キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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幼馴染としての再会 影人とこころ

新入生歓迎会の当日の朝。チョッキリ団のアジトではまたもやカッティーがキュアアイドルのライブ動画を熱心に観ていた。

 

「またキュアアイドルの動画見てんの〜?」

 

「うわ〜っ!ドン引くわぁ〜!」

 

そんな風にカッティーを揶揄うザックリー。カッティーはいきなりそんな事を言われてムキになると拳を上げて言い訳をした。

 

「次回ギャフンと言わせるために研究しているのですぞ!」

 

「怪しい〜!」

 

「怪しく無いですぞ!」

 

完全にザックリーがカッティーをイジるポジションで収まる中、一人チョッキリーヌはビリヤードをしつつ二人へといつまで遊んでいるんだと言わんばかりに声をかける。

 

「で、次は誰が行くんだい?ダークイーネ様からの伝言で上手くやったら特別ボーナスが出るよ?」

 

「はいは〜い!俺行きま〜す!特別ボーナスはザックリ俺が貰ったぜ!」

 

「ぐぬぬぬ……」

 

どうやら今回はザックリーが行くらしい。カッティーは研究中と言った手前、自分から行くとは言い出し辛く、出番を譲る形となるのだった。

 

その頃、夜明けを迎えた明け方で影人は一人街中を散歩中である。この日は土曜日なのだが、土曜授業という形で新入生歓迎会となっていた。

 

「ふわぁあ……折角の土曜日なのに学校とかダルい。……というか、何でかわからないけど今日早く起きちゃったし」

 

影人はこの日、何故か普段よりも早起きしてしまったのだ。まだ家族は土曜日という事で寝ているので無駄に活動するのもおかしいと思って置き手紙で少し散歩するという伝言を居間に残した上で外に来ていた。

 

「さてと、どうするかな……ん?」

 

すると影人の耳に微かに何かの音楽が聴こえてきた。その音が聴こえるのは影人が普段散歩で歩く際に通らない道の方向からである。

 

「……誰だ?こんな朝早い時間に……」

 

影人が薄らと聴こえた音楽が気になってその方に向かう。するとその目線の先には建物のガラスを鏡の代わりにして一人踊る少女、こころがいた。

 

「紫雨さん?」

 

するの影人は彼女の踊りに目を奪われる事に。その動きはとても洗練されていて指先まで気を使った表現に綺麗なボックスステップ。最後の締めにジャンプして着地すると激しく動いた影響で荒くなった息を整える。

 

「ふぅ……まだまだ直す所は沢山ありますね……」

 

一人小声でそう呟くこころ。彼女の目は真剣そのものでダンスに命を懸けていると言わんばかりの本気度を感じ取れた。それは影人が幼い頃自分が到達できなかった世界を見ているようである。影人はダンスに真剣に向き合えるこころの姿を見て、彼女は自分よりもダンスの才能に溢れている事を思い知ってしまう。

 

「……凄い」

 

「ッ!?」

 

影人が何となく呟いた言葉。次の瞬間にはこころが驚いたように振り向く。どうやら影人の声が彼女に届いてしまったらしい。

 

「影人……先輩」

 

「紫雨さん。おはよ」

 

「おはようございます。先輩!あの……」

 

こころが嬉しそうに影人に声をかけようとしたその時、いきなりこころは口籠もる。こころは前にうたやななに囲まれていた状態の影人を見て心に嫉妬の感情を湧かせてしまった。それと同時に前に自分の勘違いで早とちりして影人へと聞いた結果、彼を困らせてしまった事。うたとななの事はちゃんと聞きたかったが、それを聞いてまた影人を困らせたく無い彼女はどうしてもその質問を言い出せなかった。

 

「……さっきのダンス。カッコ良かった」

 

「……え?」

 

「紫雨さんがこんな朝早くから一生懸命にダンスのトレーニングを頑張ってて、しかも現状を少しでも良くしようとする向上心もあって。……紫雨さんのダンスに懸ける気持ちが強い事が伝わってきた」

 

影人はそんなこころの気持ちとは裏腹にダンスの事について思った事を素直に口にする。こころは影人に褒められて嬉しそうな顔つきになった。

 

「ありがとうございます。そういえば、先輩もダンスをやられていたんですよね?……その、何かアドバイスはもらえませんか?」

 

「……そうだな。さっきパッと見た感じだけど……」

 

それから影人は自分にできる範囲で先程見たこころのダンスの改善点を話していく。

 

「……なるほど、じゃあここの時に腕の角度とかをもうちょっと変えてみるべきと。……先輩、やっぱりダンスの事を覚えてるじゃないですか」

 

「別に、紫雨さんの事を見ていたら昔会ったあの子の事を思い出しただけ」

 

「あの子?」

 

影人の言葉にまたこころの気持ちは曇る。ここでも自分の知らない子と影人は仲良くなっているのか。そう思ってしまって仕方が無かった。

 

「……幼い頃。俺が夢のためにダンスを必死で頑張ってた時に一度会っただけなんだけどさ。迷子になってたその子は心細くて泣いていた。その時に俺が声をかけてダンスを見せたらその子……ココはいつの間にか泣き止んでて」

 

影人は過去の思い出の中でも割と話しても大丈夫と思えた明るめの話を話題にした。これなら影人自身が傷ついた物じゃないので話せると思ったのだ。

 

「それから俺とココは二人でダンスをやってみようってなって。その時のココは真剣で幸せそうだった。紫雨さんを見てたらその子とよく似てるというのもあって彼女を事を連想するんだ」

 

するとこころは目を見開くと涙が頬を一筋伝っていた。それはこころが今の話を聞いて嫌だと思ったわけではない。むしろその逆だ。

 

「……先輩。今、ココって言いました?」

 

「え?あ、うん……。ココ」

 

「私です……カゲ君。やっぱり影人先輩はあの時のカゲ君です!」

 

影人はこころの言葉を聞いてこちらも驚いた。カゲ君という自分の呼ばれ方は当時、ココしかしていない。いや、今でも影人はそんな呼び方をされない。となるとやはり確定だ。目の前にいる紫雨こころは、影人の記憶の中の少女、ココその人であると。

 

「ココ……なのか?」

 

「はい!初めて再会した時からそうじゃないかと思ってたんです!久しぶり……カゲ君!!」

 

こころが興奮したように影人へと飛びつくと影人はそのまま押し倒された。

 

「先輩……私、あの日からずっと頑張ってきたんですよ」

 

「そうか……初めてまた会えたあの時に偶に俺を知ってそうな口ぶりだったのはそういう事だったのか」

 

こころは影人とまた真の意味で再会できた事に対する熱い気持ちが溢れていく。すると胸がドクドクと高鳴るとこころは影人へと嬉しそうに呟いた。

 

「私……心、キュンキュンしてます」

 

「俺も心、メラメラしてる」

 

二人が嬉しそうに再会を喜んでいると影人はふと思い出したかのようにスマホを取り出すとその時刻はそれなりに進んでおり、そろそろ戻らないといけない時間である。

 

「ヤバっ!?もう帰らないと今日学校だろ!?」

 

「あっ!!」

 

二人はいつの間にか進んでいた時間のせいで無理にでも別れざるを得ない状況に。

 

「先輩、先輩がカゲ君だって知れて良かったです!」

 

「俺も……あ。でもさ、何であの時紫雨さんはココなんて名前を名乗ったんだ?」

 

「え?私、ちゃんと名前を聞かれたらこころって言いましたよ?」

 

「……あれ?」

 

どうやら影人は当時、こころの名前をココだと聞き間違えたせいでずっと名前をココだと思い込んでたらしい。あの時、ちゃんと名前を聞き取っていれば幼馴染としての再会は早かったはずだ。

 

「それは全面的に俺が悪い。……ごめん、紫雨さん」

 

「大丈夫ですよ。あと、私が先輩呼びする時に名前で呼んでいるんですからもっと気安くこころって呼んでください」

 

「いや、でも……そんな馴れ馴れしく……。紫雨さんに悪いだろ」

 

「私は、むしろそれで呼んで欲しいんです。できる事なら私だってカゲ先輩って言いたいんですよ」

 

ただ、こころの場合は影人の方が先輩なのであだ名を入れた上での先輩呼びは彼女としては避けたいらしい。

 

「そっか。じゃあ、これからもよろしくな。こころ」

 

「はい!影人先輩、それじゃあ歓迎会楽しみにしてますね!」

 

それから二人は別れて学校に行くための準備をするために家に戻っていく。こころの足取りはとても軽かった。やっと自分の憧れの人に近づけたような気がしたのだから。

 

それから影人が家に戻ると既に他の家族は起きており、玄関を通ると夢乃が出迎えた。

 

「お帰り、お兄ちゃん。というか、学校なのに割と遅かったね」

 

「うっせ。ちょっと良い事があったんだよ」

 

「……え?お兄ちゃんが、自分から良い事って……。余程の大事件じゃん」

 

「俺を何だと思ってるんだよ」

 

影人は夢乃を軽くあしらいながら準備を進めると先に学校に行くために制服を着て登校していく事に。その後、少しして夢乃も友達であるはもりやうたの家族に合流するために学校へと向かって出かけていった。

 

その少し前。影人が登校を始めるとほぼ同時刻。喫茶店・グリッターではうたの家族が準備をする中、はもりがその準備を待ちきれない様子だった。

 

「お母さん。まだ〜?」

 

「もう少しだから待ってて」

 

「えー。夢乃ちゃんも待ってるし、先に行くね!」

 

「ちょっと、はもり!」

 

音が勝手に行こうとするはもりを見て慌てる。父親の和の方も丁度準備で手が離せず。はもりを止める人間は誰もいなかった。

 

「ななちゃんのピアノ楽しみだな〜!それに、夢乃ちゃんとも会えるの楽しみ!!」

 

はもりが走って学校に行く中、そのタイミングで運悪くチョッキリ団のザックリーが空中に姿を現れる。

 

「おうおう。目障りなキラキラ見つけたぜ〜!お前のキラキラ、オーエス!」

 

ザックリーは躊躇なくはもりをターゲットにするとカッティーのように綱引きの要領でキラキラを引き抜いてしまう。

 

「きゃああっ!」

 

「はい、ザックリ行くぜ!」

 

そのままリボンを切ってしまうとカッティーと同様にザックリーも水晶と素体であるはもりが閉じ込められた丸い闇のエネルギーを合わせると地面に叩きつける。

 

「来い!マックランダー!世界中をクラクラの真っ暗闇にしやがれ!」

 

すると次の瞬間にはマックランダーが召喚される。今回はピアノを模した形となっており、これは恐らくはもりが大切にしている物だからと推測できるだろう。

 

「マックランダー!」

 

召喚されたマックランダーはドカドカと歩いて行くと早速街中で暴れ始める。そんな様子を登校中だった影人は遠くから視認。また面倒な事になったとその方へと走って行く。

 

「ああもう!こんな時にまで出てきてくれて……こころと再会して良い気分だったってのに!」

 

影人が到着するとそこには既にうたとななが揃っており、プリルンも周りの人々が逃げ去ったのを見て外に出てきていた。

 

「また出たんだけど!?」

 

「良いぞ!どんどん世界を真っ暗闇にしてしまえ!」

 

そんな風にザックリーが気持ち良いと言わんばかりに言う中、影人がザックリーを見るとカッティーと違ったために声を上げる。

 

「お前、誰だよ!見た感じカッティーとは違うっぽいけどさ」

 

「あ?」

 

「名前だよ名前!呼ぶ時困るだろうが!」

 

「へっ、これからやられる側だってのに俺の名前か。良いぜ、俺はザックリーだ。ザックリ言うとカッティーの仲間って所だな」

 

「……おい、思ったんだけど、お前らの名前、切るに関係する言葉を弄った物ばかりじゃね?チョッキリとかザックリとかカッティングとか。もう名前がそのまんま過ぎるだろ」

 

「聞いておいてその返事はねーだろ!」

 

ザックリーが半ば怒ったように返す中、うたもななも珍しく自分から主張した影人のメタ発言に呆れていた。

 

「今はそんな事言ってる場合じゃないプリ。中にはもりが閉じ込められてるプリ!」

 

「はもりが!?」

 

「そんな……」

 

「マジか……」

 

すると影人のスマホが震えるとそこには夢乃からのメッセージで、自分を心配するような物だった。文面は以下の通りだ。

 

“お兄ちゃん、大丈夫!?今外に出たんだけど、空は暗くなってるしなんか沢山の人が逃げてきてるし”

 

「……ッ」

 

影人は夢乃を巻き込むわけにはいかないと慌ててメッセージを打ち返した。ひとまず自分がこの場所にいて変な怪物が出ているという事、そこに絶対に近づかないようにする事を簡潔に返したのである。すると夢乃からは“わかった。お兄ちゃんも気をつけて逃げてね”という言葉が返ってきた。

 

「今の、夢乃ちゃん?」

 

「ああ。ひとまずここには来るなって言っておいた」

 

「……はもりちゃんは助かるの?」

 

「あのモンスター、マックランダーをやっつければ多分助けられる」

 

今こそ、プリキュアがステージに上がる瞬間であった。うたはアイドルハートブローチを手にするとプリキュアへと変身するために構える。

 

「プリキュア!ライトアップ!キラキラ!ドレスチェンジ!」

 

うたが掛け声を言うと共にその姿をプリキュアへと変身させていく。そのまま降り立つと自らの名を名乗った。

 

「キミと歌う、ハートのキラキラ!笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」

 

これによりうたはキュアアイドルへと変身。マックランダーとの戦闘を開始する事になる。




また次回もお楽しみに。
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