キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
プリルンを素体にしたクラヤミンダーとそれを呼び出したスラッシューに対抗するためにキュアソウルとキュアキッス。うたが変身不能になったために少し離れる中で出張所内部では田中が外の騒がしさを聞きつけて起き上がる。
「ふわぁああ……。なんか騒がしいですね……」
それから田中が二階にある自室の窓から外を覗くとそこにはクラヤミンダーと向き合うソウルとキッスがいた。更にうたが少し離れているのと、相手にスラッシューがいる事。加えてズキューンがその場にいない事から田中はかなりヤバい状況になっていると直感。
すぐさま彼は妖精態へと変身。タナカーンとなると屋根に付いている日差しを入れるための小窓から出て行くと学校にまで急行する。
「待ってるタナ。今、ウインクとキュンキュンを呼んでくるタナ!」
タナカーンが急いで飛び去ると学校にいるであろうななとこころを探しに行く。田中としては学校に入れない上にタナカーンとしての姿が見つかったらかなり不味いが、背に腹は変えられない。
そんな中で早速クラヤミンダーが二人へと攻撃を開始。するとライトの部分がピンクに変わるとアイドルグータッチと言わんばかりに拳をブンブンと振り回しながら二人へと殴りかかる。
「クラクラ……クラヤミンダー!」
「アイドルグータッチかよ!?」
ソウルとキッスは左右に避ける形で分散する中、スラッシューがソウルにめがけて飛び出す。
「私もいる事を忘れないで!」
ソウルへと拳をぶつけたスラッシューはその体が炎に包まれると同時に一瞬にして戦闘スタイルへと変化。ソウルはそんなスラッシューに対抗する事になる。
「お姉様、しっかりしてください!」
キッスはそんな中でクラヤミンダーと戦う……が、プリルンが素体になったせいでキッスは思うように攻撃ができない。
「クラヤミンダー!」
クラヤミンダーはそれを良いことに一方的にキッスへと連続パンチを繰り出す。
「ッ!きゃあっ!」
キッスは防御に徹していたが、何度も攻撃を喰らう内に踏ん張りきれなくなって後ろに吹き飛ばされてしまう。
「キッス!」
「だったら、せめて動きを止める!」
キッスはどうにかクラヤミンダーを止めるために口紅を塗ってから技を放つ。
「キッスショック!」
「クラヤミンダー!」
しかし、それはクラヤミンダーがライトを青く発光させてから漆黒のキラキラマークによるバリアで防いでしまう。
「マジかよ、ウインクバリアも使えんのかアイツ!」
「どこを見てるのかしら?」
「しまっ……」
そんな中でソウルは余所見をしてしまったがためにスラッシューからの火炎弾の連続攻撃をまともに受けてしまう。
「ぐあああっ!」
「ソウル!!」
キッスはソウルの窮地に飛び出そうとする。それをクラヤミンダーも見逃さない。クラヤミンダーは青い発光を維持しつつ跳び上がると縦に回転しつつ踵落としを繰り出した。
「ああっ!?」
キッスはそれをまともに受けてしまうと出張所の壁に激突。それを見てソウルは技を発動しようとメガホンを構える。
「だったら、これで!」
ソウルはどうにか状況を逆転させるためにメガホンのダイヤルを白に合わせて技を使う。
「ズキューンの力、ソウルインパクト!」
「温い!」
するとスラッシューはソウルと同じように自身の体に炎を纏うと突進。二つのエネルギーが激突するとソウルは押し負けて地面に叩きつけられてしまう。
「ぐあああ!?」
「ソウルも通用してない……どうしたら」
うたはソウルとキッスが完全に劣勢に立たされていると感じ取る。このままでは間違い無く負けてしまう。うたはブローチを封印されたせいで助けには入れない。その事実に何もできない自分への悔しさを覚えた。
「まだよ!」
そこにキッスが飛び出すとクラヤミンダーへとパンチを繰り出そうとする。
「はぁああっ!」
「クラヤミンダー!」
するとパンチを放つために腕を後ろに振りかぶるが、それと同時にクラヤミンダーにプリルンの面影を見てしまう。
「ッ!?ダメ!」
「キッス!?」
「クラヤミンダー!」
キッスはやはりプリルンへの攻撃はできないとばかりにどうしても攻撃を躊躇してしまう。その直後、クラヤミンダーは再びグータッチを放つとキッスを返り討ちにしてしまった。
「ああっ!?」
「このままはヤバい。何とか逆転しないと」
ソウルはスラッシューと対峙する中、どうにか隙を作ってクラヤミンダーへと自分の浄化技をぶつければ勝機はあると踏んでいた。
「だったら!キッスの力、ソウルディフェンダー!」
ソウルは咄嗟にソウルディフェンダーを召喚するとそれを回転させながら投擲。スラッシューはそれを炎の剣を出して受け止める。
「この程度……」
「良し、スラッシューの動きが止まった!」
ソウルはスラッシューが止まったのをチャンスと見て一気にクラヤミンダーへと接近。後ろ回しの形で足刀蹴りを放とうとする。
「クラヤミンダー!」
しかし、ソウルのこの動きにクラヤミンダーは自らをバイオレットに発光させるとまさかのソウルソニックと言わんばかりの衝撃波を放ち、ソウルはそれに不意を突かれてダメージをまともに受けてしまった。
「ぐはあっ!?」
「ソウル!まさか、ソウルの力もあるの!?」
キッスが心配する中、スラッシューはソウルディフェンダーを弾いてから笑みを浮かべると二人へと言い放つ。
「ふふっ。妖精ちゃんを助けたいというあなた達の力はこの程度?話にならないわよ?」
「ッ……」
「改めてお勧めするわ。……良い加減諦めなさい。あなた達にこの子を救う手立ては無い」
スラッシューの残酷な宣告に二人はどうにか反論しようとする。しかし、ソウルもキッスも圧倒されてしまっていた。このままでは勝ち目など無い。
「……プリルン!」
そんな時だった。うたがプリルンへと声をかけるためにクラヤミンダーの前に姿を現したのは。
「ッ、無茶よ!咲良うた!」
キッスは生身で無茶をするうたへと叫ぶ。そして、スラッシューはそれと同時に笑みを浮かべた。
「ふ〜ん。でも、戦えないあなた一人が来たって状況は好転しない。それどころか足手纏いよ。さっさと諦めてしまった方が痛い目に遭わずに済みますわよ」
スラッシューはそう言ってうたへと圧をかける。彼女はこれだけ警告すればうたは退くと思っていた。
「……嫌だ」
しかし、うたはそう言って拒否。ただ、状況は絶望的な事は変わらない。ソウルはスラッシューに追い詰められ、キッスはクラヤミンダー相手に下手に手を出せない。
プリルンは未だに暗闇に閉じ込められたままで助かる見込みも無いだろう。どれだけ叫んだって暗闇の中にいるプリルンには届かないのだ。それでも、うたは諦めたく無かった。
「……嫌だ!絶対諦めない!プリルン、言ってくれたよね?私の歌がキラッキランランにしたって。だから、プリルンの事。何度だってキラッキランランにしたい!私の歌で!」
うたはそう言うとクラヤミンダー相手に真正面。しかも、自身は生身の体で歌い始める。
「キミのハートにとびっきり♪元気をあげるね♪ゼッタイ!アイドル!ドキドキが止まらない!急接近♪笑顔のユニゾン、応えてほしいな〜サンキュー♪最高のステージで〜キミと歌を咲かそう♪」
うたはそう言ってキュアアイドルとしての持ち歌。“笑顔のユニゾン”を歌う。しかし、クラヤミンダー相手に生身の状態での歌はやはり通用しない。
「……ふふっ。アイドルプリキュアとしてならともかく、生身の状態ではクラヤミンダー相手に歌は届きませんわ。クラヤミンダー」
するとクラヤミンダーはうたを容赦無く捕まえてその腕で締め上げるように拘束する。
「くうっ……」
「やっぱり無茶だ……。俺がどうにか浄化技で……」
「させませんわよ?私がいる限り、あなたがクラヤミンダーへと技を使うのは無理ですわ」
スラッシューは走ろうとしたソウルの前に降り立つとその行く手を阻む。今の現状、クラヤミンダー相手に有効打を取れる歌はソウルの個人技のみ。キッスはズキューン抜きでは技を使えないためにスラッシューはソウルだけをマークし続ければそれだけでクラヤミンダーを倒されずに済むのである。
「ッ……」
そんな中、うたはクラヤミンダーに捕まっても尚歌おうとする。
「キミのハートにとびっきり♪元気をあげるね♪ゼッタイ!……」
「……ふぅ、しつこい。クラヤミンダー」
「クラヤミンダー!」
「あううっ!?」
うたは尚も歌を歌うが、そう何度も無意味な歌は聴きたくないと言わんばかりにスラッシューはクラヤミンダーへと指示。クラヤミンダーはうたへの締め付けを強くした。
「咲良うた……。ッ、お姉様。止めてください!」
キッスがそう言ってもクラヤミンダーが止める気配は無い。キッスが止めに行こうとするとその足元に炎の斬撃波が命中して行くのを止めさせる。
「私がキュアソウルだけにかかりきりになると思うなんて甘いですわよ?妨害なんて幾らでもできますわ」
スラッシューの言葉にキッスは悔しそうな顔を浮かべる。そして、クラヤミンダーの締め付けを先程からずっと受けているせいでうたの方も限界に近づきつつあった。
「ああっ……あ、あ……くっ」
うたはどうしてもプリルンを助けるのを諦めたく無かった。そのために必死に声を出そうと足掻く。しかし、クラヤミンダーに締め付けられてるせいで痛みと体の圧迫感のせいで上手く声が出ない。もう、うたは歌いたくとも歌えなかった。
「(諦めたく無い……でも、もう声が……プリルン!)」
「(こうなったら……俺がどんな手を使ってでもコイツを振り切るしか……)」
ソウルもどうにか状況を打開するために動こうとしたその瞬間。突如としてどこからか聞き覚えのある歌が聞き覚えのある声で聴こえてくる。
『キミのハートにとびっきり♪元気をあげるね♪ゼッタイ!アイドル!ドキドキが止まらない!急接近♪笑顔のユニゾン、応えてほしいな〜サンキュー♪最高のステージで〜キミと歌を咲かそう♪』
その歌はクラヤミンダーの中で暗闇に閉じ込められているはずのプリルンからの歌であった。彼女は暗闇の中でも歌を歌っていたのである。
「まさか、お姉様が……咲良うたの歌に反応して」
しかし、クラヤミンダー内部にいるプリルンとしては歌を意識して歌っているわけでは無い。むしろ、自分でも何故この歌を歌っているのかわからないのだ。
「(……この歌、知ってるプリ。でも、どこでプリ?)」
すると暗闇の中にいるプリルンの石化したリボンにピシリとヒビが入る。そんなプリルンの歌を聞いて、うたは完全に失いかけていた希望を取り戻していた。
「プリルン……!」
更にそんなプリルンに連動してか、クラヤミンダーも手での拘束を緩めかける。
「キミのハートにとびっきり♪元気をあげるね♪ゼッタイ!」
『ゼッタイ!』
「アイドル!」
『アイドル!』
「『ドキドキが止まらない!」』
うたの歌に合わせる形でプリルンは合いの手を入れる。そして、二つの声は重なるとクラヤミンダーは突如として苦しみ始めると手に握っていたうたを解放。うたは降り立って歌を続ける。
「クラァ!?」
「急接近♪」
「(うた……)」
そして、クラヤミンダーの内部にいるプリルンはとうとうその名前を小さく呟くと同時に脳裏にうたの顔を浮かべつつ目を開ける。
「『笑顔のユニゾン、応えてほしいな〜サンキュー♪最高のステージで〜キミと歌を咲かそう♪」』
「(プリルン……プリルン……プリルン!)」
「(うた……うた……うた!)」
二人の声がユニゾンすると同時に頭の中にその想い出が溢れ出す。そして、最初こそ名前を呟いていただけだったプリルンは徐々にうたの事を認識。それと同時に首に付けていたリボンの石化……記憶の封印にヒビが入るとそこから眩い光が溢れ出す。
「くっ……させるか!」
だが、そのタイミングでスラッシューはこれ以上クラヤミンダーの中のプリルンに動かれたら不味いと考える。それから彼女は手を振るとクラヤミンダーの足元の地面から炎を立ち上らせた。
「えっ!?」
「クラァアアッ!?」
それはまるでクラヤミンダーの装甲を更に上から分厚く塗り潰すように。クラヤミンダーそのものを覆うとその体は炎のような赤い装甲を付与したクラヤミンダーと化した。
「クラヤミンダー!!」
「そんな……」
「プリ……熱い、熱いプリ……助けて……うた!」
それと同時にクラヤミンダー内部からうたへと助けを求めるプリルンの声が聞こえた。この様子を見るに、プリルンはうたの記憶を取り戻したらしい。ただ、プリルンはスラッシューの炎の壁に阻まれて出られないようにも見えた。
「プリルン……記憶が戻ってる?でも、この炎が邪魔で出て来れないの?」
「ッ……スラッシュー、お前!」
「そう怒らなくても良いでしょう?私もクラヤミンダーの素体に抜けられたら困るのですわ。だから、こうして蓋をさせてもらいました」
どうやら、スラッシューは記憶を取り戻したプリルンがクラヤミンダーから抜け出されるのを危惧してそれを炎の壁で邪魔をして止めてしまったらしい。
「プリルン!どうしよう……このままじゃ」
「……咲良さん。ここからは俺達がやる」
そんなうたと入れ替わるようにソウルが前に出る。それに合わせてキッスもやってきた。
「……咲良さんの歌はプリルンに届いたよ。だから、ここからは俺達の番だ。キッス、やれるな?」
「……勿論よ。私はお姉様が笑顔になるのを邪魔したあなた達を許さない!」
うたはやれる事をやってくれた。だからこそここからは自分達の番である。ソウルはその気持ちを胸に改めてクラヤミンダーやスラッシューと対峙。キッスも先程のようなプリルンを傷つけるという迷いはもう無かった。
「プリルンは咲良さんのおかげで記憶が戻ったんだ。……俺達はそのプリルンの前に広がった光の世界を取り戻す!」
ソウルとキッスは同時に駆け出す。ここからはうたが取り戻したプリルンの視界に広がる光の世界を永遠にするための戦いが始まる事になる。
また次回もお楽しみに。