キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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寝込む影人 スラッシューの怒り

うたが一人悲しさに暮れていた頃、影人は一人布団の中で熱の影響で寝込んでいた。

 

「ゴホッ、ゴホッ……クソッ……少しくらいなら無茶しても大丈夫と思ったんだけどな」

 

影人は未だに38度前後の熱が残っている状態であり、辛そうな顔を浮かべている。しかも、ななとこころがお見舞いに来たのを聞いて会えなかった事が申し訳なかった。

 

「(……今度会ったらちゃんとお礼を言わないと……)」

 

するとコンコンとドアがノックされると夢乃が薬や熱を出した際に頭に貼るヒンヤリとしたシート、濡らしたタオルなどを持ってきて入った。

 

「お兄ちゃん、入るね……」

 

「何してんだ……夢乃。俺の熱が移ったら……」

 

「今はそんな事よりも自分の事回復するのが優先だから。……先輩達に散々心配かけて。皆、回復して元気なお兄ちゃんが来てくれることを望んでいるんだから」

 

夢乃はマスクを付けた状態でそう言うとテキパキと作業を進めていく。その間に影人は薬を飲むとまた横になった。

 

「……あれ?そういえば、さっきから視線が……ッ!?」

 

夢乃が視線を感じると窓を見た途端に目を見開く。そこにいたのはメロロンであった。

 

「メロちゃん!?何で……」

 

「メロ……ロン」

 

夢乃は慌てて窓の方に行くとジェスチャーで一旦別の窓に向かって欲しいと伝える。それからメロロンは理解してくれたのか、場所を移動。それから夢乃はその窓に移動して対応する。

 

「メロちゃん、まだお兄ちゃんとは話せないよ」

 

「メロ……。キラキランドの女王様にお願いして話をできるようにしてもらったメロ。女王様からは少しだけだったら話せるって」

 

「え……?」

 

そんな中、影人が辛い熱による現状に耐えているとその脳裏にテレパシーが聞こえてくる。

 

「(影人……大丈夫メロ?)」

 

「(……ッ!?メロロンか!?)」

 

「(これって……レイが女王様にお願いしてお話できるようにしてもらったのメロ。テレパシーだから言葉にして話さなくても良いのメロ)」

 

「(そうか……悪いな、気を使ってもらって)」

 

「(……そんな事は無いのメロ。それに、謝るのはメロロンの方メロ)」

 

それを聞いて影人はやはりメロロンはあの時の事を気にしていると考えた。当時の影人はクラヤミンダーとの戦闘中でちゃんと見れていなかったが、確かにメロロンはプリルンがキラキライトを落とす要因を作っていた。

 

「(……やっぱり、メロロンはプリルンに記憶を思い出してほしく無いのか?)」

 

「(……)」

 

「(メロロン、最初に言っておくけど。俺はメロロンの気持ちまで全部理解できるって思ってない。何しろ、メロロンの事を俺はまだわかってない気がするし)」

 

メロロンはそれを聞いて小さく頷くような声を出す。メロロンもそれはわかっていた。何しろ自分は影人相手にも話していない事があるのだから。メロロンはハートキラリロックで封印した物や自身の過去についてもまだ全部を話していない。

 

「(その上で言うぞ、……メロロンにとっての幸せってプリルンと二人きりで過ごす事か?)」

 

「(メロ!?)」

 

それを聞いてメロロンは目を見開く。彼女の動揺は影人にも伝わると更に話を続ける。

 

「(……多分だけど、メロロンはプリルンを咲良さん辺りに取られるのが嫌なんだろ?)」

 

「(……そうメロ)」

 

メロロンは影人の問いにそう返す。それから影人は熱で思考が纏まりにくい中で少し間を空けてから続ける。

 

「(そうか。それも一つのメロロンにとっての幸せの形だ。……俺はそれを否定しない。ただ、一つだけ。……その幸せの中に後悔を作るな。後悔をずっと抱えたまま生きる事、それは……幸せとは言わないから)」

 

影人はテレパシーさえも苦しくなってきたのか、息が荒くなり始める。そんな彼の話を聞いてメロロンは小さく呟く形で影人の言葉を繰り返す。

 

「……後悔の無い幸せ……」

 

「(悪い……もう限界みたいだ……そろそろ休む)」

 

影人はテレパシーをこれ以上は継続できないと言わんばかりにメロロンへと話を続ける。それを聞いてメロロンは影人へと話しかけた。

 

「(……影人、ありがとうメロ。お大事になのメロ)」

 

メロロンはそう言ってテレパシーを切った。それと同時に影人も眠ったように小さく寝息を立て始める。

 

「お兄ちゃんとお話しできた?」

 

「メロ……」

 

「そっか。良かった」

 

夢乃はメロロンへと優しく話しかけた。正直、この前の件があってメロロンは夢乃の事も突き放している。メロロンとしては夢乃が今回の影人の件も含めて自分を恨んでいると思っていた。

 

「……夢乃、改めてごめんなさいメロ。メロロンの家での事、影人がこうなった事」

 

「うん……良いよ。私はメロちゃんの事、恨んだりしてないし。お兄ちゃんの事は複雑だけど、お兄ちゃんはちゃんとここにいるから」

 

メロロンはコクリと頷くとそれから彼女は何かを考えたのか、夢乃へとその考えを話す。

 

「……その、夢乃」

 

「ッ……何?メロロン」

 

「もし、夢乃がダメじゃ無いのならお願いがあるのメロ……」

 

夢乃はメロロンが真剣な目を向けているのを見て自分を信頼してくれてると感じるとその言葉に優しく応える。

 

「……何?メロロン」

 

それからメロロンは自分の考えを口にすると夢乃はニッコリと微笑んで頷く。

 

「うん、良いよ!……じゃあ後はお兄ちゃんに聞くだけだね」

 

「メロ。メロロンのお願い……我儘を聞いてくれてありがとなのメロ」

 

「ううん、大丈夫。……あ、そうそう。プリちゃんにもよろしく伝えておいてね!」

 

その言葉にメロロンは頷くと彼女はフワフワと何処かへと去っていく。その去り際、ベッドで寝ている影人を窓から見たメロロンは心配そうに影人を見つめる。

 

「……影人、早く良くなってほしいのメロ」

 

メロロンはそう残して去っていく。そんな彼女が去っていくと影人の部屋にあるアイドルキラキラブローチが光ると同時に白と黒の光が影人へと優しく注がれるのであった。

 

その日の夜。チョッキリ団アジトでは、バーのカウンター席に座るザックリー。彼の座っている椅子の反対側には手にワインが入っていると思われる瓶を持ったチョッキリーヌがいた。

 

「……ザックリー。アンタ、休みが欲しいと言ったわね?」

 

「ザックリ言ってそうっす。……というか、俺一人で邪魔者のプリキュア五人を相手にすんのは……流石に勝ち目ゼロっすよ!」

 

加えてここ最近出張りっぱなしという事でほんの少しの休みさえも欲している状態だった。

 

「そんなお前に朗報だ。ここには七本のグラスとそれに注がれたワインがあるね?」

 

「え?まぁ、そうっす」

 

そこにあったのは確かに七本のグラス及び、その中に入ったワインである。

 

「その中の一本には鬼辛いソースが入っている。それを飲んだら即出撃。三回連続で鬼辛いソースを回避できたら今日は休みにしてやろう」

 

「……なるほど、つまり運試しってわけっすか?」

 

「その通り。さぁ、ザックリー。休みが欲しければ自分の手で掴み取るんだよ」

 

そう言ってチョッキリーヌは一応自分の持っているグラスに手にしたワインを注いで飲むと平然とした顔つきを見せる。これにより、ワインその物が鬼辛では無い事をザックリーに示した。

 

「うーんっと……見た目での違いは……ザックリ無さそうっすね」

 

「あまり長々と選ぶのは男として良く無い。あと10秒以内に一本目を決めてもらおうか」

 

チョッキリーヌに促されるとザックリーはグラスのワインの中の一本を手に取った。

 

「だったらザックリ言ってこれっす!」

 

ザックリーはそう言いつつグラスを手に取るとそれを一気に飲み干す。するとチョッキリーヌはそれを見て笑みを浮かべる。……その瞬間だった。

 

「か、辛ぁああいっ!」

 

ザックリーは口から火を噴き出す程の凄まじい辛さを受けてしまう。どうやら一発目からハズレのグラスを引いてしまったようだ。

 

「嘘だろ?七本あって初っ端ハズレってどれだけ不運なんすか!」

 

「さ、約束通り出撃してもらおうか」

 

チョッキリーヌに煽り気味にそう言われてザックリーは悔しそうにそれ以外のワインも飲み干そうと二本分飲む……が。

 

「かぁああっ!これもこれも辛いやつうぅっ!」

 

ザックリーは再度火を噴くとあまりの辛さに舌の痛みに地面を転げ回った。

 

「はぁ……何やってるのかしら」

 

そこにスラッシューが出てくると躊躇いも無く一本のグラスを手に取ってワインを飲み干す。

 

「あ、スラッシュー様それは……」

 

「……確かにこの感じだと全部辛いですわね」

 

スラッシューはそう言って次々とそのワインを飲み干す。するとザックリーの杞憂も束の間と言わんばかりにスラッシューは平然とした顔をしていた。これはつまり、スラッシューには鬼辛ソースは通用しないという事だろう。

 

「そういえば、アンタには辛い物は効かなかったね」

 

「当然ですわ。というか、私にとってこれは効果無しでもザックリーにとってはかなりヤバいやつでしょう?」

 

スラッシューはザックリーを見るとやはり胸に痛みが走る。仲間がこうして倒れて苦しむ様に嫌な気持ちを覚えているのだ。

 

「ふん、だからってアンタにザックリーの出撃を止める権利は無いよ?ザックリー。これ以上の問答は不要。つべこべ言わずに出撃するんだ」

 

チョッキリーヌに言われてザックリーはフラフラと立ち上がると未だに辛さで痛い口元を抑えていた。

 

「くうぅ……こんなのズルいっすよ」

 

それを見たスラッシューは溜め息を吐くとチョッキリーヌが隠していた何かを取り上げる。

 

「ちょっ、スラッシュー!?何するんだい!」

 

「……良い加減にする事ね?そんなにアイドルプリキュアを潰したければ自分で行けば良いものを……他人任せって。おかげですっかり腕が落ちてるわよ?チョッキリーヌ」

 

それからスラッシューはザックリーへとある物を投げ渡した。それはバニラ味のアイスである。

 

「……辛い物を食べて舌がやられた時は乳製品が効くって話よ。これを食べてあなたは休んでなさい。……これは、私からの命令よ」

 

「はぁ?ザックリーの上司の私を差し置いて何でアンタが……」

 

その瞬間だった。スラッシューの手から炎の剣が出てくるとチョッキリーヌへと突きつけられる。

 

「ッ……」

 

「ほらね?少し前なら気がつけたこの速度にもう追いつけなくなってる。それに、私相手に散々偉そうにして。あなたこそ自分の立場をわきまえる事ね?」

 

スラッシューはそう言ってその手に持ったチョッキリーヌがザックリーに渡すはずだったクラヤミンダー召喚のための水晶を見つめた。

 

「……確かこれ、キラキランドの妖精相手に使える現状ウチにあるたった一つのレア物だったわね。キラキランド侵攻の際はこれで制圧してたかしら。まぁ、もう使う事は無いから人間用に生産を切り替えて使わなくなったけど」

 

ただ、スラッシューは折角キラキランドの妖精に使える物があるなら“はなみちタウン”にいるキラキランドの妖精相手に使えば良いかと考えつつ出て行く事になる。

 

それから日を跨いだ翌日。黒霧家では影人が目を開けると体が軽いのを感じる。

 

「ッ……体が軽い。昨日は38度くらいあったはずなのに」

 

それから影人が熱を測ると36度6分。完全に平熱であった。そんな中で影人が何かの優しい光に気がついてその方を向くとそこには自分に向けて光を放っていたブローチである。そして、ブローチは影人が起きたのを確認したかのようにその光を少しずつ弱くしていった。

 

「……ブローチがほんの少しずつ俺の症状を和らげてくれたのか?」

 

影人にも詳細はわからない。恐らく説明しろと言われても無理だろう。実際、一昨日は風邪を引いた状態で変身して動いていたら体調は少しずつ悪化していたのだから。

 

「……ひとまず、学校には無事に行けそうだな」

 

影人はひとまず回復した事を夢乃や両親に伝えると夢乃は影人へと抱きついてくる。

 

「お兄ちゃん!良かったぁあ……。帰ってくるなり高熱を出してたから心配したよ……」

 

「ごめん。……キッスの件も含めてここ最近そういうのばかりだよな」

 

「うん……。あ、そうだ。今日学校が終わったらメロちゃんの所に行ってあげて」

 

「え?メロロンがどうかしたのか?」

 

「実はメロちゃんが伝えたい事があるって」

 

夢乃は昨日話をしたメロロンとの事を影人へと伝えると影人は取り敢えず頷く事にした。それから影人は学校の準備を済ませると鞄を肩に掛けて家を出る事に。

 

「行ってきます」

 

「「行ってらっしゃい!」」

 

影人は両親に見送られる形で学校へと歩き出す。そんな中で脳内に浮かんだある事を思い出した。

 

「そういや、咲良さんは大丈夫なのかな。俺よりは軽症って聞いたから多分戻ってると思うけど……」

 

その瞬間、影人が曲がろうとした所から何かが走ってくると二人はその影響でぶつかってしまう。

 

「「ふぐえっ!?」」

 

そのまま二人揃って倒れると影人はどうにか立ち上がる前にぶつかった相手が無事か確認しようとする。

 

「痛てて……大丈夫ですか……って、あれ?」

 

「影人君!?良かった、影人君も熱下がったんだね!」

 

そこにいたのは今し方影人が体調を心配していたうたである。彼女は割と元気そうな姿であった。

 

「咲良さんこそ……って、何で咲良さんはこっちに来ようとしたんだ?学校に行くなら別の方向で……」

 

「あ、それなら行く前に寄り道しようって思ってたんだ!」

 

「なるほど、それでちょっと会うタイミングが早い……って、え?」

 

「それじゃあ影人君。先行ってて!」

 

「は?ちょっ、咲良さん!?……ああもう!」

 

うたは影人が止めるのも聞かずにさっさと学校に行く方向とは違う道を走る事になる。それを見て影人はうたが寄り道に時間をかけ過ぎて遅刻したらヤバいと慌ててその後を追いかける事になるのであった。




また次回もお楽しみに。
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