キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
田中からのニュースを受けて影人達は数日の間を置いて、今回の企画の説明会に参加するべくPretty_Holicへと赴いていた。
「メロロン、絶対負けませんから」
「こころこそ覚悟するのメロ」
心なしか二人の間にはバチバチと火花が散っているようにも見えており、対抗心が燃え上がっている。そして、そんな二人を見て影人は胃が痛いのかお腹を抑えていた。
「……なぁ、今からこの企画断れ……」
「ダメだ」
「何でだよ……」
影人は今回の企画を断ることを提案するが、レイによってバッサリと切られてしまう。基本的にこういう依頼系の仕事は信頼関係を継続するためにもどうしてもダメという事情が無い限りは受けないといけない。そうしないと相手から疑われてしまうからである。
「それにしても、アレが出てきたのはタイミングが悪かったね……」
「おかげさまで俺のメンタルはボドボドだよ」
「影人君が精神的に追い詰められてるせいで変な言葉を使うようになっちゃった……」
何故影人がこうなってしまったのか。理由は仕事が舞い込んだ日にまで遡る。
〜回想〜
「アイドルプリキュア対ズキューンキッスのライバル対決って……ガチですか?」
影人が恐る恐る田中へと問いかけていた。その声は震えており、その企画をやったらかなり不味いと言わんばかりである。
「ええ、もうPretty_Holic側には前向きな返事をしましたし。我々が良いと言えばそれで企画は進行すると思いますよ」
それを聞いて影人は力無く項垂れる。そして、チラリと問題のこころとメロロンの方を向くと予想通りの光景が目に映った。
「メロロン、絶対に負けませんからね?」
「受けて立つのメロ!人気ではズキューンキッスが上って事を証明するのメロ」
二人の視線からは火花が散っており、明らかに戦う気満々と言わんばかりである。影人は予想通り過ぎて溜息が出る始末だった。ただ、次の瞬間には更に特大爆弾が投げられる事になる。
「あ、そう言えば。担当のこはるさんが疑問を挙げていたのが、キュアソウルはどちらの所属になるのか……と」
「え?何でそんな事を聞くんですか?」
「……実は、数日前からネットにこんな動画が上がってまして」
すると田中が画面を見せるとそこにはとあるライブシーンが映っていた。影人はそれを見た瞬間、また脳内が混乱する。
『『取り戻したい〜♪光の世界〜♪』』
『その笑顔♪』
『勇気♪』
『涙♪』
『夢♪』
『『希望の兆し♪キミと明日を〜願うチカラで♪生まれる〜私たちのハーモニー♪』』
「は……?は?は?何で?何でキッスとソウルバージョンのAwakening Harmonyのライブシーンがあるの?」
それはこの前プリルンが変身したクラヤミンダーを浄化する際にキッスと共にライブを発動したシーンである。まさかの動画がネットにアップされているのを見て思わず影人はプリルンを見た。
「プリルン、またお前かぁっ!?」
「……知らないプリ!」
「……は?」
影人は普段とは違う反応を見せるプリルンに凍りつく。いつもならこのタイミングで無邪気に自分がやったと白状するプリルンだが、今回は違うと来た。
「いやいや、じゃあ何であのライブシーンがネットにアップされちゃってるんだよ。普通に考えて他に誰もやる奴いないじゃん。というかそもそもあの場所にいて撮影できたのは咲良さん、プリルンくらいだろ!」
影人はうたとプリルンの二人がいたらプリルンが犯人だと断定するくらいに彼女を疑っていた。これに関しては今までの行いが行いなので真っ先に疑われても仕方のない所だろう。
「そんな事言ってもプリルンは本当に知らないプリ。他の誰かがアップリしたんだプリ」
それを聞いて影人は一度落ち着く。プリルンが先程から否定する際に頭がモッサモサになってない所を見ると彼女が嘘を吐いてるとは考えにくい。何しろ、女王様ことピカリーネはプリルンが白状する前にモッサモサ刑を執行した時があったからだ。
「だったら咲良さんか?」
「いやいや、私にそんな余裕無かったよ!」
「だよなぁ……。まぁ、咲良さんはやらないと思う。だとしたら後考えられるのは……」
影人の目線がメロロンに向く。次の瞬間、ポンと音が鳴るとメロロンの髪がモッサモサに変化した。
「メロ!?」
「……おーい、メロロン。これ、どういう事?」
影人は目が笑ってない状態の笑顔をメロロンに向ける。それに対してメロロンは平然と答えを返した。
「メロ?見ての通り、メロロンがアップしたのメロ。折角にいたまとのデュエットをやったのだから記念に撮っていたのメロ」
「お前あの緊急時になんて事してんだよ!!」
影人はメロロンへとツッコミを入れる中、こころの目からハイライトが消え始める。
「カゲ先輩?私とのデュエットをやった事無いのに何でメロロンと先にやっちゃってるんですか?」
「こころ!?取り敢えず落ち着け!さっきも言ったけどこれは緊急時で……」
影人は慌てた様子でこころに弁明。またこの空間は修羅場へと逆戻りである。
「……レイ君」
「何だ?蒼風さん」
「影人君って、本当に苦労人の才能がありそうだよね?」
「ああ、多分俺達の中で考えたらダントツだろうな」
もうあまりの苦労っぷりにななからもそう言われる始末だ。ここまで影人が苦労している所を見るとそう思えるのも仕方ないだろう。
「……あの、それでどちら所属にしておきましょうか?」
「「そんなの(アイドルプリキュアです)(ズキューンキッスメロ)!」」
またこころとメロロンがハモると全く違う事を言う。田中もこの返事には困惑気味だった。しかも更に厄介なのが、ネット民達の中にはソウルをズキューンキッスに移籍した扱いにしてる人達がいる点だ。
これに関しては、今までアイドルプリキュアの中で三人でのライブシーンの中にソウルがいない事。加えてここまでソウルは他のメンバーとのライブを披露していなかったのだ。
だからこそ一人だけアイドルプリキュアの中である意味浮いており、複雑なチーム内情を疑う人達をそこそこ作っていた。それが余計にネット民からしてみたらズキューンキッスの方に移ったというイメージを加速させているのである。
「……それで、影人の意思はどうなんだ?」
「「……え?」」
するとレイが影人へと問いかける。それは今まで聞いてすら無かった影人本人の意思だ。
「だってそうだろ?周りがどれだけ所属の事で騒いでも、最終決定権があるのは影人だ。だから影人に意見を聞きたい。何か問題がある?」
レイからの意見に一度言い争うのを止めたこころとメロロン。レイの意見は間違ってない。そもそもここまで聞かれる事すら無かったが、影人本人はどちらに入りたいのか……という話をまずはちゃんとしないといけなかった。
「俺の意見……ふぅ……。正直、俺は兼任とかにしてどっちのチームとかハッキリしない方が良いと思ってたけど……今回の件に関してどっちかに決めろと言われたらもうその意見はある」
それを聞いて一同はその答えに注目した。そして、影人はその意見を言う事になる。
〜現在〜
「……それにしても、まさかカゲ先輩がズキューンキッスを選ぶなんて……」
「当然メロ!」
こころはショックを受けたような顔つきをしており、メロロンはドヤ顔であった。
「……前もしっかり話をしたけど、こころの事が嫌いになったわけじゃ無いんだ。それだけはちゃんと心に置いておいてほしい。……ただ、今の俺はズキューンキッスの方にいた方が良い。そんな気がしたんだ。だから頼む。こころには我慢させる事になって済まない」
影人は立ち止まると頭を下げる。その言葉は影人の本心、彼が自分の意思でズキューンキッスを選択した事を現していた。
「わかりました。私もカゲ先輩の意見を否定するつもりはありません。……正直、私も意地になってた所がありましたし。我慢してないかって言われたら嘘になっちゃいますけど。私も先輩を信じてますから」
こころは影人の意見を受け入れてくれた。この考え方に最悪、泣きつかれるかもしれないと思っていた影人としては本当に助かると感じている。
この辺りは今まで積み重ねてきた影人への信頼がこころの中に根付いていたからこそできた事と言えるだろう。
「何にせよ、これで向こうも影人君をズキューンキッスに含めた三人チーム。ズキューンキッスソウルとして準備をしてくれています。ネットの人達も発表の方に好感触ではありますし、今の所大きな支障はありません」
実際、今回のキュアソウルの移籍の動画をアップしたのは田中である。その際にソウルは一人で移籍についての説明動画を撮影した。集合時のライブシーンが無かった事や一足早いコラボ動画が先にイメージとしてあったためにネット民達からも特に不仲とかを疑われる事も殆ど無い。
「そんな事を話している間に着いたぞ」
レイがそう言うと今回の目的地であるPretty_Holicに到着。早速中に入ると影人達を担当の森こはるが出迎える。
「いつ来てもキラッキランラン〜」
「皆さん!お久しぶりです!」
「こはるさん!」
それから四人は一列にピシッと並ぶと田中もその若干斜め後ろに立つ。そして、森へと挨拶をした。
「「「「こんにちは!」」」」
「今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「あっ、初めまして!マネージャー見習いの紫雨こころと申します!よろしくお願いします!」
こころは前回のPretty_HolicのCM撮影の時はまだメンバーへの加入前のために森とは初見で会う事になる。そのため、まずは森への挨拶からだ。
「よろしくお願いします……あら?その子は……」
森が見つけたのはうたがかけているポシェットに入ったプリルンとメロロンである。ただ、その視線は前回はいなかったメロロンの方に向いていた。
「あっ、新しいマスコットキャラクターです!」
「そうなんですね!可愛い〜!」
森はメロロンの可愛らしさに思わず頭を撫でる。影人はそれを見て若干冷や汗をかいた。影人のイメージとして、メロロンは知らない人からの撫で撫でを受け入れる子では無い。そのため、メロロンが変に抵抗したらどうしようと考えた。
だが、そんな彼の心配を他所にメロロンは特に動く事も無く。普通にぬいぐるみのフリをしてくれた。やはりすぐに喋ったり動いたりして正体がバレるプリルンとは違うという事だろう。
「では企画をご説明しますね!」
それから森が移動するとそこには二つのシートに置かれた三色ずつのコスメ。右側がアイドルプリキュア、左側がズキューンキッスソウルである。
「今回の企画は、アイドルプリキュアとズキューンキッスソウル。ライバル対決です!」
「対決って……」
「どういう事ですか?」
そう、まだ今の所は対決の内容に関しては特に触れられていない。そのため、森からその部分の説明が入る事になった。
「こちらのコスメをキュート可愛いアイドルプリキュア派。そして、こちらの新しいコスメをクール大人っぽいズキューンキッスソウル派としてどちらが好きか、選ぶキャンペーンをやりたいんです!」
森の説明にうた達は置いてあるコスメを手に取って見ていく。新しく商品として作られたズキューンもキッスのコスメもうた達に刺さっているようだ。
「ズキューンキッスのコスメも可愛い!」
ふと影人がズキューンキッスソウルの方にバイオレットカラーのコスメがあったため、それを手に取った。
「あれ?そういえば、前にキュアソウルのコスメは無かったはず……」
「ええ、実は前にリップや女性のみが使う可愛い系のコスメでキュアソウルを使うのは難しいという判断になってしまって。色々と試行錯誤を繰り返していたんですよ。色もキュンキュンと被る所がありますし」
キュアソウルは前々から商品化をするのが難しいという事で制作が難航。中々コスメとして上手く売り出す方法がわからなかったらしい。一応、策はあったのだがアイドルプリキュアのイメージを壊すリスクがあったのでそれをやる決心が付かなかったというのもある。
「……ですが、今回キュアソウルがズキューンキッスの方に入るという連絡を受けてその考えを実行できるようになりました。それがこれ、クールな魅力が出せるアイシャドウです!」
それを聞いて女子組は目を輝かせる。影人も自分のプリキュアがようやくコスメの商品化にまで漕ぎ着けた事が嬉しかった。
「わぁ……綺麗なアイシャドウ……。私達の時には無かったコスメだ!」
「えぇ。男性でもアイシャドウは使いますし、ソウルはどちらかと言えば可愛いよりもクール寄りのキャラだと思います。今回のズキューンキッスのコンセプトの方が馴染みやすいかなと」
そう言った面で考えると今回のソウルの移籍の話は上手い方に働いたのかもしれない。加えて、ズキューンキッスソウルなら三人での色の被りは無いので動きやすさもあったのだろう。
「対決にするなら確かにこの方が良いかもしれませんね!」
「はい!今一番注目の二大アイドル対決企画。実現のために、是非ご協力をお願いします!」
そんなわけで森からの説明が終了する事になった。アイドル、ウインク、キュンキュンのアイドルプリキュアチームとズキューン、キッス、ソウルのズキューンキッスソウルチーム。
Pretty_Holicとしても今後の経営戦略を考える上で重要な対決となるだろう。
また次回もお楽しみに。