス!」

 

「うわぁああっ!」

 

「はい、ザックリ行くぜ!」

 

ザックリーは男性から出てきたリボンをスパッと真っ二つに切ってしまうと水晶と素体の人間を合わせてクラヤミンダーを呼び出す。

 

「来い!クラヤミンダー!世界中をクラクラの真っ暗闇にしやがれ!やぁあっ!」

 

ザックリーが呼んだクラヤミンダーはランナーのような姿をしたクラヤミンダーであり、その自身の体へと繋がっていて、肩から出ているホースのような物を付けていた。

 

「クラヤミンダー!」

 

「ブルっと来たプリ!?」

 

クラヤミンダーの登場にプリルンが反応。お弁当中だったものの、ひとまず人々が困っているのを見過ごすわけにはいかない。

 

「まさか!?」

 

「本当に空気読まないよな、アイツらは」

 

「とにかく行こう!」

 

それから四人は動き出すとクラヤミンダーへと対抗するべくブローチを取り出すのであった。




また次回もお楽しみに。
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